蒼穹のファフナー HEAVEN AND EARTH ~まだ私は、ここにいる~ 作:鳳慧罵亜
ここまで一気に筆が進んだのはいつ以来だろう!
完結に向けて、このまま突っ走るぜええええ!!
そして、今明かされるレイくんのちょっとした真実ぅううううう!
ではどうぞ
「っぐ……」
マークフィアーが、空中へ逃げるマークニヒトに組み付いたのを見届けて、僕は機体の状態をウィンドウに表示する。
全身に奔る激痛と目眩を耐え、機体の損傷具合をチェックする。ウィンドウに表示される機体状態を確認。
「損傷レベル44%……全身装甲軽度溶解、基礎ダメージ中、右メインブースタ使用不能……スタビライザー消失……」
次々と表示される損傷度合い、その中で最も酷いのが言うまでもなくこの機体の最大の特徴である右腕。そして―――
「右腕部クロー、全損……「シヴァ」使用不能、並びに……ははっ、コアブロック射出機構損傷、か……」
つまり、走行の防御力は大幅に減退、フレームもダメージが入ったために運動性は減退。ブースタも片方が使用できないため機動力大幅減。
スタビライザーが吹っ飛んだために重量バランスが均一ではなくなり、右腕が使用不可能。
極めつけはコアブロックの射出が不能になったから脱出もできない。
うわ、チェックメイトじゃん。
『レイ、無事か!?』
傍にカノンの赤い影が現れる。クロッシング特有の現象を確認下僕はカノンの方へ顔を向けた。
「大丈夫じゃないね。まともな戦闘はもう無理だ。君は?」
『大丈夫だ……と言いたいが、頭部がひしゃげてしまっているからな。うまく動けない』
やはり、ファフナーの欠点とも言えるだろうが、機体と一体化する仕様上、頭部を破損すれば戦闘はほぼ不可能になる。
こればっかりはどうしようもない。この仕様だけは、高性能を誇るノートゥングモデル以上の機体の欠点と言えるだろう。
「わかった。僕と一緒に一旦退避だ。マークフュンフ。僕ととマークドライツェンのカバーを頼む」
『りょ、了解です!』
息を切らしていた広登が体勢を立て直し、こちらに接近する。カノンのマークドライツェンに手を差し出した。
まさにその時、異変は起きた。
オーロラに包まれた曇天の空。その一角が輝きだしたのだ。
「あ、あれは!?」
マークフュンフがその方向を見上げて一歩後ずさる。するとまもなく、それは出現した。
それは、まるで結晶でできたボーリングマシン。先端が平たいドリルのような形状となってゆっくりと回転しながら、島の脇腹に向けて降りてくる。
その狙いは考えずとも分かるし、分からずとも危険だとうことは察せるだろう。
その柱は、無論こちらでも確認している。
「上空より、敵フィールド接近!!」
スタッフの報告を聞くやいなや、溝口は血相を変えて支持を飛ばした。
「島を喰う気だ!残存シールド開放!!」
島のヴェルシールドが解除され、今までにない速度で島が駆動する。
「島の航行速度最大!躱せえ!!」
だが、それでも間に合わないことは承知済みだ。だからこそ、最後は前線がモノを言う。
「レイ!」
「判っています!」
溝口からの通信にレイは応える。このための前線部隊だ。島が動き出したのを感じたレイは最適な人選を行い最速で支持を飛ばした。
「マークフュンフ!あの不細工な柱を止めろ!島の草木一本にも触れさせるなあ!!」
『はい!!』
ボーリングの到達地点近くに移動したマークフュンフ。いつでも受け止められるよう身構える。
一方で、島の最奥では悲劇が起きようとしていた。
キールブロックのさらに奥、ワルキューレの岩戸では、複数のスタッフが入り詰めているが、その中のリーダー。
遠見千鶴は今まさに起きようとしている現象を、見ていることしかできなかった。
「同化が、始まった……」
震える声とともに、その場に崩れ落ちる。彼女の前にはワルキューレの岩戸、島のコアの補助システムが稼働しているが、その代替として中にいるのは、立上芹。
彼女の身体から、金色の粒子が舞い始めていた。
その現象は、千鶴の言ったとおり「同化現象」。コアの負担を軽減できる数週間。その限界が目前に差し迫っている。
床に両手と膝をつき、打ちのめされた様な震える声で、彼女は自分の無力を呪う。
「なぜ私は……誰も救えないの……?」
そう一人つぶやいた声は誰にも聞こえることなく虚空に消えた。
――――
「―――ぅおおおおおおおおおおおおおおあああ!!!」
堂馬広登は声を張り上げ、重空より降るボーリングを受け止めにかかった。
受け止めた直後、その衝撃が周囲のものを吹き飛ばす。最大出力で展開されるイージスとボーリングの接触面から閃光が走り、眩いばかりの光が迸る。
だが、ファフナー1機で、どこまで持つか。既に片膝を地面に突き、イージスからは極度の負荷により機体から電流が奔る。本来受け止められるようなものではないため、
彼の気合が保っても、機体自体が不可に耐え切れず押しつぶされる可能性もある。
だが、彼は今にも崩れそうな機体と自らを気力で支え続けた。
決して臆することなく、正面から敵の驚異を止め続ける。その姿は嘗てその機体を駆り続けた少年と良く似ていた。
「俺が……俺が守るんだ……!!」
必死に柱を睨みつけ、機体を支える彼の言葉には、「仲間を守る」その機体にしか出来ない唯一無二の役割。
嘗ての搭乗者、小楯衛が繋ぎ、近藤剣司が託した役目。それを今果たす為。
堂馬広登は期待が粉微塵になってでも守ると、そうここに誓ったのだ。
――――
「っく……」
レイはマークドライツェンを支え、マークフュンフが敵を防ぐのを見守っていた。
その間にも自らができることを行いつつ、なにか打つ手はないかと探っている。
「CDCへ!敵フィールド周囲に飽和攻撃を要請!ポイントS-5-6地点周囲をデナイアルで爆撃してください!少しでもマークフュンフの負担を減らす―――っ!?」
それが言い終わるかどうかの瞬間、マークニヒトに取り付いていたマークフィアーが損傷を受けたという情報が映し出される。
腹部への甚大なダメージ。その数秒後、一気に全身が破損したという情報が映し出され、最終的に―――
「まさか!?」
―――マークフィアーの反応が消失した。そして、直後に来るのはクロッシングの異常。
島のファフナーは、部隊すべての機体を1つのクロッシングでまとめることで、強力な対心防壁を構築している。
それはいうなれば、逆に1機でも欠ければクロッシングが解除されるという欠点を抱えているということにほかならない。
つまり、クロッシングが切れれば防壁がなくなり、フェストゥムが搭乗者の心に侵入、同化して一気に部隊が壊滅する恐れが出てくるということだ。
だからこそ、レイの判断は早かった。
「っく!クロッシングリストからマークフィアーを除外!クロッシング再接続!!」
数秒でクロッシングを接続し直して防壁を維持する。これくらいのタイムロスならば、全員無事だろう。
ここで、彼はあることに気づいた。
「?……メッセージ?」
簡易メッセージがマークヌルに届いていた。基本クロッシングにより直接会話ができるため、付いているだけの機能であったが、そのメッセージが
使用されているのは珍しい。その差出人は―――
「春日井、甲洋から……」
メッセージを開き、ウィンドウに表示する。そこに記されたメッセージは、
「『一騎を頼む』……これは」
瞬間、視界の隅で何かが動くのを確認しそちらを向くと、紫色の機体が飛んでいくのが見えた。その先にいるのは、マークニヒト。
マークニヒトを拡大すると、胸部から緑色の結晶が生えていた。
「―――」
何が起きているかは理解しがたいが、おそらくあの結晶が一騎とマークザインにとって重要なものであることは間違いなだろう。
なにせ、マークジーベンが血相を変えて突っ込んでいるのだ。ならばやるべきことは一つ。
「マークジーベン!援護する、そのまま突っ込め。あの頓珍漢にきつい一発をなあ!!」
言うやいなや、左腕の部品がスライド、ノートゥングモデル標準装備の拳銃「デュランダル」を手にし
マークニヒトへ発砲。命中はしたもののマークニヒトには大してダメージはない、が、一瞬ぎょっとしたようにマークニヒトはこちらを見て硬直した。
マークジーベンにはその一瞬があれば十分だろう。
あっという間にマークに人に組み付き、デュランダルの射程圏外へ行ってしまった。限界まで拡大すると、思いっきりマインブレードをニヒトの胸部に突き刺している。
だが、マークニヒトも必死に抗い、右手に持っていたルガーランスでマークジーベンを両断してしまった。
「っ!マークジーベン、ペインブロック作動!左半身接続強制解除!!」
すぐさまペインブロックを作動させ、搭乗者を保護する。すると、マークドライツェンがブースタを起動しマークジーベンが墜落した山中へ疾走した。
マークジーベンにルガーランスを向けるマークニヒトに対し、舌打ちをしてデュランダルを発砲する。
既に射程から離れているため、届くかギリギリだったが、それでもこちらに気づき慌てた様子でこちらにルガーランスを向ける。
だが、発射の直前でマークニヒトが―――いや、マークニヒトから生えた結晶から光が溢れるように輝きだした。
輝きはどんどん強くなり、ついにマークニヒトから、遠目で見てもわかる大きさの結晶が出現した。
――――
遊撃部隊、ボレアリオスドーム内部を攻撃していた剣司はメドゥーサを掃射させ、眼前の物体を一掃したところで攻撃の手を止めた。
もはや内部は見る影もなく破壊し尽くされ、無傷なのは中央上部に存在するミール結晶のみだ。ミールの力が弱まった証拠か、ミールの決勝から地面へ向けて伸びていた光の
柱が消滅する。途中何度かエウロス型が入ってきてその度に倒してきていたため、流石に息が切れている剣司。
だが、足元を通り過ぎる影は流石に見逃さなかった。
後ろを振り向くと、そこには白衣の女性が宙を無音で進んでいる。剣司はその姿に見覚えがあった。
「一騎の、かあちゃん……?」
何度か一騎の家の玄関先にある写真や、2年前の折に見た人物。自分にとってある種恩人でもある女性を忘れすはずがなかった。
だが、そうつぶやいてすぐ、剣司が一騎の母と呼んだ存在はマークアハトに目を向けることなく、彼の目の前から消えた。
「―――っ……」
その行き先になんとなく察しがついた剣司。そして内部に入ってきた真紅のフェストゥムを確認し、両手に構えるライフルを握り直した。
――――
「―――っ!?」
レイは、目の前に現れた存在に対して息を飲んだ。かすかに震える声で、存在の名を口にする。
「……ニョル、ニア……」
「久しぶりだな。レイ」
言葉に詰まる彼とは対照的に、ニョルニアと呼ばれた存在は淀むことなく言葉を発する。
「なぜ、ここに?」
「この島のミールの命を維持する為に」
レイは彼女をよく知っていた。限りなくフェストゥムを敵視する彼にとって、彼女だけがその例外と言えたのだから。
日野洋治の下でメカニックとして動いていた時期、そしてファフナーのパイロットになってからも、彼女は彼にとってはどうしても敵とは見れなかった。
たとえ、彼女がフェストゥムだと知っていても、だった。
「なら、なぜ……」
「コアのもとへではなくここに来たか、だろう?」
「!」
まるで心が読まれているかのように言葉を制されて、さらにレイは驚きの表情を見せる。だが、それは彼女にとって当然の帰結と言えた。
「お前の考えていることは心を読まずともわかる。何年洋治を介して共にいたとおもっているのだ」
「……はは……そうですね」
そう言われてしまっては返す言葉がない。何せ7年前に道生さんに拾われてから2年前までの5年間、そうだったのだから。
「ここに来たのは、最後にお前に伝えたいことがあったからだ。真壁紅音としてと、私としての、な」
その言葉と表情は一切変わらず平坦だが、同時に懸命に言葉を選び、伝えようとしているようにも見えた。
だから、レイは何も言わずに、彼女の言葉の続きを待っていた。彼女の言葉を心に焼き付けるために。
「日野洋治はお前を息子といった。そして―――」
その言葉は、彼にとって一つの福音だった。
「私にとっても、それは同じ。レイ」
初めて、ニョルニアの表情が変わった。そのへんかに、真実、例は言葉を失った。
微笑み、息子の成長を嬉しく思う。と、母としての表情を、初めてレイは見たのだから―――
「……はい……はいっ……」
レイは、目からこぼれる涙を止めることなく、咽びながら言葉を返した。2年前、モルドヴァの基地から逃げる時に、基地に残った洋治から受け取った言葉。
あの日と同じ、自らをかけがえのない存在と教えてくれた言葉。あの時は理解できずに呆然としたが、今は素直に言葉を受け止められる。それは文字通り、レイ・ベルリオーズを救う福音なのだ。
その言葉に今までの自分の葛藤も、罪も、すべてが洗い流されていくようで―――
溢れる涙が止まらないのは、これこそが僕があの時から人として成長した証だと信じたいから。
「求めなさい。自分が信じた道を。その先にこそ、貴方が求めたものがあると信じて」
その言葉を聞いて、僕を真実理解してくれているとわかったから―――
「はい……ありがとう、ございます。紅音さん……」
―――7年前、彼女に出会ってから初めて、そして最期に彼女の名前を口にした。限りない感謝を込めて。
「―――」
そんな僕の言葉に彼女は面食らったような表情を見せた。それも僕は初めて見る表情だった。それが少し嬉しかった。
「―――ありがとう」
そう僕に告げて、彼女は消えた。行ったのだろう。島のコアが眠る場所へ。
それが、彼女が自らの最後の仕事だと信じたのなら。
「―――っ」
気持ちを切り替え、顔を上げる。涙は吹かない。まだ戦いは終わっていないのだから。
だから、泣くのはやめる。涙も、拭うのも、戦いが終わったあとで、改めてすればいい。
「今は、やるべきことだ。全てはそのあと」
それが、僕が信じる道だから。
気が付けば、如何なる奇跡かマークザインが復活している。それにあの忌々しいボーリングも消えているではないか。
マークザインの傍にマークフュンフがいるからマークザインのどうか能力でイージスを強化したのかもしれない。
『大丈夫か、レイ』
クロッシングを通して隣に一騎の赤い影が現出する。それを見て僕は微かに笑った。
だって、もはや事の趨勢が決したのだから。
マークザインがいれば、もはやあの醜い紫色の怪物も敵ではない。マークニヒトさえどうにかできれば、もはや残りの敵など散乱した数だ。
「戦闘は厳しいけど、指揮を執る程度なら余裕だ。そっちこそ、あの下品な人形を沈める覚悟は出来たのかい?」
『手厳しいな。まあ頑張ってみるよ』
相変わらず過激だな、と一騎の軽口に当然、と返す。変性意識の影響で、「戦闘に最も最適な状態」がこれなのだ。普段と比較しても結構なyがっぷだと自分でも思う。
そんなかやりとりの後、マークザインはまもなく飛翔しマークニヒトへと突っ込んでいく。
それを見送りディスプレイを見る。敵の数もだいぶ減っているようで、これならマークフュンフ1機と島の防衛機構だけでなんとかなりそうだ。
「マークフュンフ、現状動けるのは君だけだ。予測戦闘時間も残りわずか。その間、取り敢えず気を張れ」
『オッス!!』
広登の声にいい返事だ、と返してCDCに通信を繋げる。どうやら本当になんとか持たせてくれたようで、溝口さんには頭が下がる。
「CDC、残存する防衛機構は?」
『デナイアルがあと1セット、機関砲が南沿岸部に7割ちょい、自走砲があと3割、固定レーザーが残り5割強てとこだな』
溝口さんの軽快な返信によし、と笑みを浮かべる。それだけあれば、残存フェストゥムを殲滅するくらい訳はない。
現在戦闘時間は48分。僕の活動限界まで残り僅かだが、それまでにカタをつけてやる
「それじゃ、一気に行きますよ。デナイアルを全てポイントD-3-1からD-5-6まで制射、その後自走砲を沿岸部まで集めてください。残存勢力を殲滅します」
『あいよ。なんとかなったなぁ。流石隊長』
「伊達に剣司に指揮を教えてませんよ」
軽口を交える余裕も生まれてきた。あと少しで、この忌々しい曇天ともようやくおさらばにできる。
そう確信めいたものを持ちながら、僕はディスプレイを睨み指示を飛ばしていく。
決着は、静かに訪れようとしていた。
感想、意見、評価、お待ちしています
え、レイ君の立ち位置がよくわからない?
ま、まあそれは後々説明致します。質問があったらなるべく答えます。
ほか、わからないことなどありましたら気軽に感想欄にどぞ。
変身できるかはわかりませんが、何とかします。返信ができなかったら次話のこの後書き欄に掲載させていただきますので、よろしくお願いします。