白子と黒猫の誓い   作:ニルドアーニ四世

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白子と黒猫の誓い

同日夕方

 

 

 

 

夜一は後悔していた。己の無力を棚に上げてリオにキツく当たってしまったからだ。深く溜息を吐くと次にリオにどう謝ろうかと考えていた。リオの事情は父から聞いていたのにバケモノとつい口走ってしまった己に腹が立っていた。ふと左側にあった河原をチラッと見ると見覚えのある人がいた。それは今一番会いたくなかった人であると夜一は気付いてしまった。

 

「ぬォ!リオ!ど...どうしてここに?...泣いておるのか?」

 

白髪の持ち主が振り返ると頬は濡れており、目は潤んでいた。そう...リオは泣いていたのだ。それに気づくと同時に自分のせいだと理解し、顔色が真っ青になった。

 

「あらら...。バレちゃった...。」

 

リオは裾で涙を拭いた。その様子は大人びて才能ある四大貴族の当主だとは到底思えなかった。夜一が恐る恐る先程の失言を詫びた。

 

「あ〜あれ?全く気にしてないよ。ま〜事実だしね。」

 

リオが貴族らしくない軽い態度で夜一を許した。するとこっちが通常のリオであると理解した。だが一つ疑問が残った。

 

「のぅ?主はなぜ泣いておったんじゃ?」

 

夜一は自分自身でもなぜこんなに簡単にデリケートな質問ができるのかわからなかった。リオは少し考えるような仕草をした。

 

 

(見られちゃったから、誤魔化すより素直に話した方がいいよね。)

 

 

「まぁ君ならいいかな。誰にも言わなさそうだしね。」

 

彼は出会って間もない少女に己の秘密を教える気など到底なかった。だがなぜか彼女には何とも言えぬ暖かいモノを感じたのだ。後にこの出来事を振り返ったリオは彼女と出会うべくして出会ったのだと確信し、神と四楓院夜一に心の底から感謝をする事となる。

 

だがこの当時のリオはこの感情が何か理解できなかった彼は静かに夕日を見上げるとその様子を夜一はリオの趣のある横顔に見惚れた。だがすぐにその浮ついた心は消え去った。

 

「...僕は偽善者なんだよ。他人の前では信用されるように振る舞って、心の中では常に警戒し疑っている。僕は誰も信用してない。」

 

その言葉を聞くと夜一は目を見開いた。これまでのリオは本来のリオでなく、演じていたのだという事だ。そしてその辛さを物語るには十分すぎる哀愁漂う目をしていた。夜一はリオに何を言う事ができなかった。その様子を見たリオは再び静かに語った。

 

「僕の真っ白な身体とは違って僕の心はね。すっごく汚れてるんだ。どす黒いドロドロした液体で僕という存在を覆って僕でない僕を演じてるんだ。そうすれば誰も僕を嫌いにならない。愛されたいのに僕は誰も信用していないんだ。こんな汚い人間が愛されるわけないよね...。」

 

リオは下を俯き涙を浮かべ、歯を噛み締めながら右手で自分の心臓あたりの服の力強く掴むと己の心の苦痛を語った。その様子は自分と何一つ変わらぬ子供だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「...なんじゃそれだけか?」

 

二人の間に冷たい空気が漂った。夜一は呆れたような目をして、リオは予想外過ぎる反応に固まっている。そのままリオは静かに口を開いた。

 

「ただ自分の本心を曝け出すのが怖いのか?じゃったら気にするな。お主はお主が思う以上に世の中は冷たくないぞ。むしろ冷たいのは人を信じられぬ主じゃ。」

 

夜一はリオに淡々と語り出した。確かにそれは間違ってない。だがそれは安全地帯に住まう者の世間知らずな戯言であるとリオは思った。

 

「君にはわからないよ。父上の葬儀にも来なかった連中が僕の財産を狙いに来るんだ。そして常に命を狙われている僕の状況を...」

 

リオは時折感じる宗家の刺客の殺気を警戒しながら、日々を生活しているのだ。大抵はリオの戦闘の才を見て諦めるが、暗殺されかけたのは僅か二週間足らずでも一度や二度ではない。

 

「儂はお主じゃないんじゃ。分かるわけなかろう。じゃったらそのままでいい。儂がお主を愛してやる。それでいいじゃろ?儂を信じられぬのなら...。」

 

夜一は己の髪に両手を伸ばし、黒い髪留めを取った。そしてそれを手のひらにのせ、リオに差し出した。

 

「昔の尸魂界では自分の最も大切な宝を交換し合って誓いを立てていたらしい。じゃから髪止めをやる。その代わり主の一番の宝物を儂にくれ。」

 

リオは夜一の嘘のない言葉に心を動かされかけた。この人なら信用できるかもしれない。そして自分に開いた穴を埋めてくれるかもしれないと...。確かに人から愛されるには僕から愛せねばならない。夜一の言う通りだと

 

「僕の宝物...。一つだけある。両親が命をかけてこの世に生み出してくれだ僕自身()だ。だから君には“僕の全て()”をあげる。」

 

すると夜一はただ年相応に無邪気にニカッと笑った。そしてその夜一のただ心の温もりを感じた。夜一はリオの首に手を回し、黒い髪留めをリオの純白な美しい髪に留めた。

 

 

 

 

凍てつく氷の檻に閉じ篭もった少年は幼き黒猫の如き少女の愛によって溶かされた。そして少年はただ泣いた。己の温もりを含んだ涙を地面に落とし、己が温もりのある一人の人間であるという事を思い出した。

 

 

 

 

 

己で創りあげた牢獄に囚われし白き小鳥は純真無垢な黒き仔猫に解放された。

 

 

 




お願いします。マジで感想を下さい(笑)。良いのか悪いのかわかりません...。



色々急展開なので後でちゃんと番外編を載せておきます。せめてここまでは書きたかった...
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