如月
艦橋で私と波奈、トシコの3人で海図を見ながら武蔵の行動の予測を行っていた。
「このマークがされているのが武蔵が目撃された場所です」
「見る限り本土に近づこうとしているわね」
「横須賀女子海洋学校からは武蔵を追いかけろって言われてるんっすよね」
「晴風はね。私達は晴風の護衛艦として行動をともにしなきゃいけないから……」
私がそう言った瞬間、トシコが私の頭にチョップを入れた。
「それだけじゃないっすよね。ゆき」
「そうだったわね。私はモカちゃんを助けに行きたい。もし大艦長に止められたとしても……」
「そうっす。ゆきがしたいことをするのが今の如月っす」
「そうですね。そしてそれに付き合うのが私達だから」
「ありがとう。トシコ、波奈お姉ちゃん」
「ですから!そのお姉ちゃんはやめて下さい!!」
顔を赤らめる波奈。私的にはお姉ちゃん呼びの方がいいんだけどな~
「とりあえずは晴風に連絡を入れて、今後の方針を考えましょう」
私は早速晴風に連絡を入れようとした時、艦橋に設置してある電話が鳴り響いた。
「はい、艦長のゆきです」
『あっ、ゆきちゃん』
電話の相手はミケちゃんからだった。
もしかしてミケちゃんたちも今後の方針のために連絡を入れてきたのかな?
「どうしたの?」
『その、本当に申し訳ないって思ってるんだけどね』
「う、うん」
『如月のお風呂を貸してほしいの』
「………はい?」
一体晴風に何があったんだろう?
ミケちゃんから事情を聞く限り、どうやら水漏れが起きているらしく、補給するにも合流できるのは五日後らしい。
だからこそ如月に連絡を入れたみたいだ。
「なるほどね。そういうことなら、波奈」
「そうですね。非常事態ですから一時晴風の乗員をこちらに移しましょう。ただし、如月にいる間、乗員はこちらのサポートをおねがいしますね」
「あとは乗員が移った分、こっちからも手を貸してあげよう」
「はい」
「そういう事になったんだけど、大丈夫?」
『うん、ありがとう。ゆきちゃん』
こうして私達如月と晴風の共同生活的なものが始まるのであった。
共同生活と言ったものの、そこまで大変なことではなかった。
みんなお風呂を借りた後、波奈に言われたとおり各自割り振られた役割をこなしていく。
私と波奈の二人は艦橋でその様子を見ていた。
「やっぱり晴風のみんなは優秀ね」
「そうですね。心配していたことにならなくって良かったです」
「心配してたことって?」
「お風呂を借りるだけ借りて、そのまま晴風に戻ったりとか……」
「流石にそれはないよ。そんな事するような子達には思えないからね」
「はい、あと艦長、今晩こちらに乗員予定は岬艦長、宗谷副長、納沙幸子、ヴィルヘルミーナです」
「こっちからは波奈とトシコの二人ね。頼んだわよ」
「はい」
フッと前を見てみると霧の掛かった海域が見えた。
私は霧の中での接舷は危険だと思い、ミケちゃんたちに連絡を入れ、霧の中に入る前に接舷を行うのであった。
霧に入りながら、艦の探照灯と汽笛が鳴らした。すると晴風にとっては恵みの雨が降った。
晴風の皆は水着で外に出て、全員が水を貯水する為にバケツを持って水を溜め始めるのであった。
だけど恵みの雨は長く続かず、すぐに雨が強くなり、雷が鳴り響いた。
私は自室で外の様子を気にしていた。
「すごい嵐ね」
「そうですね。霧の中に入る前にこちらに来れて良かったです」
私の部屋に泊まる予定のましろさんが自分の職務をしながらそう言うのであった。
「今日はみんな泊まっていって、部屋なら空いてるから」
「部屋が空いてるって、第三部隊って7人しかいないんですね」
「えぇ、第三部隊は再結成されたばかりだからね。人数も少ないの」
駆逐艦とはいえ、7人で艦を動かすのは不可能だけど、雨や第四部隊の夕のおかげで少ない人数でも艦を動かせるようになっている。
それでも足りない部分は皆で補っていたりする
「でもこうして皆が手伝ってくれているから、色々と助かってるわ」
「い、いえ、そんなことは……ただ」
ましろさんはある二人に目をやった。
私の部屋のテレビで幸子さんとミーナさんが極道ドラマ見ていた。
「眉毛抜く事も」
「同じ事げんね」
ドラマのセリフをミーナと幸子が言う。
「ここ良いよな」
「激しく同意であります」
「何でゆき艦長の部屋で見てるんだ?」
「あっ、私達の部屋にテレビが無いんで」
「副長とゆき艦長も見るか?」
ましろさんはため息をつき、見るのを断るのであった。
「すみません、ご迷惑をかけて」
「いいよ別に、テレビ見によく皆が来たりするから」
「テレビって艦長室だけですか?」
「ううん、副長室にもあるけど、波奈はあんまり部屋に人を入れたがらないの。だから基本的に私の部屋って事かな」
その時、誰かがノックしてきた。私はそのノックの主が誰なのかわかっていた。
『あの、ゆきちゃん、いいかな?』
「うん、開いてるからいいよ」
扉を開けて入ってきたのはミケちゃんだった。
だけどミケちゃんは凄く怯えた表情をしていた。
「その、当直代わってくれる」
ミケちゃんがそう言うと幸子さんとミーナさんが極道スタイルを取りながら尋ねた。
「どうしたんなら?」
「言うてみ」
幸子さんとミーナさん、すごくノリノリだけど、ミケちゃんはそんな事を気にしていられるほど余裕がなかった。
「ちょっとすごくて……」
「何がじゃ?」
「言うてみ」
幸子さんとミーナさんのやり取りを見て、ましろさんは呆れながらも、ミケちゃんの言葉を待っていた。
「……雷」
「そうか……判った。ほういじゃ。行って来るけぇの」