リオがこの世に生を受けた後、諒影の上司にあたる“護廷十三隊総隊長”山本元柳斎重國に呼び出され事細かに説明をした。リオの霊圧の噴出口が閉じており、それをこじ開けるために雪奈が霊力を与えたということ、そして噴出口はこじ開けたはいいものの、リオ本来の霊圧が強すぎたため、リオが自身の霊圧に慣れるまで雪奈と諒影に霊力を与え続け、クッションにしたと全て正直に話した。
それと同じ話を尸魂界における裁判所となる中央四十六室に伝え判断を委ねた。死神は己の霊力を人、他の死神に与えると罪となる。だが息子を助けるためにやむを得なかったとして不問となった。
***
現在
「腑抜けてませんか?トロイですよ。」
藤堂家の道場で黒い長髪の女性が目に殺気を込めながら刀を振り下ろした。目の前の小さな純白の子供はその丈にあわぬ刀でギリギリ防いだ。だが速度では辛うじて捉えられる程度の力量だが、力では到底かなわず、吹き飛ばされた。そのまま壁に激突し、苦痛に顔を歪めると目の前に太く長い鉄針が三本飛んできた。左の肺、左足首、右太腿に向かっている。少年は刀の歯を横にし、下向きにし、右太腿の鉄針を防いだ。そして左の肺に向かってくる鉄針は拳を突き出した。肺に穴は開かずに済んだが、拳には中指から深々と鉄針が刺さっている。そして左足手首には鉄針が貫いた。少年が痛みを感じる間も無く女性は刀を少年の頭からぶった斬るように振り下ろしたので、少年はそれに対抗するように刀を振り上げ、刃と刃を交わらせ、火花を散らせた。少年は女性の剣を弾けず、ジリ貧で己に刃が迫っていき、少年の肩に触れるか触れない程度の所で刃の手は止まった。
「お見事。私の鉄針をあの状況、今の貴方の力量においては素晴らしい。やはり貴方は斬術及び戦いの才がある。傷を見せなさい。」
手の平防げば貫通し、身体を捻って腕で受けるのは勢いを抑えきれず肺を貫く可能性があった。そして拳から防げば骨を貫くものの急所は確実に避ける事ができる。そして左足首と右太腿のどちらかを捨てるという判断も良かった。まず太腿には大量の血管が通っているため、大量に出血する怖れがあった。無論、左足首の場合はかなりの動きを制限されるものの刀は振るえる。
女性は少年の右手首に刺さった刀を思いっきり引っこ抜くと血が周囲に舞った。そして鉄針を投げ捨てると血を噴き出す傷口に手を添えると次第に傷が癒えていく。そして左足首も同様に引き抜いて癒した。
戦っては癒し、戦っては癒しを繰り返すと出血し過ぎたという理由で水分補給をしながら、休憩する事になった。そして「子供はこうされるモノだから」と少年は女性の膝に座らさせられ、後ろから抱き締めるように細く色白い手を身体に回された。そして女性は悪戯っぽく笑うと耳元にフゥーと息を吹きかけられた。
「うひゃっ!」
少年は可愛らしく身体をビクッとさせると女性は満足そうに笑った。そして着物の中に手を忍ばせて指で優しくなぞると少年はゾワゾワした。
「くすぐったいよ。れつさん。」
少年は涙目で“れつ”と呼ばれた女性を見る。女性はその反応をもお気に召したのか、先ほどより強くキュッと抱き締めた。
「“れつ”なんて他人行儀ではありませんか?私は何て呼べと命じましたか?リオ。」
ニマニマしながらリオを見ると、リオは頬を赤らめ下を向いて小さな口を開いた。
「...............さん。」
恥ずかしがる様子を見てからかいたくなったのか、女性はさらさらな白髪に頬をおいて顔を見る。
「聞こえませんよ。はっきり言わないと止めません。」
そのまま頭の匂いをクンクン嗅いだ。リオの家のシャンプーの仄かな香りがする。
「ちょっ!かがないでよ。おかあさん!」
先ほどとは比べものにならない程顔を真っ赤にさせたリオは叫ぶように言った。女性はそんなリオに母性本能をくすぐられるようだった。
「ふふっ。やっと言ってくれましたね。じゃ止めましょう。お母さんは可愛い息子の言う事は聞くものです。」
“れつ”...。通称“護廷十三隊四番隊隊長”卯の花烈はリオの母親の元上司にあたり、リオの出産後は諒影の留守時によくリオの世話を自ら進んでしていたため、卯の花にとってはほとんど息子のようなものだった。卯の花は今では落ち着いて物静かな様子だが、かつては殺戮戦闘部隊と呼ばれた“初代護廷十三隊”の一角だった程の猛者であり、剣術、斬術のエキスパートである。だがある出来事をきっかけに戦場から離れ、救護・補給専門の四番隊隊長となっている。
当時の卯の花を知る諒影は彼女にリオの剣術、斬術の指南を頼んでいる。無論、戦闘になるとあの頃に戻ってしまう節があるため、心配しているが、先輩でも恩人でもあり回復術は尸魂界一の卯の花を信頼している。たがこの指南の様子を見たら、諒影は即刻止めされるだろうが、回復術に秀でている卯の花の手にかかれば外傷など一切残さないため、証拠がなく、リオも卯の花以外の指南は受けた事がなく、これが剣術・斬術の鍛錬はこういうものだと思いこんでいるため、父親にも報告してなかったのだ。
リオの頭の匂いを嗅ぐのを止めた卯の花は、ごく当たり前であるかのように、リオの着物に手を差し入れて、下に向かわせた。弱い力で卯の花の手を抑え、それだけは嫌だと卯の花に訴えるが、卯の花は有無を言わさぬ笑みで誤魔化して、リオの小さく未発達な恥部を触った。流石に可哀想に思ったのかすぐにやめるとリオは頬を膨らませそっぽを向いた。
「れつさん、きらい!」
拗ねた様子を見ると卯の花はこれが俗に言う反抗期かと脳内でボケると、悪企みが思い浮かんだのか、妖艶に笑った。
「ごめんなさい...。少しやり過ぎました。リオに嫌われたのなら、私は身を退きます。」
卯の花はリオを優しく離すと、嘘泣きで頬を濡らし、トボトボと帰るフリをした。純粋なリオは慌てて卯の花の後を追いかけて、足を全身でぎゅっと掴んだ。
「きらいじゃない!だいすきだよ!だから...行かないで...。」
卯の花は目をウルウルさせたリオの様子を見て心の奥底からキュンキュンすると、リオをムキューと抱き締めた。そしてリオの頭に自分の頬をスリスリして、癒された。そしてこれは行かないという意味だと思ったリオは卯の花を下から抱きしめ返した。
(罪悪感が凄いですね...。もうこの手を使うのだけはやめておきましょう...。)
卯の花はちょっぴり反省すると再びリオに悪戯を再開した。その様子はまるで親子のようだった。
リオは父親のコネで様々な人の指南を受けていた。剣、斬術、回復術の師匠は卯の花。鬼道は“鬼道衆総帥・大鬼道長”握菱鉄斎。そして基礎知識、実戦は諒影へというように各分野のエキスパートにより、リオは着実に死神としてのスキルを身につけていった