とある魔術の禁書目録(真理の扉)   作:まーぴん

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第二十一章『上ノ恵ハル②』

叶わないとわかっているのに 夢見るのは何でだろう

 

もう二度と信じないと言いながら 誰かに期待してるのは何故だろう

どんなに手を伸ばしても 決して届くことはない

 

しかし 届かないからといって それが 手を伸ばさない理由にはならない

 

俺は中途半端だ

 

でも 後悔はしない してはならない

 

だって 俺のした事は ぜったいに 間違ってない そうやって 進んできた

 

ふりかえるな

 

ふりかえるな

 

手を伸ばし続けよう

 

その先に 何が待っていようと

 

 

そうだよ

 

そうだろ

 

 

なあ

 

 

オティヌス

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい、聞こえてるか」

 

「…………博士……?」

 

「何だ、本当に立ったまま寝てたのか……おかしな奴だな」

 

 

そうか

 

 

「早く支度を済ませるんだな、上ノ恵たちが待って……どうした、何をニヤけている」

 

「………いや、何でもないさ。待ってろ、準備するから」

 

 

 

似ているんだよ

 

 

 

「ボヤッとするなよ」

 

 

 

存在が安心させてくれる

 

 

 

「はいはい、少し待ってろ」

 

 

 

理解者のように包み込んでくれるような

 

 

 

 

なんてな……

 

 

「一度、フラれたからな」

 

「……ん、何か言ったか助手……?」

 

 

 

 

 

 

しばし、語らずにはいられない話がある。

 

それは、あの日の上ノ恵達に纏わる事件、悲劇の話だった。

 

博士とこころ そして途中加わったクラスメイトを連れ上ノ恵のいる施設を探索した。

 

上ノ恵のいた施設の奥で待っていたのは彼女の変わり果てた姿であった。

 

周りの人の惨劇 彼女の持つ剣 その光景がよく目に焼き付く。

 

何があったか駆け寄ろうとしたと同時に彼女は倒れ、そのまま気を失った。

 

気を失った彼女を支える金髪の彼の疲労した表情から深入りはせず、彼女を抱えその場を後にした。

 

 

「上ノ恵アキだったか」

 

「ああ、従兄弟のな……」

 

「……なぁ、本当に従兄弟なのか」

 

「と、言うと?」

 

「いや、何、上ノ恵に血縁がいたらそいつを許さないって思ってな……本当の所どうなんだよ?」

 

「コイツと上ノ恵は血は繋がってない。上ノ恵アキというのは偽名だよ」

 

「おい、博士」

 

「どうした、隠すのか」

 

「………いや、自分で言うさ、でも今は上ノ恵の事が先だろ?」

 

「……どうしてクラスメイトのお前や教師や廃墟にいたそいつと佐天がいるのか……後で偽りなく全部話せよ」

 

 

上ノ恵と金髪の彼ともう一人をとある場所に連れて行くと博士の看病の元、上ノ恵を安全であるそこに預けた。看病と言っても気を失っているだけだそうだ。

 

付きっきりで付き添った金髪の彼は今もそこにいる。そして、同じく気を失った佐天涙子も。

 

 

 

「来たぞ、若い者の集よ」

 

それから二日後の事だった。

 

「上ノ恵は……眠ったままか」

 

とある地下の施設で一連の事件に関わった者がそこにはいた。

 

「彼女にとってよっぽどのことがあったんだろう……相当うなされていたんだ」

 

そういうと博士は上ノ恵の側にいる彼に視線を向ける。

 

「何があったか、尋ねるのがこちらからでいいかな」

 

「………いや、構わないが」

 

と、歯切れ悪く金髪の彼は口を開けたまま話すのを止めると、クラスメイトの方を見る。

 

「お前はお前で知りたい事が山積みだろうが、聞くと戻れなくなるかも知れないぞ」

 

無知で か細い 彼女に向けての警告だった。

 

「ああ、多分ここから先はお前の領域ではなさそうだ」

 

博士も金髪の彼と同じように彼女に諭す。

 

「この世界はお前が思ってるより残酷だよ。引き返した方が良い」

 

「…………」

 

彼女は黙りと俯くと、理解したのか離れようと歩きだした。

 

「いや、アンタも一緒に聞いてきな」

 

「………え」

 

その言葉に金髪の彼と博士はツンツン頭の彼を見る。

この場にいることさえ、不安だってあっただろうその彼女は気を失って一緒に運ばれたといえ、そのあと上ノ恵の側にいてくれたそうだ。今、この女の子はどういう心境なのだろうか。

 

「アンタも上ノ恵に何があったか知りたいんだろ?」

 

「それは……そうですけど」

 

「なら、聞かなくちゃダメだろ」

 

博士と金髪の彼を無視してツンツン頭は続ける。

 

「友達……何だろ上ノ恵の」

 

彼女は無言で頷いた。

 

「それなら話を聞く権利はあるさ」

 

「………おい、勝手に話を進めるな」

 

意向とは逆な事をしている助手を止めんと博士が割ってはいる。

 

「そいつはこの事件には関係ないんだろ。この世界にだってまだ足を踏み入れていない……そんな女の子をお前はこちらの世界に巻き込むのか」

 

関係があったのなら、と博士は付け加える。

 

「何故あの施設にいたのかだってわからないんだぞ」

 

そう、そもそもこの事件についてツンツン頭と博士は何も知らない。クラスメイトの事もそうだが、誰が関わっているのかだって知らないのだ。それがどこまで危険があって、彼女を巻き込んでしまうのかだって。

 

「この娘は上ノ恵の友達なんだ。何であそこにいたかなんてそれだけでいいだろ」

 

それに、と付け加える。

 

「あやふやなままにして、また何かに巻き込まれないとも限らないだろ。だったら知ってもらうべきだ。巻き込んだ者として最低限の敬意だろ?」

 

今のツンツン頭の言葉は博士とは対となる説得ではあったのだが、博士は溜め息をつくと勝手にしろと言わんばかりに腰を落とした。

 

そして、ツンツン頭は金髪の彼の方へ向く。

 

「友達がそれを知ってどう思うのかはわからない。上ノ恵は知られたくないのかも知れない……。だが、こんな怪しい男と怪しい教師に知られるぐらいなら、友人の彼女も聞いてもらった方が良いんじゃないか?」

 

続ける。

 

「それに自分だけ置いてきぼりにされるのは悲しいさ。自分の知らない所で大切な人が傷ついているのに、除け者にされ、何も出来なかったなんて……そんなのは耐えられない」

 

ツンツン頭にとってそれはかつての自分の気持ちの代弁のようなものだった。魔術に関わっている少女が自分の知らない世界で自分を巻き込まんと「トウマには関係ない事だよ」と言ってくれた。だけど、それはとても残酷で辛い事なのだと。

 

佐天涙子にとっても、同じように。

 

金髪の彼にだって、同じように。

 

 

「……佐天、お前が決めろよ」

 

今も上ノ恵が自分の知らない所で苦しんでいるのに、何も出来ない辛さを知っている金髪の彼の言葉だった。

 

「うん、なら答えは決まってるよ」

 

自分とは違う世界にいる常盤台のクラスメイトを持つ彼女は……

かつて自分の知らぬ間に友人を失った彼女は。

 

「もう、目を背けるのはやめるって決めてたんだ」

 

「そうか、なら俺も目を背けるのはやめよう」

 

彼と彼女は改めて一歩踏み出す。それが前進か後退かは置いといて。

 

「なら、まずは話を聞こうか。金髪ピアスとやらの知っている事を」

 

 

 

 

 

 

 

……to be continue

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