駆逐艦磯風と田舎者提督   作:95式ゆきち

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どうもお久しぶりです。
更新遅くなりました(^-^;


エタってなんかないよ、エタってなんか……(弥生風)


第2話『GPS、偏差ゼロ__接近』

 

 下宿を出た後、俺たちは話ながら見慣れた町並みの中を歩いていた。

 

 磯風によると、この世界はどうやら俺のいた世界と余り変わらないらしい。

 話の限りでは単純に2年前の日本……といったところか。

 俺としてはちょうど海自生活最後の年だった事もあり、周囲の景色はとても懐かしく感じた。

 

「……それでこれから何処へ行くんだ?」

「んむ…………?」

 目的地を聞いてなかった事を思い出したので尋ねてみると、磯風は小首を傾げた。

 

 いやいや、説明されてないって。

 そんな不思議そうな顔をされてもわからんよ。

 ……可愛いけど。

 

「いや、説明して貰ってないぞ?」

 そう笑いかけると磯風の顔が徐々に紅潮していった。

 しまった、というような顔をして。

 どうやら磯風も顔に出やすいたちらしい。

 

「あ、あぁそうだったな!……猿島だ」

「猿……島……?」

「どうした、意外だったか?」

「ん?……ああ」

 さるしま……猿島。

 頭の中でぐるぐると単語が巡る。

 意外なワードだった。

 てっきり総監部とか幕僚部かと思ったんだけど。

 そう思い、磯風に確認してみる。

「猿島って__」

 

 俺の知る限り猿島と言われてまず思い浮かぶのは一つ。

 横須賀の東側約8海里に位置する無人島"猿島"だ。

 まぁ無人島とは言えど施設等が建てられており、横須賀から連絡フェリーも出ているので気軽に遊びに行くことが出来るのだが。

 磯風にそう同意を求めると、場所だけ合っていると言われた。

 ……なるほど、異世界だけあって少し違う部分もあるみたいだ。

 

 それから俺達は互いに知識を交換するがごとく話した。

 俺は自衛隊時代の話を。

 磯風は艦娘について教えてくれた。

 どうも艦娘というのは、かの大戦時の艦船の記憶を持ち、その艤装を操って洋上を駆り、闘う存在らしい。

 それで、特務3佐になった俺はその艦娘たちを指揮し艦隊運営をするのが仕事とのこと。

 いきなり指示される側から指揮する側かよ!

 なんてこぼしたら磯風に笑われた。

 期待しているぞ、"元"海士長どの?

 だと。

 

 あーもう可愛いなぁちくしょう。

 

 

 

 __それから20分ほど経ったぐらいだろうか。

 俺たちは広い道路に出た。

 確かここから真っ直ぐに進むと左手にソフ◯ップコジ◯があって、更に海の方へ向かうとホー◯ズとかがあるんだったっけ。

 

「いや~懐かしい景色だ」

「ふふ……そうか」

 笑いかけると、磯風は寂しげに微笑んだ。

「寄ってみるか?……もうやってないと思うが」

「え?もう閉まってるの?」

 驚いた俺は腕時計を確認したが、まだヒトゴーマルマル、午後3時だった。

 こんな時間に閉まってる……ということは……。

「もう"閉店"してるって事?」

 そう聞くと磯風は頷く。

 そして海の方を見つめて言った。

「……この辺りはまだ被害が出てないだけまだいい方だ」

「被害……か。ということはさっき言っていた"深海棲艦"?」

 そう聞くと磯風はそうだ、と短く答えた。

 

 けれど、話だけでは何というか納得が出来なかった。

 海からの脅威だと言っても自衛隊の設備は最新鋭のものが揃っている。

 たとえ未確認の敵が現れたとしても対応は出来るはずだ。

 日本で独自開発した物もあるし。

 にも関わらず深海棲艦を退けられず陸地への攻撃を許すなんて事があり得るだろうか?

 日本が世界に誇る、統合機動部隊が敗れる。

 そんなことが。

 

「……取り敢えずどういう状況か教えて欲しい」

 そう言うと磯風は一瞬寂しそうな横顔を見せた。

「__うみかぜ公園に行こう、たぶん見た方が早い」

 

 

 

 うみかぜ公園は、東京湾に面しており、猿島と大戦時に作られた第2海堡を一望出来る公園だ。

 割りと広く、色々なイベントをやっていたり、テニスコート等施設が充実しており平日でも結構人が居る賑やかな場所だった。

 かく言う俺も代休の時に買い物帰りに寄って平日だというのに夜まで同期と遊んだものだ。

 ……まぁその日はそれで終わらず2、3軒飲み屋を梯子して帰艦時刻に遅れて先任伍長に怒られたというオチもついたが。

 

 

「着いたぞ。うみかぜ公園だ」

「…………ここが、か?」

「そうだ。……正式にはうみかぜ公園"だった"場所だが」

 

 海自時代の思い出に浸っていた俺の視界に広がっていたのは、変わり果てたうみかぜ公園だった。

 木々は倒れ、地面は平坦な場所ないと言っていいほど。

 おまけに所々に砲弾らしきものが刺さっていた。

 口径は12cmほど。

 まるで戦争が起きた後としか思えないような景色だった。

 

「酷い有り様だな……」

「仕方がないことだ」

 はぁ、と溜め息をつくと磯風は立ち止まってゆっくりしゃがんだ。

 そして足元に転がっていた銀のロケットを拾い上げる。

 所々煤けていて、ひしゃげたロケット。

 じゃらり、と千切れた鎖が音を立てた。

「深海棲艦に通常兵器は無意味だったのさ」

 そう言って砂を払うと、ロケットが音を立てて開いた。

 磯風から再び溜め息が漏れる。

「……どうした?」

「……これだ」

 

 見るとカップルらしき男女の写真が入っていた。

 年齢は俺と同じ20歳代くらい。

 二人とも洒落た服を着て笑っていていた。

 それだけに、焼け跡から出てきたかのような損傷ぶりが一層悲壮感を漂わせていた。

 

 磯風はそれを震える手でぎゅっと握りしめた。

 俺は何も言えなかった。

 

 こんな時、左手がサイコガンの宇宙海賊なら洒落た冗談一つで女の子をクスリと笑わせるんだろうが、俺にそんな芸当は出来ない。

 度胸はあっても語彙は少ないしね。

 ただ、俺も初対面の悲しげな顔をした女の子を放置出来るほど阿呆でもない。

 嫌われるのを覚悟して、俺はそっと肩を並べるように磯風の左肩に左手を添えた。

 

 肩に触れた瞬間、磯風は体をびくっと震わし、俺を見上げた。

 少し潤んだ紅い目に俺の顔が映る。

 俺は今更ながら気恥ずかしくなり海の方へ視線を反らした。

 

「……なんか悲しそうだったから」

「そうか…………すまない…………」

 振り払われるかと思ったが、逆に俺の方に寄りかかってきた。

 同時に鼻をすする音が聞こえ始める。

 ロケットか、俺の行動か、それとも嫌な記憶でも思い出したのか。

 何が引き金かは分からない。

 

 ただ、兵器だ艦娘だといえど普通の、人間の女の子と何ら変わらないのだと俺は思った。

 俺が自衛官である以前に一人の青年だったように、この娘も艦娘である前に10代の女の子なのだと。

 気が付けば俺は磯風の頭を撫でていた。

 肩を添えていた左手で、軽く触れるように。

 すると安心したのか、さっきより更に寄りかかってきた。

 密着する部分も多くなり、俺の左半身が触れている所からじんわり暖かくなっていく。

 

 ……というかふにんふにんと柔らかい感触が。

 気付けば磯風が左側から俺をぎゅっと抱き締めていた。

 なるほど……まあ、そうなるな。

 ……というより磯風さんよ。

 さっきからお胸が自己主張なさってるんですが、無自覚ですか。

 されてる側からすると、なんかもうヤバいです。

 俺の主砲の仰角的な意味で。

 いいのかい、磯風さんよ。

 抱きつき癖でへんな男に抱き付くと勘違いされちゃいますよぅ?

 今日OKなの?ぐへへ、みたいな。

 

 

 …………はぁ、妙な考えはよそう。

 泣いてる女の子相手にしながら考えることじゃないな。

 ……そうだ、海を見ながら素数を数えようそうしよう。

 

 俺は、空気を読まずに沸き上がってくる煩悩を抑えつつ、女の子って体温高いんだなぁ、なんて思いながら白波立つ海へと視線を向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




◆アトガキ◆

はい、2話終了です。
今回も最後まで読んで頂きありがとうございました。
今回は普通(?)の後書きになります。

今回は2話にして主人公と磯風の距離を縮める予定でした。
……が、ちょっとだけ近づけるつもりが後半でベッタリに。
…………なぜだ。


取り敢えず、次も頑張って書きます。


さて、もう7月の下旬。
学生にとっては天国ですが、社会人(わが社)はまだまだ忙しい日々が続いてますよねぇ。
唯一幸いなのが今回のイベントが8月中旬と休暇に被っていることですね。

……まぁ、今現在備蓄で忙しいけれど。
大型海外艦かぁ……エセックス級かな?



それではまた次回にて。

To be continued next sarry!




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