今回は事件後の学校の話と狐さんの話になります
横須賀女子海洋学校・校長室
あの事件以降、現在は休校となっていた。
だが、校長である真雪は一人、校長室で仕事をしていると
「見ていないで入ったらどうなの?安奈」
「仕事の邪魔をしたら悪いと思って、待っていたんだ」
扉の前にいた安奈は椅子に座った。
「真雪から呼び出すなんて、何事だい?」
「あの事件の後、横須賀女子海洋学校は休校になったのは知っているわね」
「あぁ、あの事件の後だからね。休校くらいにはなるさ」
「えぇ、だけど普通だったら休校だけで済まないはずよ。普通だったら私は生徒たちを危険な目にあわせてしまったその責任で校長を辞任させられるはずよ」
ウィルスに感染していたとはいえ、生徒たちの行動は一歩間違えれば危険な目にあっていた。
更に武蔵、比叡といった戦艦を生徒たちだけに航行させたからこそ、今回の騒ぎがここまで大事になった。
などと海上安全整備局の一部が大騒ぎをして、運が悪ければ真雪は逮捕されたのかもしれなかった。
だけど結果的には学校の一時休校のみだった。
「何でその程度で済んだのかしら」
「いいじゃないか。その程度で」
安奈がそう言うと、真雪はクスクス笑っていた。
「噂で聞いたのだけど、海上安全整備局が少し前に襲撃され、上層部の人間が何人か怪我をしたって」
「そりゃ怖いね」
「その犯人なんだけど、狐の面と般若の面を被った二人組らしいの」
「襲撃するんだから顔ぐらいは隠すさ」
「……襲撃事件の際に犯人は、私の処分を無くしてくれって、おまけに要求に応じなかった場合は今回のウィルスの原因である研究についてもバラすとも言っていたらしいわ」
「……案外正義の味方なんじゃないのかい?」
真雪は安奈の言葉を聞いて、ため息を付いた。
「娘から聞いているわ。如月には狐の面を被った人がいるって」
「なんだい聞いていたのか」
「一応助かったというべきかしら」
「後で伝えておくよ」
安奈は椅子から立ち上がり、帰ろうとする。
だが真雪は安奈を呼び止めた。
「ブルーマーメイドから聞いた話だけど、狐の面の女性にある人物と似ていると聞いたわ」
「さぁ、ただの他人の空似じゃないのか?」
「誤魔化すのね。でも安奈、貴方は私に借りがいくつかあるはずよ」
「借り?」
「感染していたとはいえ艦を全て沈没させたことの不問。こっちで処理をするのは大変だったわ」
「うっ」
「後は……」
「分かったよ。教えるよ」
真雪のちょっとした脅しに負けた安奈はため息をつき、彼女のことを話した。
「ブルーマーメイドの人間が見覚えがあるのは無理も無いさ。狐は元ブルーマーメイドの人間なのさ」
「……元って言うと」
「あぁある事件をきっかけにブルーマーメイドをやめ、過去を全て捨てて狐の面を被るようになった」
「過去を全て捨てて、例の般若の面の女性も?」
「あいつは違うさ。あいつはただの孤児であり、元黒鯨の副長さ。お面をつけているのはただファッションだと思っているみたいだけどね」
「何だか変わった人なのね。それで狐となった事件は……」
「あの汚点となった事故さ」
「彼女が関わっていたのね」
安奈は狐と出会った日を思い出した。
9年前
ゆきが目覚めてから数カ月後
波奈とトシコの二人がゆきの勉強や訓練の見守っている中、安奈は一人買い出しに来ていた。
「子どもたちの好物は買ったけど、ゆきの好物が何なのかわからない。あの子は欲みたいなものないからな……」
ため息をつきながら、ゆきが好きだと思われる物を買い、お店を後にした。
港につき、留守番をさせていた般若の仮面を被った女性が乗る小型船に乗ると、
「般若、その面をつけて街に出るのはやめろって言ったはずだが」
「いえ、街に出ていませんよ~」
「それじゃ、そこに寝ている女は何なんだい?」
安奈はソファーにびしょ濡れで横たわる女性を指差しながらいった。
「何ですか~安奈さんは私が驚かせてこの人を気絶させたと思っているんですか?」
般若が言い訳するが、どう考えても彼女のお面を見て気絶させたんじゃないかと思っていた。
「それ以外に理由があるのかい?」
「ありますよ~」
般若は事情を話した。
留守番をしながら港を眺めていると、一人の女性がボッーと海を眺めているのを見つけた。
最初は景色を見ているのかと思った般若だったが、少し目を話した瞬間、女性が海に飛び込むのが見えた。
焦った般若はすぐに女性を助けに行くのであった。
「なるほどね。てっきりあんたのお面を見て、驚いてそのまま海に落ちたのかと思ったよ」
「ひどいですよ~」
「とりあえず彼女をどうにかしないと……」
すると女性が目を覚ました。
「……ここは」
「やっと目が覚めた~」
「お目覚めかい?」
「貴方達が助けたんですか?どうしてそんなことを……」
女性は俯きながらそう言うと、安奈はため息を付いた。
「命を捨てるのはいけないことだっていうのは知っているかい?」
「そうですよ~命を捨てるくらいの何かでもあったんですか?」
「………私は多くの人を見捨てたんです。人を助けるのが仕事なのに……」
「多くの人を見捨てた?」
安奈はその言葉を聞いて、彼女が何者なのかすぐに理解した。
「あんた、ブルーマーメイドか?」
「……はい」
「何があったんだい?」
「………貴方達は知っていますか?数カ月前に起きたあの事故を……」
女性は話した。
数カ月前に起きたあの悲惨な事故の事を……
一隻の客船が沈没しかけていた事件、その日は大嵐でブルーマーメイドも救援に迎えることが出来なかった。
女性はその現場を担当していたが、嵐の影響で救援に向かうことが出来なかった。
女性と多くの仲間達は何も出来ずにただ客船が沈むのを見ていることしか出来なかった。
その事故以来、女性はあの日の光景を夢で見るようになった。
無茶をすれば助けられたはずの命だってあったはずなのに……
女性は責任を感じてブルーマーメイドをやめ、死のうとしていた。
「私でもあの時出ていれば……誰かは救えたはずなのに……」
女性がそう言う中、安奈はため息を付いた。
「責任を感じるのは自由だけどね。死のうとするのは間違っている」
「どうして?」
「あんたが死ねばこれから先、多くの人を救えなくなる」
「でも、それでも私にあの人達を見捨てた私に……」
「………ちょっとついてきな」
安奈は小型船を発信させ、ブラックホエールの基地へ向かった。
基地に戻り、安奈は誰かを呼びに行った。
少しして、安奈は一人の少女を連れてきた。
少女は所々傷だらけだった。
「安奈さん、何?」
「悪かったな。訓練中だったのに」
「ううん、大丈夫」
「ゆきを連れてきたのは、買ってきたものの中に好物でもあるかなって思ってね」
安奈はゆきに買い物袋の中身を見せた。
その様子を見ていた女性は
「あの子は?」
「如月ゆき。あなたが言ったあの事故の唯一の生存者だよ」
般若の言葉を聞いて、驚きを隠せないでいる女性
「生きていたんだ」
「そうだよ~おまけにあの子はブルーマーメイドを恨んでなんかいない。あの子はもっと大きくなったら、ブルーマーメイドにお礼を言いたいんだってさ」
「お礼?」
「ずっと憧れでいてくれてありがとうってね」
「……憧れで……それに生きていた……」
「どう?あの子に名乗ってもいいんだよ。謝ってもいいんだよ~」
般若はそう言うが、女性は首を横に振った。
「今の私はただ逃げ出した人です。だから……」
「……過去でも捨てる~それならこれあげるね」
般若は狐の面を女性に渡した。
女性はゆっくりと狐の面を被った。
「これからはどうするの~」
「これからは過去を捨て、このお面をかぶり続ける」
「それじゃ名前も捨てようね~これからは狐だね」
「こうして狐がブラックホエールの一員として仲間になったんだよ」
「過去を捨てる……もう彼女はお面を外すことはないの?」
真雪がそう言うと、安奈は笑みを浮かべていた。
「いつかは外すさ。狐があの子に真実を伝えてからね」
「それは近いかもしれないわね」
「そうだね」
安奈は立ち上がり、校長室から出ていこうとすると
「まだ聞きたいことがあるの」
「なんだい?」
「沈んだ晴風が横須賀の港からなくなっているの。誰も回収したりしてないのに」
「どこかの優しい人が回収でもしてくれたんじゃないのかい?」
「回収して直してくれていたりね」
真雪と安奈は互いに微笑んでいた。
更に真雪はある話を持ちだした。
「しばらくしたら学校がまた始まるわ。その時教員または外部から経験豊富な子をのせるようになるわ」
「………あんたが何をいいたいかわかってるよ」
今回はここで終わりです。
次回でepilogue最終回。
epilogue後にもしかしたらおまけを書くかもしれません