壊れかける心
武蔵が発見された海域についた如月、晴風。
そこでは東舞校の教導艦が武蔵によって砲撃を受けていた。
「武蔵が攻撃したというの?」
「そうみたいですね。もしかすると武蔵の乗員に何かが起きているんだと思われます」
「乗員に何かが起きているとしても教導艦へ攻撃を行うのはおかしいと思うわ。それに生徒が的確に教導艦に向かって主砲を当てられると思う?」
歴戦をくぐり抜けてきた乗員がいるのならば分かるけど、入学したての子がこんな風に教導艦に攻撃を仕掛けられるとは思えない。
おまけに砲撃が的確すぎる。ラッキーで当てられたとは思えない。
「距離を取りつつ、武蔵の動きに注意!危険だと判断したら直ぐに撤退するわよ」
現状できる事はこれしかない。
晴風の艦橋では、明乃が双眼鏡で武蔵を見つめた。
「もかちゃん……」
「艦長、我々は学校より報告と状況説明のみと指示を受けています」
「判ってるよ」
だけどあの武蔵にはもえかが乗っている。きっともえかが助けを求めているに違いないと思った明乃はある決意をした。
「しろちゃん。私行くね」
それを聞いたましろは明乃を怒鳴りつけた。
「いい加減にしろ!!私達が言われた事は状況報告だ!!それに自分の艦を放棄して出て行く艦長がどこの世界にいる!!海の仲間は家族じゃないのか!!この艦の乗組員は家族じゃないのか!!どうなんだ答えろ!!」
ましろは明乃の肩を掴みながら静かにある言葉を告げた。
「ここは護るべき家じゃないのか?」
「もかちゃんが……私の幼馴染があそこにいるの。大事な親友なのに見捨てる事なんて出来ないよ……晴風は武蔵の射程外に出て!!」
明乃はそのまま艦橋を飛び出していく。
「取り舵一杯!」
「と、取り舵一杯」
「武蔵との距離をこのまま維持!私は艦長を追う!」
艦橋を飛び出した明乃を追おうとするましろ。だけど艦橋に麻侖の声が響いた
「副長まで離れるのはおかしいだろ!さっきクロちゃんが艦長のとこに向かった!」
「黒木さんが……」
スキッパーに乗り、海上へと出ようとする明乃。だけど洋美が呼び止める
「何処に行くんですか!岬艦長!」
「クロちゃん……」
「貴方がそうやって飛び出すから、あの人が、ゆきさんが心配するんですよ!」
「ゆきちゃんが?」
「貴方がそうやって人を助けに行こうとしたい気持ちが先走るのは、ゆきさんの事があるんですよね」
明乃はただ頷いた。自分が海の仲間を助けに行くのは洋美の言うとおりだった。
「貴方が飛び出して行く前にやるべきことがあるはずです!」
「やるべきこと……」
明乃は考えこんだ。今自分がするべきこと。それは武蔵を助けることじゃない。武蔵の状況を確認する。
それが学校に命じられたこと
「…………」
「艦長?」
「クロちゃん、やっぱりいくね」
「なっ!?」
「でも、武蔵を助けるために行くんじゃない。助け出すために少しでも手がかりを見つけたいの!無理だと思ったら直ぐに戻るから……シロちゃんに、副長に距離を取りつつ、私の後を追うように伝えておいて」
助けに行くのではなく、助けるための手がかりを見つける。さっきスキッパーで飛び出そうとしている時とは違い、感情的ではなく明乃がやるべきことを考えた結果だった。
「……無理だと思ったら本当に戻ってきて下さい」
洋美はこれ以上止めることは出来ないと思い、明乃を見送るしか出来なかった。
如月でも明乃がスキッパーで飛び出していくのが見えた。
「ミケちゃん!?波奈、晴風に確認を!」
「了解しました」
波奈が晴風に連絡をとっている中、私はミケちゃんを見つめていた。
(どうして、二人にミケちゃんが無茶しないように言ったのに……止められなかった?)
今すぐにでもミケちゃんを助けに行きたい。だけど私が個人的にそうしたいだけ。
如月の皆を巻き込むことなんて出来ない。
与えられた任務を……
「艦長、どうやら晴風艦長は武蔵の状況を近くで確認するとのことです。晴風はなるべく近くで回収できるように動くみたいですが、私達はどうしますか?」
波奈がなにか言っているけど、何も聞こえない。
「どうしたんっすか?」
「調子悪いの?ゆきちゃん」
トシコ、楓も何か言っているけど聞こえない。
「このままずっと待機していれば晴風が危ないかもしれないよ」
キリも何か言っている?
何も聞こえない?何もわからない。私は与えられた任務をするだけ。
与えられた任務って何?
ミケちゃんを助けること?武蔵を止めること?如月を……マリン・スノーのみんなを守ること?
わからない。もう何もわからない。
もう何も考えたくない……
そう思った瞬間、私の意識は遠のいていくのであった。
武蔵の近くまでより、なるべく情報を集めようとした私だったけど、漂流物にぶつかり、海に投げ出されてしまった。
「うっかりしてた……でもモカちゃんは無事だった」
モカちゃんが無事だということだけでも十分な情報だ。晴風に戻ってみんなに……学校に伝えないと
「晴風に戻ったらシロちゃんとクロちゃん、晴風のみんなに謝らないと」
あんなことを言って現場を離れたんだ。きっとシロちゃん怒ってるだろうな~
「ゆきちゃんにも教えないと」
晴風がこちらに向かってきた。私はスキッパーに乗りながら、霧の中に消える武蔵を見つめるのであった。
「きっと助けるからね。モカちゃん」
晴風に戻るとシロちゃんが慌ててやってきた。
心配かけちゃったよね。すぐに謝らないと……
「シロちゃん、さっきのことなんだけど……」
「……が……しました」
「えっ?」
一瞬何を言ったのか聞き取れなかった。シロちゃんは息を整え、あることを告げた。
「ゆき艦長が倒れました!!」
「ゆきちゃんが?どういうこと?」
「いきなり倒れたらしいとしか、今晴風と如月を接舷し、晴風の医務室に運ばれました」
「そ、そんな……ゆきちゃん」
次回は機雷の話をやらず、オリストになります。