帰り道、水溜まりに転んだり自転車に跳ねられたりと、散々服が汚れてしまい、予備の服が少ないのを理由に服を買いに行った。
金遣いの荒い上司がいることや、金銭面で世知辛い生活を送っていた貧乏くじをよく引くツンツン頭は、安物の中の安物の品を見つけ、身だしの上下をワンセット揃え、買い物を済ませるとそのまま買った衣類を着ていく。
単に服が汚れているので着替えたとこもあるのだが、彼にとっては大事な事情があり、礼服のような黒いスーツなどに身を包む。それは、お葬式に出席するような格好であった。
とある場所で、色々とアドリブのような出来事もあったが彼にとって大事な時間を過ごし彼を待つ場所へと向かった。
一時間近くそこに居たのだろうか。ふと我に返り、いそいそと歩いていた所で見知った服装のヤツと出会った。
「お、助手か。……また随分としゃれた格好をしているな?孫にもナンとかだな」
似合わんと笑うちっこい上司は無言で肩に下げていた荷物を渡し、帰るぞと歩き出す。
「上ノ恵は一緒じゃないのか」
「ああ、随分と前に別れたさ」
おいおい、と助手の視線を浴びる上司は仕方ないだろと言わんばかりにため息をつく。
「女の子には一人になりたい時だってあるさ」
形のない事を適当に言ってあしらったからか未だに疑いのような視線を浴びてしまう。
「あー、そんな視線を向けてくるな……。上ノ恵に干渉し過ぎても逆に不自然だろ?」
「それに、こっちが一方的に巻き込んで、こっちの都合に合わせてもらうなんて野暮だろうに」
不幸体質とはいえ、アイツも特殊な存在だ。身を守る術くらい持っているさ。これは本人からの太鼓判だしな。
そこまで言われて黒いスーツを着ているツンツン頭はため息を漏らすと「だったら、俺の都合にアンタまで付き合ってもらうのも野暮だろ」と皮肉混じりに言う。それは不満などではなく、少し口が緩んで……。
「私には私の事情がある。目的が少し重なっただけさ。だが、私がいて頼もしい限りだろ?」
「どうだか……」
会話をしながら家の前に着くと誰かが立っているのが見えた。
「楽しそうにしてるとこ申し訳ないですが、少々厄介事に巻き込まれたのお時間でござんす」
「だ、そうだが」やっぱ上ノ恵一人しちゃ不味かったじゃん?と、ツンツン野郎は、隣にいる目を背けている博士の頭をワシャワシャする。
「で、上ノ恵がどうした?」
「まだ、上ノ恵の主に何かあったとは言ってませんがね?」
「だ、そうだが?」髪がボサついたちっこいのは隣にいるツンツン頭の脛に蹴りを入れる。
「まあ、主の事ですがね」
何でわかったでござんすか?
そりゃ経験で
「それで、何があった?」
「何がと言われやしても、」
詳しくは……。と部屋にある紙切れを指差す。
「『あの時の仮は返す。一人でこい』……これがアイツ宛に来たのか?」
そうでござんす、ついでに言うと鳩がですがね。と童女は手紙を手に取り、
「血相を抱えた主は何やら知ってる雰囲気でやしたね。再びついでに言うと、二人には遅くなるとだけ伝えてと言われやした」おおっと口が滑ったと無表情ながら言う。
「だが、これだけじゃ助手二号の場所がわからんな」
「いえいえ、あっしが知ってやす。ーー説明は省きますが上ノ恵は……」