蒼穹のファフナー HEAVEN AND EARTH ~まだ私は、ここにいる~   作:鳳慧罵亜

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異変 ~くるす~

竜宮島。アルヴィス内にある取調室の中で、二つの影が対話をしていた。

 

「来栖操」

 

真壁史彦は、向かい側に座るモノが名乗った名前を復唱した。

 

「同化した人間のなか」

 

「違う」

 

史彦の問いに対し、来栖は否定の言葉を放つ。

 

「皆城総士の知識を使って、俺の存在を君達の言葉にすると、そうなるみたい」

 

――――

 

史彦と来栖の対話は島全体に中継されており、アルヴィス内部のブリーフィングルームも、例外ではなく、そこには真壁一騎を一とする、数人のメンバーが集まっていた。

 

「全島民に中継するなんて」

 

ジェレミー・リー・マーシーはこの光景を見つつ、不安の声を上げる。

 

「皆の不安を煽るのでは……」

 

その言葉に、溝口はいたって普通に「バカ正直なやり方が、真壁のやり方さ」と応えた。そして、やや楽観的に「けっこう効果があるんだな、これが」と言った。

 

――――

 

「君達と話すには名前が必要でしょ」

 

「皆城総士が、お前を艦に乗せたのか?」

 

史彦の質問に対し、来栖は「俺が望んだんだ」と答えた。

 

「彼、君達に何か伝えたがってた。ほら、艦に彼の言葉があるでしょ」

 

来栖の答えに史彦は「あのデータは皆城総士によるものだと?」と言い、「何故彼が島に来ない」と質問をぶつけた。そう、こんな回りくどい真似をするなら直接島に出向いたほうが確実であり、皆城総士という人間はそういう人間である。その疑問に来栖はこう答えた。

 

「大きな炎の所為だ。君達人類がやったんだ。俺の仲間もソレで苦しんでる」

 

悲しそうに答える。その言葉に史彦は自らの胸にてを当てた。―――いや、胸を押さえた。と言うほうが正しいだろう。

 

「人類軍の、核攻撃か」

 

「そう、多くの痛みが生まれて、俺達のミールは新しく生まれることを嫌がった」

 

悲しそうに顔を少し伏せながら来栖はそう答え、その後、笑いながら顔を起こし「だから、代わりに俺が生まれたんじゃないかな」

といった。

 

――――

 

『代わり?お前達のミールは、消滅したわけではないんだな?』

 

対話の中継を聞いているファフナー隊の中で、優れた観察力を持ち、人の心情を見抜くことに長けている、遠見真矢は映像を見ながら、あることに疑問を持った。

 

「真壁のおじさん。どこか悪いのかな?」

 

史彦が胸に手を当てているのを見て、真矢は何となくそう思った。

 

――――

 

『お前の目的は何だ?』

 

『戦いを辞めさせたい。痛みが増えるのは嫌なんだ』

 

『和平を求めると言うのか』

 

『そう。俺に君達のコアを同化させて』

 

『何だと!?』

 

『そうすれば戦ったりせずにに、此処のミールを俺達のミールが同化できる。俺達に痛みや死の恐怖を与えたのはこの島だから』

 

『我々ごとお前達の痛みを消すと?』

 

『君達を消したくない。一緒に戦って』

 

『戦う?何と?』

 

『人類や俺たちの他の群れと。二度と戦えないよう、みんなの戦う力を奪うんだ。そうすれば、全部が平和になるでしょ?』

 

『ソレを今すぐ受け入れろと言うのか?』

 

『返事は後で良いよ。君達はみんなで決めるから。ただ、急いだほうが良い。また俺の仲間が来るし、このままだと君達のコアは死ぬ』

 

『何故分かる』

 

『此処の空は俺達のミールが奪った。アレが島を殺すんだ。でも君は、ソレより早くいなくなりそう』

 

『お前との対話は引き続き可能なのか?』

 

『うん』

 

『他に質問はあるか?』

 

『一騎カレーって何?』

 

――――

 

「対話を求め、共同戦線に武装解除、平和維持まで語った。驚嘆すべきことだ」

 

アルヴィスの会議で、史彦は先の対話の映像を流した後で、こういった。それに西尾行美が応える様に言った。

 

「世界を敵にまわす、破滅の道だがね」

 

「他の群れとも戦えと言いやがった。島を攻撃しているのはエウロス型とか言う特殊な群れだけって事か?」

 

「敵は複数の群れに分裂していると?」

 

溝口の言葉に羽佐間容子が疑問を口にし、ソレに続くように小楯保が新たな疑問を口にした。

 

「何処まで事実なんだ?データ作成者が総士君だなんて、確認の仕様がない」

 

さらに続くようにイアン・カンプとジェレミーが疑問を口にする。

 

「島のコアの状態が敵に知られた今、SCコードを公表する意味はあるのでしょうか?」

 

「上空の現象が、敵によることは明白ですが、空が島を殺すと言うのは」

 

その疑問に答えるように、遠見千鶴がデータを表示した。

 

「おそらく、事実です。加えて、敵の攻撃による負荷は確実にコアの命を脅かします」

 

そして、今まで沈黙を通していた史彦が口を開いた。

 

「全島民の選択が必要だ」

 

――――

 

アルヴィスの会議が終わり、慶樹島の訓練場では、ファフナーの模擬戦が始まろうとしていた。

 

「今回の模擬戦は、今までより、実践的な訓練になる。チームレッドはマークジーベン、アハト、ドライツェン、ヌル。チームブルーはマークフュンフ、ノイン、ツェーンツヴォルフになる。質問は」

 

レイが一通りの説明を終え、質問をたずねると、マークフュンフ……堂馬広登が質問をする。

 

「えっと、この組み合わせじゃ、明らかに先輩達が有利じゃないですか?」

 

もっともな質問にレイはこう答えた。

 

「勿論相応のハンデとして、耐久力1/2。出力15%ダウンの状態でやるから問題は無いよ。それにこの訓練は個人の能力じゃなく、連携力がモノをいうから、個人が強くても連携がうまくないと簡単に潰されるからね」

 

その言葉に、目に見えて広登達がイラついた表情を浮かべる。無理もない、レイの言葉を要約すると、『君達では僕らには勝ってこない』ということだ。

 

「まあ、そういうことだ。いくぞ、何処からでも掛ってこい!」

 

剣司の一声で、模擬戦はスタートした。




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