いや〜匿名で書いてる作品にうつつ抜かしてたら全然書けなくて……
春の暖かな日差しが大きな窓から部屋に刺し込む。ゆったりと心地よい暖かさと静けさ。程よい薄暗さ。そして、古い紙の独特の匂いがその部屋の雰囲気を作り出している。
「読んでるところごめんね。これを帰したいんだけど。」
教科書の5倍ほどの厚さの本が何冊も載せられた塔をカウンターに置き、光助はカウンターで自分に世界に浸りながら本を読む少女に申し訳なさそうに、借りる為の手続きをお願いする。
「別に大丈夫です。それがマルの役割ですから。」
そう言って、花丸は栞を挟んで、一旦閉じ、本についているバーコードを機械で読み取る。
光助は花丸とはよく会う。光助休み時間やAqoursの活動がない放課後はこの図書室に足を運び、本を読んだり、勉強をしている。そして、光助が図書室に来る時は大抵図書委員の花丸がカウンターに座り、じっと本を読んでいる。
「よいしょっと……後はこの紙に書いてと……。」
本を読んでいる時に花丸は美しい。本を見つめるその黄色の丸い瞳。まだ幼さの残る顔つき。それとは裏腹にたわわに実った膨よかな胸は男である光助は思わず凝視してしまうほどの逸品であった、
「はい。手続き完了ずら。」
本ともに花丸の優しい笑みも渡され、光助は悟られぬように目線を逸らす。
「ありがとう。」
そして、簡単に一言だけ礼を言い、光助は図書室を出ようとすると、前からルビィが現れ、不意に足を止めてしまう。
「ピギィ!舘先輩!スクールアイドル部が承認されたって本当ですか!?」
「ああ、そうだよ。本当だよ。」
光助を見て、ルビィは一瞬怯えた表情を見せるが恐怖よりもスクールアイドル部が承認されたことを確認することが気になり、光助に聞いた。
そう。つい先ほど鞠莉によって正式にスクールアイドル部の設立を認められたのだ。そして、部室もでき、いよいよ本格的にAqoursの活動が始まろうとしていた。
だが、ここである問題が起きた。どうやら、部室は何年も使われていなかったようで物が散乱して、埃塗れだった。そのため、一旦片付ける必要があった。そして、部室にあった本を返すため、光助はこうして図書館に訪れていたのだ。
「よかったねぇ。」
「また、ライブが見られるんだ!」
あどけない笑顔でルビィは素直に喜ぶ。そんなルビィを見て、光助は思わず本音が漏れる。
「ルビィちゃんはスクールアイドルが好きなんだね。いっそのことやればいいのに。」
「それは……ダメなんです……。」
すると一転。ルビィの表情が見る見るうちに曇っていく。そういえば、ルビィはダイヤの妹で、古風な家の出身でスクールアイドルを嫌っていると曜から聞いたことがある。
おそらく、それでダメなのだろうと光助は思っていた。
しかし、そんな簡単な問題ではなかった。
「お姉ちゃんが……スクールアイドルが嫌いだから……。」
「あ……うん?」
「お姉ちゃんも……昔はすごくスクールアイドルが好きだったんだ。一緒に雑誌を読んだり、歌を聴いたり……踊ったり……。」
「ちょっと待って!?生徒会長が!?色々聞きたいことが山積みだけど、そんなに好きだったのにどうして嫌いに?」
ダイヤがスクールアイドルが嫌いなのは安易に予想はついた。しかし、それが今の話で昔は逆に好きだったと聞いて、光助は驚きを隠せずにいた。そして、思わず勢いでルビィにダイヤがスクールアイドルを嫌いになった原因を問い詰めてしまう。
「それは……。」
しかし、ルビィは答えようとはせず、言葉が続かない。余程言えない事情なのか、それとも言っても大したことの事情なのか。
「とにかく、ルビィも本当はスクールアイドルを嫌いにならなくちゃいけないんだ。」
「ルビィちゃん……。」
「お姉ちゃんが見たくないってものは好きにはなれないよ……。」
「意味わかんねぇよ……。」
しかし、光助はルビィの話に納得していなかった。
「どうして、生徒会長が嫌いになったからってルビィちゃんまで嫌いにならなくちゃならないんだよ!ルビィちゃんはやりたいことをやればいい!」
ルビィがスクールアイドルをやることとダイヤの好き嫌いなど関係無い。寧ろ、ダイヤがルビィのことを蝕んでいるのならそれは最低だ。
だが、ルビィにもルビィなりの考えがあるのだ。
「でも……スクールアイドルの雑誌を見た時のお姉ちゃんはものすごく悲しそうで……あんなのもう……見たくない……。」
「だからって……。」
光助は反論しようとするが、そこから先は詰まって言葉が出ない。結局、別にルビィは強制されてスクールアイドルから遠ざかっているのではない。姉を思ってのことなのだ。ただルビィがやりたいようにやっているだけで、部外者である光助はこれ以上踏み込むことは許されない。
「わかったよ……俺はこれ以上は言わない。後はルビィちゃんに任せるよ。」
納得は出来ていないが、これ以上は無理だと泣く泣く光助は引き下がる。
「ねぇ、花丸ちゃんはスクールアイドルに興味ないの?」
すると、ルビィはふと横にいる花丸に話題をふる。
「ないない!オラとかズラとか言っちゃうし……それに運動は得意じゃないし……。」
「それなら……ルビィも大丈夫。」
スクールアイドルは出来ないと花丸は真っ先に否定する。
「そう言えばルビィちゃん。よく舘先輩と話せるね。」
「どういうこと?」
「ルビィちゃんは極度の人見知りでそれに男性恐怖症ずら……です。」
「うん?男性恐怖症?ちょ、待てよ。」
花丸の言葉が光助に不穏な影を落とす。極度の人見知りでも、こうやって話せるのならそれはルビィもしくは光助、はたまたその両方が高いコミュニーケーション能力を有しているのだと思う。
しかし、ルビィは男性恐怖症を患っている。それは高いコミュニーケーション能力を持っていたとしても相手が男である限り、無意味であろう。
なのに、ルビィは光助と普通に話している。それは何故か?光助に一抹の不安が過ぎる。
「どうしてなの?ルビィちゃん?」
そして、花丸が禁断の扉を開けてしまう。
「あ……先輩は……命の恩人だし……それにあんまり男の人って感じがしなくて……。」
「あ……そっか……。男っぽくないか……あははは。」
男の人って感じがしない。それは中性的な光助ならではだろう。しかし、男として見られたい光助にとってそれは褒め言葉ではない。だが、そのおかげでこうやってルビィと話せていると思うと、複雑な気持ちになる。
♢♢♢
「大分片付いたな。」
本を返し、図書室から複雑な気持ちのまま光助は部室に戻ってきた。
物が散乱し、足の踏み場もなかった部屋は今では綺麗サッパリ片付けられ、まだ少し誇りぽかったが、それでも生活できる環境ではあった。
「光助君!遅い!」
「悪かったよ。」
花丸とルビィと話していた予定より約10分ほど遅れて戻ってきたおかげで梨子に軽く怒られたが光助は適当に返す。
「そうだ!光助君。そういえばこんなもの見つけたんだけど……。」
「何?これは……詩?」
すると、曜がホワイトボードの前で手招きをし、光助は曜の元へ行く。そして、曜はホワイトボードに指を指す。そのホワイトボードには薄っすらとだが、何か言葉が書かれていた。
「うん。何かわかる?」
「いや……流石に……。」
こんな意味深な言葉に曜はもしくかすると、父親の手がかり、もしくはホープの謎が書かれているのかと思ったのだろう。
しかし、そんなことはアニメの中だけの話だ。光助が読む限り、手がかりは何もなかった。
当たり前だろうと思いながら、不意にその文字に触れる。すると、突然に脳裏に映像がよぎる。見たこともない映像が。
何処かで見たことのある
「どうしたの?」
石化したように一切身動きを取らなくなった光助に曜は顔を覗き込む。その時に光助は夢から覚めたようにハッと気づく。
「これは……詞でも歌詞なのか?」
「でも歌詞なら一体誰が書いたんだろう?」
「そこまではわからない。でも……その人は何処かで見たことある気が……。」
「見たことあるって?」
「いや……何でもないよ。」
梨子は光助を心配そうに見つめる。光助もこれ以上、先ほどの映像のことを言っても理解されないだろうし、果たして本当にあったことなのだろうかまだ不確定なため、これ以上追求するのはやめておくことにした。
「さぁ、それよりある程度片付いたんだ。そろそろ練習始めた方がいいんじゃないかな?」
「そうだね。じゃあ、着替えてくるから待っててね。」
そして、千歌達は着替えを持って、部室を後にし、更衣室へと向かい、たった1人、光助だけがこの部室に取り残された。
「希望を……紡ぐ……。」
ふと言い慣れたフレーズを口から溢れる。変身する時に不意に出る決まり文句。所詮、テンションの昂りで口走ってしまうただのかっこつけだと光助は思っていた。
しかし、先ほどの映像を見た時、それは違うと確信した。あの映像は希望から始まり、そして失望で終わった気がした。恐らく、自分はその失望からまた希望へと昇華させ、また紡いでいかなければならないのだ。
これは光助自身の役割と言うより、ホープとして役割、責任、そして1つの在り方なのだろう。もしくは……使命か運命か。
「ホープ……これは一体なんなんだ。」
ホープの謎に力。これには光助もただ不思議に思うばかりであった。
本ってものは確かに色んな知識や経験を得ることが出来るけど、結局は体験には勝てないものさ。だから、怖くても何でもやってみることが大事さ。
そして、もっと自分を主張しなくちゃな。だって、これは君の物語でもあるのだから。
次回 仮面ライバーサンシャイン