駆逐艦磯風と田舎者提督   作:95式ゆきち

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どうも、お久し振りです。
以前書いていたものだと自分なりに今後上手く展開していけないと思い、書き直しました。

今後ともよろしくお願い致します。

※UA1000越えました。ありがとうございます!





プロローグ
第1話『極大偏差のGPS__転位』


 __西暦201Χ年、3月。

 

 

 高卒の任期制自衛官だった俺こと乾ㅤㅤ佐吉(いぬいㅤさきち)は、海上自衛隊を3年満期で辞めた。

 

 大学進学を志望しての事だった。

 無論、周囲は反対はあった。

「せっかく安定した収入があるのに」と。

 でも、俺は違った形で人を助けたいと思ったんだ。

 

 

 退職後、すぐに俺は勉強のペースを上げた。

 何と言われようと一心不乱に勉強しまくった。

 ゲームはおろか、家族旅行でも俺は家に残った。

 そして、その辞めたその年にセンターを受け受験。

 

 結果はなんとか合格だった。

 俺は自衛隊を辞めた翌年に志望した地方の医大に入学出来ることになった。

 

 これで俺も医者になれるんだ。

 そう思っていた。

 

 

 

 ………………あの時までは。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 それは以上に暑い6月のある日の事だった。

 

 大学の近くに下宿をとって日々大学、バイトという忙しい日々を送っていた俺は、ふと思い付いた妄想で小説を書くのが趣味になっていた。

 その日はちょうど何も用事がなかったので、AC5で鳥主任をグラインドブレードで追いかけたり、久々に艦これを開いたり、パソコンで小説を書いたりと自由に過ごしていた。

 

 …………のだが、パソコンを弄っている最中に突然ディスプレイ全体が真っ青になった。

 

 

「…………まじか」

 丁度いい感じで妄想が捗ってきたところだったんだけとなぁ。

 ……なんて思っていると、PC本体からブスブスと黒い煙が上がった。

「……あれ、これ不味いやつ?」

 

 携帯で調べてみると、あの現象は"ブルースクリーン"というやつだった。

 原因は熱によるパーツが破損らしい。

 

 で、ここで俺は好奇心が沸いて本体をばらしにかかった。

 だってほら、何処のパーツが逝ったのか気になるし。

 

 おもむろに引き出しを開け、プラスドライバーを出し、本体のネジを開けていく。

 が、うっかり電源も抜かず素手で触ったのがいけなかった。

 本体のカバーを開け、基板に触れた瞬間だった。

 

 バツンっと指に衝撃が走る。

 

「いっ…………」

 しまった、と思った時は既に遅く。

 

 視界がぐらり、と揺れた。

 

 

 

◆

 

 

 

 

 目を覚ますと、俺はパソコンの前に座っていた。

 先程まで画面が一面真っ青だったのが、通常の起動中の画面になっていた。

「……あれ?」

 不思議に思い、周囲を見渡す。

 

 パソコンを置いている黒いちゃぶ台。

 部屋の所々に掛けられた2次元美少女のタペストリー、本棚、一つしかない窓。

 ……ほぼ海自時代の下宿まんまなんですけど。

 

「何これ。巧妙なドッキリってやつ?」

 誰か何処かに隠れていて慌てる俺を見て『ドッキリ大成功』なんて看板掲げる準備してるんじゃないだろうか?

 しかし、1kのはずの"ここ"は隠れる場所と言ったら外しかない。

 ……が、引っ越しの時捨てたはずのちゃぶ台等がこうして残っていることに不思議に思わずにはいられなかった。

 

「……もしかして」

 嫌な予感がして、俺は窓辺へ向かった。

 窓からは以前見慣れた風景が広がっていた。

 手前には林、少し奥には横須賀中央方面まで続く町並み、そして駅前の高層ビル。

 そうそう俺、海自時代は横須賀の街が一望できる丘の上の1K格安マンションに住んで…………ってオイ。

 

 

「なんじゃこりゃァァァァァ!」

 

 まさかの"元下宿"そのものだった。

 ……が、それは"自衛隊"にいた頃の話であって今はもう違うはずだ。

 そう、違うんだ!

 …………だからもう酒癖の悪い後輩に苛められる事もないし、休日なのに総員在艦日とかで出勤なんて日はもう来ない!!

 …………待て、一旦落ちつこう。

 最後の行動を思い出すんだ。

 確か俺はブラウザゲームをやってたはずだ。

 が、しかし。

 

「…………あれ、なんで思い出せないんだ?」

 全く思い出せなかった。

 ブラウザゲームで、結構やり込んでいた事だけは覚えてるんだけどなぁ……。

 他のゲームは思い出せるんだけど、何故か記憶が欠落していた。

 そう、確かに他に一つやっていたはずなのに。

 なんて一人で考えていると、突然ガチャッと玄関のカギが開く音がした。

「失礼する」

 

 突然玄関のドアが開く音と共に、余り大きくはないがよく通る女の声。

 気づかないうちに、誰かが入ってきたらしい。

 合鍵か……?

 

「誰だろう?」

 だが俺にはそういう知り合いはいなったはず……。

 なんて思っていると声の主らしき少女がひょこっと顔を出した。

 そして俺と目が合い微笑む。

「迎えに来たぞ、乾……佐吉?」

 

 年は15,6ほどで、白いセーラー服を着ており、切れ長の紅目で、黒く綺麗な長髪。

 顔立ちは凛とした面持ちの言うまでもなく美少女の部類だった。

 だが、だからこそ俺の知り合いではないことは確かだ。

 ……だって余り外に出なかった引きこもり自衛官に出会いはないし。

 

「えっと……どちら様ですか?」

 そう言うと少女は俺を見ながら小首を傾げた。

「……もしかして何も聞かされていないのか?」

「うん……というよりここどこ?」

「………………?」

 少女はきょとんとした顔をする。

 

 ちょっと待て、驚いてるのは俺の方だ。

 新居でパソコンで感電したと思ったら前の下宿に要るし、パソコンは正常に稼働してるし、おまけに幾つか記憶もない。

 

「……わかった、まずは自己紹介といこうじゃないか」

 取り敢えず俺はその少女にちゃぶ台の向かい側へ座るよう促した。

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

 少女は磯風と名乗った。

 名字は無く、単に磯風。

 話を聞くと艦娘……という存在らしい。

 

 聞き覚えのある響きだったが、全く思い出せなかったので尋ねるとこれまた驚いた顔をされた。

 

「……本当に乾佐吉なのか?」

「うん、元海自で現大学生の」

 すると磯風さん、再び眉間に少ししわを寄せた。

「……私の情報では乾佐吉は高卒後無職なのだが?」

「」

 俺は絶句した。

 まさに頭をハンマーで叩き割られたかのような衝撃だった。

 

 以前やっていたAC5の初見殺しでもこれ程の衝撃を受けたことはなかった。

 倒した後の主任が鉄筋をブン回して迫ってくる衝撃よりも、RDが右手の凶器(グラインドブレード)を唸らせながら追いかけて来た時の衝撃よりも大きかった。

 

「そんな…………嘘だろ……?」

 自然と口角が上がっていた。

 だってもう、笑うしかなかった。

 無職?俺が?

 海上自衛隊の忙しくも充実していた3年間も。

 全ての遊びを捨てて頑張った1年間も。

 何もかもが無かったことになって。

 全て…………消えた?

 

 

「おい…………おい……大丈夫か?」

 磯風さんが心配そうな顔をしていた。

「あ……あぁごめんちょっと考え事してた……」

「……今にも死にそうな顔をしていたぞ」

 あ、やっぱりか。

 俺顔に感情が出やすいからなぁ……。

 なんて思っているとふとカレンダーに目が止まる。

 年号は平成28年。

 ……因みに俺が先程までAC5をしていたのは平成30年。

 

「ねぇ磯風さん、今何月何日?」

「ん……?6月Χ日だが……?」

「6月Χ日か…………」

 自衛隊生活最後の年の誕生日だった。

 そうそう、海の上で21歳の誕生日を迎えてこの日は先輩にストラップを貰ったっけ。

 ストラップ。

 そう、ストラップ。

 

 ………………………!!

 それがあれば俺の話が本当だと証明できるんじゃ……!?

 

「……ストラップだ!」

 驚く磯風さんをよそにポケットをまさぐってみる。

 手には携帯の硬い手触り。

 確か俺は携帯に付けていたはず。

 ポケットから携帯を取り出すと、そのストラップが付いていた。

 あった!

 木製で"磯風"と彫ってあるストラップ。

 嬉しくて思わず笑っていた。

「……なんだ?それは?」

 磯風さんが不思議そうに覗き込む。

 花の匂いがふわり、と鼻をくすぐった。

 

「あ……あぁ、これは俺の大事なものだよ」

「ほう…………」

 そう、これは俺の努力の証。

 俺が俺である現在唯一の証拠だった。

 まぁ、なんで磯風と彫ってあるのか今となってはわからないけど。

 

「自衛隊の先輩に貰ったんだよ」

 そう言って笑いかけると、磯風さんは少し困った顔をした。

「…………むぅ」

 

 そして俯いて何やら考え込み始めた。

 時折うー、やらむー、と考え込む様子が可愛らしい。

 ……でも始めに迎えに来た、と言ったんだから妄言にも近い俺の言う事を考慮する必要なんてないんじゃ?

 とは思ったが可愛いのでこのまま本人が気づくまで言わないでおく。

 

 3年間の証が見つかってようやく俺もいつもの俺に戻れた気がする。

 ま、この後どうなるかわからない不安はあるけれど。

 だって……ねぇ?

 よくフィクションである平行世界(パラレルワールド)に来てしまったようだし。

 こうなったら出来るだけ生き残りつつ、楽しまないと。

 

 そして、しばらく考えた後。

 磯風さんはふと呟いた。

「…………別に本人がどうであれ送迎出来ればいいのでは」

 おお、やっとそこに辿り着いたか。

 なんて思っていると磯風は満足そうな顔をしてうんうん頷く。

 仕草がいちいち可愛いなぁ。

 

「何か言ったか……??」

 磯風さんが此方を見た。

 どうやら口に出ていたらしい。

「いや、何でもないよ」

 と咄嗟に誤魔化すと、磯風さんは仁王立ちして自信満々に……というよりドヤァっとしてこう言った。

「さて、それではこの磯風が貴方を送迎するとしよう!」

 

 なんか凄くクソ真面目で優しい娘なんだなぁ……と心の底から思いつつ、俺も立ち上がる。

 

「よろしくお願いするよ、磯風さん」

「フフ……この磯風に任せておけ」

 そして磯風さんは黒いカードケースを投げて微笑んだ。

「さ(・)ん(・)は要らないぞ、乾特(・)務(・)3(・)佐(・)どの?」

「えっ……ちょちょっと!?」

 

 慌てて受けとるとカードケースが開き、中に入っていたカードが目に止まった。

 

 

 __海上自衛官身分証明書

 氏名|乾ㅤ佐吉<いぬいㅤさきち>

 階級|特務3佐

 

 上記の者は、海上自衛官であることを証明する。

 __防衛省海上幕僚長

 

 

 

 昔命の次くらいに大切に扱っていた、俺の新しい身分証明書だった。

 

 こうして俺は、再び自衛隊で働く事になった。

 ぺーぺーではなく、士でもなく。

 ……指揮官として。

 

 

 




◆名状し難いアトガキ(略◆


・特務階級
元々階級が低かったり、民間人だった者が適正等で指揮官となった場合に与えられる階級。
ただし、給料は正規の階級より低い。
なお、正規の階級を持つ許可が降りれば正規の階級となる。
例)特務3佐⇒3等海佐



磯風「さて、今回はこれだ」

佐吉「単純明快だねぇ」

磯風「今後はもっと専門的な物を出そうか?」

佐吉「ふっ……基本7部署すら余裕だよ?」

磯風「凄い自信だな」

佐吉「もち。だって迅速にやんないと艦の存亡に関わるからねぇ。……指導怖かったなぁ」シミジミ

磯風「フフフ……学ぶのは指揮官としての勉強だぞ、司令どの?」

佐吉「……まさか強くてニューゲーム出来ないだと!?」

磯風「残念だったな司令。さ、艦隊運営のお勉強でもしようか?」

佐吉「こうなったら……」

磯風「お目付け役に特別警備隊のルーキーを呼んでいるぞ」

佐吉「ちくしょうめぇぇぇぇぇぇぇっ」カキカキ


◆

佐吉「はっ…………」

磯風「どうした司令?」

佐吉「そういやいつの間に俺の身分証明書作ったんだ?」

磯風「何を言っている?あの時特務3佐になるのは以前から決まっていたはずだぞ」

佐吉「それ"こっち"の俺だよ!俺じゃないよ!」

磯風「あっちもこっちも同じ顔だから問題ないだろう?司令も阿呆だな」フフ

佐吉「……気持ちの問題なんだよなぁ」






それでは次回にて。


To be continued next sarry!

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