晴風の会議室というより教室に乗員全員と私、波奈、トシコ、雨の四人が集まった。
私は晴風の乗員リストに目をやり、会議を始めた。
「皆さん、挨拶が遅れましたね。私はブラックホエール第三部隊如月艦長如月ゆきです。今回皆さんに集まっていただいたのは晴風の今後についてです」
トシコから受けた報告はまだ誰にも伝えていない。だが言わなければいずれ知ることになるのであれば今言うべきだ。
「ブラックホエールの大艦長……言うなれば私達のリーダーからの報告で、現在海上安全委員会が横須賀女子海洋学校所属艦の異常行動を受け、学校所属の艦は各地への寄港禁止と、晴風については撃沈を許可するとのことです」
「撃つのは好きだけど撃たれるのはやだ~!!」
「私達完全にお尋ね者になってるよ」
そう告げた瞬間、全員が動揺していた。それもそうだ、誰だってこんな事を言われたら誰だってこんな反応する。そんな中ましろさんがあることを聞いた。
「あの学校所属の艦というのは他にも晴風と似たような状況にある艦があるのですか?」
「えぇ、多数の艦が行方をくらましているわ。だけど寄港の件は大艦長がなんとかするみたいだけどね」
それまではゆっくりと横須賀に戻るしか無いみたいね。それも破損している晴風と共に……だからこそ普段はブラックホエールに挑む勇気がないのに対して沈没命令を出しているということは。
(現状では晴風が私達の弱点になっているということね。そうなる前に手を打ってもらわないと)
「それともう一つは」
ミケちゃんの方を一度見て、私は続けた。
「武蔵からの救援要請があったの」
救援要請の件告げた瞬間、ミケちゃんはある事態を予測していた。
「……もしかしたら、武蔵も同じ状況なのかも。だから非常通信を……」
「そうかもしれないわ。他の艦に攻撃をされているかもしれない」
「だが武蔵はこっちと違って簡単に沈む船じゃない」
「でも助けを求めてた。だから…」
「今はこっちの方が助けが必要だろう!!」
強い口調のましろさん。さすがのミケちゃんも怯んでいた。私はミケちゃんを諭すように言った。
「………ミケちゃん、今は武蔵を助けるよりもこの晴風を守ることが大事よ。それに攻撃を受けてボロボロの晴風、応急修理をしてもとても武蔵を助けに行けない。もちろんそんな晴風を見捨てることも私には出来ないわ。今はモカちゃんの無事を信じましょう」
「う、うん」
しぶしぶ納得するミケちゃん。本当に感情の方が強く働いてるみたいね。
私はましろさんとみひろさんの二人を見た。二人は私の視線に気が付き頷いた。
(今はあの二人に任せる必要があるわね。でもミケちゃんの気持ちは凄くわかる。直ぐにでも助けに行きたい。だけど今私達がするべきことは……与えられた任務をまっとうすること)
更に私は話を続けた。
「晴風は現在攻撃を受けて小破状態。とりあえず応急修理として雨の……如月の機関長と整備長を兼任している蘭堂雨が入りますが……艦長、副長、機関長、応急長、よろしいですか?」
雨の修理に関して了承を得ることになった。
「雨、皆と協力して修理をお願いね」
「了解。それと艦長」
「何かしら?」
「晴風のかい……」
「却下。黙ってやったらピーーしてピーーしますからね」
笑顔でそう告げると雨は黙りこむのであった。ミケちゃんを含めた晴風乗員全員も何故か怯えていた。
それを笑いながら見ているトシコは私に聞こえないように波奈と話していた。
「雨の奴を止められるのは大艦長とゆきだけっすね」
「だからこそ雨を如月にいるんです」
「所で気にならないっすか?シュペーが攻撃してきた事」
「えぇ、あの時シュペーには如月は確認できた。なのに攻撃をして来た。学生だとしてもそんな疎かな真似はしない」
「それじゃまだ私達が知らないことがあるっすか?」
波奈はゆきの方を見てある事を思った。
(どうして貴方は冷静でいられるんですか?もしかするとこれが大艦長が心配していたことですか?)
横須賀女子海洋学校・校長室
そこでは現在の状況に対する打電を送ろうとしている校長の宗谷真雪の姿があった。すると校長室の扉が勢い良く開けられた。
「邪魔するよ。真雪!」
「ノックぐらいしたらどうかしら?安奈」
「相変わらず口うるさいわね。久しぶりにあったんだから良いじゃないか。まぁそんな所があたしは気に入ってるけどね」
「何年ぶりかしらね?貴方と直接会うのは……」
「あんたが乗っていた大和とあたしの黒鯨で武装集団の大艦隊を壊滅させた以来じゃないかい?」
「懐かしいわね。お互い歳をとったわね」
15年前の戦いのあと、真雪は「来島の巴御前」と呼ばれるようになり、安奈はブラックホエールが怪物として扱いを受けるようになった。
「あんたは第一線を退いたけど、発言権及び特別発動権限持ってるわよね」
「えぇ」
「今回の反乱の件はうちの子が調べた結果、反乱はない。だから海上安全の奴らの命令の取り消しを……」
「取り消しまでは行かないけど、学校に所属する艦に対して横須賀へ帰投する命令を出したわ。これで反乱の件は一旦保留よ」
それを聞いて安奈は安堵した。安堵している安奈を見て真雪はある疑問をいだいた。
「どうして貴方が彼女たちのことを心配しているのかしら?」
「何でって晴風艦長がゆきの幼なじみだからね」
「……あの事故の唯一の生存者。彼女のことを知っているのはブラックホエールの全員と私ぐらいね。あとは晴風の生徒たちかしら?」
そう告げると何故か安奈は深刻な表情をしていた。
「……あたしはさ、あの子の涙と心からの笑顔を見た時がないのよ」
「涙って……ご両親が死んだことを知った時やブラックホエールの実習でも?」
「あぁ、泣かずに必死にこらえたさ。あの子は自分の感情を抑えこむようになっちまった。もしこれから先感情的にならなければ……誰かの命をまた失っちまうかもしれないね」
「信じましょう。貴方が認めた子を……」
「そうだね。あとちょっとまずいことになってね」
「まずいこと?」
「元第三部隊の艦が………海上で発見されたみたいなんだよ」
「元第三部隊……確かもうあちこち破損していて解体されるはずじゃ……」
「誰かが奪っていったのさ。とりあえずは第二部隊に追わしてる。もしものときは協力してもらうよ」
「分かったわ」
真夜中の事、見張り員として出ていた私はあるものを発見した。
「あれは……睦月?でも所々改造されている……まさか!?」
急いで皆に知らせ、更に晴風にも報告をした。
「こちら如月!!接近してくる艦を発見!視認できるかぎり改造型駆逐艦睦月!」
『改造型ってブラックホエールの?』
晴風の当直に出ていたミケちゃん幸子さん。
『それでは味方ですか?』
「いいえ、敵よ。それだけは言える」
『どういうこと?』
「あの睦月は私が第三部隊に配属される前の艦。各部が破損が多くて解体されたんだけど……何者かに奪われたみたいなの」
もしかしたら奪っていったのは彼女なのかしら?
「彼女ですね」
遅れて艦橋に入ってきた波奈たち。どうやらみんなも彼女だと思っているのね
『彼女って?』
「………元第三部隊マリン・スノー睦月艦長、東坂もえの妹、東坂まい!!」
金髪の少女が笑みを浮かべていた。
「見つけたわよ。ゆき!撃墜命令出ている晴風と共に沈めてあげる」
今回の話でゆきと明乃は正反対だというのがわかります。明乃は感情が先走り、艦橋を離れてしまうことに対してゆきは感情を抑えこんでしまう感じですね。
そこら辺はのちのちの話に影響していくかもしれないですね。
次回は如月&晴風vs睦月になります