最終回は基本的に明乃視点になります
あのウィルス事件から一ヶ月後
一時休校となっていた横須賀女子海洋学校が、ようやく休校期間が終わり、授業再開となった。
学校再開で生徒たちが賑わう中、私は一人海を眺めていた。
この海の何処かで今もゆきちゃんはいるのだろうか……
実習中にまた偶然再会できたらいいな……
そう思いながら眺めていると、私の方を誰かが叩いた。
振り向くと後ろにモカちゃんがいた。
「ミケちゃん、どうしたの?何だかボーとしてたけど」
「モカちゃん、この海の何処かに今もゆきちゃんは頑張ってるのかなって思って」
「きっと頑張ってるよ。もしかしたら偶然会うかもしれないよ」
「あはは、私も同じことを考えてた。もしかしたらって」
同じことを考えていたことに、私達はお互いに笑い合うのであった。
学校へ着くとしろちゃんを見つけた。
「しろちゃ~ん」
「あっ、艦長」
「もう艦長じゃないよ~」
「そうだった。岬さん、おはよう」
「おはよう、しろちゃん」
「おはよう宗谷さん」
「あっ、えっと知名さん」
そういえばモカちゃんとしろちゃんって初めて会うんだっけ?
何だかギクシャクしているような感じがするけど、大丈夫かな?
「こうして話すのって初めてだよね。知名もえかです」
「宗谷ましろです」
「何だかミケちゃんが色々と迷惑かけたみたいで……」
「……最初は艦長なのに艦橋を飛び出しちゃって大変だったけど、ゆき艦長がサポートしてくれたりしたので……」
「しろちゃん、本当にごめんね」
あの時は色々と感情的になったりして、凄く迷惑かけたけど、ゆきちゃんのおかげで何とかなったような気がする
私は校門近くに貼りだされている掲示板を見つけ、先に向かった。
「……あの知名さん」
「何?宗谷さん?」
「あれ以来、ゆき艦長とは……」
「……如月の副長から手紙をもらっただけ……」
「そうですか……」
「ミケちゃん、きっとどこかで会えるって信じてるけど、寂しがってるの」
「はい、無理している感じがします」
「もうゆきちゃんったら、私達二人に寂しい思いをさせるなんて……ひどいんだから」
「……でも、もしかしたら偶然再会とか……」
「ふふ、宗谷さんも同じこと考えてたんだね」
「た、大変だよ!もかちゃん、しろちゃん」
「どうしたの?ミケちゃん」
「何かあったんですか?」
「掲示板見て」
急いでもかちゃんとしろちゃんに掲示板に張り出されている紙を見せた。
そこには晴風の名前と晴風乗員の中にもかちゃんの名前が書かれていた。
「晴風が……それに乗員が前と同じ……」
「私も晴風に……」
「でもどうして晴風が……」
どうしてなのか考えようとするが、校内放送ですぐに指定された艦に乗るようにと言われ、私達は港へと向かった。
港に向かうとあの日沈んだはずの晴風の姿があった。
所々改修された箇所があるけど、それでもあの晴風だった。
すぐに私達は晴風に乗り込み、会議室へと入り、教官が来るのを待った。
私はいくつか空席があるのを見た。
晴風乗員はみんな揃っているのに……どうしてだろう?
五分ほどして古庄教官がやってきた。
「みなさん、お久しぶりです。今日から二ヶ月前に中断となった海洋実習を再開となりますが……」
古庄教官はみんなのことを見つめた。
「皆さんが聞きたいことは分かっています。あの日晴風は沈んだはずなのに、今こうしてここにあることですね」
古庄教官は私達が真っ先に聞きたいであろうことを話してくれた。
「晴風が沈んでから数日後のことです。横須賀の港から沈んだはずの晴風が姿を消しました。学校側は独自に調査をした結果、ある団体が回収、修理を行ったとのことです」
そんな団体がいたなんて……
でも気づかれずにそんなこと出来るのかな?
いやよく考えて見れば、実行できる団体が一つだけあった。
「ブラックホエール第四部隊シーホース。彼女たちが晴風を回収し、修理を行ってくれました」
「でもこっそり回収とか出来るんですか?」
ココちゃんの言うとおり、そんなこと不可能に近い。
だけど私はゆきちゃんからシーホースの乗る北上の切り札について聞いていた。
北上の切り札は相手に気づかれずに行動できるステルス機能をつけているらしい。
敵艦が北上を索敵も出来ず、視認できた瞬間、すでに攻撃開始するほどの力を持っているらしい。
おまけに作業などの音も出さないらしい。
だからこそ気づかれずに出来たのだろう
「どうしてそんなことが出来たのか分かりません。だけどブラックホエールだからこそだと思います」
古庄教官は晴風について話し終え、次の話をしだした。
「次に乗員の追加です。前の実習で学生には戦艦クラスを実習に使わせるのは危険だと判断し、今回の実習には、駆逐艦、軽巡洋艦を使用するになりました。その際、戦艦、重巡洋艦に配属された生徒たちは別の艦に配属されるようになりました」
だからもかちゃんが晴風のクラスにいるのか……
あれ?でも、もかちゃんが配属されたら、役職とかも変わっちゃうよね。
私、艦長じゃなくなるのかな?
「晴風には、武蔵艦長の知名もえかを配属。晴風での役職は……艦長、副長補佐となります」
「ミケちゃんと宗谷さんの補佐……」
もかちゃんがそう呟くと、私は教官に質問をした。
「あの艦長はもかちゃんの方がふさわしいかと、私なんか……」
「岬さん、二ヶ月前だったら、知名さんに艦長を任せていたかもしれないわ。でも貴方はあれから成長し、この晴風艦長は貴方に相応しいと思います」
成長なんて……殆どはゆきちゃんのおかげでもあるのに……
「そして最後にもう一つ、この会議室にいくつか空席があるのが分かりますか?」
皆が空席を見た。
もしかしたら誰かが新しく入るのかな?
「今回の実習より何名か新たに学校に編入します。今は各課に分かれて、この場にはいませんが、今回より新たな役職である人を紹介します。入りなさい」
「はい」
扉が開き、一人の女の子が入ってきた。
その女の子を見た瞬間、私は……いや、乗員全員が驚きを隠せないでいた。
長い黒髪に、制服を着た女の子。
私達は彼女の事を知っている。
「はじめましてじゃないよね。皆さんお久しぶりです。今日から晴風に配属になった。如月ゆきです。役職は教官代理です」
彼女は……ゆきちゃんは丁寧にお辞儀をする。
私はすぐに飛び出し、ゆきちゃんに抱きついた
「ゆきちゃん!?ゆきちゃんだよね」
「いたいよ。ミケちゃん」
「どうしてここに……それに教官代理って……」
「あはは、実はね」
数日前
「新しい任務ですか?」
黒鯨の艦橋でゆきは安奈から新たな任務の内容を聞いていた。
「あぁ、それもかなり長い期間になる」
「ですが、如月は修理中ですよ?どうするんですか?」
如月が修理中のため、第三部隊は現在活動休止となっている。
だが安奈はあるものを取り出した。
それは制服だった。
「これってミケちゃんたちの……」
「ある知人からの依頼でね。数日後学校が再開になるらしい。その際、何名か学校に編入させてほしいというのと、新しい役職に就かせてほしいってね」
「新しい役職ですか?」
「教官代理。いうなればもう一人の艦長として、艦を導けるような経験豊富な人間がいないかってことだとさ」
「それはつまり……」
「教官代理としてあんたに頼みたいってことさ」
「……分かりました。出来る限りのことはやってみます」
「というわけで教官代理に就いたの。仕事としては艦長の仕事や手が足りない場所の手伝いとか、色々とあるみたいだけど……最低でも学校卒業までの任務だって」
「それじゃあ、ゆきちゃんとは……」
「これから三年間よろしくね。ミケちゃん、もかちゃん、それにみんな」
ゆきちゃんはとびっきりの笑顔でそう告げるのであった。
というわけで、教官代理としてゆきが晴風に加わりました。
何だか最終回なのに、後半が急ぎ足な気が……
とりあえずは本編はこれで終了です。
あくまで本編はです。
おまけとして3話くらい上げる予定です。