仮面ライバーサンシャイン 光の導き手   作:シママシタ

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やっと2話が終わる


夢の扉 

レイと果南と別れ、同じ思いを共有できる同志と出会ったことに喜こびつつも、少し前の苦い思い出を思い出し、複雑な気持ちになりながら、千歌の家に向かうためバイクを走らせていた。

 

「ここが……千歌の家!?」

 

地図アプリに示されていた場所に着くと、そこには見慣れた旅館、「十千万」であった。

 

「まさか、こんなことがあるなんて……。」

 

まさかの偶然に驚きを通り越して、運命じみたものを感じてしまう。

 

「うん?」

 

ふと視線を感じ、視線を左に移す。そこにはきのこの傘のような大きな耳と細目の大型犬が犬小屋から光助を見ていた。

 

「犬?名前は……しいたけ……。」

 

犬小屋に張ってる名札にはしいたけと書かれていた。そのしいたけはじっと拓人を見つめていた。

 

「まぁ、きのこに見えなくはないけど……。」

 

何とも言えないネーミングセンス。もしかして、いちもつが立派なしいたけみたいなのがという理由でこういう名前なのかと考えたがそんなわけはないとすぐに考えを取り下げる。

 

「あら、あなたは?」

 

ふと、後ろから大人っぽくおしとやかな女性が光助に話しかけ、思わず光助は背筋をピンと張り、固まってしまう。

 

「あっ……あのちかっちの友達の……。」

 

「光助君でしょ。千歌から聞いてるわ。さぁ、入って入って。」

 

そして、誘われるがまま手を引っ張られ、裏口から旅館の中へとお邪魔する。

 

「それにしても、千歌がこんな可愛い男の子の友達が出来るなんてね。」

 

「は、はぁ。」

 

光助はあまり可愛いと言われるのは好きではない。男ならばかっこいいと思われたいというのが当たり前だ。

しかし、彼女も悪気がある訳ではなく、むしろ褒めているつもりなので、光助は気を悪くしないように苦笑いで返す。

 

「あっ、ごめんなさい。紹介が遅れたわね。私は千歌の姉の志満と申します。」

 

「よ、よろしくお願いします。」

 

志満の優しく、温かな笑顔を振りまき、思わず光助は顔を赤める。光助は果南といい、志満といい、年上で大人っぽく包容力がある女性がタイプなので、ああいう可愛いらしい一面を見ると、思わず見惚れてしまう。

 

「千歌は二階にいるからね。」

 

「ありがとうございます……っと!」

 

すると、二階から志満とは正反対のボーイッシュな女性が階段を駆け下りてきた。

 

「おっ、ごめんごめん……って志満ねぇ、この子は。」

 

「ほら、千歌ちゃんが言ってた男の子。」

 

「へぇ〜、あんたが。」

 

その女性は光助の目前まで顔を近づけ、じっくりと見定める。また、女みたいだなとか言われるんだろうなと予想をするも、その予想は大きく裏切られることなく。

 

「へぇ、結構いい顔つきしてんじゃん。」

 

美登はそう言うと、足早にその場から去っていった。

 

「全く……ごめんなさいね。美登ちゃんが迷惑をかけちゃって。」

 

「いえ、別に気にしてませんから。」

 

嵐のような人だなと思いつつも、褒められたことに内心喜んでいた。そんな浮かれた気持ちで、二階に上がるとすぐその気持ちはなくなる。

千歌の部屋に前にたどり着くと、深呼吸をする。女の子の部屋に入るのはどうも緊張する。だが、このまま立ちっぱなしもいかがなものかと思い、意を決して襖を開ける。

 

「あっ、こうちゃん!」

 

襖をあけると真っ先に千歌が光助に気づき、声をかける。続いて曜も満面の笑みで光助に手を振る。

そんな三人に迎えられて、先程まであった緊張はどこかに行ってしまった。

 

「ごめん、遅くなった……って梨子ちゃん!?もしかして!」

 

「うん。作曲(・・・)は手伝うことにしたの。」

 

あくまでも作曲だけを手伝うことを強調する梨子。だが、光助にとっては梨子がこうやって楽しんでもらえれば何でも良かったため、ホッと胸をなでおろす。

 

「それで、今は何をやってるの?」

 

「曲を作るために詩を書いてるんだけど……。」

 

「へぇ、どんな感じにするの?」

 

「スノハレみたいな恋愛の曲にしたいんだ。」

 

「スノハレ?……まぁ、いいんじゃない?」

 

スノハレという単語に首を傾げるも、おそらくμ’sの曲の一つなのだろうと勝手に解釈をする。

それにしても、なぜ恋愛の曲なのだろう。やはり、女子というのは恋愛ごとが好きなのだろうかと偏見交じりに考える。

 

「でも、恋愛したことないのにそういうのって難しいでしょ。だから、やめた方がいいって思うんだけど……。」

 

「ん!?ちょっと待って?恋愛したことないの?」

 

「むしろあるの?」

 

千歌は恋というものをまるで都市伝説か何かと勘違いしてるような言い草で、光助は動揺を隠せない。

 

「いや、高校生だよ!普通はあるでしょ!曜ちゃんはあるよな!」

 

「私も……そういうのなかったなぁ。」

 

「ふぁっ!?り、梨子ちゃんは!?」

 

「私も……。」

 

「マジか……。」

 

思春期という多感な時期に恋愛をしたこともないことに、驚きを通り越して心配になってしまう。

因みに光助は人というのは恋を通じて成長するものと考えている。現に光助は恋を通じて成長したと自負している。

かと言って、全てがいい経験だったとは思っていないが。

 

「なら、こうちゃんはあるの?」

 

恋愛をしたことがないことに驚かれたのが、余程なのか、対抗するように千歌が光助に話を振る。

その瞬間、光助の脳裏にあの少女の姿が思い浮かぶ。学校で美人でまかり通っていた、茶髪の少し今風の少女。そんな女子と付き合えていたのなら、本当なら誇れるものだろう。しかし、光助にとっては苦痛の思い出でしかない。

 

「……短い間だけど……いた……。」

 

「えーー!?」

 

これには三人とも驚きを隠せず、大きな声をあげてしまう。そして、光助の気も知らず、問い詰めてしまう。

 

「ねぇねぇ、どんな感じなの!?」

 

これには曜も興味を示し、光助を問い詰めていく。しかし、彼女との思い出には華も何もなく、ただ苦しい思い出しかない。

縫われたはずの心の傷がグロテスクな音ともに開いていく。光助を掴むあの手の感触、見つめるあの視線が再び蘇り、恐怖で発狂しそうになる。

しかし、そんな思いをグッと心の奥底に押しとめる。

 

「まぁ、悲恋の曲になっていいなら話すけど。」

 

すると、千歌は曲のイメージには合わないようでそれ以上、問い詰めることはしなかった。やれやれと光助は心の中で汗をぬぐう。

 

「っていうことはμ’sがこの曲を作った時、誰かが恋愛してたってこと?」

 

「まぁ、その可能性もなくはないかもね?」

 

「そっか……なら調べてみる。」

 

梨子がその可能性を示唆すると、千歌はパソコンを開いて調べ始める。画面を見るその表情は真剣そのもの。

 

「全く、ちかっちはスクールアイドルのことになると、途端にやる気を出すね。」

 

「千歌ちゃんはスクールアイドルに恋してるからね。」

 

「それだよ!」

 

「スクールアイドルにドキドキする気持ちとか大好きって感覚とかなら書ける気がしない?」

 

「書ける!それならいくらでも書けるよ!」

 

そう気づくと、千歌は夢中でペンを走らせる。

夢中になる千歌を見て、梨子は幼い頃のことを思い出す。あの頃は迷いや悩みなど全くなく、ただ純粋にピアノを楽しんでいた。

ピアノの音が好きだから。褒められのが嬉しかったから毎日のように弾いていた。

いつからこの気持ちを忘れていたのだろうか。

 

「私、その曲みたいなの作りたいんだ。」

 

「何々。ユメノトビラ?」

 

千歌は光助と梨子に「ユメノトビラ」というμ’sの曲の歌詞を見せる。あくまで光助の解釈でだが、この曲は自信を無くして路頭に迷いながらも、大切な友達と出会ったことで、進むべき道を見つけ、そして共に歩んでいくという、希望の籠ったものだと感じた。

 

「それを聴いてスクールアイドルやりたいって……μ’sみたいになりたいって本気で思ったの!頑張って、努力して、力を合わせて、奇跡を起こしていく。私でも出来るんじゃないかって。今の私から変われるんじゃないかっ

て、そう思ったの!」

 

千歌は目を輝かせながらそう語る。すると、梨子がそんな千歌にこう言った。

 

「本当に好きなのね。」

 

「うん!大好きだよ!」

 

梨子の言葉に混じりけのない笑顔で返す千歌。他愛もないただの一言。しかし、それが梨子の思いを大きく変えることを千歌は知る由もなかった。

 

♢♢♢

自宅へと帰宅し、時計の短い針がちょうど真上を指す頃、梨子はベッドの上で膝を抱えながらスマホを眺めていた。

すると、ドアをノックして光助が入ってきた。

 

「梨子ちゃん、まだ起きてたの?」

 

それはこっちのセリフだと言いそうになるが、光助の様子を見て、グッと押しとどめる。

 

「光助君。どうしたの?」

 

「いや、なんか寂しくなってね。」

 

今の光助はどこか弱々しい。いつもは明るい性格のうえ、仮面ライダーとして命をかけて戦っているあの勇姿からは想像も出来なかかった姿なため梨子は戸惑いを隠せない。

だからこそ、梨子は光助の力になりたいと思った。

 

「ねぇ、何かあったら相談に乗るよ。」

 

「……ありがとう。でも、大丈夫。もう、終わったことだから。それより、梨子ちゃんは何聞いてたの?」」

 

先程の暗い表情はまるで嘘のような優しい笑顔を光助は見せると、梨子の隣に座り、梨子の手にあるスマホの画面を覗き込む。

 

「ユメノトビラ……。」

 

それは先程千歌が二人に勧めていた曲。やはり、梨子も何か思う節があるのだろかと光助は予想していた。というのも光助が捉えるこの曲の意味と、梨子を取り巻く心情と状況があまりに一致していたのだ。

自信を無くした梨子と、手を差し伸べる千歌と曜。もしかして、梨子も自信とこの曲と照らし合わせているのでは

光助は思った。もし、そうなら、一歩踏み出すチャンスなのではと光助は意を決する。

 

「弾いてみない?」

 

光助の突然のことに梨子は目を丸くする。

 

「でも……。」

 

どうしても怖くなって、思わず固まってしまう。実際のところは弾いてみたいと思っている。しかし、いざ弾こうとピアノに手をかけるとあの日のことがフラッシュバックして、手が震えてしまい、結局弾けないのだ。

梨子は無理だというように、光助から目をそらし、俯いてしまう。そんな梨子の心情を察した光助は優しげな表情を浮かべて、梨子の白くなめらかで細い手を優しく握る。

 

「今の梨子ちゃんならきっと弾ける。」

 

光助の暖かな体温が梨子の冷え切った手に伝わる。すると、梨子は心がゆっくりと熱を帯びるような感覚を感じた。そして、決心したような面持ちで立ち上がり、ピアノの前へと座り込む。久しぶりに触るピアノ。しかし、案外緊張はせず、むしろ相当リラックス出来ていた。

不思議な感覚であった。あれほど恐れていたものが、今ではむしろ弾きたいとさえ思っていたのだ。

そして、深呼吸して、そっと鍵盤を押す。

 

〜ユメノトビラ ずっと探し続けて 君と僕との つながりを探してた〜

 

薄暗い部屋に梨子の綺麗な歌声と透き通ったピアノの音が響き渡る。その二つは綺麗に合わさり、心地の良い美しいものへと変化する。

光助はその美しいものをただ黙って聞いていた。

 

〜そして少しずつ進むんだね ときめきへの鍵はここにあるさ〜

 

鍵盤を叩く梨子の指はまるで何かを思い出すためにかのようにしっかりと踏みしめるよう。

 

〜青春のプロローグ〜

 

弾き終えると梨子はゆっくりと深呼吸をし、余韻に浸ろうとした。だが、外から拍手の音が聞こえ、その方向にゆっくりと顔を向ける。

 

「そこって梨子ちゃんの部屋だったんだ。」

 

目線の先には風呂上がりで頭に白いタオル巻いた寝巻き姿の千歌がベランダから梨子の演奏を聞いていた。

光助と梨子は既に気づいてはいるが、梨子の家と千歌の家はまさかの隣同士だったのだ。もちろん、初めて気づいた時には二人とも驚いていたがさらに部屋も向かい側だったことに、さらに驚いてしまう。

 

「こっちもそこがちかっちの部屋だったことに驚いているよ。」

 

「えっ!?光助君!?なんで梨子ちゃんの家に!?……まさか!!」

 

「残念なことにちかっちが思っているような関係ではないよ。ただの居候さ。」

 

梨子の背後から当たり前のように現れた光助に千歌は驚く。そして、二人の事情を知らない千歌は勘違いをしてしまうも、すぐに光助が否定する。

すると、千歌はどこかホッとしたように息を吐き、安心した素振りを見せる。

そして、話題を変え、梨子に声をかける。

 

「ねぇ、梨子ちゃん。今のユメノトビラだよね?」

 

「私どうしたらいいんだろう。何をやっても楽しくなくて……何をしても変われなくて……。」

 

「やってみない?スクールアイドル。」

 

届くはずもないところから千歌は梨子に手を差し出し、何度も断られたスクールアイドルを再び勧誘する。普通ならこんなのは無駄なこどだろう。しかし、彼女は本気だった。

 

「梨子ちゃんの力になれるなら、私は嬉しい!みんなを笑顔にするのがスクールアイドルだから!」

 

千歌の言葉には下心何もない。ただ、梨子を助けたいという願いの他何もない。すると、千歌は身を乗り出し、さらに手を伸ばす。

 

「それって、素敵なことじゃない?」

 

梨子も千歌の手を掴もうと手を出す。しかし、普通に考えて届く距離ではないと諦めてしまう。

 

「流石に……届かないよね。」

 

「ダメッ!」

 

だが千歌は諦めず、頭に巻いていたタオルを落としながらも梨子の手を掴もうとさらに身を乗り出す。

 

「梨子ちゃん。また逃げるのかい?」

 

雲が風に流れ、月を覆い隠す。諦めようと手を引く梨子の背後から、光助が冷たく言い放つ。

 

「だって!……もう、あんな思いしたくない!」

 

不意にあの光景が思い浮かぶ。大勢が見守る中、ピアノに手をかけるも、プレッシャーに負け、何かも蓋をして逃げたあの時。屈辱とか後悔ではない。ただ怖かった。今でも抱いてるのはただそれだけ。

光助もそれを十分承知だ。

 

「怖いのはわかる。だけどね、ずっと逃げてばっかじゃダメだよ。変わるには一歩を踏み出さきゃいけない。」

 

だからこそ、逃げずに再び立ち向かわなければいけないと光助は必死に梨子に言い聞かせる。

 

「でも、その一歩が難しいさ。だけど今!梨子ちゃんの目の前にあるのは何!?折角のチャンスなんだ!それを掴まないでどうする!」

 

 

情と熱のこもった言葉が、梨子の凍った心の蓋を溶かしていく。

変わるには……一歩を踏み出さなくては。そして、目の前にあるものそれは……。

 

「……くっ!」

 

光助に言葉に後押しされ、梨子も必死になって千歌の手を掴もうと手を伸ばす。

 

「あと……少し!」

 

二人は危険を顧みず、その手を掴もうと身を乗り出す。届きそうで届かない距離。だが、絶対に届かせる。変わるために、前へ進むために。そして、ついにその時が来る。

 

「「届いた!」」

 

二人の指先がついに触れ、思わず二人は声をあげてしまう。二人の表情はとてもいいものだった。まるで、富士山を登頂したような達成感のあるそんなものだった。そんな二人を祝福するように月の光が二人を照らす。

 

「うわっ!」

 

「梨子ちゃん!」

 

だが、身を乗り出しすぎて、梨子がベランダから落ちそうになる。しかし、間一髪で光助が梨子を支えたおかげでこと無きを得た。

 

「全く、危なっかしいな。」

 

「光助君……。」

 

梨子の肩を掴みながら呆れたように、だが嬉しそうな様子の光助。そんな彼は二人を見てある決心をした。

仮面ライダーとして、たくさんの人を救う。だけども千歌達とも一緒にいたいとも思っていた。そして、彼女の行く末を見守っていたいとも思ってもいた。

至極、単純なワガママだろう。しかし、やりたいからやる。好きだからやる。そんな簡単なことを千歌から教わったからこその答えだった。

 

「2人の手が離れそうになったら俺が無理にでも繫ぎ止める。だから、俺も手伝うことにする。」

 

光助がそう言い切ると、二人はさらに明るい表情になっていく。

月はスポットライトのように三人を照らす。

 

今、優しい風が流れ、新たなステージ幕を開ける。

 




曜ちゃんがどうしてもないがしろになってしまう。次回からはちゃんと出番をふやさないと。
まぁ、それは置いといて、どうでしたか?
表現なんか頑張ってみたんでしたが……。
あと、ユメノトビラの解釈に関しては、間違っていたらごめんなさい。

さて、主人公にまさかの彼女が(笑)
因みに主人公の元カノ、出そうか迷ってます。出るとなると、小説版ファイズ並みのドロドロした感じになりますが

では、次回もよろしくお願いします
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