続きはモチベーション次第で……元が見切り発車な上短編仕様なので続き書きにくいんですよね。
『うちは吹雪が初期艦でしたね、改二もあってバランスもいいと言われました』
『改二、ですか?』
『改はどの艦娘もあるんですが、一部の艦娘は二段階改造できるそうですよ、非常に高い錬度が必要になるそうですが。戦艦ならば金剛型とか、駆逐艦なら吹雪以外ならば暁や響なんかが改二になるそうです』
『ほう興味深い』
『あ、あとで先日送るといった建造レシピと一緒に艦娘のリスト渡しましょう、改二になる艦娘もそれに記載されてますよ』
『お願いします!』
『あ、艦隊が遠征から帰ってきたので物資確認しないと、それじゃここらで』
『はい、それではまた』
先日チャットによって彼の人物と縁を持ったが、周りに艦娘しかいない今、対等に話せる彼は貴重だ。しかも親身に相談に乗ってくれる、本当によく出来た人だ。
さまざまなことをあの後から話したが……
改二か、駆け出しである自分はその手前の改を目標にすべきかな。
あと、重要な情報があった、遠征だ。
彼は大本営から送られてくるもの以外にも、長距離練習航海や海上輸送などを行い物資を得ているらしい。
私も近隣の漁業関係者や大きな輸送船を持つ商家に働きかけ、物資の都合をつけるべきか。
彼に負けてはいられないと思うと共に、この広い海のどこかで同じく戦っている誰かがいると思うだけで励みになる。
「司令官、艦隊が帰ってきたんだって。ふぅ。」
「帰投したわ。お疲れ様!暁、元気ないわねーそんなんじゃ駄目よ」
どうやらうちの艦隊も帰還したようだ。
ちょっと疲れを見せる暁と元気に報告してくる雷、一緒に出たはずの響と電がいないようだが……
「やあ、おかえり。成果はどうだったかな?」
「はぐれだったのかイ級が一隻と、軽巡旗艦の駆逐が2隻の艦隊と当たって2戦してきたわ」
「S勝利!MVPは暁よ!レディーとして当然よね!」
戦果を聞くとしっかり内容を答える雷と、MVPだったと胸を張って答える暁。
暁は最後に来たので他の三人と比べると錬度が低かったが、最近は追いついて来てこうしてMVPを取る事も増えてきた。
存分に褒めてやろう。
「そうかよくやったな、暁もMVPおめでとう」
「いつも言ってるのに頭をなでなでしないでよ!」
そうは言っても毎度の事ながら払いのける気は無いらしい。
「響と電はどうしたんだい?」
「もう子供じゃないって言ってるのに、もう、失礼しちゃうわ
二人は2戦目でちょっとかすっちゃったの、小破もしていない程度で心配要らないわ」
「それで先に入渠させてきたの、よかったわよね?」
ほんの少しの不安を顔に出しながら雷が問いかけてくる、指示なく入渠させたことを心配しているのだろうが
「構わないとも、よくやってくれた」
「当然よ!」
「そうそう。もーっと私に頼っていいのよ」
「そうか、ありがとう。
それじゃ早速だが入渠に行った二人もすぐ戻ってくるだろうし、5人分お茶を入れてもらおうか」
「はーい、司令官のためにもっともっと働いちゃうね!」
「あ、待ってよ雷、私も手伝うわ!」
パタパタと二人は給湯室に向かった
出撃から帰ってきたばかりだが、遠征の下準備として漁業関係者に渡りをつけるため、一度本土のどこかの港に連れて行ってもらうべきか。
大本営からの物資を持ってくる定期便に乗せてもらうのも良いが、その後の帰りの足の事も考えると艦娘に曳航してもらうほうがいいか……
近場にある漁業組合はどこに渡りをつけるようかと考えていると、執務室の扉からゴッと鈍い音が聞こえた。
微かに外から声も聞こえる、おそらく入渠していた二人なのだろうが、どうしたのだろうか?
「響、電、帰ってたの」
「はにゃあっ!」
「か……」
今、扉を開けたとき変な衝撃があった。
目の前にて帽子を深く被り天を仰ぐ響が目に入る。
ゆっくりと目線を下に送ると、頭頂部を抑えた電が床に転がっていた。
「だ、大丈夫か!?」
「見事な二連打だ、はらしょー」
「しょ、衝突とか、気をつけたいですね……」
起き上がり、正座から崩したような女の子座りで電がつぶやく。
「って二連打?」
「そこで、電が転んで艦首からドアに突っ込んだのさ、見事なラムアタックだったよ。
そして蹲っていた所に司令官がドアを開けたのさ、ほら電、頭を見せてごらん」
執務室で聞いた扉からした鈍い音はそれか。
「うん、小破どころかたんこぶも出来てないよ。仮にも駆逐艦だからドアより脆いなんて事は無いだろうけどね」
「それでも、痛いものは痛いのです……」
「だったら、さっき言ってたとおり衝突とか気をつけないとね」
電の頭をなでながら諭す響は、しっかりと電の姉をしているのだなと思える構図だった。
「こちらもすまなかった、もっと確認して開けるべきだったよ」
「扉の前でうずくまっていた私が悪いのです、それに二回目のは手で頭を押さえていたのもあって、それほど痛くなかったのです」
「今回、司令官は何も悪くないさ、それに思い返せばなかなかに面白かったよ」
「響ちゃんひどいのですっ」
そんなことを言ってるが、両者とも口元には薄い笑み、そして電の傍らに立ち頭を撫でる手は未だ離れていない
これは響なりのコミュニケーションなのだろう
怒っている電も本気で怒ってはおらず、姉に甘える妹のようだ、あ、いや妹か。
電が一番最初に来たこともあり、姉妹の序列がわからなくなる事がある、それも……
「あ!電がなでなでして貰ってる!お子ちゃまね!」
「なんだい、暁も撫でて欲しいのかい?」
「ち、違うし!」
「遠慮しないでいいんだよ」
「からかって!許さない、許さないんだからね!」
一番最後に来た暁がこの調子だからだ。
彼女、長女なんだよな?
「電、また転んだの?気をつけないとダメよ!」
お茶を載せたお盆を手にやってきた雷がそう注意する。
「ほら皆、部屋に入ろう、雷と暁がお茶を入れてくれたから一息つこうじゃないか、そしてちょっと相談したこともあるからね」
遠征前に民間にも少し手回しもしないといけない、そう言えば彼女らを本土に連れ出すのは初めてになるな。
あまり連れまわすことは出来ないだろうが、少しくらい時間をとって私物を買い与えるのもいいだろう。
「ところで司令官、さっき私と雷の名前を言ったときなんで順番が雷が先だったの?」
「…………深い意味は、無いとも」
「オチャウケハナニー」
「妖精さん、君居たのかい!?」
ちなみに雷に先に妖精さんは会っていたらしく、妖精さんの分のお茶は用意されていたようだ。
ちなみにお茶請けはクラッカー、日持ちするものだったからいくらか買い置きしておいたものの一つだろう。
本土に渡ったときにクッキーのような女性向けのお茶請けも買ったほうがいいか。
かしましくテーブルを囲む4人を見ながら、妖精さんとお茶をすする。
「ソウビデキタ、バクライトソナー」
「お、出来たかい。良かったこれで潜水艦の相手も出来るよ」
「アトドックダケド、カンムスイツダスノ?」
ドック……?
そういえば先日、暁が出てきてちょっとした歓迎会を開いて……
その後建造してないはずだが?
「オモイダシテ、ヒビキ、イカヅチ、フタリデテキタ」
「ん、そうだね。そういえば暁のときは一人だけ出てきたけど……」
「イマデキテルモウヒトリ、ダブンケイジュン、クチクカンヨリ、ジカンカカッタ」
「そうだったのか、それじゃ迎えに行かないとね、このお茶を飲んだら……」
「イチジカンクライデデキタノニ、モウ、ミッカクライ、ドックニホウチサレテル、アワレ」
「すぐ迎えに行こう!」
「五十鈴です。水雷戦隊の指揮ならお任せ。全力で提督を勝利に導くわ。よろしくね。
よ・ろ・し・く・ね!」
呉鎮守府執務室にて、そこの主たるその提督は首をかしげていた。
「漁業協同組合から……感謝状?」
近海の深海棲艦の活動も静かで特に大規模に出撃した記憶もないのだが……
そういえば……
「最近、新任に駆逐艦を任せて泊地に配置したのだったか……
その誰かが漁船でも助けたのか」
彼は知らない、爆雷を山積みした軽巡が絶対潜水艦沈めるウーマンになっていることなど。
「今期は美味しい魚介類の期待もできるかな?」
彼は知らない、爆雷をばら撒いて潜水艦を沈めた後に浮かぶ魚を狙って漁船が群れて出港、いや出撃しているさまなど。
「こうして感謝状が来るとは、駆逐艦でもしっかり活躍している、ということかな。いい事か」
彼は知らない、出撃した漁船を守るために涙目で獅子奮迅の活躍をしている駆逐艦たちのことなど。
ちなみに漁獲量は前期の20倍を突破した。
五十鈴「……なに? 気が散るんだけど。」
漁船「砲撃?雷撃?気合で避けろ!ここで稼がなきゃおまんま食い上げなんじゃ!」
暁型「魚雷をギリギリで避ける漁船すげえ、私たちより操船うまくない?」
漁船「艦娘のじょーちゃんら!魚群探知機に潜水艦ひっかかったぞ!」
暁型「それひっかかるものなの!?」
五十鈴「追撃戦は五十鈴の十八番よ!」