ハイスクール・フリート Freedom   作:水甲

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今回でオリスト終わりです。

今回はゆき視点です


18

目を覚ますと見慣れない天井が最初に見えた。

 

「ん、」

 

いや、見慣れない天井ではなかった。ここは晴風の医務室。

 

「………私は」

 

「ようやく起きたみたいだね」

 

「美波さん、どうして私はここに……」

 

「貴方は武蔵と遭遇した時に倒れたの」

 

そういえばあの時、ミケちゃんの姿を見て自分が何をするべきか分からなくなった。頭の中がごちゃごちゃして……

 

「倒れた私は晴風に運ばれたのね。状況は?」

 

「私が聞いている限りでは、武蔵は霧の中に姿をくらました。私達は今、その武蔵の捜索を続けてる」

 

武蔵の捜索………確かに現状でやることはそれだけかもしれない。

 

フッと机の上に置かれている灰色のネズミが入った箱が目に入った。

 

あのネズミは確かあの時の奴に似ている気がする

 

「……美波さん、そのネズミは?」

 

「これはネズミというべきか微妙な所」

 

「どういうこと?」

 

「実は……」

 

美波さんが言うには遺伝子操作されたネズミの一種で、このネズミにはウィルスが確認され、そのウィルスはしまさんの血液中にも確認された。

 

このウィルスは電波障害、電子機器の操作不良が起き、更には人に感染した際には凶暴化させてしまうらしい。

 

「前に捕まえたネズミを解剖して調べてみた。おかげでウィルスの抗体が出来つつある。あとは……」

 

医務室の伝声管からミケちゃんたちの声が聞こえた。どうやらウィルスは海水にも弱いらしいという事が分かったみたいだ。

 

「ミケちゃん、無事だったんだ」

 

美波さんが伝声管で話を終え、私にあることを伝えた。

 

「とりあえず艦長が話があるらしい。私は席を外しておくから」

 

美波さんがそう言って医務室を出て行くのであった。

 

話があるって、何のことだろう?

 

もしかして倒れちゃって心配かけちゃったかな?

 

そんなことを考えていると勢い良く扉が開けられ、ミケちゃんが入ってきた。

 

「ゆきちゃん……」

 

「ミケちゃん……おはよう」

 

笑顔でそう言うけど、ミケちゃんは俯きながら私の隣に座る。

 

「ゆきちゃん、その笑顔は本当にゆきちゃんの笑顔なの?」

 

「………どういうこと?」

 

私の本当の笑顔って、ずっとミケちゃんに見せてきたのが私の笑顔じゃないの?

 

「再会してからゆきちゃんが見せてくれる笑顔は何だか不自然っていうのかな?心の底からの笑顔だと思えないの」

 

「そ、そんなことは……」

 

「倒れた理由、トシコさんがもしかしたらって言ってたんだけど、自分でもどうすればいいのか分からなくなったからなんだよね」

 

トシコは鋭いな……ううん、きっと如月の皆もそのことに気がついているはず。

 

「私はゆきちゃんのことやあの時のことがあるから、つい感情が先走っちゃうの」

 

ミケちゃんは自分の悪い癖について解ってるんだ。

 

「でも、ゆきちゃんはどうして感情を抑えこんじゃうの?」

 

「………」

 

知らないうちにそうなっていたんだと思う。

 

私は与えられた任務をこなしていけばいいんだって思っていた。

 

そして感情的になってしまうことが悪いことだって決めつけて、抑えこんじゃっていた。

 

「私はずっと思っていたの。感情的になったら皆のことを救えないって、もし感情的になったら、皆を傷つけることになるって……」

 

「ブラックホエールでそう言われ続けたの?」

 

「ううん、ただ私がそうしなければいけないって思ってたの。そうすればみんなが傷つかずに済むんだって」

 

だけど睦月との戦闘の時、ミケちゃんを助けたい一心で飛び出していた。

 

私はそれが失敗だと思っていた。

 

「でもね、武蔵と遭遇した時、ミケちゃんが飛び出すのを見て、ミケちゃんを助けにいくべきか、武蔵を止めるべきか、みんなを守るべきか、どうすればいいのか分からなくなったの」

 

そのせいで私は倒れてしまった。

 

「もしかするとミケちゃんが言う私の笑顔は、感情を抑えこんじゃっているからできなくなったのかもしれない」

 

「……ゆきちゃん」

 

ミケちゃんはそっと私のことを抱きしめてくれた。

 

「ゆきちゃん、無理しなくていいの。自分が一番したいことをした方がいいよ」

 

「でも、皆に迷惑を……」

 

「シロちゃん達が言ってくれたの。私が無茶しても皆が助けるって……きっと如月の皆もゆきちゃんを助けてくれるから……迷惑なんだって思わないで……」

 

「ほ、本当に、本当に迷惑じゃないの?」

 

「本当だよ。だって如月の皆はゆきちゃんの事が大好きだから」

 

ミケちゃんの言葉を聞いて、何だか心が暖かくなっていくのを感じた。

 

「ミケちゃん、ありがとうね」

 

子供の頃からミケちゃんに助けてもらっている。

 

私が一人でいた時もミケちゃんが話しかけてくれた。

 

そして今もミケちゃんに助けてもらった。

 

だから私は大好きなミケちゃんや大好きなモカちゃんのために……

 

私は笑顔で言うのであった。今するべきことを……

 

「ミケちゃん、一緒にモカちゃんを助けよう」

 

「ゆきちゃん、うん!一緒にね」

 

きっとこの笑顔は心からの笑顔なんだと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ミケちゃんとの話が終わり、私は如月に戻るとトシコが心配そうに声をかけてくれた。

 

「ゆき!?起きたんっすか?」

 

「うん、ごめんね。心配かけて」

 

「いきなり倒れたから心配したよ~」

 

「病気とかじゃないみたいだね」

 

楓もキリも心配してくれていた。きっと機関室にいる雨も心配しているはずだ。後で行かないと……

 

すると艦橋に波奈が入ってきた。

 

「ゆき……」

 

「波奈」

 

波奈は私に近寄り、思いっきり頬をひっぱたいた。

 

叩かれた頬は凄く痛かったけど、叩いた波奈の方が何だか辛そうにしていた。

 

「どうして……ゆきはそうなの!いつも自分がしたいことを言わないでいられるの!」

 

波奈は泣きながら言い続けた。

 

「ずっと皆が心配してたのよ!ゆきが全然泣かなくなったって、全然笑ってくれないって、笑っても何だか作り物みたいで……」

 

それが感情を押さえ込んでいた結果なんだろうな……

 

「お願いだから……わがままを言って……私達は迷惑だって思わないから」

 

ミケちゃんの言うとおりだ。みんな迷惑だって思ってなかった。

 

「………波奈、トシコ、楓、キリ、雨、ごめんね。今まで心配かけたよね。だからこそ、これから私のわがままを聞いてもらいたいの」

 

今、私がしたいことは武蔵を助けに行くことだ。だけどそれは一人ではない

 

「如月の皆と晴風の皆で武蔵を……大好きなモカちゃんを助けに行きたい!お願いできる?」

 

「………これは副長としてではなく、ブラックホエールの家族として、貴方の姉として返事します。一緒に行きましょう、ゆき」

 

波奈が笑顔でそう言うと私も笑顔でこう言うのであった。

 

「お願いね。波奈お姉ちゃん」

 

「なっ!?お姉ちゃんは……その」

 

「だって姉としてって言ったじゃないの。だからお姉ちゃんで」

 

「そ、それは……」

 

恥ずかしがる波奈、トシコはというと

 

「いいな~うちも姉扱いして欲しいっす」

 

羨ましがるトシコ。でも、トシコは姉と言うか……

 

「トシコはトシコとしか見れないわね」

 

「うぅ~ひどいっす」

 

「何だかゆきちゃん、変わったね」

 

「そうね。アレが本当の艦長なんだと思う」

 

楓、キリの二人がそんなことを言っているのが聞こえた。

 

二人もありがとうね。そしてこれからもよろしくね

 

もう迷わない。何があろうと私は自分がしたいことをする

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方機関室では……

 

「艦長、すっきりしたみたいね」

 

雨が独り言のように言っていた。だけど雨のそばには狐がいた。

 

「あの岬艦長のおかげだね。狐さんもそう思わない?」

 

「……………」

 

「だんまりか。別にいいけど……」

 

「………だが」

 

突然仮面越しから聞こえた声、雨は狐の声を初めて聞き、驚いていた。

 

「初めて聞いたわね」

 

「喋る必要はなかったから……」

 

「意外と可愛い声してるわね。でも今はそんなの関係ないか。それで、なにがだがなの?」

 

「………武蔵を助けるということは超弩級戦艦と戦うこと。晴風や改造されているとはいえ如月で戦えるのか?」

 

「心配はないわ。前の艦長なら戦えなかったけど、今の艦長なら……ううん、艦長たちなら救えるはず」

 

「……私はそれを見届ける。ただそれだけ」

 

そう言い残して、狐は姿を消した。残った雨はため息をつき

 

「さて、私も頑張りますか」

 

 

 

 

 




ゆきが変わり、明乃たち艦橋メンバーも変わり始めましたね。

次回は嵐の話です。

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