ある海域のとある無人島
その無人島周辺の海域には色んな噂が流れていた。一度訪れた船は沈没する。船員たちの幽霊が船を求めて無人島に引き寄せる。
そう言った怖い噂が流れているがそんなものは嘘みたいなものだ。
私たちが乗る如月は無人島の裏手にある巨大な空洞へと入り込むとそこには超弩級戦艦ドレットノートをモチーフにした黒鯨の姿があった。
黒鯨はいうなれば私達ブラックホエールの象徴というべき戦艦。私は黒鯨の艦橋に入り、
「ブラックホエール第三部隊マリン・スノー。改造型駆逐艦如月艦長の如月ゆきです。ただいま処女航海を終え戻ってきました」
そう告げると目の前にある椅子に座った女性が立ち上がりこっちを向いた。
「おかえり、どうだった?」
「凄く楽しかったです。安奈大艦長」
その人物はブラックホエールリーダーであり、私の恩人である人だった。安奈大艦長は笑顔で私にこう告げた。
「そうかい、それは良かったね。あれから9年……一杯頑張ったもんね」
大艦長は目を潤ませていた。
「もう涙もろいんですから……」
「おっとすまないね。年をとると涙もろくなってね」
そのセリフは何回も聞きました。でも娘が成長したのを見ると涙もろくなるって聞いたことあるけど……
「それで何か聞きたいことがあるって顔してるけど?」
「あぁそうでした。第三部隊の乗組員の人員についてなんですが……」
「ありゃそれなりに優秀な奴らを組ませたんだけどね?問題でも」
「いえ、特に不満は有りませんがどうして波奈とトシコが私の船に?あの二人は黒鯨のメンバーだったのに……」
波奈とトシコは私にとってお姉さんであり、先生でもある人物。一緒に航海をするのは嬉しいけど…‥…
「そうだね。理由は慣れてる子がいたほうがいいと思ったから。あの二人はずっと黒鯨の一員として頑張ってきたからこそ、ゆきのサポートを任せられるからさ。そしてもう一つはあの子らが頼んできたからさ」
「頼んできたって……えっ?」
「妹のことが心配だってね」
「トシコに波奈が……」
嬉しくて何だか泣きそうだ。あの二人にこんなに愛されてるなんて……
「あとは何かあるかい?」
「いえ、特に有りません。大艦長、私はこれで失礼します」
「ちょっと待った」
そのまま艦橋を後にしようとした時、大艦長が呼び止めた。
「補給に整備はすぐに終わるだろうし、ゆきに……マリン・スノーに頼みたいことがある」
「頼みたいこと……任務ですか?」
ブラックホエールは海で一番自由な組織。それは何者にも縛られることは無いということではなく、ブルーマーメイドやホワイト・ドルフィンでは対応できないような事件や事故に対応できる組織でもある。
そのため色んな任務を頼まれることが多い。
「知人からの依頼でね。少し前に横須賀女子海洋学校の新入生の訓練航海にて晴風が教官艦猿島に発砲し撃沈。逃走したという情報が流れた」
「晴風ってあの試験用の機材を搭載しているため同型艦よりも高速ではあるが、機関の高圧缶は故障も多く、その分安定性に欠けるっていう船ですか?」
「よく知ってるね」
「波奈からあそこの学校の艦のデータを見せてもらいましたから」
「ハッキングしたのかい?あの子は……まぁいいさ」
「それで私達の任務は晴風を追い、撃退することですか?」
「違うね。晴風を追って……真相を知ること。正直学生が乗る艦が反乱なんておかしいだろ」
「そうですね。そんなことをしたら馬鹿にでもどうなるかわかりますね」
どこかの海賊がブルーマーメイドに喧嘩を売るっていうのならわかる。上手く行けば沈没くらいは出来るだろうし……だが学生が……それも新入生がそんな馬鹿げたことをするのはありえないこと
だが実際そのようなことが起きているということは……ありえないことがありえているということ。
「黒鯨は別ルートで調べてみるから、ゆき達は追跡して乗員と接触をして、その後はあんたの自由さ。そこら辺は融通聞くように言っておいたよ」
「了解です。では……」
「リストの方はいいのかい?もしかしたら何かに……」
「いえ、私は自分の目で見てどうするか考えますので……海の自由とともに……」
私はそのまま艦橋を後にした。
私が去った後、大艦長は乗員のリストに目をやった。
「艦長は岬明乃か……」
如月に戻り、すぐに各長たちを集めた。
艦長は私如月ゆき。白いコートに白い手袋を身にまとい黒く長い髪をしている。
副長は水無月波奈。頼りになる如月の知恵。髪は私より短いけど何故かすごく大人っぽい。
砲術長は橋本トシコ。元気が取り柄な子。真っ赤な髪はキレイなのにいつもボサボサ。何だかもったいない。
水雷長は大元楓。青く短い髪の子。私と同じくらいの時期にブラックホエールに入ったから凄く仲が良い。
航海長は林キリ。黒い髪に三つ編みの子。何故か急にニヤける
機関長+整備長の蘭堂雨。いつも白衣を着ている。すごく優秀だけどたまに艦におかしな装備を身に着けたがる。この間はドリルをつけようと言い出すし……
マリン・スノーは配属された乗員は少なく、他の仕事も受け持っている。私は艦長+衛生兵でもある。
「今回の任務について質問はありますか?」
今回の任務をみんなに話し終えると波奈が挙手した。
「どうして乗員リストを受け取らなかったのですか?少しでも情報はあったほうが良いと思いますが……」
「ごめんね。本来ならもらうべきだけど真相を知らない内に乗員のリストを見ても意味が無いから」
「ですが……」
「いいじゃんか」
反論しようとする波奈を制すトシコ。トシコは笑顔で話を続けた。
「リストなんて見てさ、そいつの裏側まで見れるわけ無いだろ。おまけに波奈も知ってるだろ。ゆきの目をね」
「……そうですね。ゆき艦長ならすぐに解りますから……」
しぶしぶ納得する波奈。トシコは私のありえないような力を信じてくれる。
「はい、艦長!」
今度は雨が挙手をした。
「もしも晴風が接近する私達に攻撃をした場合はどうしますか?」
「交戦します。無力化したのちに晴風に掃除員の狐さんを送り込みます」
フッと私達から離れた場所にいる狐の面をつけた女性。掃除員の狐さん。本名は秘密らしく見た感じ怪しいけど、艦のネズミやGの殲滅。そして何故か白兵戦も得意とする。
「…………捕縛でいいのか?」
「はい。それと雨、如月の武装は?」
「普通の魚雷に普通の主砲。あとは艦長が許可してくれたアンカーと突撃は可能だよ。もう少し時間があれば強力な……」
「分かりました。それと例のアレは可能ですか?」
「あれは可能だけどさ……長い間は使えないよ。変形は魅力的だけどいまいち完璧に遠いんだよね……」
アレが可能ならば奇襲も可能ですね。奇襲の前にあちらに通信でも送って警告しておきますか。
「ではみなさん、海の自由とともに……改造型駆逐艦如月出撃します!!」
次回、晴風と遭遇戦。