六年後
路地裏で二人の男女が身体を寄せ合い、舌を絡めるキスをしていた。女性は青年をチラチラ見るたびに見惚れ、頬を赤らめているが、青年はただ静かに女性の様子を色気のある目で見ている。
そんな二人の甘い瞬間は一つの咳払いで消え去った。青年が女性から顔を離して咳払いの主を見た。女性は名残惜しそうな顔をしたが、咳払いの主を見るとハッとした顔をした
「やぁ夜一。どうかした?」
青年は咳払いの主である夜一を見た。褐色の肌に出るとこは出る見事なスタイルをした女性はほんの少し蔑んだ目で青年を見ていた。
「...リオ。儂とお主は...
入学式じゃろうがァァァァッッッッッッ!!!!」
“真央霊術院”それは通称“死神統学院”。山本総隊長が設立した死神の学校で貴族の子や霊力のある流魂街の子供が多く通っている。そしてリオと夜一はその死神学校の入学式だったのだ。
「いや〜。すっかり忘れてたな〜。ってか大体入学式なんて俺達が行く必要なんてある?サボらない?」
二人は学校へ向かいながら会話をしていた。もちろんリオは全く反省などしておらず、気怠げにさぼりを提案した。リオはこんな堅苦しいのは苦手なのだ。
「フンッ!どうせ主はサボったところでさっき女子で遊ぶだけじゃろ!」
夜一はリオから顔を反らしながら、却下した。リオはその様子を見ると少しも慌てずに言い放った。
「サボるのは大丈夫なんだ。ってか怒んないでよ。もうしないってば...さっきの子はもう飽きたから別の子を引っ掛けるからさ〜。」
リオは清々しく笑いながら夜一の言ったことを否定した。すると夜一はほんの少しこめかみに筋を入れると声を上げた。
「やっぱりクズじゃのぅ!主はッ!いい加減その女癖の悪さは治らんのかッ!だいたい主はわっ...儂の事をすっ...好いとるのじゃろ...」
大声をあげたはいいが、後半の事でかなり失速した。リオはそれを見透かしていたように早々と答えた。
「クズなのは否定できないね。アレは繋ぎだから。でも夜一の事はね...本当に好きだから手ぇ出したくないだけ。でもさ溜まるもんは溜まるんだよね。」
リオは確かに嘘はついていない。むしろ清々しいほどのクズなのだ。そしてリオは基本的に正直なのだ。可愛いと思ったら可愛いといい、美人だと思ったら美人だと言うのだ。そして当のリオは絶世の美青年であり、四大貴族の当主、そして戦闘の天才で金持ちなのだ。女など幾らでも寄ってくる。そして下半身や大半の欲望にも忠実であるため、片っ端から摘み食いを繰り返していた。
「ぐぬぬ...。(いつからじゃ!リオがこんな女癖が悪くなったのはッ!だいたい!あの時の約束で儂は婚約じゃと思っておったのにッ!...むきゅ〜...)
夜一は自分の考えた事で耳まで真っ赤にさせた。リオはその様子をニヤニヤして見ていると夜一はリオの肩に白打を撃ち込んだ。リオは白打の衝撃を軽く受け流すと大声で笑いながら瞬歩で逃げた。すると夜一も瞬歩で追いかけると数分後に捕まった。
***
数時間後
「...であるからして、君達には目標を持って死神としてのスキルを身につけて欲しい。」
沢山の入学生が集まる中、校長が長々しく挨拶をしていた。するとリオは隣にいる夜一に声をかけた。
「なぁ目標なんてある?」
リオは夜一に尋ねた。リオと夜一は死神としてのスキルなど余裕で有している。幼い頃から厳しい鍛錬を続けてきた二人にとって学校など行く意味がないのだ。理由は世間体のためだ。二人が類い稀なる天才である事は関係者の間では有名だ。だが学校も行かずに死神になっては何かのコネを使ったのではないかと疑惑の目を向けられるからだ。
「儂はリオより強くなる事じゃ。」
夜一は真剣な表情でそう答えた。よくよく思い出してみれば自分は常にリオより数歩も出遅れていた。白打では自分がようやくリオと同じ様に急所を一撃で撃ち抜けた頃にはリオは白打の奥義とも言われる“瞬閃”のコツを掴んでいた。鬼道では自分が詠唱破棄で三十番代の鬼道を放てるようになるとリオは八十番代の鬼道を詠唱破棄で放っていた。斬術では相手にもならなかった。そして最後の歩法であるが、その中でも唯一勝てるのが瞬歩であった。だが戦闘においては技のキレ、身体の捌き方、格闘センス、反射神経などでその素早さのアドバンテージを無効化されるのだ。
「主はどうじゃ。」
自分より遥か高みにいるリオはどんな目標をなのか気になり尋ねた。
「26...かな。」
リオは真剣な表情で答えた。夜一は頭を捻るがその数字が何かが分からない。
「なんじゃその数字は?」
夜一は結局どんな意味なのかわからず、答えを求めた。
「今年中に味見する新入生の数。」
夜一はリオに儂の真面目に考えた時間を返せと言わんばかりの本気の白打でリオの後頭部を殴りつけた。
ちなみに年齢や容姿の設定は、幼い頃は通常の人間のように成長し、己の霊力が上がるにつれて少しずつ成長速度が止まり、全盛期になると完全に外見上歳を取らないという感じです。