救いたかった世界   作:ミツフミ

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備蓄庫を出て、放送室の重い扉を開けると目の前には上に続く梯子が。

そこを登り、錆びれて硬くなったハッチをなんとか開けて家の屋上に出る。

「……」


煙を上げるビル、塀や電柱にぶつかって大破している車、あちこちにこびり付いている赤黒くなった血。


そして闊歩する人ではないモノタチ。


初めて(・・・)見た懐かしい(・・・・)外の世界は相変わらず崩壊していて、


相変わらず残酷だった。



「……確かこっちに……あった。」

屋上から下に伸びる梯子を使って地面降りた私は、家の周りをぐるりと回って目的のもの、家の横に停めてあるキャンピングカーを見つけ家で見つけた鍵を使って中に入る。


後部座席のベットの1つに持ってきた荷物を置き運転席に座った私は、記憶を頼りに車をある場所を目指して走らせた。




ありきたりな幸せ

「あ、おはよ」

「……!」

 

 目が覚めると目の前にはあの時私の手を引いて走った女の子が私の顔を覗き込んでいた。

 突然の事で私は目をパチくりさせる。

 

「お水、飲む?」

「え……あ、ありがとう」

「はいどーぞ」

 女の子はコップに水を入れ私に渡す。

 それを一口飲む。

 水はよく冷えており、とてもおいしかった。

 

 

「誰?」

 コップの水を飲みほした所で私は女の子に質問する。

 

「巡ヶ丘学院高校3年C組、丈槍 由紀だよ。」

「!」

 

 女の子が私より年上だった事に驚く。

 

 

 私が名乗った時も、「私が先輩だね」と、嬉しそうにしている所を見るに、あまり年上として慣れていないのだろうと思う。

 

 

「……ここはどこですか?」

「学園生活部の部室だよ」

 学園生活……部?

 “部”と言っているから部活動なのだろう。

 でもそんな部活に心当たりはなかった。

 

 

「あ、めぐねえ、おはよー。こっちこっち。」

「?」

 そんな事を考えていると女の子 、ゆき先輩が扉の方に声をかける。

 そっちの方に視線を向けたけど、そこには誰もいなかった。

 

 

「がくえんせいかつ部、ですか?」

「うん、楽しいんだ♪ 新入部員募集中だよ〜。ね、めぐねえ。……はーい、佐倉先生」

 先輩は再び誰もいない空間に向かって呼びかけた。

 ……もちろん返事はない。

 彼女は一体何を見ているのだろう……。

 

 

「あっ、もう授業始まっちゃう。先行くね?」

 突然ゆき先輩が立ち上がって扉の方に駆けていく。

 時計の針を見ると、時刻は8時40分になった所で、あの日以前で言うと後10分で授業が始まる時間だった。

 

「みーくん、またね〜」パタン

 そして先輩は私に手を振って教室から出て行った。

 

 

(……みーくんってもしかして私の事かな?)

 そんな事を思いながら周りを見渡すと、ふと石鹸の香りがした。

 その香りは私が今着ている服から香って来るもので、まるであの日以前に戻ったみたいだった。

 

 

「夢、だったのかな……」

 立ち上がり廊下に出た私は、手近な3-Aのクラスを開ける。

 

 

 

 ……中は血が飛び散り、机が散乱していた。窓から外を見ると、校庭には“奴ら”が闊歩している。

 

「そんなわけ、ないよね」

 廊下や窓から見た校庭の様子から期待はしていなかったが、やはりショックはあった。

 

 

「ここか! いた!」

 突然教室の後ろの戸が開き、2人の少女が教室に入って来た。

 2人の顔を見て、あの時ゆき先輩と共にいた人達だと思い出す。

 その2人の内、ツインテールの髪の少女が手に持つシャベルを私に向けたので、私は無抵抗の印として両手を上げた。

 

 

 

 学園生活部の部室である元生徒会室に移動した私達は、2人、若狭 悠里先輩と恵飛須沢胡桃先輩から、この学校の事、学園生活部の事、学園生活部の顧問だっためぐねえの事、そして、ゆき先輩が現実を見ていないという事を聞いた。

 その後、ここにいる間はゆき先輩に合わせて欲しいと頼まれたが、私はそれに答える事が出来なかった。

 

 

 

ーーーー

 

 私が学校に来てから数日が経った。

 その間にも色んな事があった。

 みんなで運動会もした。

 最初、現実を見ていないゆき先輩に怒りを感じ、ゆき先輩の症状についてりーさんと喧嘩をしたが、ゆき先輩も先輩でちゃんと考えていた事が分かり結果的には和解出来た。

 

 そして私は今日、ゆき先輩のおかげで、1つの決心がついた。

 

 

 

 

「ちょっと待て、それ何だよ!」

 胡桃先輩の怒気を含んだ声が部室に響く。

 今、部室にはゆき先輩以外の学園生活部の部員が集まっている。

 

 そして机には“職員用緊急避難マニュアル”と書かれた一冊のマニュアルが置いてあり、そのマニュアルの内容はまるでこの事が意図的に起こされたような事が書かれてあった。

 

 

 これを見つけたのは私だ。

 りーさんから頼まれめぐねえの荷物から今後に役立つ事が書かれたノートか何かが無いかを探していた時に本の間に挟まっていたこれを見つけた。

 

 

「めぐねえが……最初から知ってたって事か? そんなわけねえだろ!」

「くるみ、落ち着いて」

 胡桃先輩に胸倉を掴まれるがりーさんがすぐに止めに入ってくれたおかげで離してくれた。

 

 先輩はどうやらめぐねえが最初からこの事を知っていたのではないかで怒っているらしい。

 

 私は先輩から少し離れ乱れた襟を戻す。

 

 

「そういう可能性もありますが、低いと思います」

「根拠は?」

「表紙を見て下さい」

 

 私は表紙の開封指示の所を指差す。

 そこには『校長及びその代理より指示があった時』、『A-1警報の発令時』、『外部より連絡が途絶え10日以上経過した時』と記されてあった。

 先輩たちから聞いためぐねえの特徴では、真面目で優しく嘘のつけない人だという印象を受けたから、知っていたという可能性は低いだろう……。

 

「渡されて持ってたけど内容までは知らなかった。そんな所だと思います」

「こんな事になって開けてみたら、ってことか。言ってくれればよかったのに」

「……」

 私は胡桃先輩に何も言えなかった。

 それは今何かを言うと、彼女の逆鱗に触れてしまいそうだから。

 

 

「よく見せてくれたわね」

「正直迷ったんですけど、……私も学園生活部の一員ですから」

 

 

『なんか悩み事があったら相談してね。 私じゃ頼りなかったらりーさんでも胡桃ちゃんでもいいし、とにかくみんなで考えよう』

 

 

 私はつい数分前にゆき先輩から言われた事を思い出す。

 その時1人でこのマニュアルを読んでいて、他の人に相談しようか迷っていた私は、その言葉で相談する事を決めたのだ。

 

 それを聞いた胡桃先輩は何かを思ったのか「そっか」とどこか呟いた。

 

 

 

「ここを見て下さい」

 私はマニュアルの地下2階の地図が描かれてある中のある一点を指差す。そこには“非常避難区画”と書かれていた。

 それを見たりーさんの顔がぱぁと明るくなる。

 

 地下の行き方を言うと早々に胡桃先輩が立ち上がって出て行った。

 「偵察だ」と、口ではそう言っているが、あの顔は多分偵察では済まないと思う。

 

 

(この学校に3年いた先輩たちも知らなかった地下という新たな場所。何もなければいいけど……。)

 

 そう思い、胡桃先輩が出て行った扉を見ていた私は窓に近付く。

 私の心境を写すかの様に昨日は晴れていた空は今日は曇っていた。

 

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