私は助けられなかった。
一緒に生活してきた人達を。
私を助けてくれた先輩達を。
そして、助けを呼ぶ為に出て行った親友を……。
夕暮れの学校の屋上に1人の少女が、先があちこち歪んだシャベルを使って菜園の土を掘っていた。
少女の周りには他に幾つもの菜園があるがその殆どが手入れをされておらず雑草が生い茂っており、それは今少女が土を掘っている菜園も例外ではない。
しかしその菜園に他のものと違って植物の変わりに十字に組まれた3つの白い板の墓が
板が立っている菜園のすぐ傍には、更に2つの白い板と、白い布に包まれた西瓜位の大きさの包みが2つあり、その包みの上には「突起が2つ付いた赤紫色の帽子」と、「茶色の髪留め」が置かれていた。
少女は包みが入る位の大きさの穴が2つ出来た所で土を掘るのを止めると、掘った穴の中に包みを慎重に入れ、上から土を被せ、すぐ側に白い板を立ててから、1つには突起付きの帽子を、もう1つには髪留めを風で飛ばされないようにしっかりと付ける。
少女は5つとなった白い板の墓の前で手を合わせ目を瞑る。
そしてしばらく経った後、少女は青色の瞳をゆっくり開け、最期に5つとなった白い墓を一瞥すると落下防止柵の方に歩いて行き、柵を跨ぐと、
なんの躊躇もなく校舎から飛び降りた。
数秒後、何か潰れた様な音が夕暮れの空に響いた。
気がつくと私はベッドの上で横になっていた。
(ここ、どこ……?)
私が横になっていたベッドはこれまでの人生で見た事のない程高級なものなのは一目で分かった。
起き上がり周囲を見渡す。
私がいるのは小高い丘の上で、周りは色とりどりの花がどこまでも咲き誇っている、そんな穏やかな場所だった。
その光景にしばらく目を奪われていると私の方に向かって1人、黒いローブに身を包んだ誰かが歩いて来るのが見えた。
その誰かは私のベットのそばに立つとフードをとる。
黒いフードから出てきたのは男性で、アルビノだろうか。髪は真っ白で、開いた目は真っ赤だった。
「お疲れ様、直樹 美紀さん。あなたの人生はこれで終了しました」
「え?」
「驚くのも無理はないと思います。自分が死んだ記憶がないため現実味が持てないのも分かります。ですがこれは事実です。でも大丈夫です。死ぬ前の記憶を持たずにここに来るかたは結構いらっしゃるので。」
「本来なら有無を言わさずさっさと転生して貰うのですが、あなたの場合、今までの人生があれだったので来世で使える特典を与える為にこっちに招きました。」
「わかりやすく言うと転生ものです。
ほら、今ネットとかで人気のジャンルですし、今の状況なんてまさにそれでしょ?
まぁ、私は神様なんて凄い存在ではないんですが。言うなれば代理人ってところでしょう。」
「あ、あの」
「あぁ、特典の種類ですか? 色々ありますよ? 性別や容姿の選択とか、どの時代に転生するかとか。もちろん今ある記憶を消したければ、跡形も無く消す事も可能ですし、転生して0歳からやり直すのが嫌なら憑依という形も取る事が出来ます。まぁこれは色々と制限がかかるのであまりお勧めはしませんが。」
私はしばらく考えた後、転生の特典を代理人に述べる。
「……! 驚きましたね。まさかそんな選択をするとは。」
私の言葉を聞いた代理人は、一瞬目を見開いたが、すぐに穏やかな笑顔に戻った。
「良いですよ。あなたの願いがそれであるのなら、私は止めません。ですが……いえ、愚問でしたね。決意に満ちたその強い瞳を持つあなたならきっと大丈夫です。」
「では第2の人生を楽しんで来て下さい。」
「あ、そうそう。目が覚めたらまずラジオを点けると良いですよ。」
薄れゆく意識の中、最後に代理人がそう呟いたのが聞こえてきた。
「君の望みはなんだ?」
男は唐突に聞いて来た。
「……え?」
「もしやり直せるとしたらどうする?」
男は唐突に聞いて来た。
「・・・え!?」
「あぁ、正しくは憑依の一種かな? あの街に住んでいる誰かに君の意識を移すんだ」
「・・・なんで!?」
「特に理由はないよ。まぁあるとしたら・・・気分かな?」
「・・・気分?」
「そう」
全てを失い、学校の屋上から飛び降りた直樹 美紀が次に目を覚ました時、一面花が咲いた丘の上にいた。
そこで美紀は代理人と名乗る白髪赤目の青年と出会う。
「もし、やり直せるとしたらもう一度あの地獄に戻るか?」
青年の気紛れにより、大切な人達が生きていた頃に戻れる事になった美紀は、青年からある条件を与えられる。それは「大切な人達に自分が直樹 美紀だと、気付かれてはならない」事。
それを受け入れた名と外見を変えられた美紀は、再びあの世界に舞い戻って行った。
スティーブン・キング ザ・スタンド
みんなと楽しかった勉強、また一緒に勉強しようよ。けど、それはもう全く叶わない。
すべては過去の闇の中です。私を捨てないで下さい。私を助けて。