「もうすぐ通るよ、もかちゃん、ゆきちゃん」
「うん」
「まってよ~」
9年前、岬明乃と知名もえかと私如月ゆきの3人はとある岬へ向かっていた。体を動かすことが苦手な私は二人について行くのが精一杯だった。
だけど私は諦めずに二人についていく。
森のなかを駆け抜けると同時に大和型一番艦『大和』の勇姿があった。
二人が必死に手を降っているのを息を整えながら見ているだけの私。
「もかちゃん、ゆきちゃん。私達絶対ぜーったいブルーマーメイドになろうね」
「うん」
「海に生き!」
「海を守り!」
「海を往く!」
「「「それが、ブルーマーメイド!」」」
3人で語り合うのであった。いつかきっと憧れのブルーマーメイドになろうって……
だけどあの日、私はその夢を諦めることになった。
私は家族と一緒に船旅を楽しんでいた。だけど突然大嵐に巻き込まれ、船は航行不能になり沈没しかけていた。
「おかあさん……おとうさん……」
「ゆき、大丈夫よ。しっかり手を繋いでて」
「きっとブルーマーメイドが助けに来てくれる」
避難船に乗った私達は救援を待っていた。
「大丈夫だよね?」
私を安心させようと声をかけるおとうさんとおかあさん。私はその言葉を聞いて少し気が抜けた。
その瞬間、避難船が大きな波に襲われるのであった。
暗い海の中、私は………
『それじゃあ何かい?この子はあの事故の?』
『いや船長。あたいらもびっくりですよ』
『どうやらそうみたいですね』
『おいおい、乗客全員死んじまったっていう事故だろ。可哀想にこの子はそのただ一人の生き残りだって言うのかい?』
『ブルマーも間に合ってたら……』
『間に合っていてもあの嵐ではブルマーも犠牲が出たでしょうね』
誰かの声が聞こえる。誰だろう?おかあさんの声?でも違う
「おっと目が覚めたかい?」
「私……」
「よかったっすね」
「お姉ちゃんたち誰?」
私の前には私の二個上くらいの女の子が二人とおかあさんと同じくらいの歳の女性がいた。
「うちらはこの海で一番自由な組織『ブラックホエール』の一員っす。あたいはトシコ」
「私は波奈です。そしてこちらにいるのはブラックホエールのリーダー、安奈さんです」
「よろしく、お嬢ちゃん。名前を言えるかな?」
「………如月ゆきです」
「如月ゆきか……お嬢ちゃんに言うことがあるんだよ」
安奈さんが何かを言いかけた瞬間、私はすぐにあることを思い出した。大嵐、暗い海の中、私が手を離してしまった。
「お、おかあさんとおとうさんは?」
「非常に言い難いけどね。あの事故から一ヶ月経っているんだよ」
「うちらは海に漂ってるあんたを発見したっすよ」
「そして一ヶ月間眠り続け、今目を覚ましたということです」
ショックのあまり話がぜんぜん入ってこない。わたしはもう一人ぼっちなの?
「ショックだろうね。この歳で両親がいなくなっちまうなんて」
「それでどうします?ブルマーに連絡して保護してもらうっす?」
「そうですね。すぐに連絡をしましょう」
波奈さんがすぐに連絡を取ろうとした時、安奈さんがそれを止めた。
「ゆき、あんたが良かったらでいいけど……うちらの家族にならないかい?」
「いやいや、うちらみたいな過酷な生活をするより保護してもらったほうがいいですって」
「船長、どういう決断で?」
「ちょっとした気まぐれさ。どうだい?」
普通なら保護してもらったほうがいい。そのほうが今後の私のためになる。
だけどなぜだろうか?私はこの人達といっしょにいたいと思った。
だからこそ私は答えた。
「お、お願いします。私を家族に……」
「OK分かった。ゆき、あんたは今日から家族だ」
「いやいや、最後まで聞きましょうよぉ~」
「諦めて下さいトシコ。これが船長ですから」
こうして私はこの日、ブラックホエールの家族の一員となった。
9年後
改造型駆逐艦如月。その船に乗り組む一人の少女がいた。真っ白なコートに白い手袋を身にまといながら、艦橋へと訪れた。
「ブラックホエール第三部隊マリン・スノー。改造型駆逐艦如月艦長の如月ゆきです。皆さん海の自由とともに……」