白子と黒猫の誓い   作:ニルドアーニ四世

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朝霧から渡された刀を書斎の掛け軸の手前に飾って、父親との日々を思い出した。総隊長や隊長また隊士達、貴族などのかつての父親を知る人達に昔話を聞かされ、人徳に溢れている人だと改めて実感させられた。朝霧の言葉を思い出すと共にかつてより更に強くあろうと決意した矢先、再びリオに悲劇が訪れた

 

 

 

 

 

いつものように鍛錬を終え帰宅すると、父親の斬魄刀の前で今日の報告をした。流石に毎日墓を訪れるのは少々厳しい。最近、使用人達から街を出歩き、好きなものでも買ってくればどうかと薦められ、街に出るようになった。かといって欲しいと思うものは無かったので、ただブラブラしていた。

 

何やら街の人から自分が噂をされてるようだった。生まれつき全身が白い身体は珍しく好奇の目に晒される事は多かった。だが両親が命がけで産んでくれた命であるため、気にも止めなかった。以前、諒影に街へ何度か連れていって貰った事はあったが、悪意のある視線で噂されるような事はあまり無かった。耳を澄ませてみると「呪いがどうのこうの」「両親が早死」などと聞こえてくる。気にせず歩いていると自分と同年代と思われる子供に石を投げられた。もちろん軽々それを躱して睨みつけると子供は泣きだした。そのまま注意して怒っていないから許すと伝えようと近寄ると、その子の母親らしき女性がリオから我が子を守るように抱き締め、リオを殺意ある目で見た。

 

「呪われた白子めッ!私の子から離れなさい!」

 

リオは少しイラッとした。“白子”はユーリの容姿の悪態であると理解できた。だがむしろ自分の容姿を蔑んだ事より、親の対応に怒りを覚えたのだ。自分の怒りを抑えると石を投げつけた事を知らないのだろうと考え、説明しようと近寄ろうとすると人々に自分が囲まれている事に気づいた。皆が震えながら包丁や鎌、空き瓶、鍋などの武器になりそうなモノを持っている。

 

「早く消えろッ!この街から出て行けッ!」

 

一人の男の声が合図となったのか、次々と

 

「呪われた子」「親殺し」「バケモノ」「恩知らず」「白子」「悪霊」「出来損ない」

 

などという差別的な悪態を次々と浴びせられた。リオがこれは噂が一人歩きしているのだと気づいた。リオは初めは戸惑っていたが、貴族らしい振る舞いをしなければならないと考え、怒りを抑え込み無言で立ち去った。

 

その日から屋敷の外装に差別的な悪口の書かれた貼り紙が大量に貼られていた。そして被害は使用人達に及び、殴られたり襲われたりする者たちが現れ、半年も経たぬうちに屋敷から使用人が一人残らず居なくなった。毎晩差別的なデモを屋敷の前でされ、一睡もできなかったが、リオは耐えぬいた。自分の父親ならそうすると考えたからだ。

 

そんな日々が続いたある日、いつものように夜中にデモ隊が来ると思っていたが、誰一人来ず久し振りに訪れた安静な夜だと感じ、やっと皆が飽きたのだと安心した。

 

 

 

 

 

だが今日までの噂、デモなどが全て仕組まれていた事だと知る事になった。分家の連中が扉を壊し、屋敷の中に侵入してきたのだ。リオが部屋から出ると分家出身の数名の死神や葬儀の時に会った年寄り達がやって来た。

 

「やはり薄汚い“白子”などに藤堂家は任せられぬ。藤堂家のために死んでくれ。」

 

年長者の言葉に死神達は声をあげて笑い、年寄り達は卑しい笑みを浮かべた。

 

「噂や夜中の連中は貴方らが仕向けた事ですか?」

 

リオは静かな怒りを含ませた質問を年長者にぶつけた。その質問を聞くと年長者はニヤッと笑みを浮かべると真顔になった。

 

「はてさて?ワシらは何もしとらんがのォ。勝手な被害妄想をするなど、やはり白子は恐ろしいわい。」

 

するとリオを除いた全員が下品に高笑いをした。「ウヒョー。じーさんエグいぜ。いくら金が欲しいからってよ!」そんな野次が飛ぶと年長者はリオを見下すように見据えると言い放った。

 

「ホォッホッホ。世の中そんなもんじゃろ。騙される方が悪いんじゃ。今頃、白子を産んで死んだバカ女と最近くたばった野郎は今頃後悔しとるじゃろうな〜。こんなバケ...

 

「黙れよ...。汚らわしい口をサッサと閉じろ。それとも二度と口が開かねぇようにしてやろうか?」

 

するとリオはこめかみに筋を入れて霊圧を解放した。正確には現段階で制御できるまでだ。リオは両親から貰った霊力、そして自分の本来の霊力を制御する事が出来なかった。諒影は死神として生半可な状態で霊圧を制御しようとすると、強い霊圧に慣れていない使用人達に迷惑がかかると考え、全く教えてくれなかったのだ。つまり今のリオの霊圧は下級死神程度しかないのだ。だがこのレベルでもリオの年代にしてみれば異常と言っても過言でない量である。

 

「ヒッ!」

 

霊圧に慣れていない年寄り達はリオの殺気を含ませた怒りの声に恐れをなし、引いたが死神達にリオを殺すように命じた。

 

「ハハッ!死ねや!」

 

死神の一人が走ってリオの間合いを詰めると右手で刀を振り下ろした。リオはつまらなそうに右手で死神の手首を掴んだ。

 

「なッ!うそだろ!」

 

リオはそのまま手首を思いっきり捻ると死神は苦しみ声をあげて、浅打を落とした。リオは手首を掴んだまま、身体を横にし死神の横腹へ真横に蹴り飛ばした。死神はそのまま壁に強く頭を打ち、失神した。

 

その様子を見た年寄り達は腰がひけ、死神達は自分達の手に負えるレベルでないと理解し震えた。だが一人だけはニヤッと笑って前に出た。

 

「お前らだらしねぇな。こんなガキに劣るなんてよ...。俺は“九番隊第6席”藤堂忠助。」

 

一番霊圧の強い死神が前に出ると、斬魄刀を抜いた。そして斬魄刀の力を解放する“始解”をしようと口を開いた。

 

「“削れ” 鮫肌!」

 

忠助の霊圧は跳ね上がると、刀の形状はギザギザの歯に変化した。流石に接近戦は勝てないと思い、鬼道で対応しようとしたらいつの間にか真横に移動しており、己の身体は斬り裂かれた。鮮血が溢れるとリオは静かに倒れた。そして分家の連中の醜い歓声が消えかけた意識の中で聞こえた。

 

リオは口から血を吐きながらも手をついて立ちあがろうとしたが、叶わなかった。リオは身体を引きずりながら移動しようとした。そして無意識にどうせ死ぬなら父親の元で死にたいと父親の斬魄刀が飾らせている書斎へ行こうとした。分家の連中はこの出血量じゃすぐに死ぬだろうと判断して、土足のまま金目のものを探すために屋敷の中へ入っていった。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

リオは数十分かけてやっとの思いで書斎まで辿り着いた。リオが通った道はまるで血の道ができたようだった。リオは書斎の掛け軸においてある父親の斬魄刀を倒れたまま手にとった。

 

「ごめんなさい父上、母上。恩返し...できなかった。」

 

少し疲れたとつぶやくと、そのまま静かに永遠の眠りにつこうとした。だが何者かに頬を触れられている事に気づき、目をゆっくりと開いて、顔をあげるとそこにサラサラとした真っ直ぐに長い黒髪、そして透明な水蓮の花の飾りを付け、サファイアのような青い目をした美しい女性がいた。服装は上品な青い着物を身につけており、所々白い模様が散りばめられている。女性は慈愛じみた青い瞳でリオを見つめ、口を開いた。

 

 

 

『かつて親が子へと向けた慈愛なる心。

子が親へ向ける純真無垢な心。

今の主からこの二つに勝る美しきモノは存在せぬと痛感されられる。

いつか廃れるモノであると知りながらも、また見守りたいと思う妾がおる。

 

 

さぁ妾を振るい己の愛を証明せよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

妾の名は....

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「“夢幻泡影 雑穢を祓え” 蓮華雹泉ッ!」

 

 

 




斬魄刀の設定は明記されていないと思うので持ち主のがこの世から消えると斬魄刀は残るが、能力は消えるという認識です。

(*根拠はないですが、要の斬魄刀を都合よく解釈しました。)

ですが、リオには父親の霊力を注ぎこまれたので、斬魄刀の能力は残っているという解釈です。


また夢幻泡影(むげんほうよう)とはこの世の全てという意味です。



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