救いたかった世界   作:ミツフミ

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「着いた」

目的の場所、巡りヶ丘駅に辿り着いた私は駅前に車を停めて車内のラジオをつける。

『……ザー、駅に、ザー、れてい、ザー、うまく、ザー……』


だけどノイズが酷くてあまり内容は聞き取れなかった。

ラジオを途中で切って後ろに行く。


私にはわかる。
ここに“彼女”がいる事を。


ベットに置いた荷物の中から防犯ブザーとシャベルをひっ掴み車を出た私は

「待ってて、今行くから。」

そう呟いて、駅の中に駆けていった。



もう一度笑って見せて

「……しくじった」

 

 

 そう言って部室の中に倒れ込んだ胡桃先輩の腕には噛まれた痕があった。

 

 空き教室に運んでいる中、先輩から話を聞くと、先輩を噛んだのは“奴ら”となっためぐねえだった。

 どうやら先輩は、めぐねえを殺す事を躊躇し、そのせいで噛まれてしまったらしい。

 

 胡桃先輩をソファに寝かせ、りーさんが応急処置をする。

 ゆき先輩にお湯を沸かして来て欲しいと頼み、教室から離れさせ、りーさんに地下に早期患者用のワクチンがある事と、私1人で取りに行く事を話す。

 

 りーさんは1人で行く事に反対したが、それに反論する。

 胡桃先輩と同じくめぐねえと一緒に生活していたりーさんが来ても正直足手まといだと思ったからだ。

 私は胡桃先輩のシャベルを借り、地下2階の非常避難区画に辿り着くと、そこには“奴ら”と化しためぐねえがいた。

 

 

ギギギギギギギギギ

 

 

「っ!」

 

 めぐねえの呻き声に怯え、私は地下1階のシャッターの向こう側まで逃げる。

 後ろでは追ってきためぐねえがシャッターに何度も体当たりをしていた。

 

「佐倉 慈先生、ですよね?

 はじめまして、直樹 美紀。学園生活部の新入部員です。」

 

 その彼女に向かって私は話し始める。

 生き残った人類としてでなく、学園生活部の新入部員として。

 

「めぐねえの事は、先輩達から聞きました。優しくて、いつもみんなを支えていたって。みんなを傷つけたくないんですよね?

 会ったら……心が折れてしまうかもって

 

 でも、今は私達みんな元気です

 

 

 りーさんはみんなのお姉さんで、いつも先の事を見ています。

 

 ゆき先輩はいつも元気でみんなの支えになっています。

 

 胡桃さんは……胡桃先輩は困った時に頼りになります。

 

 めぐねえがいなかったら私もここにいません

 

 

 私達、もう大丈夫なんです。だからっ!」

 

 私の足をやつら(めぐねえ)の冷たい手が掴む。

 一瞬ひるんだ私だが、持っているシャベルを思いっきり振り下ろした。

 

 

ーーーー

「……ここだ」

 めぐねえを送った後、私は非常避難区画に辿り着き、そのドアを開ける。

 中には私の背丈をゆうに超える高さのコンテナが何列も向こう側まで続いていた。

 

 そのコンテナの量に私は圧倒される。

 ふと、床に“医薬品”と書かれたケースが置いてあり、血の手形も付いていた。

 

 そのケースを開けると、中にはワクチンが入っていると思われる箱が幾つも入っていた。

 私はそれを、同じくケースの中に入っていた袋に詰め、非常避難区画を後にした。

 

 

 3階の廊下でゆき先輩に会ったこと以外は誰にも会わなかった。勿論“奴ら”にも。

 全てが順調だった。

 これで胡桃先輩を治す事が出来る。

「薬、取ってきまし……っ!!」

 

 

 

 

 そんな私の甘過ぎる考えは胡桃先輩のいる教室を開けた時、崩れ去った。

 

 

 

 

 中には胸から出血して既に冷たくなった胡桃先輩と、りーさんがまるで恋人同士のように互いの手を取り合って眠るように横たわっていた。

 

 

 真っ白になった私の頭の中で、“間に合わなかった”という言葉が何度もリピートした。

 

 

 

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