20XX年、夏。スクールアイドル達の甲子園、第7回ラブライブ決勝。会場となった秋葉ドームでは熱気の渦が渦巻いていた。
「さあ、今回決勝に残った出場者達を呼んじゃいますよ~!!」
いつものレポーターは今回も前回に引き続き決勝の司会をしていた。マイクが必要ないではないかというくらい大声で決勝進出者を呼び出していく。
「九州代表、優勝候補の筆頭だ~、福博女子大学付属、K9!!」
K9のメンバーがステージに現れると、観客達は、
「K9!!K9!!K9!!」
と、大声で叫び始めた。それが会場全体で大きなコールとなる。
次々に発表されていく決勝進出者達。そのたびごとに観客席からは大きなコールが沸き起こる。レポーターもそれを聞いてさらに続ける。
「東京代表、あのUTXからのかわいい刺客だ!!UTX学院、セイントスノー!!」
セイントスノーが呼ばれ、あの2人が現れると、
「セイントスノー!!セイントスノー!!」
と、観客達は今だせる最大のコールでもって2人を出迎えた。
これで、司会者、観客達のボルテージは最大に達していた。
そして、最後の一組が呼び出されようとしていた。
「これが最後の決勝進出者だ!!」
レポーターがこう叫ぶと、その組の名を呼んだ。
「東海代表、0から1へ、それを心に秘め、今、ここに飛び出します!! 浦の星女学院、Aqours!!」
「Aqours!! Aqours!! Aqours!!」
会場から観客達から出るAqoursコールが鳴り響く。その声を聞いてか、Aqoursの9人が元気よくステージ上に駆け上がっていった。
で、これからラブライブUCが始まるのだが、物語の主人公達はステージ上に立っているラブライブ出場者達…ではない。今観客席にいるある少女が今回の主人公となる。
「これがラブライブなんだ!!」
その少女は目をギラギラにさせながらステージを見ていた。実は最初、行く予定はなかったのだ。ただ、少女の友達からもらった1枚のチケット。それがラブライブ決勝のチケットだった。このチケット、実はプレミアム化していた。去年のラブライブ決勝の伝説の対決、雪穂達が中心となって結成したオメガマックスと穂乃果達のμ’sの対決の影響により、ラブライブ関連のチケットは予約開始後即完売する事態となっていた。それほどプレミアム化していた。その友達も当初行く予定だったが、とある事情で行くことが出来ず、やむにやまれずその少女にあげたのだった。だが、そのチケットがその少女の運命を変える。
「すごい、すごーい。これがラブライブ決勝進出者のステージなんだ!!高校生とは見えないくらいすごいステージだ!!」
ステージ上に舞うスクールアイドル達。これが高校生の本気のステージとはいえないくらい迫力のあるステージだった。その少女は驚きながらそのステージをくぎつけるくらい見ていた。最初は面白半分だった。最近はやりの高校生達のアイドル、スクールアイドルとはなんだろうかと思っている程度だった。いや、このラブライブ決勝が始まるまではそう思っていた。ほとんどの人達はそうである。熱狂的なファンはごく一部しかない。それはどこにいっても、どの分野でも同じである。だって、まだ何も経験していないから。でも、一度経験すれば熱狂的なファンに変えてしまうかもしれない。そう、経験することこそファン獲得の重要な一歩となる。その少女はラブライブ決勝というものを観客という立場とはいえ、経験をしたことにより、スクールアイドルのとりこになってしまった。
その少女はいろんなスクールアイドルのステージを見ては観客のみんなと叫んでいた。いろんなところからコールが沸き起こっていた。
そして、Aqoursのステージとなった。会場はコールだけでなくブレードの光が会場中を激しく、いや、勇ましく舞っていた。会場中が一つとなる瞬間だった。
全てのステージが終わり、ラブライブ決勝は残すところ優勝の発表だけとなった。
レポーターは静かに優勝者のグループ名を叫ぶ。
「今回のラブライブ優勝者は…!!」
その名前を呼ばれた瞬間、そのグループのメンバーは喜び、抱き合っていた。観客達からは「ウォー」という大きなコールと共に「おめでとう」「よくがんばった」という声をちらほら聞こえてきた。
「これがラブライブなんだ。私もやりたい!!やりたいよ~!!」
少女はその言葉を言った。こんなステージ、自分もやりたい、やってみたい。そんな気持ちで一杯だった。自分もそのステージに立ち、みんなの歓声と共に会場と1つになりたい、そう思っていた。
だが、1つ問題があった。それはこの夢を打ち砕くものに等しいものだった。
「でも、私、大学1年生なんだよな」
そう、スクールアイドルは高校生限定である。思い出してほしい。μ’s、オメガマックスは高校生のスクールアイドルだった。高校を卒業すればスクールアイドルを卒業することになる。A-RISEみたいに本当のアイドルになることも可能だが、高校を卒業すればスク^るアイドルとは見られない。また、μ’sみたいに卒業時に一騒動ということもある。少女は大学1年生。スクールアイドルにはなれないのだ。
「でもでも、スクールアイドルになれなくても、アイドルにはなれるよね」
この少女、少しでも前向きに考えようとする。それくらいアイドルになりたいと思っていた。
「それなら、アイドルになるためにも仲間集めしないとね」
その少女はなにかを決めたがごとく心に誓う。
そんななか、とあるところからある話し声が聞こえてきた。
「今年のラブライブもとてもよかったね」
「そうだね」
「でも、去年のほうがよかったよ。全盛期のK9、そして、あの伝説のμ’sに勝負して、まさか勝ってしまうなんてね」
「グループ名って何だっけ?」
「忘れたの。オメガマックス、オメガマックス」
「そう、オメガマックス。確か解散したけど、そのときの3年生が今年、大学に進学したんだよ。たしか、リーダーの…」
「高坂雪穂だよ、高坂雪穂」
「そうそう、高坂雪穂だった」
この話し声に気付いたのか、その少女は耳をすまして言った。
「高坂…雪穂…」
この物語はこの少女とその仲間達、そして、全国に散らばったオメガマックスのメンバー達の血と涙と汗、というのは言い過ぎただが、そのくらいするぐらい大きな物語である。そう、この少女、渋谷ヒカリを中心とする、新たに紡がれる、そう、あなたと一緒に紡がれる新しい物語である。
ラブライブUC テーマソング 「スマイルアゲイン」
仲間たちと 笑顔で進もう
(1)
たったひとりで 進んでいく
けわしい道のり 苦しんでいる
そうでもこえて いくのです
とても難しい そんな道です
でもねそれで いいのですか
本当にひとりで いいのですか
まわりをみれば みえませんか
あなたを助ける 仲間たちが
みんなと(みんなと)笑おう(笑おう)
前に(前に)すすむために
1人(1人)じゃない(じゃない)
私たち(私たち)仲間だから
笑っていけば必ず前に進める
だからみんなで笑っていこう
ラブライブUC HeaT編 第1話 ユニドル、始めました
そして、舞台は秋に移る。
「私、アイドルやりたいんだけど、誰も組んでくれない。どうしようかな」
渋谷ヒカリはそう嘆いていた。あのラブライブ決勝で決めたアイドルになる夢であったがその夢の実現は遠いものだった。
「みんな、忙しいとか、また今度ねとか、それで困っちゃうんだもの」
そう、ヒカリは自分の友達全員にアイドルになろうと声を掛けていたのだが、その全員とも断っていたのだった。それには原因があった。
渋谷ヒカリ、大学一年生、日本橋女子大学教育学部の大学一年生。そう、前作(ラブライブΩ)の最終章を読んだ方なら気付いたはず。彼女が通う日本橋女子大学は熱血な教師を輩出する大学である。そこに通う学生のほとんどが教師志望だった。となると、通常の大学の講義の勉強だけでなく、教師になるための試験の勉強をしないといけない。それに加えて、バイトなどもしているため、アイドルとしての練習をする時間はとれないのが現状だった。
「それでもアイドルになりたい。アイドルになりた~い」
ヒカリはそう叫んでいたが、現実には厳しいものだった。
でも、よく考えればヒカリ1人でアイドル始めてもいいのではないだろうか。今やネット社会。インターネットやSNSを使って自分1人で情報を発信しているアイドルもたくさんいる。いや、全国各地にいるアイドルグループみたいにあるグループのオーディションを受け、所属することもできた。
しかし、彼女はそのようなことをしなかった。なぜなら、彼女は何もしなかったからだった。彼女にとってアイドルになりたい、即なれるものだと思っていたのだろうか。ところが、彼女は違っていた。アイドルというものは仲間がいて初めてなれるものだと思っていた。スクールアイドルもグループを結成して行動することが多いと思っていた。そう言った思い込みがあった。そのために一緒に活動してくれる仲間を探していたのだった。また、彼女はアイドルとしては素人だったため、アイドルグループのオーディションを受けることをためらっていたこともあった。この思い込みの強さ、これがヒカリにとってこの物語に少し影響を与えることになっていくかもしれない。
それはさておき、ヒカリはちょっとさびしい気持ちになっていた。友達に会うことに、
「アイドルになりませんか」
「私と一緒にアイドルとして活動していこう」
と、強く迫っていたため、それを避ける友達が多く、ヒカリが近づいてきても、
「あっ、また、今度ね」
と、友達自ら離れていくことが多くなった。
「みんなどうしてアイドルになるのいやがるのだろうか。アイドルって楽しいものなのに」
ヒカリはそう言って嘆いていた。
「私にとってアイドルとは初めての夢なんだけどね」
ヒカリはそう言ってもの思いにふけっていた。そう、ヒカリにとってアイドルというものはこれまで生きてきた上で初めての夢だった。これまではあっち来たりこっち来たりの生き方をしていた。小学生の時はみんな花屋さんになりたいと言うため、自分も花屋さんなりたいと言ったりしていた。そして、日本橋女子大学に入学するのもただ単に家に近いため、そして、ちょうど自分の学力で入れる大学だったというものだった。別に先生になりたいという夢を持っているわけでもなかった。
「はやくアイドルになりた~い」
どこかで聞いたようなセリフを言ってヒカリは今日も一緒にアイドルグループを組む仲間を探していた。
そして、翌日、ヒカリはとある講義を受けていた。
「あ~あ、昨日も(アイドルとして)活動してくれる人、いなかったな。誰かいないかな~」
そう言って背伸びをしていた。その講義は本を講師がただ読むだけのものであり、まるでお経の聞いているみたい眠たくなる人が多かった。むろん、真剣に聞いている学生はごく少数で、ヒカリをはじめとしたほとんどの学生はもうすでに寝ているか、もしくは眠りにつきそうになっていた。
そんなとき、隣にいたまったく知らない学生達のおしゃべりが聞こえてきた。
「今年のラブライブ、とてもよかったね。テレビ中継を見たけど、すごいステージだった」
「そうだね。あれが高校生なんて信じられないね」
「いまやスクールアイドルも相当な実力がないと活躍できないものね」
ヒカリにとって今すぐにでも仲間にはいりたいおしゃべりだったが、そのヒカリ自身、眠気と戦うのに精一杯だったのではいることができなかった。
それでもおしゃべりは続いていた。
「でも、去年のラブライブのほうがよかったよ」
「そうだね。だって、あのμ’sが負けるなんてね。たしか、誰だったかな?」
「オメガマックスだよ、オメガマックス」
「オメガマックス!!そうそう、あのゴールデンロードでの解散宣言。あれってよかったよね」
「それに、今年3月におこなったスクフェス(秋葉原を舞台に行われたスクールアイドルの祭典、スクールアイドルフェスティバルのこと)、あれ見たけど、あんなもの、見せられたら、やっぱりすごいと思っちゃうよね」
「そうだね。スクールアイドル千人とほかの地域にいるスクールアイドルとが一緒に踊ったサニーデイサンデー、あれは圧巻だったよ」
「私もあの中に入りたかったよ。参加していた友達に聞いたんだけど、あれって1週間ぐらい練習していたんだって。そして、踊ってみると、とても楽しかったんだって。なんでも一緒に踊るという一体感がとてもよかったんだって」
「ああ、私もあのとき参加したかった~」
たわいもないスクールアイドルについてのおしゃべり。ヒカリにとって一服の清涼剤、いや、睡眠導入剤になろうとしていた。
だが、次の言葉がヒカリにとって目を覚ますどころか興奮剤になるものになった。
「そういえば、あのオメガマックスのリーダー、この大学に入学しているんだって」
「え~」
ヒカリはいきなり叫びだした。
「そこのキミ、授業中は静かにしなさい」
講義をしていた講師から注文を受けたヒカリ。でも、それでも寝耳に水というくらい、ヒカリにとって驚きのものだった。
「ねぇ、そのリーダーってどこにいるの」
おしゃべりしていた学生に迫るヒカリ。
「いやぁ~、どこにいるか判らないよ~。だって、何百人っているんだもの、この大学には」
言葉に窮するおしゃべり学生。
「どこにいるの。おしえて~」
それでもねだるヒカリ。
「私だってわからないよ、ごめん」
おしゃべり学生はヒカリに謝る。
「う~」
がっかりするヒカリ。それをみていたおしゃべり学生はちょっとかわいそうに見えたのか、ある言葉を口にした。
「でも、そのリーダーの名前なら知っているよ」
その言葉にがっかりしていたヒカリはいきなり目をキラキラにしていた。
「たしか、名前は…、高坂…、雪穂…」
「高坂…雪穂…」
おしゃべり学生の言葉にヒカリは目をキラキラにさせるから言葉を反芻させていた。
こうしてヒカリによる高坂雪穂捕獲作戦が始まろうとしていた。
「高坂雪穂はね~、私、知らない」
「ここって~、学生多いから~、どこにいるか分からないし~」
ヒカリは雪穂を探すため、自分の友人網を振る活用していた。しかし、アイドルになろうなろうと迫っていたので、その場で逃げられるのが落ちだった。それでもいろんな学生から雪穂の場所を探しだそうとしていた。だが、前に上げた言葉のごとくどこにいるのか分からないのが現状だった。
そうしているうちに2週間がたった。いまだに見つけられなかった。そんなとき、とある友達がヒカリにある言葉を言った。
「私もどこにいるのか分からない。でも、それならあの子なら知っているんじゃないかな」
「あの子?」
ヒカリは不思議そうにとある学生に言った。
「あの子、ほら、あそこで黒板に落書きをしそうにしている子」
それを聞いたヒカリ。突然、
「あの子なら知っている人ですね。ありがとう」
と言いだし、落書きをしそうとしている子に急いで近づいていった。
「あの~、そこの落書きしそうにしているあなた…」
落書き学生に近づき、声を掛ける雪穂。すると、落書き学生は突然驚き、こう言った。
「わっ、びっくりした。いたずらがまた見つかったと思ったよ」
すると、ヒカリ、すぐに落書き学生にこう言った。
「あの~、ちょっと人を探しています」
落書き学生、すぐに反応。
「もしかして、高坂雪穂さんのことですか」
ヒカリはこのことに驚いてこう言った。
「どうしてすぐにわかったんですか」
「だってそう見えたから」
落書き学生はちょっと偉そうに答えた。
「それはともかく、どこにいるのですか、高坂雪穂さんは」
ヒカリは落書き学生の両腕を掴み、迫ってきて言うと、落書き学生は驚いてこう言った。
「落ち着いて。高坂雪穂さんだったら、いつもカフェテリアで本を読んでいるよ」
落書き学生からその言葉を聞くと、ヒカリは、
「あ、ありがとうございます。カフェテリアに行ってきます」
と言って、お礼をしてからその場を離れた。
「ど、ど~も」
と、落書き学生はお礼を返すが、ヒカリはその場にはいなかった。
「あ~あ、猪突猛進なところは雪穂に似ているんだよなぁ。でも、あのヒカリって子、面白いね。これで雪穂の運命の歯車が動き出すんじゃないの」
落書き学生はこう言うと、少しずつにやけてきていた。
カフェテリアに隣接する庭にはお茶を飲むための丸いテーブルやイスが置かれていた。学生達はそこでお茶を飲む行為がパリのお茶を飲む紳士淑女に似ているので、この場所をパリ広場と呼んでいた。
そのパリ広場の奥にあるイスにはとある学生がいつも座って本を読んでいた。どんなときもそのイスがその学生の定位置だった。そんな学生、彼女のことをほかの人は座敷わらしと呼んでいた。
彼女はいつも1人、どんなときでも1人だった。大学に入学してから友達は作らなかった。いつも本が友達だった。ちょっと暗い雰囲気を醸し出していた。彼女のまわりはいつも暗く感じてしまうため、彼女のまわりに近づく学生はいなかった、ヒカリが来る前までは…。
彼女もこの日もいつもの通り、いつものカフェテリアの、いつものパリ広場の、いつものイスのところで本を読んでいた。彼女の読んでいた本は何かの経営学の本だった。いつもの通り誰も近づかない自分だけの空間を作っていた彼女。
だが、この日は違っていた。とある音が聞こえてきた。ある足音が聞こえてきた。
ダダダダダダ
静寂を壊す音に、彼女は本を読むのをやめた。
「なんなの、この音は?」
彼女は珍しく怒っていた。本を読む気を削がれてしまったからだった。
「この音をだす人、どこにいるの?」
まわりを探す彼女。すると、ある物体、いや、人が彼女に向かって近づくのが見えた。
「あ、あ、あ~」
どんどん近づいてくる人を見て、雄叫びをあげる彼女。
「と、とまらない~。誰か止めて~」
その人は彼女に向かって突っ込んでいく。
「と、止めると言われても~」
彼女は右往左往しているが、そうしても無駄だった。
「あ、あ、ギャ~!!」
その人、ヒカリは彼女に向かって突進し、抱きかかえるようにぶつかってしまった。
「ご、ごめんなさい」
ヒカリは謝ると、彼女はいきなり怒り出した。
「ごめんなさいじゃないよ。せっかく本を読んでいたのに」
「ご、ごめんなさい」
ヒカリは彼女に何度も謝っていた。
「そんなに謝るならそれでいいけど。今度から気を付けなさいよ」
彼女はそう言うと、またイスに座り、本を読みだしていた。
「そうですね。気を付けます」
ヒカリはこう言うと、つかさず本題へと突入していった。
「ところで、あなた、高坂雪穂さんですね」
「ち、ちがいます」
彼女はこう言って否定すると、つけていたメガネ(伊達!!)を上下に動かして本を読み始めようとしていた。
「いや、高坂雪穂さんです!!間違いないです!!」
と、ヒカリはそう言って、彼女の前に立とうとしていた。
「いえ、違います」
彼女はそう言うと、ヒカリとは反対向きに向きを変えようとした。
「いえ、高坂雪穂さんです。その証拠に…」
と、ヒカリは彼女のそばに行き、あるフレーズを口にした。
「伝説を…」
すると、彼女の口からある言葉が出てきた。
「伝説を」
ヒカリはさらにあるフレーズを口にする。
「乗り越えて~」
すると、またも彼女の口からある言葉が出てきた。
「乗り越えて~」
そう、ヒカリが口にしたのはオメガマックスがスクフェスの時に最後に歌った曲「over the LEGEND」のフレーズだった。
「やっぱり高坂雪穂さんでしたね」
「……」
まさかの不意打ちにあい、言葉を窮する彼女、高坂雪穂はただ黙っているしかなかった。
すると、ヒカリは雪穂にお願いした。
「高坂雪穂さん、お願いです。私と一緒にアイドルになってくれませんでしょうか」
ヒカリの突然のお願い。だが、雪穂は頭を縦に振ることはなかった。
「ごめんなさい。今そんな気分じゃないの」
それでも、ヒカリはくじけなかった。もう一度お願いする。
「雪穂さん、お願いです。私と一緒にアイドルグループを結成してくれませんか」
しかし、雪穂は、
「ごめんなさい。その言葉、受け止めることはできない」
と言って、椅子から立つと、どこかに走り去っていった。
「雪穂さん…」
ヒカリはただ一人その場に立ち尽くすしかなかった。
だが、ヒカリはくじけなかった。雪穂が行くところ、先回りし、
「雪穂さん、お願いです。私と一緒にアイドルになりませんか」
と言えば、
「それはお断りします!!」
と、雪穂が拒否する状況に、それが何日も、何十回も続いた。
そして、1週間後…。
1人で並木道を歩いていた雪穂。すると、ヒカリが雪穂に向かって抱きついてきた。そして、
「今日こそお願いです。私と一緒にアイドルになってください!!」
と、ヒカリは言うが、とうの雪穂は、
「何度も言っているでしょ。私はアイドルにはなりたくないの」
と、大声で叫んでいた。これにはヒカリは驚いてしまった。
「今日もだめですか」
ヒカリはこう言うと、雪穂に向かってこう言った。
「今日もだめ、昨日もだめ。これでは堂々巡り。それなら、その理由を聞かせてもらえませんでしょうか」
これに対し、雪穂は、
「…」
と、口を閉ざしたまま何も答えなかった。
すると、ヒカリはこう言った。
「それならば何度でも続けますよ。続けてほしくなければ、ちゃんと理由をお願いします。その理由によっては、私、諦めますから」
これに、雪穂が口を開き始め、こう言った。
「私…、もうアイドルしたくないの」
雪穂から出た拒否宣言。雪穂は続けてこう言った。
「私、あのスクフェスで燃え尽きたの。高校3年間、スクールアイドルとして全力を尽くしてきた。そして、あのスクフェスで全力疾走したんだ。そしたら何が残ったと思う。もうこれ以上できないという達成感だけが残ったの。これ以上やることはできないと思ったの。だからね、私、もう、アイドルとして何も残せないの。私のアイドルとしての青春は、あのスクフェスで完全燃焼したの。燃え尽きたの」
すると、ヒカリは、
「それは違うでしょ。あのスクフェスはたしかに凄いかもしれません。でも、雪穂さんはそんな小さな人ではないと思います。燃え尽きてはいないと思います!!」
と、大きな声で雪穂に言った。
その雪穂であるが、
「私はもう燃え尽きてしまったの。だから、静かに、させてください」
と言って、その場から逃げてしまった。
「雪穂さん、雪穂さん!!」
ヒカリはこう言うと、すぐに雪穂の後を追った。
雪穂はいつも座っていたパリ広場のイスの近くに来ていた。そして、ヒカリもそこに来ていた。雪穂が言う。
「お願いだからそのまま静かにしてください」
対するヒカリも言う。
「雪穂さんはそんなもので燃え尽きる人じゃないでしょ」
2人は口論になると、まわりの人達はそう思っていた。
だが、そこでも雪穂はヒカリから逃げ出そうとしていた。
「もう追いかけてこない…」
雪穂が逃げ出そうとした瞬間、ヒカリの視界から雪穂が消えてしまった。
「ゆ、雪穂さん!!」
ヒカリは突然のことでビックリした。そして、雪穂を探そうとした瞬間、
「キャ、キャー!!」
と、ヒカリもどこかに消えてしまった。
2人はどこに消えてしまったのか、まわりにいた人達が探そうとしたとき、
「ちょっと待った~!!」
と、ある学生が2人が消えた場所にあらわれた。そして、その学生があることを言い出した。
「落とし穴作戦大成功!!」
すると、2つある落とし穴からヒカリの頭がヒョンとでてきた。
「あいたたた。なんですか、この落とし穴は…」
ヒカリは落とし穴を作った学生に怒る。
「すこしは頭が冷えたかな」
と、悪げないように、落とし穴を作った学生はのほほ~んとした表情で言った。
すると、ヒカリはその学生に対し、
「その言葉使いはない…って、あの落書きの学生じゃないか!!」
と、自分のことをひょんとした表情で答えていた。
「このイタズラはやっぱりカオル、あなただったのね」
と、もう一方の穴から雪穂が出てきてそう答えた。
「バレちゃっているのね。そうだよ。私、阿蘇カオルがした一大イタズラだよ」
と、落書き学生、落とし穴を作った学生こと阿蘇カオルがあっさり白状した。
「まさか、カオルがこの大学に進学していたとはね」
雪穂はカオルに対し、たんたんと言った。そして、
「どうして福博女子大学に進学しなかったの?なんでこの大学に進学したの?」
と、カオルに質問を投げつけて言った。
すると、カオルはその理由を雪穂、そして、ヒカリに言い始めた。
「私はね、前回のラブライブの私達(福博女子大学付属:K9)みたいに誰かに管理されるような教育にはしたくないの。当時の私達は理事長の管理下のもと、勝利至上主義をまい進してきた。勝つことが全て、だった。それでもって管理された学校。こんな教育はしたくないの」
カオルはさらにこう言い続けた。
「私は去年のラブライブ決勝以降、自分達みたいに管理教育に施された生徒を出したくない、道を外さないよう生徒を導きたい、そういう先生になりたいと思って、この大学に入学したんだよ」
「なるほど…」
と、ヒカリは妙に納得していた。雪穂にいたっては、
「そうとう考えて決めてきたんだね」
と、しみじみとうなずいていた。
だが、カオルの話はそれだけでは終わらなかった。
「それでね、その一環として大学でもアイドルになろうと思うの」
これにはヒカリと雪穂は驚いてしまった。
「カオルさんがアイドル、目指していたなんて…」
と、ヒカリは口をあんぐりしていたが、雪穂は、
「ふ~ん、そうなんだ」
と、疑いそうな目で見ていた。
「雪穂ったらなにを疑っている目をしているね」
と、カオルが言うと、さらにこう言い放った。
「雪穂は知らないかもしれないけど、大学にもね、スクールアイドルに似たアイドルがいるんだよ。ユニバーシティーアイドル、略してユニドル。大学生版スクールアイドルだよ」
これを聞いたヒカリは、
「まさか、私みたいに大学生でもスクールアイドルになれるなんて…、なんていいこと聞いたんでしょ」
と、目をキラキラにさせながら言うが、そのことをカオルが聞くと、
「いや、スクールアイドルじゃなくてユニドルだから」
と、ツッコンできた。
そのツッコミを言うと、カオルはさらに言葉を続けた。
「そんなユニドルでもその頂点を決める大会がある。ユニドル選手権、通称ユニライブ。この大会で優勝することが私の目標!!」
ヒカリはこのカオルの言葉にすぐに反応する。
「ユニライブ、私も参加してみたい!!」
この言葉にカオルもすぐに反応した。
「そこでだ、このユニライブに参加するためにも私はユニドルグループを作りたい。なので、雪穂、それに、え~と、誰だっけ?」
「ヒカリです!!」
「そうそう、ヒカリ。私達3人でユニドルグループを作りましょう」
カオルの突然の提案にヒカリは、
「まさかカオルさんから声を掛けられるなんて。ハイッ!!私、そのグループに参加します!!」
と、即OKを出した。
一方、雪穂はというと、
「私はやらないんだから。私のアイドルとしての青春はあのスクフェスで燃え尽きてしまったのだから」
と、断固拒否を貫いていた。
すると、カオルはなぜか笑い始めてこう言った。
「そういっていられるのも今のうちだと思うよ。もうすぐ運命が変わるメールが届くから」
言ってすぐに1つのメールが雪穂、カオル両方の携帯に届いた。すぐに見る雪穂。雪穂はこのメールを見るなり、驚きはじめていた。
そのメールの差出人は雪穂と同じ、元オメガマックスのメンバーの秋葉愛からのものだった。秋葉愛は博多にあるアイドル輩出で有名な大学、福博女子大学に進学していた。メールの内容を略して書くとこんなものだった。
「私(愛)は入学してから(元K9メンバーの)中洲天と霧島あやと『博多小娘』というグループを結成しました。そして、このあいだ、路上ライブを成功させ、これからユニライブに向けて練習中です」
そして、メールの最後にはこう書いてあった。
「私(愛)はあのスクフェスで交わした約束、また同じ舞台で再会しようという約束を守るために頑張っています。雪穂、そしてカオルもそれに向けて頑張ってください」
雪穂はこのメールを見て、涙を流してこう言った。
「愛、たとえ1人であってもスクフェスでした約束、守ろうとしていたんだ。また同じ舞台でオメガマックス8人会おうという約束、なんで忘れていたんだろう。本当は忘れてはいけなかった約束だったんだよ。思い出したよ」
雪穂はこう言うと、そこにいたヒカリ、カオルに向かって宣言する。
「私も2人のグループに参加する!!もう燃え尽きたりしない。今度こそスクフェスでした約束を守っていきたい!!」
「雪穂さん…」
ヒカリが言うと、カオルも、
「それでこそ雪穂だよ」
と、強くうなずいていた。
そして、
「これで私、アイドル、イヤ、ユニドルになれるんだね。ヤッター!!」
と、ヒカリは力強くガッツポーズをしていた。
続く…といいたいところだが、1つ忘れていたことが…。
「ところで、この落とし穴、出にくいんだけど…」
ヒカリが言うと、雪穂も、
「この落とし穴、私達の身長ぐらいの深さがあるもんね」
と、少しがっかりした風に言った。
「カオルさん、外に出るの手伝ってくれませんか」
こう言うが、そのカオルはその場にはいなかった。すぐに逃げてしまったのだ。
「カオルさんがいないよ~。誰か助けて~」
そこにいたヒカリは泣きながら助けを叫んだ。
結局、2人が落とし穴から出らえたのは30分後のことだった。むろん、カオルには大学側から大きなカミナリが落ちたのは言うまでもない。
つづく…?
次回 曲をつくろう
あとがき
みなさん、こんにちは。La55です。お久しぶりです。UCのプロローグを書いてすでに1ヶ月半が経とうとしております。大変お待たせして申し訳ございません。この1ヶ月半、この物語のプロットを考えておりました。プロローグではHeaT編の2年生編まで完成しておりましたが、それ以外の4つの短編集のプロットもある程度完成させました。だが、ここからが問題が、HeaT編3年生編がまだできていない。ここは最終章ともいえるところであり、HeaT編とそれ以外の4つの短編集がまじりあうところなので難しい。ということで、今、本編を書きつつ考えております。
で、第1話を書いてみたのですが、ちょっと苦戦しました。前作「ラブライブΩ」では準備に8ヶ月くらいかけていたので、ぽんぽんとかけていたのですが、今回は準備期間が短く、なおかつ準備不足ということで、なかなか筆が進まないのが現状でした。それでも、なんとか書けたと思います。駄作なのは申し訳ないのですが、楽しめたら幸いです。
ということで、次の投稿がいつになるかはわかりませんが、次回まで楽しみにしてもらえたら幸いです。それでは、さよなら、さよなら、さよなら。