とある魔術の禁書目録(真理の扉)   作:まーぴん

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第十一章

変哲もない校長室。

窓を背負う位置に校長のデスクがあり、デスクにいるのは当然、校長である。

 

 

「と、まあ、こんな感じですかね」

 

校長の後ろの窓には、日が昇ろうとしている、夕焼けの景色が写し出されている。

 

『休み明けテストどうする? 緊急対策会議』の翌日の生徒が帰宅した後。

 

「良いムードになったのかな。団結力はあるからね、あのクラス」

 

ソファに腰かけている教頭は、何かの『ガガガ』で自分の肩を叩いている。

 

「今度はガガガ文庫なんだ……。いやいや、まだ油断は出来ませんよ先生」

 

夕焼けの空を見ながら、校長は言った。思惑通りですな……。

みんなで団結して目標クリア! うーん、これって青春だよな的な空気だよね。

 

 

「どうでも良いですが、もう帰っていいですか」

一応、聞いたと、応答を聞くまでもなく校長室をあとにした新人教師こと、博士。

 

 

「あー……」

 

うちの職員はみんな辛辣だよね……。

それとも、なに、ワシだけ?ワシだけこんな扱いなのか、おい……。

 

 

校長の呟きには、もちろん、返答はなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いや、もう、ホントわかってたけどね!!そろそろくるかなーって。あれ、でも、たまにはスクールライフを楽しむ時間があっても……みんなで青春を謳歌しようぜって、少しは期待したよ。少しはね!!」

 

 

誰に言うわけでもなく、隣にいるツンツン頭に言うわけでもなく、ワーキャー叫びながら、走ってるのは、不幸でお馴染みのピチピチ女子高生、上ノ恵ハル。

 

二人いることによって、不幸が倍になってたりしてなきゃいいけど……。と、こちらもひとりでに呟く、不幸でお馴染みの野郎である。

 

 

「このまま逃げるだけだと、被害が拡大して、周りを巻き込んでしまうよ、これ!!」

 

何か、手は!? と、おもむろに隣で走る彼に言う。

 

『ノープランだ。なら、被害が大きくなる前にここで止めてやろう』

 

 

アドリブにはかなり強い二人は、迫る『それ』に対して立ち止まる。

 

 

 

 

バガン!! という轟音が炸裂した。

 

不幸を背負う彼らが見る、『それ』は、停車してあるスポーツカーを真上に持ち上げた。

そして『それ』は、普通の人間の腕のサイズで。

腕は、腕としての本来の働きを全うした。

 

まるで、煉瓦(れんが)か何かのように、鋼の塊をターゲット目掛けてぶん投げたのだ。

 

「う、わああああああああッッッ!?」

 

慌てて身体をひねり、ベースに飛び付くように横へと、『それ』が放つ豪速球を上ノ恵は何とか回避する。

 

『…………、』

 

対して、不幸の彼は、豪速球を横に回避するのではなく、飛んでくる車を低く屈みながら『それ』に近づきながらすり抜けるように回避する。

 

 

ドァァ!!っとスポーツカーの轟音がなるなか、確実に距離を縮めた上条は、右の拳を握り、『それ』に叩き込もうとするが、

 

ゴォン!! と。

 

『それ』は避けるように真上に跳び、何十階とある、ビルの屋上へと着地する。

 

 

 

「もう、不幸のバーゲンセールはここらでケリをつけたいんだけど……まあ、無理よね」

 

爆風を手で仰ぎながら、真下からビルの真上を覗き込む上条の元へと歩く上ノ恵。

 

 

『筋力向上系の能力か、それとも重力か何かか……』

 

 

上ノ恵と上条が帰宅している最中での出来事である。

前触れがあったことがそもそも、あまりないのだが、黒のローブで素顔や性別でさえ不明な人物が、襲ってきたのだ。

 

 

「あれは、上条さん関連のお客さんですかね」

 

『どこのだれかもわからないし、お帰り願いたいけど、多分、関連性はあるだろうな』

 

こんな不幸は良くあるで片付けてしまえるのだが、この不幸は、つい、先日にかち合った少女の仲間が関わってると考えるのが妥当だろう。

 

「……、降りてきませんね」

 

このまま逃げていったと思いたいが、そこまで甘くはないであろうことは理解している。

ビルの上に跳躍していった黒のローブの者が何をしているのか、情報を得るため上条の方を見る。

 

「どうにか、出来ます?」

 

『………何が?』

 

 

空を跳ぶとか、遠距離から追撃するとか、こちらもビルの上に移るとか……。と、例えば、と、上ノ恵は上条に言う。

 

 

『……んー、、、無理』

 

「え、………無理ですか?」

 

前に槍のような何かを遠隔操作してませんでしたか……。と、思い出したかのように訊ねる。

 

『………基本的に、、、』

 

「………基本的に?」

 

『基本的に、いつも被ってる帽子がないと、魔術が安定しなくて、、威力が安定しなくてな、、』

 

学校じゃ被れないし、と、付け足す上条。

 

「あの、黒ローブがビルにいるかどうかの確認程度なら、威力がなくてもいいんじゃないですか、」

 

ないんじゃなくてな……。上条はビルの真上を見ながら言う。

 

『コントロールをミスったら多分、一発で地球がふっ飛ぶぞ』

 

え?と、呆ける私に、いや、ホント、マジで地球が終わるから……。と、真顔で言う上条。

 

「ほ、他の、何か魔術とかは……」

 

『魔術は…基本的に使えないんだ』

 

え、この人、魔術師って聞いたけども……と、しばし、固まった上ノ恵は、「うまくいくかなぁ」と、右手をビルの方へかざす。

 

すると、右手の手のひらから少し離れた所に異様なルーンが写し出され、ルーンから、『ブァァァ!!!』と、大量の水をビルの真上、屋上目掛けて発射する。

 

 

「水なら、ビルも傷つきませんよね」

 

『………便利だな』

 

上ノ恵の思惑通り、勢いよく発射した水は、ビルの屋上へと降り注ぐように、ザザーと、落ちる。

 

 

 

 

「……反応は……」

 

 

ドォォ!!

 

 

「…………、反応は………ありましたね!」

 

害などがあるかはわからない水だが、安心できないと踏んだのか、黒ローブの者は、コンクリートに足をめり込ます勢いでビルの真上から降りてきた。

 

 

 

「…さて、どうしましょーか……」

 

再び、攻防がジリジリと始まろうとしている緊迫。

 

 

 

 

「あぁ、?なにやってんだ上ノ恵」

 

 

いや、上ノ恵…ハルって言わないと見分けつかないか、と、緊迫して身構えている状況に二人の物影が近づく。

 

「金髪ピアス、に木原くん、、」

 

なんともいえぬ顔で来場者を見る上ノ恵に、「ああ、言わんでいい。言わんでも大体わかる」と、軽くあしらい、黒いローブの人物に視線をうつす。

 

 

「お前がいくとこいくとこ、トラブルばっかりだな」死神も大変だな、と、クラスメイトの金髪。

 

「金髪について行ってたら、噂の彼女に転校生まで遭遇するとはねぇ。ひょっとして、ストーカーさんなんですか、変態さん」と、同じくクラスメイトの木原恥芽。

 

金髪が、たまたまだぁ!!と、声を張り上げる。

 

 

「見るからに、怪しい敵だな。手ぇ、貸すぞ」

 

「………夜の番組までには帰れるといいんですがね」

 

 

 

「二人とも、助かる。……けど、」と、上ノ恵は新たに加わったクラスメイトに、まずは礼を言った。

 

「でも、大怪我じゃすまないかも……」

「それはいいな」ついでに俺は不死身だ…。と、

 

「まぁ、『いつぞや』の仮を返せるにこしたことはぁ、ねぇしな」

 

バキゴキ、と、指の間接で音を鳴らす金髪。

 

 

「まぁ、」と木原恥芽も言う。「こちらは仮とかは特にないですがねぇ。ただ、金髪にはほんと死んでもらいたいな~と思って」

 

「後半のセリフは関係ねえじゃねーか」と、木原恥芽にメンチを切ったあと、金髪は謎の黒いローブに目を戻す。

 

 

「ーーで?ヤるか……」

 

黒いローブの人物に対して、こちらは四人。一時は二人のクラスメイトの来客で止まったが、再びピリピリとした空気で囲まれているウンともスンとも言わない、謎の無口のローブは、

 

 

バチバヂィィン!!!

 

 

「「……な、!?」」

 

 

ローブの人物の中心から外の四人に広がるように、目に見える電撃を放つ。

 

上ノ恵と上条は、後方に下がりながら右手をかざし、電撃を打ち消す。

 

クラスメイトの木原恥芽はというと、どういうわけか、先ほどいた場所から数十メートル離れたところで、無傷で立っている。

 

 

「………うぉぉっ…!!!」

 

右手によって打ち消される前に、電撃に突っ込むように前方に前進した金髪の男性は、「うぉりゃあああ!!!!」と、両方の腕を真上に掲げ、電撃を身体で受け止めている。

 

明らかに感電しているであろうその男性は、数秒後、腕の切り傷などが治っていく。

 

そう、この金髪の男は、不死身。超再生能力の能力者である。

 

「………まずはその素顔でも拝ませろや」

 

前進した金髪はローブの人物のフードを掴み、晒そうとする。

 

が、『ゴキゃッッ』と、フードの頭に手を掴むように伸ばしていた金髪の手が全く違う方向にと折り曲がる。骨が砕けた音だ。

 

 

「………あぁ……!!こいつッッ!!!」

 

と、手が曲がっている金髪は、身体を回転させながら足蹴りをかまそうとする。

 

これも、触れることにより、先ほどの手のように足が『バキィッッ』っと曲がり、更に『ドォォ!!』と、腹の溝へと拳を突き出され、向かいのビルまで突き飛ばされてしまう。

 

 

未知のローブの人物が続けて、追い討ちをかけようと走り出そうとする。

 

が、

 

 

そのとばされてる金髪の真下から、スポーツカーを避けた上条当麻の戦法のように屈みながら前進して、拳を突きだす上ノ恵。

 

意表を突かれ、上ノ恵に殴り飛ばされたローブは、そのまま、倒れた体勢で止まる。

 

 

上条は、殴られ、ビルまで勢いでとばされそうな金髪を上条の身体全身で支える。

 

 

『………大丈夫か、』

 

「…ッッ……転校生か…」俺の心配は大丈夫だ……。と、曲がった手や足がゴキっと元に戻り始める。

 

「その金の変体は再生系の能力でさぁ、心配は全然いらねえですよ、噂の転校生さん」

 

そんな身体だから普通の人間が引き出せない力のリミッターも解除出来るんでさぁ、と木原が言う。

 

 

『………デジャブだな、最近そんなんばっかだな』

 

「なんの話だ」

 

でも、アイツは魔術によるモノだったしな……。と、独り呟く。

 

『それに、してもだな。……あのローブの奴の能力はどうも見たことがある』

 

 

しばし、地面に手をつけ、倒れていたローブの人物は「おかしい…ですね」と、初めて声を出す。その声は戸惑いの声だった。

 

 

「触れることは出来ないはず、なのに、、何者ですか」

 

「……素顔を隠している者に何者呼ばわりされる覚えはないんだけど」

 

「………それもそうですね」立ち上がりながら、ローブの人物はフードを脱ぐ。

 

 

 

「私は、人造人間です。モルモットでございます」

 

 

第七区、表向きは廃墟された医療開発の施設で作られた、シリアル番号15です。と、黒髪のローブの少女は言う。

 

「上条当麻につく謎の女、上ノ恵ハルという人物のデータを解析、とれとのプログラムでの命令に従っています」

 

「結果…………不明…です。」表情がない、モルモットと自分を説明するローブの人物は続けて言う。

 

 

「上ノ恵ハル、何者ですか。水を出したこと。私に触れることが出来たこと。説明が、解析が出来ません。なので、潔く訊ねるのが最善と、プログラムがそうおっしゃっています」繰り返し、何者なのでしょうか。と、感情のない、女性の声でそのモルモットと称すローブは言う。

 

学園都市の技術が長けていて、度肝を抜かれるようなモノを度々目にかけたり、耳にすることがある。だが、まるで人間との区別がつかない。自身を人造人間、モルモットと言う、もはや少女と言ってもいいのかわからないそれに、上ノ恵は思考が追い付かず、固まってしまっている。なんともいえない、恐怖にも近いものの感情を上ノ恵は感じる。

 

 

「エラーでしょうか。上ノ恵ハルの応答が帰ってきません」新しい命令の指示を待ちましょう。とそれは言う。

 

 

『シリアルナンバー、と言ったな……』

 

「……上条…当麻……敵ですね」と、話しかけられたそれは上条当麻へと身体を向ける。

 

『十五ということは他にも、仲間がいるってことか?』

 

「……仲間、というのは、私と同じ製造されたモルモットのことですか」

 

『……つっかかるが、…そうだ』

 

「……敵と認識されている上条当麻の応答には受け答え出来かねます。第七区○△医療で製造されたのは他にもいます。そのなかの最後のナンバー15が私です……不良品を入れたら16ですが」

 

「ちゃっかり、受け答えしてくれてね…?」こちらもモルモットという言葉にピンっとこないのか、変わったものを見るような表情をしている金髪である。

 

「無表情なのが二人もいるな、」と、木原恥芽は上条とモルモットを見比べている。

 

 

 

「新たに得た情報によれば、これ以上このモノたちから何かを得るのは難しいと。………帰還します」

 

そう言うと、向きを百八十度変えたそれは、普通に歩きだし、上ノ恵たちと離れていく。

 

「…………え、」

 

なんだ、この……。

 

 

「何だってんだおい」拍子抜けだな……。いまいち状況が掴めていない金髪。

 

「ピアスはやる気満々だったでしたからねぇ。早く死んでくれないですかねコイツ」と、木原恥芽。

 

 

オメー、そろそろ殴るぞとメンチを切る。

 

 

 

固まっていた上ノ恵は「はッッ」と声を出し、

 

「か、帰っていきますが……どうします…?」

 

 

状況が掴めていない上ノ恵が上条へと助けを求める。

 

 

『……○△医療って言ってたよな……ここから近いのか』

 

「あー、それならこっからすぐでさぁ。廃墟になってる病院なら…~確かあそこっすよ」

 

 

 

 

 

 

 

★☆★☆

 

 

 




変哲もない、古びれ、辺り錆びてる機械などしかない。


そこに、『それ』はただ、役目もなく、座ってるかのように、置かれている。


それは、





「………、、、」

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