とある魔術の禁書目録(真理の扉)   作:まーぴん

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人の出入りが滅多にない山奥で一つの会話があった。



「………何でそんなに強いんだよ」

プスプスと煙を出して地面に倒れ伏せている一人の男がいた。

「年期が違うのさ」

デスクワークだけが取り柄ではないのさ。と、得意気な小柄の女性がいた。

「魔術というのには重いリスクが備わっている。その代償が勝敗を左右した」

だが、

「どんなに壮大なリスクを、代償を背負おうとも、理解が乏しく、本来の使い道を知らない欠陥品には宝の持ち腐れだよ」

お前がそうだよ。博士は言う。

「その右手については言及しないが、膨大なくせにあやふやなお前の力に関して危惧しといてやる。誤った使い方をすると、どんどんお前の身体がボロボロになっていくぞ」

「あいにくだが、上条さんはボロボロにはもうなれない身なんだよ」

「なら、理解しろ。それこそ宝の持ち腐れだろ?」

やるべきことは一つだ。と小柄な女性は言う。

「勉学に励め。知識を得ろ。

魔術の基本は教えてやる。あとは、お前の言う暗闇の世界で一人で学んでいけ。何をしても不死身のようだしな」

「………勉学で強くなれるとは思わないがな」

「いやいや、お前がさっき負けたのは無知だからだ。

いかんぞ上条当麻。敗北の原因も認められず、いちゃもんか。おのれの弱さを認める事もまた強さ。お前は明日までに『馬鹿』という漢字を百回書きとってこい」

「じゃあ博士塾頭は明日までに助手の金に手を出す『金の亡者』と百回書きとってきてください」

「なら、明日までに『鈍感』と百回書きとってくるように」

「どんかんってどんな漢字だっけ」


【挿絵表示】



上ノ恵に出会う前のストーリーであった。






第十四章

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

「上条さんって頭良いんですね」

 

「ん、助手か。確かにとっさの適応力がずば抜けているかもな」

 

「そうなんですか。でも、そこじゃなくてですね」

 

学校の屋上に二つ影があった。

フェンスに寄りかかっているのが仮の教師である博士。

紙パックにムサシノ牛乳と記されているミルクを飲んでいるのは上ノ恵である。

 

「上ノ恵、お前だって中々点数が高かったじゃないか」

 

「学年トップほどではありませんよ」

 

クラスから学年トップが出た事から、クラスメイトにもみくしゃにされ、サングラスまで取られた上条は無表情ながら困惑していたであろう。学年トップの眼帯男の気持ちとは裏腹に、クラスメイトは愉快である。

 

「だがな、上ノ恵」博士は言う。

 

「助手はお前と同じ年代の時は馬鹿で補習だらけだったそうだが?」

 

「え、」

 

まじでまじで?と疑心な上ノ恵に笑みを浮かべて博士は言う。

 

「ま、アイツにも『色々』あったってことさ」

 

バカなままではいられない、何かがな。と博士は付け加える。

 

「それで、その助手は?」

 

「ああ、上条さんなら、空き缶を踏んで水溜まりにうつ伏せの状態で派手に『転んで』しばらくして何もなかったかのように立ち上がろうとしたところで自転車に『跳ねられて』しまいまして……泥やら血やらで汚れた上条さんは丁度服が欲しかったので買ってくるだそうです」

 

「ほぉ、無表情ながら不幸に合うアイツが目に浮かぶな」

 

ちなみに、私は水溜まりの跳ねた水やら、横転した自転車に跳ねられそうになったりと、二次被害バンザイである。

 

「じゃあ、私はお先に帰りますね」

 

「む、一人は少し危ないな」

 

「一応、上条さんにも言いましたが身を守る術くらいちゃんと持ってますよ」上ノ恵は呆れ紛れに言う。

 

何かあったらすぐ報告するように、と博士の言葉を受け、屋上を後にした。

 

「根っからの不幸体質ということは、本人が一番よく自覚しているか」博士は一人、屋上で呟く。

 

「それにしても、」はて、と博士は何かを思い出すように言う。

 

「上条当麻のような異質な特異さを上ノ恵からはあまり感じ取れないな……。 隠し名にしても

神の恵み(上ノ恵)』と来たか」

 

運命か、あるいは偶然なのか。

 

そもそも、偶然なんかないのかもしれない。

 

上条当麻の願いが上ノ恵に宿るのは必然だったのか。

 

「……思えば~

 

雰囲気が助手に似ているというよりは、あの魔神の方なのかもしれないな」

 

 

はて、何が必然なのやら

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただ今お帰りになりました~」

 

佐天さんと初春さんと下校し、無事に家にたどり着いたボロボロ女子高生である。

 

「主のお帰りでございやしたか」

 

これは失敬と、御詫びの言葉を入れつつもせんべいをかじりながらテレビを見ているのは新たな居候である。

 

「ちょい、『こころ』さん。別にこっちを向かなくても良いけど、無関心なのも良いけど、主、泥だらけだから!水溜まりにドボーンで自転車にドーンだから」

 

デジャブを感じたと上ノ恵は誰に言うわけでもなく呟く。

 

「あっしは、外道丸か『アイツは四天王の中でも最弱よ』のかませ犬的な四天王の一人とお呼びしてと言ったはずでござんすが」

 

「あのツンツン頭の主と博士の命名は、なしの方向でって話じゃなかった!?」

 

ちなみに童女の名を『こころ』と命名したのは上ノ恵である。対して童女は不満そうであるが。

 

「あっしに『こころ』なんて皮肉っぽいでござんす。飛べないペンギンにプテラノドンと命名するくらい皮肉だと思いやす」

 

「だから『こころ』って命名したんだけどな……」表情が感じられない童女に対してあえて、皮肉な名前にしたのだが、この深い意味が読み取れないのかと不満そうな上ノ恵である。

「主は性格が悪いようで(ボソッ」

 

ござんす、と。せんべえをかじる『こころ』は『あ、』と声を出す。

 

「そういえばですが、主宛に手紙が来てたでござんした」上ノ恵様と描かれているでござんす。と上ノ恵に手紙を渡す。

 

「え、手紙?」

「はい、空からヒューと、鳥のハトさんが運んできやしたよ」

 

「え、なにその原始的………っ」上ノ恵は言い切る前に言葉を区切る。

 

「………ハト………」

 

「どうなさいやした?」

 

上ノ恵は『確か……』と手紙を見ながら黙り混む。

 

「(確か、あのときもハトだった)」

 

童女のこころはこの状況にポカーンとしているが、上ノ恵は明らかにシリアスモードに突入中である。

 

上ノ恵には、一つ、ある記憶がある。

 

過去にハトから便せんを受け取った上ノ恵はその時の事が脳裏によぎっている。そして、上ノ恵は状況を理解していく。

 

「(金髪ピアスはここ最近欠席であった。偶然じゃないなら……これはそういうことなのかもしれない)」

 

フーと息を吐き、上ノ恵は手紙に手をつける。

 

「…………っっ、やっぱし」忘れた時に自分の悪い噂を知り合いが流していたかのような、苦い顔をする。

 

「何やら血相な雰囲気でござんすが」せんべいをボリッとかじる『こころ』はお尻をポンポンと叩きながら重い腰をあげるように立ち上がる。

 

「こころ、上条さんや博士には内密に……いや、遅くなるとだけ伝えといて」

 

「……わかりやしたが」

 

そう、お願いね。と帰って来たばかりの上ノ恵は急ぎ足で自宅を後にする。

 

 

 

 

 

「はて、何に巻き込まれたのやら……」こころは上ノ恵が捨てた手紙を拾い上げる。

 

 

 

『あのときの仮は返す。一人でこい』

 

 

描かれているのはそれだけだった。

 

 

「キナ臭くなりやしたが、……はて、あっしはどう対処すべきでしょうかね」

 

『………なら、提案してあげよっか?』

 

「………久しいお顔でござんす」

 

再び、一人になった童女のいる家に一人の御客様のご来訪があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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