「これで1人目、後は主人公と母親か」
雨が降る中で、1人の少年と気の失った男性がいた。
倒れている男性は腕に小さな切り傷が出来ていた。
「ははっ、もう少しだ。 この世界は俺の望む世界になるのは…ハハハハハハハハハハッ!!!」
「…ラックは、そこの人に治療を」
「はいニャ」
一誠は黒歌に朱乃の母親に治療を頼む。 2人は身元バレを防ぐために、お互いに偽名をつけていた。 一誠がメーリ、黒歌がラックと言う偽名で。
黒歌が、母親に近寄ろうとすると朱乃は警戒するように母親の身体にしがみ付く。
「大丈夫ニャ、お前の母親はまだ助かるニャ。 だから治療をさせてほしいの。 お前も母親が死んでほしくはないでしょ?」
「……」
朱乃は仮面を被る黒歌の言い分に迷いながらも、母親が助かるならと思い少し母親から身を離す。 それを見た黒歌は、尽かさず仙術を使い母親の傷口を治療を始める。
「あの…あの子は」
「? あぁ、イッ…メーリなら大丈夫ニャ。 私の優しくて強いご主人様だもの」
黒歌が治療を始めてから、一誠の方では子供1人対大人9人の戦いが繰り広げられていた。
「この面妖な童子が…我等に刃向かうとは笑止千万! その短い人生は此処で終わらせて貰おう!!」
9人の男達は、一誠を囲むように陣を作り襲いかかる。
「…」
それに対し一誠は、冷静に周りを見渡してから襲いかかる男達を対処する。
子供と大人の違いとは。 子供とは人間の人生の中でも成長を重視される期間。 その為に少しずつとしか身体は成長しない。 小学生である一誠は平均より少し下の身長しかない。
それに対して男達は成人しており、成長が殆ど止まり個人差はあるが160〜180cmで一誠と身長差があった。 しかし、人間という物は自分の目の高さが基本に上下の攻撃は余り上手くない。
上段なら手と足、下段なら足のみ。 下段に手技は、普通の人間は得意と言えない。 彼等が持つ仕込み刀も目の前の空間に対しては勢い良く振れるが、下に振るのは地面があるので上手く振れないのだ。
その為、男達の攻撃は単調な動きでしか武器を振れず一誠に躱されてしまう。 一誠もただ躱すだけでは無く、体捌きで躱しすれ違う男の下半身を攻撃する。
右に躱せば左に通り過ぎる男の左太腿に、小学生とは思えぬ重い左の一発が入る。 子供の小さい拳が、男の太腿の肉を潰すように凹んだ。
ドグッ
「っ!? …ぐあああああああぁぁぁぁっ!!!」
男は恥など捨てたように、その場で痛みに悶えて痛む箇所を押さえながらゴロゴロと転がる。
上半身で行う行動には、下半身は重要であり武器など振る際には下半身は無防備と言っても間違いではないだろう。
ボクッ
「ぎゃああああぁぁぁぁっ!?」
一誠は自分と相手との身長差を分かっており、彼の有効な方法は男達の下半身を攻撃する事なのだ。
グシャッ
「×%€☆・=:\々〒〆〜…」
同じ男であるにも関わらず、男の最大の弱点とも言える股間も狙うのを躊躇がない。
次々と動けなくなる者が増え、残った男達は目の前の子供に恐怖を感じていた。 やっている事は難しいとは言えず、ただ単に躱して反撃の繰り返しなのだが子供とは思えない精神に人間とは思えない力を見せられれば…男達だけでは無く人として恐れられるだろう。 それに一誠の顔には仮面がつけられており表情が分からないのも一役かっていた。
そして、そんな彼に恐れ動きを止めた男達に一誠は攻めに行く。
「…ふんっ」
1人の男に近寄るが、一誠が迫ってきて男は仕込み刀を振るうが躱され鳩尾に強烈な右が刺さる。 間も置かず他の男達にも接近して、ただ一発の攻撃に男達は沈められていく。
「き…貴様、何者だ!? この化け物がー!!」
最後に残った男はやぶれかぶれの特攻するが、一誠は男の顔の近くまで跳躍してボールを飛ばすように男の顔を蹴った。
シャクッ
ネギの折れたに近い音で、一誠に蹴られた男の首は背中の方にまで回り絶命する。
「…ただの変わった子供だよ」
そんな一言を残し、一誠は倒れている男達を無視して朱乃の母親を治療する黒歌の方に歩き始める。
一先ず問題の男達が沈黙し、黒歌が母親の治療を続けていた。
「メーリ、この人の傷厄介だよ」
「…呪いの近い物が付与された武器による傷か」
「そうニャ」
朱乃の母親は、辛うじて生きていたが虫の息に近く顔は青く少しでも治療を止めれば死んでしまいそうだった。 後でわかった事だが朱乃達を襲った男達は、呪殺の効果を持つ武器を使用されていた。
朱乃の母親に付けられた傷は、痛々しく傷口が黒く変色し少しずつと身体を侵食するように拡大していた。
「このままじゃあ…この子の母親の身体が持たニャい」
「……」
黒歌の言葉に一誠は少し考えていた。 そんな2人の雰囲気に感づいたのか、朱乃が一誠に近寄り涙を流しながら悲願した。
「ねぇ! お願いお母さんを助けて!! 何でもするから!!」
「…うん、君のお母さんは助けるよ。 じゃあ、早速だけどお母さんの手を掴んでて。 そして…起きてって念じて」
「うん!」
一誠の指示に従ってうつ伏せの母親に近寄り、黒歌とは逆の右側に座り込み朱乃は右手を両手で包んだ。
一誠は母親の頭側に正座をして、目を瞑り両手で掴むように力を込め始める。 その状態で一誠は、黒歌に指示を飛ばす。
「ラック…引き続き治療をお願い。 今その仙術を止めたら呪いが身体に広がるから、少し強めにやって押さえ込んで」
「分かったニャ」
(じゃあ、ドライグも調節お願いな)
『任せろ』
そして一誠の両手は少しずつと白い光を帯びていく。 何処か優しく太陽に近い光が、黒歌と朱乃は気を落ち着かされていた。
その光を帯びた両手を母親の両肩に触れると、母親の身体は一誠に触れている箇所から白い光が広がっていく。
母親の右手を持っている朱乃は感じていた。
(お母さんの手が冷たかったのに、少しずつ暖かくなってく)
そして数分が過ぎて、一誠が放つ光が母親の身体全体を包み込むようになると少しだけ母親の顔色が良くなっていた。
「…後は彼女の受けた傷から呪いを取り除かないと」
「これには苦戦しそうニャ」
「お母さん…助かる?」
心配そうに朱乃は一誠に聞く。 仮面をしている為に表情は表せないが、声を柔らかくして答える。
「…大丈夫、絶対に助けるから」
その言葉に朱乃の顔は喜びに染まる。
だが、世界は理不尽で最悪なタイミングで彼に押し付ける。
一誠は力を込めながら、新たな指示を飛ばそうと顔を黒歌に向けると…その後ろから凄い形相で刀を振り上げ接近する男の姿があった。
「妻から…離れろーー!!」
凄まじい声量により、その場にいる朱乃は仰天し黒歌も驚き後ろを振り向く。 そこには見た目風格があり五十代だと思われる男性が、憤怒に染まった表情で襲いかかっている為黒歌は身を硬直してしまった。
襲いかかる男にしては、横たわり血が広がる妻に仮面と猫耳をつけた妖怪が何かをしているのを見て感情の方が先に来てしまい黒歌が何をしているにも解らずに襲いかかった。
(……あっ、これ切られる)
黒歌は自分に襲いかかる恐怖に走馬灯のように思考が速くなっていた。 今まで生きていた過去の思い出や妹の事など、そして新たな家族と言える兵藤家や一誠の出会い。 様々な事を思い返し、迫り来る刃が自分を切り裂くのだろうと予想していた。 少しずつと自分の身体に迫る刀を見て、黒歌は目を閉じて思った。
(ごめん、白音。 探せなかった私の罰なんだね。 会いたかったなぁ…バイバイ。 大好きなご主人様…)
ザシュッ
肉を切り裂く音が鳴り響くが、痛みは無く代わりに自分を包む温もりに不思議に思い黒歌は目を開ける。
「ッ!?」
そこには愛するご主人の顔があった。
「ぐうううぅぅぅ…」
仮面が取れて一誠の顔が露わになっており、痛みに耐える様に歯を食いしばっていた。 そして一誠は黒歌を抱きしめて、その場から離れる様に飛ぶ。
朱乃の母親から離れ距離を取ると、男は母親を守るように前に立ち息を猛獣のような呼吸をして一誠と黒歌に威嚇していた。
「ご主人様!! 大丈夫!? ご主人様!!!」
威嚇する男など気にせずに黒歌は一誠を心配する。 傷口を見てみると右肩から左脇腹の方まで、深々と切り裂かれ夥しい量の血が流れていた。
黒歌は、そんな一誠の容体に傷を作った本人に怒りを覚えた。
何故助けようとしているのに傷つけられなくてはならないのか。
それも大切な人を。
そんな思いから黒歌は、自分の持つ妖力を感情に任せて全開放する。
黒い感情に染まっているのか、黒歌の周りから渦巻くように立ち込める。
「ぬっ!!」
それを見た男は再び武器を構える。 黒歌は男を見て、立ち上がり自分の底に眠る野生性が吹き上がりそうになる。
場に緊張が走るが、新たな嵐が巻き起こる。
「ぐああああああああっ!!」
苦しんでいた一誠が叫ぶ。 それを聞いた黒歌は一誠の方を見ると思わぬ光景が広がる。
感情を高ぶらせて妖力を全開放した黒歌などちっぽけな力と思わせるほどの、凄まじい力の放出が行われていた。
一誠の傷から出た血液が重力に逆らいって宙に舞い上がり、彼から放つ力により血と陽炎が混じる。 何処か神秘的な光景だが、押さえ込まれていた力が爆発する一歩手前だった。
血と陽炎が天高く登り、7本の線が一誠の身体と空が繋がる。 すると空は7本の線から広がり、其処には大きな穴
が発生する。 青空であったのにも関わらずに、空は徐々に黒く染まり広がっていく。
余りにも自分のご主人様と言えど、人間とは思えぬ光景を生んだ一誠を見て呆然としてしまった。
「…黒歌」
「ッ!?」
蹲る一誠から辛うじて聞こえた黒歌は正気に戻り、彼の側に近寄る。
「ご主人様! 大丈夫!?」
「…ぐっ、とりあえず痛みを抑え込む為に傷を癒してくれない?」
「分かったニャ!!」
一誠に言われ黒歌は素早く彼の後ろにつき、仙術を使い傷口を癒していく。 先程一誠の顔を見ていた黒歌は、胸が締め付けられていた。
こんな大怪我して泣き叫んでも仕方ないのに、一誠は黒歌を心配させないように冷汗を顔に滲み出しながら少し笑いかけていたのだ。
そして黒歌の治療により、一誠の傷は少しずつと治っていくにつれ天に届く7本の線も薄れていく。
完全とは言えないが一誠の負った傷から血が止まると、彼から放たれた7本の線は消え空は黒い穴も消えて青空に戻っていく。 そして息を切らしながらも、弱々しく立ち上がる。
「はぁ…はぁ…、帰ろう」
痛々しい傷跡に今にも倒れそうな顔に黒歌は涙を流す。 一誠は男と朱乃に顔を見せないように、その場を離れようとする。
「待って!!」
「朱乃!」
すると立ち去ろうとする2人を呼び止める朱乃。
「ごめんなさい! 私のお母さんを助けてくれたのに…お父さんの所為で」
「なっ!?」
男は朱乃の言葉に自分が勘違いしていた事に気づく。 しかし、黒歌は一言残して場を離れた。
「…私は絶対に許さない! 私達は悪い事をしていないのに!! お前達なんかどうにでもなればいい!」
★★★★★
あの一件から数年経ち、兵藤家に黒歌は居なくなっていた。 彼女が居なくなる前には、一誠の世話などをしていたが彼の一言により黒歌は兵藤家から去る事に。
今の一誠は、眼により身体に力が蓄えられると不調になってしまう身体になってしまっていた。 あの男に付けられた傷により、器は紙コップに近い物になっていた。 容量の超えた液体が紙で出来た器を濡らし脆くなってしまうのだ。
だから、あの一件から一誠は病弱になっていた。 力さえ溢れなければ問題は無いが、周期的に溜まってしまった時は熱を出してしまう。
悪い話は…これだけではなかった。 兵藤家の大黒柱の兵藤 玄一郎が未知の病によって他界してしまっていた。 三十代の早すぎる死に、残された妻である兵藤 加奈子は悲しみの余りに息子の一誠に玄一郎の影を追うようになってしまった。
一誠を産む前に二度の流産も経験している為に、残った大切な息子を猫可愛がりするようになってしまう。 一誠は母親の変わりにようには当然と分かっている為に何も言わず、好きにさせていた。
そんな環境になってしまったが、一誠は暇が出来るたびに身体を動かしていた。 学校が休みの日でも、衰えていた身体を少しでも戻そうとしているのかランニングしていた。
そんなある日、変わらずジャージ姿で走っていた一誠は普通に走るだけでは物足りなかったのか山道にまで走り込みしていると、広げた場所に出ると其処には白く紅目と蒼目のオッドアイの少年がいた。
「お前が兵藤 一誠だな?」
「? あぁ」
「ふっ、お前にも死んでもらう」
少年は右手をあげると、突如と彼の後ろには無いにも無い空間にいくつかの波紋が発生して其処から武器の先端が覗かせる。
「先に始末したお前の父親は、神から貰った特典の同じ宝具で殺してやろう」
少年の言葉にピクリと反応する一誠。
「お前の後は…母親の方か。 あれも始末すれば俺の望む世界を作り上げられるな」
少年の顔は美形な顔付きであったが、下衆な考えがあるのか酷く歪んだ笑い方をしていた。 だが、一誠は少年の言葉に顔を俯いていた為に見ていなかった。
「では、苦しんで死ねよ。 兵藤 一誠」
波紋波打つ場所から一つの武器が、一誠に向かって放たれた。
パシッ
「これが俺の父親の殺した物か?」
「なっ!?」
飛んできた武器を平然とキャッチする一誠。 それを見た少年は驚愕する。
「なんだ!? この時期の一誠は神器すら発現すらしてない筈! 何故宝具を取れる!!」
「質問に答えてくれないか?」
「くっ! そうだ、それは解毒不可能な毒を持つ宝具だ。 それに傷つけられれば一巻の終わりだ」
パキッ
それを聞いた一誠は目を瞑りかけていた眼鏡を外して、持っていた武器を握り潰す。 それを見た少年は驚く。 《この》世界には無い聖杯戦争で活躍する英霊が使う武器を普通の子供が握力だけで壊せる筈が無いのだ。
しかし、少年は痛恨のミスを冒す。
「そうか…君の言う神から貰った物で俺の父親は殺されたのか」
少年が知る世界とは異なり、この世界にはイレギュラーの存在により少年の企みは…此処で終わってしまうのだから。
「…本当に神は俺を怒らせるのが上手いなぁ。 とりあえずは目の前にいる物を片付けるか…」
一誠は少年を見る為に…眼を開く。 数年自分の身体に負担をかける物でしか無い眼を。 血の涙を流しながら。
「なっ…」
「さぁ、恨むなら神に恨め。 自分が何を与えられ、自分が何と対面させているのかを」
彼の眼には神を殺す為の十字架が刻み込まれた紋章が浮かんでいた。
どうも、ヨッピーです。(`・ω・´)
同じ転生者ですが、一つの世界に複数の転生者がいればこうなるかなって思いました。
自分の欲を通すか、自分の記憶が無い復讐を通すか。
今後の展開は未知です。
だって作者がその場で考えて出してるんだもの。
こんな作品ですが…良ければ次回作で。
ネオ・ヨッピー!(`_´)ゞ