ブラックホエールの基地
黒鯨艦橋にて安奈はパソコンに映し出されたある資料を見ていた
「なるほどね」
「何がなるほどなんですか?」
お茶を持ってきたもえ。安奈はお茶を受け取る。
「ゆきから送られてきた資料と写真なんだけどね。見てみるかい?」
「はい」
もえはパソコンに映し出された資料に目をやる。
「これは……ネズミですか?」
「ちょっと変わったね。ゆきはどうにもこのネズミが気になったみたいなんだよ」
「確かに見たことのないネズミですけど、ゆきちゃんはどうしてコレを大艦長に?」
「資料を見てみな」
「えっと」
もえは写真と一緒に送られた報告書に読み、。
『報告書。現在如月は第四部隊の修理、補給を受けています。進路は変わらず晴風と共に横須賀へ向かっています。今回同封した写真のネズミは晴風乗員が海に漂っていたアビスの箱の中に入っていたネズミです』
「荷物運搬中に事故で海に落としたんじゃないんですか?」
そう考えるのは普通だ。ネズミも遺伝子操作して作られた新種のネズミなのかもしれない。
だけど安奈はもえに資料をさらに読みように促す。
『ネズミは一時晴風にいる猫によって捕獲されたが、ネズミを保護した晴風砲術長が突然暴れだし、明石、間宮に機銃で発砲。シュペーの副長が彼女を勢い余って海に投げ飛ばす。海に投げ飛ばされた彼女は無事に艦に戻ると、普段と変わらない状態であった』
「この彼女とネズミがどう関わっているんですか?私には錯乱してこういった行動をしたようにしか思えませんが?」
「ゆきの目を忘れたのかい?あの子は人の感情を読み取ることが出来る。もし錯乱状態だとしたらこの報告書にそう書かれているはずだよ」
「だけど書かれていないということは……」
「何かあるんだと思っているんじゃないのかい?」
安奈はネズミの写真を眺める。
(まさかだと思うけど、このネズミが猿島、シュペーの件に関わっていたりしてね)
そんなことあり得ないと思いたいが、ゆきがよく言っている言葉を思い出した。
『あり得ないことがあり得る』
本当にそういう事が起きているのかもしれない
「そういえばまいが伊201と交戦したって聞いたけど、何か言ってなかったかい?」
「いえ、何も?そういえば東舞鶴男子海洋学校の伊201を回収した時、生徒たちが変なことを言っていたらしいですよ」
「らしいって、あんたもハッキングしたのかい?うちの子はハッキングするのが好きだね~」
「情報はどんな状況でも役に立ちますからね。それでその…言っていたことなんですが……」
『突然、潜水艦が操縦できなくなった』
それを聞いた安奈はある可能性を考え、もえにある指示を出した。
「もえ、伊201を回収したのは?」
「えっとホワイトドルフィンですが?」
「ホワイトドルフィンに連絡を入れな。伊201にネズミの死骸はなかったかって、もし死骸があった場合、全てが繋がるかもね」
「どういう事ですか?」
「それは調べてもらってからだよ」
安奈はある可能性を考えていた。猿島、シュペー、伊201の暴走。そして行方不明の艦。それら全てがこのネズミが関わっていると
そしてそれにゆきが気がつくかどうかを祈るのであった。
現在私達はしまさんの事情聴取が行われているため、岩礁近くで停泊していた。
そのためかちょっとした休息時間になっていた。
如月の乗員ものんびり過ごす中、私は自室にこもっていた。
「………」
自室に篭もりながら、私は今までのことを思い出していた。
「大丈夫。睦月との戦いの時、ついあんなことをしたけど……」
あの時は晴風を助けたいと思って、如月を傷つけてしまった。
そうしなければミケちゃんたちが危なかったけど……
「下手をすれば波奈たちだって危ない目に合わせていた。しっかりしないと……」
私がしっかりすれば誰も傷つかずに済むはず
私はずっとそうしてきた。
『艦長、報告したいことが』
扉越しから聞こえてきた声は波奈の声だった。一体何があったのだろうか?
「どうしたの?」
「武蔵を発見したとのことです。晴風は武蔵が発見された海域へ向かい、状況の報告をせよと命令を受けています」
「私達も行きましょう。これまでの猿島、シュペーの砲撃について何かわかることがあるかもしれないしね」
私はコートを羽織り、部屋から出た。
「……艦長」
「何?」
「あなたは……いえ、なんでもありません」
波奈は何かを言いかけるのであった。私はあまり気にせず艦橋へと向かうのであった。
次回武蔵との遭遇戦です。