angel beats! 〜来世の物語〜   作:kazegaiqpu

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結弦*奏のターン

「ずっと...ずっと一緒に...」

 

 

 

目覚まし時計の音で俺は目が覚めた。長い春休みの間に狂った生活リズムのせいで朝は気だるく、憂鬱な気分になる。

なんだかとっても、とっても長い夢を見ていたようなそんな気分に浸りながら俺は重たい体を起こした。

時刻は6時30分。普段ならばあと30分多く寝られるはずだが今日は入学式だ。高校2年になる俺にはあまり関係ないが、生徒会書記として、入学式に出席する義務がある。

せっせと服を着替え、顔を洗うと鼻腔に良い匂いが漂ってきた。

「おはよう」

「おはよう、おにーちゃん!」

扉を開け部屋に入ると母親と妹がすでに朝食を食べ始めていた。

どうして、こんなに早く起きても妹は元気でいられるのかと疑問を抱きながらも俺は「おはよう」と味気ない返事を返す。

 

いつもと変わらない風景、いつもと変わらない食卓。

いつもと変わらないはずの風景、いつもと変わらない妹。

あれ?俺は何を考えてるんだ?当たり前であるはずの日常。毎日過ごしてきたはずの日常。

 

「おにーちゃん。どーしたの?」

気づいた時には目からは大量の涙が溢れ出してきていた。

理由は解らない。当たり前であるはずの日常が偽物に思えて、偽物と思った日常が本物であってほしくて。

自分でも何を考えているかが分からなくなった。

ただただ涙が止まらなかった。

 

 

「これにて第70回入学式を終了します。1年生の方は決められたクラスに移動してください」

アナウンスに従い、体育館では慌ただしい音が響いていた。ただ俺は何も考える事は出来ず。体育館内が静寂に包まれるまで、椅子に座りこんでいた。

「どーしたんだよ音無?今日は元気がないじゃないか?」

ふと、ある男が俺に声をかける。

ただこの男の名前が出てこない。いや、この男だけではない。朝から出会った全ての人の名前がでてこなかった。

むこうは自然と、何十年も友達であるかのように、親しく話しかけてくる。自分は彼らのことを全くわからない。気味が悪かった。おかしくなりそうだった。

男はそんな事はつゆ知らず。不思議そうな顔をして、何やら一人で納得したように頷くと、

「もしかして、今日は生徒会長がいないからかなー?」

と、冗談交じりに笑っていた。

彼がその言葉を発した瞬間、俺には雷に打たれたような衝撃が走った。

「会長は今どこにいるんだ?」

「会長なら、持病が2日ほど前からでてきたから病院に...ってお前が一番知ってるんじゃないのか?お、おい!どこいくんだよ!」

俺はもう走り出していた。病院、病院にいけば彼女に会える。ただそれだけを思って。

 

「立華奏さんのお見舞いにきました」

「立華奏さんですね。3階の心臓内科Cの306号室です」

彼女の名前。なぜかそれだけは頭に思い浮かんできた。やはり彼女に会わなければならないという確信を持ちながら俺は部屋に向かった。

 

「失礼します」

扉を開くとそこには1人の少女が座っていた。

赤いワンピースを着た、1人の少女。

「あんた...だれだよ...」

彼女は何か言っていたようだが俺の耳には聞こえて来なかった。

違う、彼女じゃない。彼女は立華奏じゃない。

そこにいるはずだった白が似合う。向日葵が似合う。そんな彼女はいなかった。

俺は胸に手を押し当てた。心臓が、鼓動が激しく、激しく波打っている...それくらいの苦しみがあるのに、あるはずなのになぜか手には心臓の鼓動は伝わってこない。

あるはずの鼓動。あるはずの心臓。

そこで俺の意識は消えた。

 

 

次に目を覚ました時はベッドの上だった。

先程まで感じなかった心臓の鼓動は一定のリズムで刻まれていた。

「結弦?起きたの?大丈夫?」

ふと、優しく、柔らかい声が俺の耳に響く。

俺はその声のする方を向いた。

白いワンピースに季節ハズレの麦わら帽子。そこには間違いなく。音無結弦。彼自身が求めていた彼女がいた。

「え、でもさっきの人は」

「さっきの人...?あれは私の友達。お見舞いに来てくれてたの。トイレから戻ってきたら結弦が倒れていて...」

「そうだったのか...俺はもう大丈夫。それより奏も体は大丈夫なのか?」

「私は平気。手術して、1ヶ月になるけど時々、体の調子が悪くなるの。手術後にはよくあることだって先生もいってるから大丈夫」

何気ない会話。そんな会話に笑顔が溢れる。幸せが溢れ出す。

ずっと昔に。ずっとずっと昔からこんな風に話してきたようなそんな気分になる。

いつのまにか俺の目には大量の涙が溢れていた。

彼女は少し戸惑った様子で、心配そうにこちらを見ている。

「ずっと...ずっと一緒にいてくれるか...?」

ふと俺はこんなことを口ずさんでいた。

心配そうに見ていた彼女は少し笑顔になって。

「勿論よ」

と、それが当たり前であるという自信をもった大きく、だけど優しい声で答えた。

 

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