最近、勉強が忙しく、あまり執筆に時間が取れませんでした
波の音が静かに聞こえる淡島のダイビングショップ。そこで果南はボディラインがくっきりと出るダイビングスーツを着こなしながら、大人でも持つのが一苦労な重い酸素ボンベを運んでいた。
「ここで良いかな?」
ロッジを傷つけないようにゆっくりと酸素ボンベを置き、額にかいた汗を拭う。そして、次の作業に移ろうとしたその時、背後からある少女に抱きつかれる。
「果南〜シャイニー!」
金髪の少女、鞠莉は子猫が親猫に甘えるようにスリスリと擦り寄る。
「……何しに来たの」
しかし、鞠莉の反応とは真逆で果南はしかめ面で酷く冷ややかな言葉で突き放そうとする。
「会いたかったから」
「それだけ?……違うでしょ」
果南は鞠莉の本当の目的を見抜いていた。すると、鞠莉は大きく息を吸って、喋り始める。
「スカウトしにきたの!休学が終わったらまた一緒にスクールアイドルを始めるの!」
「……本気で言ってるの」
「じゃないと帰ってこないよ」
鞠莉の本気の眼差しに果南は冗談ではないと認めざる得ないと思いつつ、同時に怒りが込み上げてくる。
唐突に言い出し、いつも突っ走るのは相変わらずようだ。特に人の気持ちも考えないというところも。あれほど心配をかけさせたのだ。少しくらい変わっても良いと思っていたが、それは無駄なことであった。
「……私はやらない」
「全く……頑固親父なんだから」
鞠莉の予想通り、果南はスカウトを断わり、相変わらず変わっていない親友に寧ろ嬉しさを抱いていた。
だが、逆に果南は苛立っていた。頑固親父などとふざけた言葉で自分を片付け欲しくなかった。
あの時、ああなってしまったことをまるで鞠莉は反省していないように見えて仕方がなかった。
自分はこんなに苦しんでいるのに……戻せない時をずっと、悔やんでいるのに。それが鞠莉への八つ当たり混じりの怒り。
「マリー!」
怒りに囚われているとお店から目をキラキラと輝かせながら、レイが飛び出していき、鞠莉に向かって全速力で向かっていく。
「レイ!」
鞠莉もレイに気づき、両手を広げレイを受け入れる準備をする。そして、2人はまるで運命の再会にように大袈裟に抱き合いながら喜び合う。
「マリー!ごめんなさい!なかなか戻ってこれなくて!」
「いいの!レイが無事なら!」
あまりの喜びに思わず2人は涙を流す。そんな濃密な2人を見て、果南は思わずひいてしまう。
「ねぇ、レイはいつ戻ってくるの?」
「えっと……マリーとは一緒に居たいんだけど……果南とも一緒に居たいし……」
鞠莉の言葉に本気で悩むレイ。しかし、レイの悩みは二股かけてるクズの男の発想で、あまり褒められたものではない。それどころか芸能界であれば追放される程である。
「なら!私も果南の家に住めば!」
「来ないで!」
まるで名案が閃いたと言わんばかりの得意げな鞠莉に果南は拒否の一撃を与えるのであった。
♢♢♢
昼休みの図書館。いつもはカウンターで本を読んでいる花丸が今日は窓から外の景色を見て、物思いにふけっていた。
「どうしたんだい?花丸ちゃん」
「あっ、舘先輩。」
そんないつもと違う花丸の様子を光助は不振がり、なんとなく声をかける。すると、花丸は1度、迷った素ぶり見せ、考え込む。そして、何かを決めたような様子で光助にあることを伝える。
「先輩……昨日、本屋さんで気になってスクールアイドルの雑誌を読んでたら、少し気になっちゃって。」
「本当!?ということは!」
「でも……1人じゃ恥ずかしくて……ルビィちゃんと一緒にやりたいなって。でも……いきなりとなると……特にルビィちゃんの都合が……」
申し訳なさそうに、そして不安そうに花丸は言う。確かに、いきなり入部してスクールアイドルをやるというのは、いくら覚悟していたからと言っても、ついていけなかったり、合わなかったりすることもあるだろう。
それに無事に入部したとしても、事情があるルビィに関しては入部したからと言って、安心するにはまだ早いと言える。下手をすればダイヤの逆鱗に触れ、会長権限で廃部という可能性もなくはない。
せめて、ワンクッションあればまだマシなのだろうと光助は頭を捻る。すると、ある提案が思いつく。
「……なら、体験してみる?」
「体験?」
「そう。あるだろ、体験入部って。とりあえず体験入部という名目でスクールアイドル部に入って、気に入ったらそのまま続ける。気に入らなかったら辞めるってのはどうかな?」
「わかりました。舘先輩、ありがとうございます。」
光助の提案を花丸はあっさりと受ける。あまりの呆気なさに光助はちょっとした違和感を覚える。
「それじゃあ、ルビィちゃんにも言っておきます。」
「あぁ、頼む。」
話を終え、光助は図書室を出て、教室へと向かう。その途中で光助は花丸について考えていた。
スクールアイドルに興味を持ったのはわかる。そして、スクールアイドルをやりたいというのもわかる。だが、ルビィと一緒にやりたいと言うのはわからなかった。
男と女の価値観や考え方の違いだろうと思ったが、それにしてもルビィに固執しているように見えた。
「もしかして……」
一つの考えが浮かぶ。だが、判断材料が足りず、確信には至らない。
ならと光助はあることを代わりに思いつく。
材料足りないなら調達すればいいと。
♢♢♢
「やった!2人が入部してくれた!これでラブライブ優勝できるよ!」
放課後、部室で千歌の元気な声が響き渡る。
「だから千歌ちゃん。2人は体験入部だからまだ正式に入部はしてないよ。」
光助はあらかじめ説明したにも関わらず勘違いしている千歌に梨子は注意をする。
今、部室にはAqoursの3人と光助の他に運動着姿の花丸とルビィがいた。
光助の提案の後、花丸は順調にルビィを誘えたようだ。
「後、ちかっち。ルビィは生徒会長の件があるから内密にな」
「うん!わかった!」
光助は唇の人差し指を当て、身振りを使って千歌に言い聞かせる。
「「よろしくお願いします」」
「こちらこそよろしくね!」
ルビィと花丸は元気よく挨拶し、深々とお辞儀をする。
特にルビィは目を輝かせ、ニコニコと笑いながら、子供のようにはしゃいでいた。
「楽しそうだね、ルビィちゃん」
「だって!ワクワクするもん!」
憑き物が取れたように明るいルビィを微笑ましく思いながら、光助はホワイトボードに練習メニューを書いていき、説明を始める。
「それじゃあ、早速今日の練習内容について話すよ」
「これが本当のスクールアイドルの練習……」
「2人にとってはちょっと大変かもしれない。だからキツイと思ったら途中で休憩してもいいからね。無茶は禁物。怪我したらそれこそ廃部は免れないからね」
「「は、はい!」」
「よろしい」
2人の元気のいい返事に光助はご満悦の表情を浮かべる。
「よぉ〜し!早速練習に行こう!」
2人に負けず劣らずの元気で勢いよく部室から飛び出す千歌だが、ある問題によりその勢いは急激に落ちる。
「ちょっと待って千歌ちゃん!練習場所は?」
「あ……」
今までは部活として認められておらず、止むを得ず、校外で活動していた。
だが、今回からは部活として正式に認められ、やっと校内でも堂々と活動できるようになった。
しかし、肝心な活動出来る場所をマークするのを忘れていた。
「グラウンドや体育館は既に他の部活が使用してるし……砂浜まで行くか」
「それだと移動時間が勿体無いわ」
「走っていけ……いや、キツイか」
光助は梨子の言い分に横槍を入れようとしたが、流石に体力のある自身の枠組みで考えるのはあまりにも身勝手と思い、言葉を途中で押し留める。
「そ、それなら屋上はどうですか!あのμ’sも屋上で練習してたって!」
「それだよ!流石ルビィちゃん!」
千歌はルビィの手を取って、大袈裟に褒める。
今まで、培ってきたスクールアイドルの知識で役に立てたのが余程なのかルビィは照れ臭そうに、そして嬉しそうに笑った
♢♢♢
「わーい!屋上だ!」
そして、Aqoursメンバーは屋上に足を運んだ。良かったことに屋上は何処の部活も使用しておらず、問題なく使用できるようであった。
「いい眺め!」
「あぁ、絵になる眺めだな」
光助と梨子は屋上からの景色に思わず、目を奪われる。
瑠璃色に宝石のように煌めく海。堂々と構える富士山。
この内浦ならでは、浦の星女学院でしか見られない絶景に2人はこの学院に転校して本当に良かったと思えた。
「気持ちいいずら〜」
春の柔らかく暖かな日差しは人々を心地よい
睡魔へと誘う。
花丸はゆっくりと仰向けに寝そべり、気持ち良さそうに寝始める。
寝息とともにゆっくりと上下する花丸の2つの山。花丸の真意を確かめようと初めからから花丸に注目していた光助は思わず視線が移ってしまう。
「光助君、何処見てるの……」
光助のやらしい視線に気づいた梨子はまるで汚物を見るような目で光助を見る。
「り、りこちゃん……」
「光助君って、変態だよね」
梨子の言葉が鋭い槍となって光助の純粋な心に突き刺さるどころか貫通し、大きな穴を開ける。
「はう!だ、だって!俺はその……男だし……」
光助は身振り手振りを使って必死に弁解するが、梨子の痛い目線は途切れることはない。
「そんなに大きい方がいいの……」
「梨子ちゃん?」
「何でもない!」
梨子の独り言を呟くとそそくさと千歌たちのところへと戻っていってしまう。
「……次からは気をつけよう」
一緒に生活している梨子に嫌われたくない光助は次からは女子へ向ける視線をこれから気をつけようと自分に言い聞かせた。