提督が着任したのです!   作:ハイズ♂

4 / 7
帰還なのです!

戦力も増え、日本近海ならば問題なく艦隊運用できるようになってきた今日この頃。

 

南西諸島方面に艦隊を出しいくらかの戦果をあげられるようになった我が艦隊だが……

 

 

「航空機か……」

 

「敵艦載機の数が多く、現状榛名さんの火力でなんとか……それでも足りなければ夜戦にもつれ込ませての勝利は取れているのです」

 

「しかし、空を抑えられると榛名の観測射撃もできず、こちらの回避や命中にも問題が出る、と」

 

「なのです」

 

 

となるとやはり……

 

「さらに建造、か」

 

「それも空母の、なのです……」

 

「ボーキサイトは使っていないので、多少の余裕はあるが……」

 

「鎮守府近海航路の船団護衛で稀にボーキサイトが手に入るのです。

 それだけでなく、バシーに川内さんと神通さん、吹雪ちゃんたち11駆が向かっているのです、少しですがボーキサイトは増えていっているのです」

 

「今ならば、空母を運用することも可能か……」

 

「なのです」

 

 

 

 

 

と、いうわけで艦隊に空母が加わったわけだが。

 

 

「航空母艦、鳳翔です。よろしくお願い致します」

 

「軽空母、龍驤や。期待してや!」

 

「千歳です。日本では初めての水上機母艦なのよ。よろしくね!」

 

「水上機母艦、千代田です」

 

 

「うん、よろしく頼むよ」

 

 

正規空母は来なかったが彼女らがいれば、十分制空権は取れるであろう。

現在、深海棲艦側も私たちが向かう場所では軽空母が主流であるし。

 

 

「それじゃ皆さん、泊地内の案内に出かけるのです!

 今出撃や遠征で出かけてる人も多いですが、暁型の皆は全員いるので紹介するのです!」

 

 

そう言って4人を引き連れ電は出て行った。

 

まだ着任してそれほど時間がたつわけではないが、電は秘書艦として人をまとめる事に慣れてきたようだ。

 

 

「出撃していた艦隊が、帰投しました」

「提督!たっだいまー!夜戦で勝ってきたよ!」

 

どうやら出撃していた艦隊が帰ってきたようだ。

報告に来たのは川内と神通か。

 

「お帰り、戦果はどうだった?」

 

「夜戦でしっかり魚雷決めて、気持ちよく戦えたよ、予想外の収穫もあったしね!」

「戦果は中破艦までで大破はなしで……」

 

「はにゃー!」

「またかチクショぉおおお!」

 

今、外から聞こえてきた声は……

 

「電と深雪だねぇ」

「中破艦だったはずなんですけど……もしかしたら大破したかもしれませんね……」

「またか……」

 

そっとため息一つ、そして聞こえてきたほうに向かって軽く敬礼する。

二人は苦笑していた。

 

「なにはともあれ、お疲れ様。二人も入渠して休憩するといい」

 

「提督まだ話は終わってないよ、さっき収穫があったって言ったでしょ?」

 

休憩を促すと川内が笑いながら話を続けてきた。

 

「そういえばそんなことも言っていたね、バシーだから高速建造材でも拾ってきたかい?」

 

「ふふ、お二人とも入ってきていいですよ」

 

神通に促され入って来たのは和装のような服装の二人組、容姿や服装が似ていることから姉妹だろうか。

 

 

「扶桑型超弩級戦艦、姉の扶桑です。

 妹の山城ともども、よろしくお願いいたします」

 

「扶桑型戦艦姉妹、妹のほう、山城です」

 

おぉ、これはまさか。

 

「ドロップか……」

 

「そうらしいね!」

「海上で出会いまして、どこかの鎮守府の傘下にも入っていないようでしたので連れて来ました」

 

「ドロップ艦があることは知っていたが、扶桑型か、戦艦が来るとはな……」

 

 

「あの押しかけたのは迷惑だったでしょうか?……はぁ……空はあんなに青いのに……」

「艦隊にいるほうが珍しい戦艦ってそう思ってるんでしょう……どうせ欠陥戦艦ですよ、不幸だわ……」

 

なんかどんよりした空気かもし出した扶桑姉妹

 

「いやいや、そんなこと全然思っていないよ。

 この泊地は戦艦が榛名しか居なくてね、二人が来てくれたのはとてもうれしいともさ」

 

「お二人の火力があればもっと先まで進めそうですね」

「戦艦だって夜戦でしっかり戦えるよ!」

 

どうしてこう川内は夜戦にこだわるのだろうか、いや頼もしいんだけどね。

 

「川内と神通は二人を連れて皆に紹介を頼むよ

 さきほど建造された艦娘もいるから電に紹介してもらうと良い」

 

「はい、では姉さんお二人とも、行きましょうか」

「扶桑型戦艦って夜戦でどれくらい火力出せるのかな、たっのしみー」

 

 

 

……行ったかな?

 

今日一通りのお仕事は終了だ。

榛名、五十鈴などは最近がんばってくれていたから休暇がてら自由時間を与えて好きにしていいと言っている。

これで執務室に来る子はもう居ないだろう。

 

 

前回本土に渡ったときに仕入れてきた、とっておきの茶葉、少し入れてみるか。

 

うん、良い香りだ……少し蒸らして……あとクッキーも開けてみるか。

 

 

「イイカオリ、タノシミ」

 

「君、本当に神出鬼没だね」

 

ほんの少し目を放した隙にテーブルの上に鎮座する妖精さん。

まぁこの子の分くらいならわけても全然かまわないんだが。

ここ最近、一気に艦娘が増えたからな、嗜好品を分けてたらちょっと足りないんだ。

資金が無いわけじゃないから、次に本土に渡ったときに大量に仕入れようと思っている。

 

「んじゃ、ゆっくり楽しむとするか」

 

妖精さんと二人分の紅茶をいれ、一口飲んでみる

 

「タマニハ、コウチャモイイネ」

 

「ヘーイ提督ぅー!紅茶が飲みたいネー!!」

 

「誰だお前」

 

バンッと執務室の扉を開けて飛び込んでくる誰か

榛名に良く似た服装の彼女は邂逅一番紅茶を要求してきた。

 

 

「すみません提督、今こちらにお姉さまが……あぁ、金剛お姉さまやっと見つけました」

「榛名、お姉さまは見つかったかしら?」

「ひええ、置いていかないでくださーい」

 

ぞろぞろとやってくる榛名と似た服装をした艦娘たち

 

「榛名、建造は今日行ってないよな?これは……どういうことなんだ?」

「実は……」

 

 

錬度が足りないと感じた榛名は、五十鈴、那珂、はっちゃんと四人でオリョール海まで進出

はっちゃんに囮をしてもらいながら4人で海域を何週かして来たらしい。

その最中、彼女らもドロップしたらしいが

 

 

そして榛名はオリョールでの活動を語った。

一通り聞いた限りでは戦艦などの相手も危なげなくこなし、しばらくすればはっちゃんがコツでも掴んだのか先制雷撃をするようになってからは楽に進んだようだ。

途中比叡、霧島と加わってさらに楽に進むようになり、金剛が加わってから切り上げて……

 

 

「……というわけでして」

 

「三人を紹介するためにこちらに向かっていたら」

 

あぁ、そこからはこっちでも確認しているが

 

「金剛お姉さまが急に紅茶のにおいがする、と急に走り出して、その……」

 

 

「ン~やっぱり紅茶はいいものデース」

「お姉さまが幸せそうで比叡もうれしいです!」

「この紅茶とクッキーの相性はデータ以上ですね」

「はっちゃん、満足です」

「ンマー」

 

私の憩いのひと時が……何かまた一人増えてるし。

 

「提督、すみません……」

 

「アレに関しては榛名が謝る事じゃないよ……

 しかし、一応出撃するときは、私か普段秘書艦をやっている電に連絡してからにして欲しかったが……」

 

「えっと、電ちゃんには伝えておいたんですけど、提督から出撃許可の裁量は預かってるから、と」

 

そういえば艦隊が増えてきて、遠征や同編成の艦隊を繰り返し出す時のため、申請があったら許可は出していいと電に伝えたが……

 

「ふむ……そうだったか、確かにそのとおりだが、こっちまで話が通ってなくてな。

 それよりも、君の姉妹以外にも今日は多数艦娘が着任したんだ。

 早いところ他の艦娘の皆に顔見せに行かせるといい」

 

「はい……お姉さまたち、これ以上の勝手は榛名が許しません!

 泊地の皆さんに顔見せに行きましょう!」

 

ぞろぞろと、金剛型が執務室を出て行くのを確認すると、どっと疲れが押し寄せてきた。

 

 

今日はあの彼に報告だけしてゆっくりしよう。

 

 

 

『こんにちは

 今日だけで鳳翔・龍驤・千歳・千代田・扶桑・山城・金剛・比叡・霧島と大収穫だったのですが色々と疲れました』

 

『こんにちは、榛名は以前建造したと言ってた記憶がありますから、金剛型が揃ったのですか、川内型や金剛型は最後の一人が集まらないと嘆く人も多いのですが………』

 

『オリョールでいつの間にか集まっていた、という感じでして』

 

『オリョクルですか……潜水艦大変ですよね、でちでち火水木金金というやつですね』

 

何のことを言ってるんだ彼は……オリョクル?でちでち?月月火水というやつだろうが……

 

『でちでち?あとオリョクルとは、なんでしょう?』

 

『あら、オリョクルでは無かったですか

 オリョクルというのはオリョールクルージングの略称でして、潜水艦たちのみでオリョールに進撃することを言うのですよ。

 燃料弾薬が拾えて収支がプラスになることもある海域な上に、潜水艦の錬度次第では無傷で周回することもあることからクルージングのようだ、とね』

 

『ほう、しかし私の艦隊には伊8しかいないので単艦での出撃は厳しいと思います……』

 

『それならば近海対潜哨戒を繰り返し行うと潜水艦がドロップするみたいですし、航空戦艦、軽空母、対潜艦2で出していけば錬度上げにもいいでしょうね』

 

『参考にさせて頂きます、扶桑型が確か航空戦艦になるんでしたね

 あぁ……また五十鈴に爆雷を積む日々が始まる』

 

『おっと、こちら今から艦隊編成しなければならないので……潜水艦どこいったかな……』

 

『お疲れ様です、今日もありがとうございました』

 

 

あ、でちでちっていうのが何か聞き忘れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今回榛名は語らなかったことがある。

オリョールに向かう途中で榛名は、オリョールから撤退する艦娘と出会っていたのだ。

 

「そこに居るのは榛名デスか?久しぶりデース!」

 

「お姉さま!?いえそれよりそのお姿は……」

 

服のところどころが破れ、艤装も無事とは言い難い、出会った金剛は中破していたのだ。

 

「ちょっと被弾しちゃったネー」

 

「大丈夫なのですか?お姉さまの母港までお送りしてもいいのですが……」

 

「ドンウォーリー!

 ここからさほど離れてない上にこの辺りからは敵も出ないヨー、出ても火力はまだ生きてるからノープロブレムというやつデース!

 出撃なのでしょう?榛名もがんばってくるデース!」

 

「はい!榛名!いざ出撃します!」

 

 

ここにいる金剛は南西諸島防衛に回された一隻であった。

今回、彼女は南西諸島の深海棲艦の戦力の削り取りに単艦出撃し、自らが沈まない程度まで戦い帰還補給入渠を繰り返す、防衛線を維持する猛者だったのだが……

 

「うーん、随伴艦が付いていたとはいえ、ちょっと心配デース……補給と入渠終わらせたら援護に行きマスか」

 

妹思いであった彼女はこうして、再度出撃するのであった。

 

「シット、提督に貰った大切な装備が!数だけは多いネー!」

 

いつもより先に向かっても榛名たちの艦影は見えず、数に押され戦況は厳しいものとなっていた。

 

「榛名!全力で参ります!主砲!砲撃開始!!」

「主砲、斉射、始め!」

 

そこに通りかかったのは助けに向かった妹の艦隊であった。

というか……

 

「榛名!それに比叡じゃないデスか!比叡も居たのデスね!」

「金剛お姉さま、帰還したんじゃなかったのですか?」

 

「一度帰還した後榛名が心配になって再度出撃したのデス……が、逆に助けられましたネー」

「さすがお姉さま!お優しいですね!」

 

助けられた身としては比叡の屈託の無い笑顔にちょっと顔向けできない。

 

「そうデース、助けられたお礼にちょっとうちに寄って行きませんカ、事情を話せば補給くらいならしてもらえると思いマース」

「いいんですか?」

「構いまセーン!任せておくネー!」

 

というわけで榛名たちは補給を受けたわけだが……

 

「それではお姉さま、私たちはこれで失礼致しますね」

「気をつけて行くデース」

 

「はい!榛名は大丈夫です!それでは出撃します!」

「気合!入れて!行きます!」

 

手を振って見送って、ちょっと気にかかることがあった……出撃?

疲労を抜かず、入渠もせずに?

 

「まさか……ちょ、ちょっと様子見に行きまショウ……」

 

 

そしてオリョールの海域入り口で待っていると5隻の艦影、それも3体は戦艦のようだ

金剛は、最初はどうやら別の艦隊のようだ、と判断した。

戦艦3隻なんてこんな大規模で出撃する予定があっただろうか、と考えていると。

 

「オォゥ榛名たちの艦隊……しかも霧島も来ていたのデスね……」

 

 

目だった損傷も無く、和気藹々と妹たちは会話しながら航行している。

まだこちらには気づいていないようだ。

 

戦艦3、軽巡2、たしか潜水艦もいたか……6隻とは稀に見る艦隊だ……

これならば私が出るまでも無く大丈夫だろう。

 

妹たちの無事を確認した金剛はそのまま帰還するために舵を切った。

 

彼女たちがしている金剛がドロップするまで粘ってみようなんて会話を聞かずに……




金剛提督「どうしたんだ金剛、なんか滅茶苦茶凹んでる様だが」
金剛「榛名に会ったデース……」
金剛提督「うん良かったじゃないか、顔を合わせるのは久しぶりだったろ」
金剛「比叡にも会ったデース……」
金剛提督「そうらしいな、榛名と一緒に補給してやったんだろ?」
金剛「霧島も居たデース……」
金剛提督「うん?」


金剛「私……ハブられてるんでショウか……?」
金剛提督「いや、そんなことは無いと思うぞ……(しおらしい金剛……だと!?)」
金剛「慰めて欲しいネー……」
金剛提督「(どうすればいいんだ?抱きしめればいいのか?いやしかし時間と場所をわきまえろと以前……いや今だからこそなのか!?)」

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。