結局暁がちょっと勘違いしちゃいましたが。これ以降は下を見ていただければ。
「駆逐艦、若葉だ」
この日建造によりまた一隻の駆逐艦が艦隊に参加していた。
「よろしくなのです!新しい駆逐艦がきたのですよ!……雷ちゃん?」
電は新しく来た艦に喜びを表していたが、姉である雷はというと……
「あ、あはは、よろしく……ね?」
「ん、そうか雷か……こう横腹がむずむずするな……」
顔を合わせた二人はどうにも座りの悪い顔をしていた。
「えっと、とりあえず若葉ちゃんの型は初春型……なのでしたよね?」
「……そうだ」
「今ここには他の初春型の姉妹のかたはいらっしゃらないのです……」
「……そうか」
「大丈夫よ!きっとすぐに他の姉妹も来るわ!
何かあったら私たちに頼ってもいいのよ!」
「……そう、だな」
それを聞いた電の頭上にピコーンと豆電球が灯ったように雷には見えた。
あ、何か思いついたのね、と。
実際にはそんなもの見えないのだが、この泊地で初期から付き合ってきた雷からすれば電は結構わかりやすい部類である。
響なんかは未だに考えがわからない事がある。
「そうなのです!若葉ちゃんにはそれまで私たちの部屋に住んでもらうのです!」
「そうそう、もーっと私たちに……えっ、若葉が私たちの部屋に?」
「なのです!」
「だ、大丈夫だ。24時間一人でも問題ない」
「そんな寂しい事を言わないで欲しいのです!」
だが電はいつもなら間髪いれず同意を示すであろう姉が乗ってこない事をちょっと不思議に思っていた。
「雷ちゃん、どうしたのです?」
「若葉が、かぁ……ううん、なんでもないのよ!歓迎するわ!」
それでも電は、すぐにいつもどうりに振舞う姉を見て気のせいだったのだろうと流した。
本日の消灯も近づいてきた夜半
布団をそれぞれ敷いた暁型の部屋
揃った暁型の前で若葉は出撃に出ていた暁と響の二人に顔合わせを行っていた。
「他の姉妹が来るまで同じ部屋で過ごす若葉ちゃんなのです!」
「今日からよろしくね!私が暁よ!」
「……若葉だ」
暁に挨拶を受けた若葉はそっけなく挨拶を返し目礼した。
その後響に向き合いジッと彼女を見た後。
「若葉だ……」
「響だよ……」
「響か」
「そうだよ」
「……」
「……」
無言で視線二人の視線が絡み合う。
「えっ、何この空気」
「はらしょー」
「悪くない」
そして二人はがっちり握手を交わした。
「えっ、何で分かり合ってるの」
「さぁもう夜も遅い、寝ようか」
「うむ」
「なのです」
「電気消すわよー」
「えっ、わかってないの私だけなの?ねぇ、今響と若葉の間で何があったの?ねえ?」
「暁ちゃんうるさいのです、響おねえちゃん、たまには一緒に寝るのです」
「ごめんなさ……あれ待って、普段電は響ちゃんって呼んでるわよね、と言うか私におねえちゃんって言ってくれないの?」
「……騒がしい」
「あ、ごめんなさい若葉……というか何でそんなに響に懐いてるの貴女」
すでに若葉は寝る体制に入っている、ちなみに響の布団に潜り込んでいた。
反対側には電が陣取っている。
「あら、響ねえ、大人気ね私も混ぜてもらおうかしら」
「……せまいよ?」
「たまには、いいわよ、暁はどうする?」
「一つの布団に5人は狭いからもう一枚か二枚繋げて……ねえ雷も今私のこと暁って……」
「何言ってるのよいつも通りじゃない」
「そ、そうだけど……響の事は響ねえって……」
「電、もう一枚お布団繋げるわ、そこもうちょっと詰めて……そうそう」
「3人は髪色も似てるから三姉妹のようだね」
「そ、そうかしら?」
「悪くない」
「響型四姉妹なのです」
「はらしょー、響型か、嫌いじゃない」
「まって、暁型……ねえ待って……グスン」
からかい過ぎたと3人は暁に謝り倒し、暁を中心に5人で眠りについた。
皆が寝静まった深夜に、そのくぐもった悲鳴は上がった。
「ぐぅっ!……い、痛いぞ」
「へ、あ!きゃあ!」
その後ゴツッと、鈍い音が部屋に響く。
「……どうしたんだい」
「んむぅ……まだ眠いのです……」
その声に響と電も起きたらしい
「いたたた……
おトイレ行こうと思ってたんだけど……電、暁、響と踏まないように乗り越えたんだけど、若葉が居るの忘れちゃってて……」
「脇腹を、踏み抜かれた……」
「それで私が頭から転んじゃったのよ、若葉、大丈夫?」
半身を起き上がらせた若葉は脇腹をさすり、雷は頭をおさえている。
「電、電気を付けて雷のほうを見てあげて、若葉はちょっと動かないで踏まれた場所を見せて」
「なのです」
響がてきぱきと指示を出し、電がそれに従う。
「雷ちゃん、衝突とか気をつけるのです……」
「電に言われる日が来るとは思って無かったわ……」
「若葉のほうは……ここか、痛むかい?」
「痛くはない……」
「うん、大丈夫だね……電、雷はどうだい?」
「こちらも怪我はないのです」
「若葉……えっと……あ、私トイレに行ってくるわ!ごめんね!」
雷は一言謝罪をして出て行ってしまった。
「雷ちゃん、そんなにトイレに行きたかったのでしょうか」
「いや、今のはどちらかと言うと申し訳なさだろうね」
そう会話をしていると若葉がスッと立ち上がった。
「私もトイレに行ってくる……」
「場所はわかるのです?」
「問題ない」
「それと……」
「どうしたのです?」
「心配をかけさせた、痛かったが……たまには優しくされるのも悪くない……」
「ニィエーザシタ、どう致しまして」
「ねえさん、先に寝てていい、おやすみ……」
そう言って若葉は部屋から出て行った。
「今、若葉ちゃん……」
「Это не плохо……」
ポツリと響は呟いた
「えっと……響ちゃんが普段使っている挨拶以外だとロシア語はわからないのです……なんて言ったのです?」
「何でもないよ、ハラショーでも良かったけど……あえて新しい妹の言葉を借りたのさ……さ、寝よう」
電に掛け布団をかけ、自らも布団に潜り込む
いい夢を見れそうだ、との言葉は響がうずめた枕だけに吸い込まれていった。
とぼとぼと雷はトイレに行った後、部屋に戻りに廊下を歩みながらひとりごちた。
「普段……電に偉そうな事言ってるのに……やっちゃったわ……」
駆逐艦若葉、それはまだ艦娘ではなく軍艦であった頃、雷が衝突した船である。
錨が地にかかったまま抜けなくなった雷が力ずくで引き抜いたとき、運悪くその日は波が高く、舵が取れなくなり衝突してしまったのだ。
今日……いやもう昨日か、彼女に会ったときに電と深雪のようにぶつかってしまうのではないかと危惧した。
電が部屋に招くと言ったときも、自ら気をつけていればいい、とそう考えていた。
日が落ちるまで何事もなく、部屋に戻ってからも何もなかったため気が抜けていた、とは言い訳にもならないだろう。
「はぁ、艦の頃に引き摺られたわね……若葉にも改めて謝っておかなくちゃ」
「問題ない」
「きゃあ!?」
薄暗がりで判らなかったが、壁に寄りかかって立っていたのは若葉だった。
「私は気にしていない……」
「あ……聞いてたの」
「それにあの時は、私よりそちらのほうが……」
「あー……うん、でもぶつかったのはこっちだしね」
あの時、雷は艦首全損の大破、若葉は横腹に穴が開いたとは言え小破判定だった。
「それでは詫びにだが……」
「ええ、何でも言って頂戴」
「トイレについてきてくれ」
「……迷ったの?それともまさか……怖いの?」
「いや違う、その、だな、間違えて響をねえさんと言ってしまった……一人だけで部屋に入るのが……恥ずかしい……」
うつむき顔を赤くする若葉を見ていると申し訳なさより庇護欲が沸く、私たちに似た髪色も相まって髪を短くした電のようだ。
「若葉、もっと私に、ううん私達に頼っていいのよ」
雷は若葉の手をとってそう囁いた。
「そう、か……うん、悪くない」
そして手を繋いで二人は歩きだす。
もしここに第三者が居たのならば、誰しもが二人を仲睦まじい姉妹のようだ、と表現したであろう。
朝、洗面台に寝ぼけ眼の暁は歯を磨くためにやってきていた。
「おはよう……雷……私のコップとってぇ……」
それに暁と書かれたコップを、片手で歯を磨きながら無言で差し出す。
「ありがと、鳳翔さんの朝ごはん美味しいから楽しみよね、今日の献立何かしら……」
それに彼女は答えず、うがいをして去ってしまう。
「雷……どうしたのかしら?」
「私がどうかした?」
それに答えたのは洗面所の入り口から顔を出した雷だった。
「えっじゃあ今のって……」
「今暁に雷と間違えられた……」
「暁ちゃん、ちょっとそれは……」
「パジャマ姿だったとは言え、長女として、どうなんだい……」
さらに入室してきた次女と末っ子の冷たい視線が突き刺さる。
「ね、寝起きで寝ぼけてたのよぅ!」
「さぁ今日は若葉を司令官に会わせないとね、響型4隻、新生第六駆逐隊の抜錨だ」
「なのです」
「私と若葉はどっちが姉かしら」
「私はもともと三番艦だ」
「私もそうなんだけど……繰上げで私が二番艦でいいかしら」
「大丈夫だ……」
「予備の制服貸してあげるのです!」
「あーん、私が悪かったってばー!ごめんなさーい!」
「響……コップとってぇ……」
「ん……」
「暁……そっちは菊月だよ……」
「またなの暁?だめよそんなんじゃ」
「……なのです」
「新生第六駆再び、か」
「どちらかというと第三次第六駆逐隊じゃないかしら」
「以前も、あったのか……」
「前は若葉ちゃんと雷ちゃんが間違えられたのです、あ、これ予備の六駆の制服なのです」
「え、あ、ひーん、ごめんってばー!」