ここは日本。
季節は春。陽気な日差しが世界を照らし、気を抜いてしまうと一気に眠気が襲ってくるようなそんな昼下がり。
――と語ってみたは良いものの、ベンチに寝転がって雑誌で日差しを遮っているわけであるが……。
なめていた。日本とアメリカの季節がめっちゃ違う。一体何なのだこの睡眠薬を空気に混ぜたような暖かさは?
この抗いがたい陽気に全てを任せてしまえばあっという間にオチてしまうだろう。そう頭で理解していても、体は正直者のようでぴくりとも動きはしない。もういっそ意識を手放してしまおうか――そう考えていた時、面倒事はポケットの中からやってきた。
ぶぶぶぶぶぶ……、と連続した振動を初めは無視してしまおうかと思った。実際放っておいたのだが。
すると、マナーモードに設定していたはずのスマートフォンから軽快なヒップホップのリズムが鳴った。
さすがに無視出来ず、上体を起こしてポケットから目的の物を取り出した。……非通知の画面を確認した途端に顔をしかめたのは悪くない反応のハズだ。
「……
『君の様子はこちらで把握してるぞ。今は夜だが日本は昼間だろう? 仮眠とは結構なご身分だな』
「……プライバシーって言葉が辞書にはありますが?」
『S.H.I.E.L.Dの権限を使えば問題はない』
本当にとんでもないなS.H.I.E.L.Dって組織は。周囲に監視カメラが無いか見渡しながらそう思った。
『日本への出張はどうだ? 困った事があれば我々は出来る限りのサポートはするが』
「取りあえず言葉が通じません。どうも日本人ってのはシャイな奴らが多くて話も聞けない」
『それは君の努力次第だとしか言いようがないな』
とまあ、世間話をするように電話の相手と言葉を交わしていく。実際の所日本語も挨拶と日常会話程度ならマスター出来てる。街の様子を見回ってもサムライとか居なかったし治安も良い所だと感じた。
……そろそろ本題へ移るとするか。
「わざわざ電話をかけてまで何の用ですかフューリー長官? 貴方は仕事の合間を縫ってまで世間話をするような人じゃないだろう」
するとニック・フューリーは何事も無いように、
『何、単なる社交辞令だよ。新たな職場で四苦八苦していないかと思ってね』
「いつから俺は貴方の部下になったんですか。第一、俺はS.H.I.E.L.Dじゃないし、共闘したとはいえアベンジャーズにも入ってるわけじゃない」
『アベンジャーズを作ったのは我々S.H.I.E.L.Dだ』
だからこそ、とフューリーは前置きする。
『ラング、今回の件が終わり次第正式にアベンジャーズの加入を求めたい。リーダーとしてな』
フューリーはそう断言した。
正気の沙汰じゃない。S.H.I.E.L.Dのボスが泥棒に最強チームを任せるなんて、どうかしてる。
「何度も言ってますが俺はリーダーって柄じゃない。それに他にもふさわしい人は居るはずだ」
『あくまで暫定、と名が付くがな。なにもインベーダーの侵略を阻止しろとは言っていない。しかるべき人間が現れるまでの繋ぎとしてチームを纏めてほしいのさ。それにアベンジャーズのリーダーならばそれなりに融通が効くだろうからな』
どうして自分なんかをリーダーに仕立てたいのか、フューリーの真意はわからない。
けれど
『――話が長くなってしまったな。まだアメリカに戻るまで時間はある。君には良い返事を期待している』
フューリーがそう言い残すとこちらの返事を待たずに電話を切ってしまった。
深いため息を吐くと、またスマートフォンからヒップホップのメロディが流れ出す。電話のアイコン上の留守電の数を見るに、フューリーと話す間に掛かってきたらしい。
その画面上の見知った番号を確認し、発信ボタンを押した。
「どうしたルイス?」
『やっと繋がったかスコット! 着拒されたかと思ったぜ』
相変わらずのテンション高めの大声に思わずスマートフォンから耳を離すも、頬が苦笑の形になっているのに気付く。こんな奴でも何かと手を貸してくれる悪友はありがたい存在だ。
『従兄のツテでS.H.I.E.L.Dのスタッフになれたけどよ、最初の仕事がお前のサポートでまさか日本まで来るなんてビックリしたぜ』
「そうだよな。日本に行くって聞いてお前パンフレット買い込んでたもんな。所でどうしたんだ? 俺に用だあるんだろ?」
『ああそうだった』
興奮気味のルイスは一旦息を整え、
『少し腹が減って俺はファーストフードに寄ったんだ。ほら俺って健康のために普段ファーストフードとか食べないんだけど、ここ日本だろ? だから食べても問題ないって思ったんだ。けどよ、メニューがめっちゃ多くてどれにするか迷ってた時だ。すっげぇ美人の女が話しかけて来たんだ。少し片言が混じってる英語なんだけどそれはそれでチャーミングで』
「ルイス」
と、ルイスの話をいったん切る。こいつとの会話では『これ』が大切。
「手短に話せ」
『ああ、わかった。それで女は俺に言ったんだ。「貴方がスコット・ラング?」って。それで俺は「いいや、スコットは俺の友人さ」って返したんだ。でも俺はこう考えたんだ。何でこんな美人がお前の事を聞かれるんだだろうなって。それで直接聞いてみた。そしたら女はワケを話してくれたんだ。女が
長々と続いた説明が終わり、後でルイスを殴っておこうと心に決めて、ルイスの長話を要約する。
「……あ~。つまり目の前に居る美人がお前の話した女ってことだな」
そう言って電話を切り、目の前に立つ美少女へ目線を移す。
ルイスの言った通り街中を歩けばすれ違う人が振り返るような美少女だ。けど女って年齢ほど年は取っていないように感じる。日本人には珍しい白いショートカットで瞳は蒼。北欧当たりの血が入ってるのだろうか? 恐らく
少女は顔色一つ変えずただジッとこちらを見つめている。
まぁ見つけたと思ったらずっと電話をしていたから待っていてくれたのだろうが……こっちから切り出さないと始まらないか。
「すまない話が長くって」
「……いえ」
片言交じりだが言葉少なに答える少女。元々口数少ない性格なのだろうか?
そんなこちらの考えを尻目に少女はすぅ、と息をして、
「初めまして。私は、オリガミ・トビイチ。陸上自衛隊、対精霊部隊AST所属、一等陸曹。貴方がスコット・ラング?」
「
――通称アントマンだ。
というわけでデート・ア・ライブとアントマンのクロスオーバーでした。
世界観は主にシネマユニバースを想定してますがデアラと重ねるためかなり改変しています。精霊に関係したオリジナルのヴィランも考えています。
なおシヴィルウォーを見る前に考えられた構想なのでソコヴィア協定うんぬんは全く考慮していません。今日見たから仕方ないよね!熊本だし!
取りあえず、ソーが壊したマンションの壁を十香がムジョルニアで直してる場面まで思いつきました。