とある魔術の禁書目録(真理の扉)   作:まーぴん

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「大切なのは問うのをやめないことだ」
(アインシュタイン)

「私もそー思う」
(博士)

「いや、ちょっとは自分でも考えてみてくださいよ」
(上ノ恵ハル)




第十章

「ホッホッホ。小萌先生のクラスはどうなるかな」

 

デスクに置いた写真立て眺めながら校長が言った。

 

「あ、なにが?」

 

と返す雲川芹亜教頭はソファで『角川文庫』を読んでいる。

 

「いやコラ。角川もいいけど、仕事してよ教頭」

 

デスクに置いた写真立てを置き、校長はクルリと回転式椅子で後ろの景色を眺める位置に体を向ける。

 

「小萌先生のクラスはあれでも、良い噂だってありますから」

 

と、仕事に戻る教頭。

 

「そうじゃな。あのクラスは問題ばかり起こすが基本的評判はそこまで悪くない」

 

ああでも言わないとやる気にならないだろうと、再び椅子をクルリと回転させ、元の位置に戻る。

 

「あとは、こう、上手いこと生徒を口車に乗せて、なんかうまい具合に事が進めばな」

 

「アバウトだな、説明が」

 

「上手いこといけば何でもいいんじゃ。あと、校長にタメ口はよせ」

 

「わるいっすね、いや、すいませんね。……今頃生徒達はブーブー言ってるでしょうね」

 

校長はホッホと笑った。

 

「それでいいんじゃよ、それで」

 

多分だが、きっと今のところ思い描いて通りの展開になりつつある。校長は自画自賛したい気分であった。

 

小萌先生のクラスは基本的に問題児が多いクラスではあるが、同時に外での評判は良いものである。

まれに、いや、ホントまれに、建物を崩壊させたとか、何者かを病院送りにしたとか、悪い評判もあるけれどもね、後を絶たないけどね。やっぱ、良い評判はないわ。

 

ともあれ、学力の面での評判が著しくないのが特徴であり、そこを一番に解決して欲しいのである。

 

ホントの所は小萌先生には出張してもらってるだけで、すぐ帰ってくるのだけれど、これは内緒だな。

 

あとは、発破を掛けたのだから私の思い通りに事が進めば良いのだが。

 

「いやあ、わしって天才かもしれんな」

 

ホーホッホッ、と校長は高笑いする。

 

「つーか、マジ性格悪いよね、アンタ。ねちっこいていうかさ」

 

いつのまにかソファに戻っていた教頭が、『角川文庫』を読みながら言う。

 

「だから、タメ口はよせというに」

 

「口うるせーハゲだな。すいません」

 

「いや、今の『口がスベった』とかそういうレベル超えてたから」

 

「すいません。ま、しかし、うまくいくといいですがね」

 

「うまくいくさ。わしの頭脳はアレだぞ、アレ並みだぞ、えーと待って、絶対思い出すから……」

 

「ド忘れしてる時点でたかが知れてるけどね」

 

「だからタメ口きくんじゃねえよっ!怒るよ?今ならわし、カッとなって人を殺した奴の気持ち、少しだけわかるよ!」

 

と、興奮しすぎて額の絆創膏(ばんそうこ)に血を滲ませる校長であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

博士は教卓についた。

 

 

 

帰りのホームルームの時間が始まったのである。

 

「よーし、んじゃ、『休み明けテストどうする?緊急対策会議』やるぞー」

 

めんどくさそうに博士は言うと、チョークを手にして黒板に向かった。

 

ゴンゴンと音がし、黒板に文字が記されていく。

 

 

クリア条件

 

どれか一科目で80点以上

 

金髪、ヤンキー不可

 

「つーことで、どうにかして学力の評判をだな」

 

「先生!」金髪ピアス君がすぐさま言う。

 

「二つめはバンドメンバーの募集条件みたいになってるんだが、それに、その条件だと俺は不可ってことか?」

 

「不可だよ、おめーの金髪は」染め直せと博士は言った。

 

「ていうかそれ地毛だっけ?どっちでもいいけど、早く染めるかピアス取れよ」

 

「先生、あんまいじるのやめてね。訴えますよ。すでに書類は木原のせいで用意できてますよ」

 

「先生!」と今度は木原くんだ。

 

「よくライブが終わったあとに楽器を壊すミュージシャンがいますけど、俺はそのときブタの貯金箱を壊したいでさぁ!」

 

「画気的だな」どうでいいと博士。

 

「話を反らすなよ。いいか、テスト対策だからな。ちゃんときけよ」

 

いや、博士、あんたがしっかりと、発言したらまた止まるので心中で思う上ノ恵ハル。

 

「ま、要するにだ」博士は言った。

 

「どんな手を使ってでも、八十点取ればいいんだ」

 

どんな手を使ってもな、と博士は意味深に繰り返す。

 

「あのー、先生、それって……」

 

上ノ恵はおそるおそるきいた。

 

「決まってるだろうに」と博士は邪悪に笑う。

 

「カンニングだ」

 

カンニング!?カンニング!?シャイニング!?シャーマンキング!?

 

約二名ほど間違えている奴がいたが、生徒全員が驚きの声をあげた。

 

博士は邪悪なオーラをさらに膨らませて、言う。

 

「そうだとも。カンニングすれば八十点なんざ、赤子の手をひねるようなもんだ」

 

「赤子って、先生のサイズじゃあるまいし」

 

「おい、誰も発言して良いなんて言ってないが。今、戯れ言を言った奴は後でひねるぞ、キュッと」と博士。

 

「や、でも先生、カンニングはやっぱり……」

 

 

やめた方が、と上ノ恵はやんわり抗議した。

 

「アホぉ、助手二号よぉ」呆れたように博士は言った。

 

「テスト対策の会議だぞ、これ。ということはだな、上ノ恵、イコール・カンニング会議じゃないか」

 

「いや、おかしいでしょ、そのイコールは!」

 

と、そこに

 

「上ノ恵」

 

不意に声がした。振り返ると、金髪ピアスがこちらを見ている。

 

「上ノ恵……」なぜか慈愛に満ちた表情で、金髪ピアスは続けた。

 

「おまえ女だろ?女だったらカンニングのひとつでも出来ないでどうする」

 

「いや、そんな喧嘩のひとつも、みたいな言い方されても、ていうかそれ男に言う台詞だぞおい、ああ?」

 

「あ、そうだな。悪かったから殺らないでね」

 

と、ここまでやり取りをさせた当の本人はというと、

 

 

 

「カンニングは不正行為だからな、金髪ピアスみたいな考えは捨てるように。じゃあ、何を八十点取るかの話に移るぞ」

 

今までの会話はなかったかのようにパンパンと手を叩き、キリッと切り替えている。ただ、金髪ピアスが晒されただけであった。

 

 

「いいか、国語は私の持つ科目だから勉強は教えられるし、何なら、範囲も言えるがそれはズルイのでなしの方向だ。というか校長が追加してきた」

 

科目はだから、日本史でいけ、と博士。

 

「日本史なら、多分、勉強は範囲の暗記だし勉強しやすいだろ。それに、一つ情報を入手した」

 

情報?と、皆は目を細める。

 

博士は頷いた。

 

「休み明けのテストで日本史は授業で使ってるワークブック、あれの『応用問題』ってところから二十問出題されるとのことだ。それを丸々暗記すれば、多分、六十点はかたいと、日本史の教師を脅して得た情報だ」

 

いや、経験ないでしょうから仕方ないですけど、博士、やっぱり、教師向いてないですね、はい。と、これも心中でのこと。

 

「あとは今日から死ぬ気で勉強したらどうにかなるだろう?ウダウダ言わせないからな?新任教師にここまでさせたんだからな、どうにかしろよ」

 

そもそも教員免許持ってないし、と、ボソッと言ったのは聞かなかった事にしよう。

 

「しつこく言うが、休み明けテストの英語、自力で勉強して、絶対に八十点取るんだ。じゃないと、私の授業、跳び箱しながら貧窮問答歌だからな」

 

朝と変わってんじゃねえか!と誰かがツッコんだが、まあ、なんとかまとまりつつあり、どうにかなりそうではあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……どうしてこうなる』

 

不幸だ。と、隅で呟くのは未だにサングラスやら眼帯で噂が絶えない転校生である。

 

「かみじょ、、、上ノ恵アキ、もとい親戚の人からしたら大変ですね」

 

休み明けテストどうする?緊急対策会議の翌日である。

 

放課後の勉強会が始まった。

 

『上ノ恵の護衛として学校に居座るつもりだったんだが、まさか放課後まで残る事になるとは』

 

他の奴等ともそろそろ連絡つかねーかな、と、当然テストには関心ない様子。

 

「イチゴパンツノアケチミツヒデ??もう少し良い覚え方があったでしょうに」

 

実際に合った出来事は無惨なモノである本能寺の変。

実感のない私たちからしたら覚え方など楽なら何でも良いが、本能寺の変はダントツに変である。

 

「転入早々大変ですね」と隅まで歩いてきた佐天さん。

 

「親戚通しお勉強ですか?」

 

「ま、まあ、そんなところかな」と軽く受け答えする私だが、偽りの親戚の方は受け答えが足りない。

 

そんな、素っ気ない親戚に

 

『……何かついてるか?』

 

「あ、いえ、誰かにとても似ているような気がして」

 

会ったことあります?というか知り合いにいました?ときく佐天さんに私、上ノ恵ハルまで冷や汗をかいてしまう。

 

『上ノ恵の家にいたとかでは?』

 

「んー、遊びに行った時に合ったんでしょうかね。え、というか、親戚通しなのにどうして名字呼び??」

 

区別付きずらくないですか?と、的確なことを言われ、流石のサングラスの彼も居心地が悪そうに『そうだっけ』と、受け答えしてしまう。

 

「あの、ずっと、というか皆を代表して言いたいと言いますか、失礼な事だったらあれなんですけど、どうしてサングラスを着用しているんですか」

 

上ノ恵アキさん、失礼な事でしたらすいません。と付け加える佐天さん。

 

「あ、えーとそれは……」ぬぬぬ、と、ついつい私の方もオドオドしながら発言に困ってしまう。

 

この会話のやり取りに周りもさりげなく注目し、こちらを見ている始末。やっぱり気になりますか、と改めて思う。

 

『……あー、実はだな……』

 

クラスの、それも女子とやっと話すことになった彼が何かを言いかけようとする。

 

「おいこら、お前らちゃんと、勉強しろ!残らされる私の身になれ」と何故か竹刀を持つ博士がバシンッと竹刀で床を叩き渇を居れる。

 

「はーい」と、返事をし、席に戻っていく佐天さん。

 

ふぅー、と、安堵の息をつく上ノ恵。

 

博士も博士で、隅にいる彼をしばし見つめ、戻っていく。

 

 

『ナイス助け船、あー……』

 

サングラス越しでもわかるほど、いつも通り無表情なのだが、流石に意中をつかれたらしく、しばし、首を左右にふっている。

 

安堵した私も休み明けテスト対策のために席に戻り、取りかかるために勉学の用意をする。何だかこれは…青春なのか、と少し思いつつワークブックを出す。

 

 

こうして、つい最近まで、血生臭い闘いがあったりしたのだが、今度は勉学という闘いが始まろうとしている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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