蒼穹のファフナー HEAVEN AND EARTH ~まだ私は、ここにいる~ 作:鳳慧罵亜
祭りの会場にある溝口がやっている店。所謂射的なのだが、いろいろとおかしな物が置いてある。
―――ボールや陶器も十分おかしいのですが、拳銃を景品にしますか普通……。
レイの第一印象はそれだった。溝口のやる射的は、何故かボールや陶器、挙句には拳銃があった。
しかも2年前はライフルがおいてあったこともある。ボールはすぐ落ちそうだし陶器は弾が当たったら割れるだろう。
拳銃にいたっては論外だ。何故かサプレッサーや、LAM(レーザーサイト)付きという豪華2点セットなのだが……。
―――他の人の手に渡る前に回収しますか。
レイはそう思い、溝口の射的会場に入る。そこには意外な人物達がいた。
「あ~当たらない」
「残念、咲良ちゃん。残念賞の林檎飴だ」
剣司と咲良が先に射的会場に来ていた。どうやら咲良は一番上の段にあるおかしな形をした陶器の器を狙っていたようだ。おそらく真壁陶工の作だろう。真壁指令は『器屋』という陶器店を経営しているのだが、作る器が変な形に歪む癖を持っており、度々奇妙な陶器を作っては販売している。
売れ行きはほぼないそうだ。最近はだいぶ治ったようだが、たまに歪むらしい。
「おっ、レイ、カノン。どうだ?チャレンジするか?」
溝口はレイたちに気づいたようで、射的用のライフルをレイに手渡す。ちょうど良い、他の人が落とす前に拳銃を戴きますか。
――――
「まったく、レイの射撃技術には呆れるな、ホント」
剣司の言葉にレイは心外な顔をして「人を化物みたいに言わないでください」と言い返した。
レイは射的でむごいことに例の拳銃を一発で撃ち落し、残りの弾は陶器の群れを一つ残らず打ち砕いてしまい、溝口は顔色を悪くして掃除中であった。
もちろん拳銃は戴きました。今は和服の懐にしまっています。
「レイはああいうの、昔から得意だからな」
そして今、レイたちと咲良たちが一緒になって祭りを回っているのである。カノンは咲良達に見せ付ける様に、さっきよりも強くレイに抱きついている。
無論レイの顔は赤いままである。
咲良は関心半分呆れ半分「カノンさ、すごいデレデレだね」と言うがカノンは得意げに
「羨ましいか?」
と返した。途端に咲良は顔を真っ赤にし「そんなんじゃないよ!」と反論した。……何の恥ずかしげも無く、他人に見られていようとも堂々抱き付けるカノンにレイは感心してしまった。まあ、嬉しくもあるのだが。
「そういえば、咲良さん。歩いていても平気なんですか?」
「うん、今日は調子が良い見たいだから」
レイの問いに咲良は片手を振って応えた。レイは穏やかに微笑み言葉を続ける。
「そうですか、でもあまり無理は駄目ですよ。はしゃぎすぎて体調を崩したら元も子もありませんからね」
「ありがと。はぁ、剣司もこれくらい優しかったらね」
咲く良の言葉に剣司は、「いつも優しくしてるだろ」と反論するが、咲良は、「デリカシーが無いって言ってんの」と返した。
「さっきだって、「咲良、重くなったか?」なんて言ってた奴の、何処にデリカシーがあんのよ」
剣司は「うぐっ」と黙り込んでしまうが、現実は過酷である。レイが追撃をかけるように、
「剣司君、女性に対して体重のことはNGワードですよ」と言い、カノンは「デリカシーが無さ過ぎだな」とさらに追い討ちをかける。
2人の言葉に剣司はがっくりと肩を落とし、「カノンはともかくレイに女心を諭されるなんて……」とつぶやいた。
レイは心底意外そうに「失礼ですね、少なくとも貴方の5倍はデリカシーはありますよ」と止めを刺した。
「たしかに、レイは優しいもんね。でもさ、それをちょっとはカノンにもあげたら?」
咲良の言葉にレイは、「現在絶賛提供中です」と答え、カノンは「まだ全然足りん」と今度は頭をもたれかけ、レイは顔を赤くしながら「今日だけですよ」と言うが、満更でもなさそうである。
その様子に咲良が「甘すぎ、砂糖より甘いよあんたら」と批判し、剣司が「見てるこっちが胸焼けしそうだ」と言った。
その言葉にカノンのみならずレイが「羨ましいですか?」と訊き、剣司が、顔を真っ赤にしながら「んな訳無えだろ」と反論した。が、レイは「強がらなくても良いですよ」と笑顔で剣司に言う。
「誰か助けてくれ~」と咲良をみるが、咲良もカノンに質問攻めにあっていた。
剣司はがけっぷちに追い詰められたが、すんでのところで助けがやってきた。
「何やってるんだお前ら」
「カノン、べたべたし過ぎ」
一騎と真矢である。真矢がジト眼でカノンを見るがカノンは何の臆面も無く「羨ましいだろう」と言う。真矢は「別に」と動じずに返したが、顔が赤いので説得力無しである。
ついでに、普段は生真面目な彼女がこうまでべたべたしているのはレイの責任でもあるので、一騎と真矢はレイが懇願の眼を向けるのを軽く流した。
―――― ―――― ――――
突如、サイレンの音が聞こえてきた。レイたちのいる場所からは遠くて良くは見えないが、船のような物がこの島に流れて来ていた。
普段はシールドに守られたいるのだが、今日は灯篭流しのために、シールドの一部が解除されているのだ。その中を縫って侵入したらしい。
6人はそのまま動かずに、竜宮島本島に接近する船を用心深く見ていた。
「―――っ!」
そんななか突如、一騎が走り出した。
「一騎君!!」
一瞬遅れて、真矢が追いかけカノンがそれに続く。
続いて走ろうとする剣司を制しレイは「貴方達はアルヴィスに」と伝え、三人の後を追った。
一騎は島に乗り上げた船のような物に、防波堤を乗り越えジャンプし乗り移る。目が見えていないとはいえ、流石島の中でもトップの運動力を持つだけはあり、難なく乗り移ることができた。
「一騎君。見えてないのに」
「一騎、待て!」
少し遅れて、真矢とカノンも乗り移る。そのまま走って船の内部に入ろうとする所に溝口率いる特殊部隊が到着した。
「行くなお譲ちゃん、カノン!!」
溝口達も乗り込もうとするが、そのときにちょうどレイも到着する。
「人類軍の潜水艦。B-29です。内部は僕が先導しますよ」
そう言ったレイは懐からさっきの拳銃を取り出し、素早く安全装置を外す。そのまま船に乗り移るレイと合流した溝口たちも乗り込んでいく。
――――
一騎は目が見えていないはずなのに、迷い無く潜水艦の中を走っていた。まるで何かに導かれるように……。
着いた場所は、ブリーフィングルームのようだった。一騎は目の前の光景にハッと眼を見開き、つぶやく。
「総士っ」
後から到着したカノンはその光景に眼を疑う。
「なんだと!?」
そこには、赤い巨大な水晶のようなものの中に浮かぶ人影―――
―――それに両手を当てて顔を伏せている一騎。
「これは、コアなのか……?」
カノンがまず疑ったのは、この人影が竜宮島のコアと同じ存在であるかということ。が、それを他所に一騎は伏せていた顔を上げ、
「11番だ」
と呟き、来た道を戻っていく。ちょうど入れ違いで入ってきたレイが赤い水晶のような物を一概した後、
「カノンと真矢はアルヴィスに行ってください。嫌な予感がします」
と言い、カノンたちも
「わかった」といい戻っていく。
レイはコンソールを慣れた手つきで叩き、情報を引き出して行く。その中で一つの単語が目に付いた。
「MISAO・KURUSHU……日本語表記で『くるすみさお』。あれの名前でしょうか」
ちょうどそこに、溝口たちが駆けつけてきた。彼らも目の前の光景に目を剥いている。
「なんなんだこりゃあ……」
「分かりません。それより此処はお願いします。僕は外を見てきます」
それだけ言うと、レイは元来た道を戻っていった。
―――
「なんだ、これは」
潜水艦から出たカノンたちのめに映ったのは、オーロラだった。太陽風が地球に降り注ぐ時、地球の磁力線に沿うために、南極か北極でしか見られない現象。それが何故こんな場所に。それだけではなかった。
迎撃システムが作動し、巨大な壁に包まれ、あらゆるところから、戦車や機関砲、レーザー砲が出現した要塞
「迎撃スタンバイだと!?まさか!」
カノンの言葉もつかの間、巨大な光が夜の闇を照らす。そして光は人々にこういったのであった
―――あなたは そこにいますか―――
と……
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