ミケちゃんが私の部屋を訪ねてから、時間が過ぎ、0時を過ぎた頃、
ミケちゃんはホットミルクを少しずつ飲んでいた。
ミーナさんは普段と違うミケちゃんが心配なのか部屋にいた。
「そろそろ、寝たいんですが……」
ベッドの上で読書をしていたましろさんがミケちゃんにそう言う。
だけどミケちゃんは一向に帰ろうとしなかった。
「そんなに雷が怖いのか? 雷は臍を盗ったりはせんぞ?」
「雷が怖いっていうか……」
「だったら、なんじゃ?」
ミーナさんの質問に、ミケちゃんは俯きながらポケットからもう一つの懐中時計を取り出した。
「ただ、思い出すから………」
それはゆきちゃんがあの事故で行方不明になるずっと前のこと、
私たち家族が乗っていた客船が座礁した。小さい私には何が起きたのか判らず、立ちすくんでいた。そんな時お母さんが私の手を引き、客船の甲板の上に両親と一緒に立っていた。
「明乃、早くここから飛び降りなさい」
「急いで」
お母さんとお父さんの言葉に私は一緒に飛び込もうと言おうとした。
だけど船は大きく傾き、私達は海に投げ出されてしまった。
運良く私は救助ボートに乗せられたけど、両親の姿は救助ボートの上には無かった。
私は精一杯の声で両親を呼んだけど、返事は返ってこなかった。
「私がもっと早くに飛び込んだらお父さんもお母さんももしかしたら………」
ミケちゃんの話を聞き、部屋は静かだった。そんな時、ましろさんがあることを思い出し、私に尋ねた。
「もしかして以前ゆき艦長が言っていたのは……」
「うん、この事だったの。あんまりこういう事は他人が言うべきことじゃないし……」
また部屋が静まり返る中、伝声管から幸子さんの声が聞こえてきた。
『艦長!救難信号です』
それを聞いた私たちは急いで艦橋へと向かうのであった。
「救難信号ってどこから!」
艦橋にたどり着いた私達は幸子さんに状況を聞くのであった。
「新橋商店街船です。全長135m、総トン数14000。現在左に傾斜し船内に浸水している模様」
「この事は晴風にいる波奈たちには?」
私は幸子さんと一緒に当直をしていたキリに尋ねた。
「もう伝えてあるよ」
「ブルーマーメイドに連絡をしてちょうだい!ミケちゃんは学校にもお願い」
「うん、分かった」
キリはブルーマーメイドに、ミケちゃんは学校に連絡を取る中、私は新橋商店街船の艦長に通信を入れた。
「こちらブラックホエール第三部隊マリン・スノーの如月ゆきです」
『ブラックホエール!?』
「現在我々は晴風の護衛として一緒にいます。状況の報告をお願いできますか?」
『分かった。バラマの南東13マイル地点で航行中に暗礁に乗り上げました。座礁時刻は15分前。現在も船体中央部が着底しています』
けが人、浸水状況、火災の有無の確認していき、50分後に到着すると伝えた。
「楓、波奈に連絡!晴風乗員で手が空いている子は準備をするように!」
「了解です」
「ミケちゃん、悪いけど晴風の指揮は波奈に任せるね」
「うん、私達はこっちで出来ることするね」
「ましろさん、ミーナさん、幸子さんもいいよね」
三人はそのまま頷くのであった。
事故があった場所までたどり着くと、もう嵐は去っていた。
「天気晴良なりし波高し」
「晴れたな」
「低気圧は西に移動した模様です」
「傾きは40度ぐらいか」
幸子さんはタブレットで現状を報告し、ましろさんは傾きを調べていた。
「50度を超えると転覆する危険性が高まるぞ」
「とりあえずは準備ができるまで待ちましょう。ミケちゃん、」
「何?ゆきちゃん」
「助けようね」
そう告げるとミケちゃんは笑顔で……
「うん」
みんなの準備が完了したことを確認すると、私は更に指示を出した。
「ましろさん、ミーナさんは狐さんと一緒に救助隊と合流。ましろさんは指揮の方をお願いね」
「わ、私ですか?」
「うん、私はここを離れられないからね」
「ゆきちゃん、私は?」
「ミケちゃんは待機。私達ブラックホエールは救助活動は初めてだからね、気がついたことがあったら言ってほしいの」
「うん、分かった。しろちゃん、みーちゃん、気をつけてね」
「分かりました」
「所で如月艦長、狐って言うのは?」
「狐さんならそこにいるよ」
私が指をさした所にいつの間にか狐さんがいた。
ましろさんたちは狐さんを見るのは初めてだから驚いていた。
「狐さん、救助隊のサポートをお願いね」
狐さんは頷く。
ましろさんたちは狐さんと一緒に救助隊と合流しに行くのであった。
救助が順調に進む中、ましろとミーナの二人は艦内に取り残された多聞丸の捜索を行っていたが、
商船の船体中央部分が割れ、艦尾の方が持ち上がったのだ。
ミーナは何とか脱出するが、ましろと小さな猫多聞丸は取り残され、更には大量の水がましろさんたちを襲った。
ましろはコンビニの棚の上に避難をするが、取り残された恐怖で身体を震わせていた。
「怖いよな………私も怖い。なにしろ、私は…運が悪いし……」
そんなましろを猫が励ますように鳴いていた
「このままじゃ駄目だ。何とか脱出を……」
ましろがダクト内に入ろうとした時、浸水した水の中から何かが飛び出してきた
「なっ!?」
ソレは棚の上に座り込んだ。現れたのは狐だった。
「あ、あなたは確か……」
「ダクト内に入るのは危険だ。もし救助に来たブルマーが気がつかなくなる」
「それじゃこのままここでじっとしてろって言うんですか!?」
「そうは言ってない。道を作る」
狐は懐から小さな銃を取り出した。
普通なら拳銃を見たら驚いたりするところだが、ましろはその銃が何なのか分かってしまった。
「そ、それって……水鉄砲!?そんな玩具で……」
「ただの玩具じゃない。如月の整備長が作った改造型だ」
狐は銃を天井向けると同時に高圧の水が発射され、天井を繰り抜いていく
「超小型のウォーターカッターだ。これで上まで行くぞ」
「は、はい」
救助活動を行っていたブルーマーメイドが、突然吹き上げた水柱に驚いていた。
「あ、あれは一体!?」
水柱が無くなると同時にそこからましろを抱きかかえる狐が出てきた。
「………」
「外に……出れたのか?」
外に出れたことで泣きそうになるましろさん、狐はそんな彼女をそっと降ろすと、こっちにやってくるブルーマーメイドを見て、狐は姿を消すのであった。
「あの人は……まさか」
ブルーマーメイドの一人がそう呟くのであった
それから多聞丸はましろさんになついてしまったためか、飼い主が多聞丸を預かって欲しいと言われ、ましろさんは多聞丸を預かることに、
そして美波さんはブルーマーメイドにネズミの報告書を渡すのであった。
艦橋に残っていた私とミケちゃんは……
「良かった、シロちゃん無事で……」
「うん、狐さんのおかげだね」
私はましろさんの無事を知り、安堵する中、ミケちゃんは私の方を見て……
「ゆきちゃん、モカちゃんに昔言われたこと覚えてる?」
「うん、覚えてるよ」
ミケちゃんの両親が亡くなったしばらくした日のこと、落ち込むミケちゃんにモカちゃんが言った言葉、
『海の仲間は家族みたいなもの。ブルーマーメイドになれば家族がいっぱい増える』
「救助された時も、モカちゃんのあの時の言葉を聞いて、私はブルーマーメイドになろうって決めたの」
ミケちゃんが笑顔でそう言うと、何かを思い出した。
「そういえば私達同じ経験したのに、ゆきちゃんは雷とか平気なの?」
「ブラックホエールに拾われた頃は怖かったけど、波奈やトシコがそんな時に一緒に寝てくれたからかな?いつの間にか平気になっちゃった」
「優しいんだね」
「なにせ、自慢のお姉ちゃんだからね。ミケちゃんも雷の日は如月に来て一緒に寝る?」
「あはは、わざわざ来るのも悪いよ~」
「そうだね」
私達はこっちに戻ってくるましろさんを見て、二人して手を振るのであった
次回は比叡戦です。