蒼穹のファフナー HEAVEN AND EARTH ~まだ私は、ここにいる~ 作:鳳慧罵亜
フェストゥムトの戦闘はさらに苛烈さを増してゆく。敵の数が戦闘を重ねる毎に増えてゆき、戦術は変わらず拙い物だが、こちらも、欠員が出ている中での戦闘。辛くない訳が無かった。
「くそっ、なんて数だ。マークフュンフは敵を食い止めろ!マークツェーンはフュンフが止めた奴を確実に仕留めろよ!!」
剣司は仲間に指示を飛ばしながら、自身もマークアハトの持つ、『ガルム-44』で敵に掃射を加えていく。何対かのフェストゥムが、コアを撃ち抜かれ、消滅し、軟体かは命中し、体が削られながらも、突進していく。
「チッ!」
剣司は突進してくるフェストゥムを避けながら、地面を滑走する。狙いはエウロス型。
「マークジーベン。エウロス型の動きを止めてくれ!」
「了解」
マークジーベンは空中を高速で移動しながら、同じように高速で動き回るエウロス型に標準を向ける。
「はずさない……!」
レールガンの一撃がエウロス型へと発射される。電磁力で加速する音速を超える飛翔体は一切の狂いなく深紅のフェストゥムに直撃する。
「おし、もらった―――うお!?」
剣司はエウロス型へ銃口を向けて、引き金を引こうとした瞬間、驚きの声を上げ、飛び退いた。
エウロス型の深紅の体から白い剣―――ルガーランスが突き出ているのだ。そして、刀身が無機質な音を立てて開き、その間に電流が走る。
「ぬぅうああああああ!!!」
カノンの駆るマークドライツェンが、その手に持つ剣で、エウロス型を討つ。黒い球体に呑まれ、消滅するエウロス型を一概もせずに、また新たな敵へと向かってゆく。それを見ていた剣司は
「怖ええぇ……」
と呟いた。が、すぐに右へ飛び退く。寸前まで剣司の駆るマークアハトがいた場所は、フェストゥムのワームスフィアの黒い球体が出現した。
――――
「ぬぅあああああ!!」
カノンはマークドライツェンを駆り、戦場を疾走する。彼女は、エウロス型を最優先で撃破していた。人間同士の戦闘と同じ、指揮官を潰せば、戦闘は早期に終わらせられる。
今のカノンには、終わりの見えない戦いから母と、大切な人をフェストゥムの発する毒から守るには、今の戦闘を一秒でも早く終わらせることしか出来なかった。
「邪魔だああああ!!」
盾となり立塞がるフェストゥムをルガーランスで切り捨ててゆき、速度を落とすことなく、むしろ加速しながらエウロス型へと駆ける。紅いフェストゥムは、その手に銃を持ち、自身と同じ、紅いファフナーへ、銃口を向ける。
放たれた弾丸は真直ぐにマークドライツェンへ飛ぶ。だが、それはマークドライツェンに当たることは無かった。
弾丸が当たる寸前に、上へ跳んだマークドライツェン。夕暮れ太陽に当たり、その深紅を、さらに鮮やかに染め上げる。銃口を上へ向けられて尚加速する。自由落下に加え、二基の大型スラスターによる速度で上空からフェストゥムに突進する。
エウロス型は、銃を上へ向け、狙いを定める。マズルブレーキが火を噴き、弾丸を発射する―――直前に、カノンのルガーランスがその胴へ深々と突き刺さり、その勢いのまま、地に叩きつけられる。放たれた弾丸はマークドライツェンに掠った物の、ダメージを与えることは無かった。
「これで……!!」
エウロス型の銃を持つ右腕を脚で踏みつけ、頭を左手で鷲掴み、右でルガーランスを操作する。開講するその刀身から発する青白いプラズマはその輝きを増してゆく。
「終わりだぁああああ!!!」
――――
「お疲れ、カノン」
「ああ、お疲れ様だ。咲良」
戦闘が終わり、パイロットはファフナーから降りる。各々のファフナーの損傷が、その戦闘の苛烈さを無言のままに物語っていた。
欠損こそ無いものの、各部に傷が有り、装甲が割れ、内部の赤色の衝撃吸収剤が垂れている様は、血だらけの戦士を見せている。
「皆、ご苦労だった。各自、次の戦闘に備え、休息を取ってくれ」
戦闘が終わった後は、みな、思い思いの休息を取る。戦時体制のため、家には帰れないが、個人にあてがわれた、アルヴィスの個室がある。飾り気は無いが、机やベッドにソファー、テーブルにコンパクトなバスルームがついており、差は出てくるが、大体部屋から出て10前後の距離に自動販売機がある、極めて便利な部屋だ。
そんな中で、羽佐間カノンは、一人ある部屋へと入る。部屋の前には『病室』と書かれていた。
カノンは、病室のベッドの前に行き、手近に有った椅子を引き寄せ、座る。カノンの目の前にあるベッドに寝ているのは、レイだった。
「レイ……」
彼の名を呼ぶ。当然だが、返事は無い。その現実が、彼女を苦しめる。今更なのに、後悔が湧き出てくる。
もっと早く、彼の変化に気づけなかったのか。もっと彼のことを見ておくべきだったんじゃないか。もっと―――
「ッ……!」
自身に対する怒りと悲しみに、思わず立ち上がる。そのとき、彼の寝るベッドの傍においてある机から、カタンと何かが落ちる音がした。
「これは……」
写真たてだった。カノンは写真たてを拾い上げる。その中には、昔の写真が収められていた。活発な笑顔を見せている昔の自分。その隣で、穏やかに笑っている昔の彼。そして、鏡写しに見える自分の顔。
「私は……」
―――カシャン
また、何かが落ちる音がする。今度は写真たてから落ちたのだろう。それの真下にあった。カノンは写真たてを机に置き、それを手にする。
「フロッピーディスク・・・・・・」
落ちたのは一枚のフロッピーディスクだった。カノンは手にしたディスクを持ち、一度レイを一概して、「また来る」と言って、病室を後にした。
――――
「調子は如何だ?咲良」
「見ての通り、上々だよ」
剣司の問いに手を振って、笑いながら応える咲良。剣司はそれを見て、一度ため息を吐き、真剣な顔つきになって、こういった。
「島のコアが、重なる戦闘で相当のダメージを受ちまってるらしい」
剣司の言葉に、彼が何を言おうとしているのかを理解したのか、咲良も真剣な顔つきになる。
「抵抗力の高い大人にも、影響が出始めている。咲良。お前もファフナーパイロットだけど、昔と違って、今は体が弱くて、その分抵抗力も弱い」
剣司は一度、言葉を切る。
「もし、次の戦闘でお前に何かあったら―――」
「ストップ」
咲良は、剣司の言葉を遮った。そして、彼の手に自分の手を重ねる。
「あたしは、そう簡単に倒れたりしないから、信じて」
「咲良……」
「それに、あたしがいなかったら、誰がアンタの荷物を背負うのよっ」
咲良の言葉に、剣司は「そうだな」と笑った。
「絶対に生き残ろう!」
「うんっ!」
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