目が覚めると見覚えのある天井が最初に目に入った。
ここは晴風の医務室
「そっか、私、あの後泣きつかれちゃったんだ」
モカちゃんに会えた嬉しさのあまり、泣きじゃくった私。
おまけに9年分の涙を流したから、泣き疲れちゃったんだな
「よくよく晴風の医務室に縁があるみたいだね」
そう言いながら、美波さんがコーヒーを渡してきた。
コーヒーを受け取った私は、少し飲み
「状況は?」
「武蔵の救出後、晴風は援軍に来てくれた艦隊と一緒に横須賀へ向かってる」
「ブラックホエールの艦隊は?」
「ブラックホエールはすぐにあの海域から去っていったよ。如月も一緒にね」
ということは私は置いてかれたのかな?
「如月の副長から伝言を預かってる」
「なんだって?」
「『ちゃんとお別れを言うように』とのことだ」
気を使われちゃったな。
でもしっかりお別れを言わないといけないけど
「お別れを言うの嫌だな」
「別れなくして出会いなし。出会えばいつかは別れなくてはいけない。いつか向き合わなければいけないこと」
美波さんは本当に歳の割には色んな事を知ってるな~
この間の赤道祭で美波さんはまだ小学生で、飛び級で大学に通っているくらい凄い子だって初めて知ったっけ
「向き合わないといけないことか……そうだね」
私はコーヒーを飲み干し、医務室を後にした。
「……あの話をするのを忘れてた。まぁ彼女が引き受けてくれるかどうか分からないけど」
艦橋へと行くとミケちゃんが出迎えてくれた。
「あっ、ゆきちゃん、起きたんだ」
「うん、何だか泣きつかれちゃったみたいで……」
「そっか、ずっと泣いてないって、波奈さんが言ってたしね」
「波奈ったら、それでミケちゃん、少し話があるの」
「話?」
「うん、外に出よう。ましろさん、ミケちゃんを借りますね」
「はい」
ましろさんに許可をもらい、私とミケちゃんは外へと出た。
甲板に出た私たち。
「あれから一ヶ月だね」
「私達が再会してからまだ一ヶ月しか経ってないのに、凄く長い間いた気がするね」
「うん、最初にゆきちゃんと再会して、ゆきちゃんのこと押し倒しちゃったよね」
あの時は色々と衝撃的でビックリしたな~
晴風の艦長がミケちゃんだったりとか
「ミケちゃんが艦長の仕事投げ出しそうになったりとかあったね」
「うぅ、あの時は本当にごめんなさい」
「ううん、いいの。私も自分のことでみんなに迷惑かけたりしたし」
自分と向き合うきっかけが出来たり、一緒にモカちゃんを助けに行こうとしたり、
この一ヶ月で、色んな思い出ができた
でも、私はこうしてミケちゃんと二人っきりになって、思い出話をしに来たんじゃない
「あのね、ミケちゃん」
「何?ゆきちゃん」
「横須賀に戻ったら、お別れだね」
「………そうだね」
ミケちゃんは俯いていた。
せっかく会えたのに、またお別れをしなきゃいけないのは本当に辛いことだっていうのは、痛いほどわかってる。
「ミケちゃんは学校に、私はブラックホエールに戻ることになる」
「うん」
ミケちゃんは俯きながら涙を流しているのが見えた。
またお別れになるのは嫌なのは私も同じ。
「でもあの時みたいなお別れじゃないよ」
「あの時?」
「私があの事故で9年間も二人と会えなかった時とは違う。ミケちゃんはあの時は永遠に私と会えないって思っていたかもしれないけど」
だけど、これからは違う。
「この別れは永遠じゃない。いつか私が歩む道とミケちゃんが歩む道が重なる時だってあるかもしれない」
「………道が重なる時がある」
「この海はつながってるからこそ、また会えるから……」
私が笑顔でそう言うと、ミケちゃんは涙を拭い、笑顔でを見せてくれた。
「また会えるよね」
「うん、いつかきっと……」
私達はいつかまた会うことを約束するのであった。
横須賀へ着いた私達、
一ヶ月ぶりの陸で、晴風のみんなは大喜びだった。
港にはブルーマーメイドや宗谷校長の姿もあった。
私は港に来ている迎えの人を探していると、安奈さんを見つけた。
私はもう一度ミケちゃんにお別れを言おうとしたその時、港に大きな音が響いた。
「……晴風が」
その音は晴風が沈んでいく音だった。
みんなは晴風が沈んでいくのをただ見守るだけだった。
私は……
「お疲れ様。晴風。今まで頑張ったね」
沈んでいく晴風にそう告げ、私は安奈さんの元へと向かった。
「……いいのかい?」
「はい、お別れはちゃんと言いましたから……」
「そうかい。それじゃ帰ろうか。私達の家に」
「はい」
私は安奈さんと一緒に帰ろうとするが、私は足を止め、振り向き
「またね。ミケちゃん」
これで終わりじゃないです。
次回からは何話かエピローグをやるつもりです。