阿修羅転生   作:サボリ魔ー

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話が雑です。これが私のスランプ回復後? っぽい全て。


イタチ

 木の葉の里近郊の森林にて、風が通り過ぎたかと思う程の速さで一つの影が駆けていた。木の間に生え伸びた枝を蹴りながら。

 時刻は夜。

 月明かりに照らされているが、全貌の把握できないその装いと中忍以下ではまともに捉えることもできず、上忍でも場慣れしていない者であれば容易に目を離してしまう熟練された速度の所為で、まさしく影と言うに相応しい。

 

 影は焦っていた。

 この影は、木の葉とは違う里の忍であった。任務として木の葉の里への侵入任務を請け負ったのだ。足の快速振りも、他里の忍とバレた時に逃走の一手をとって、木の葉の情報を持ち帰って来れる可能性が限りなく高い事を見越しての事だ。

 ならば、影が焦って逃げる理由などは言うまでもなく。

 

「遅いな」

「ッ!」

 

 心臓が跳ね起きる。

 予想はしていた事だ。頭に入れてはいたが……。

 

 影はその場から一息に飛び退く。此処で足を一瞬でも止めれば、明日の日を拝むことすら叶わぬだろうと思ったのもあるが、大きくは、背後からかかった声に、嘗て無い恐怖を覚えたからだ。

 

 見つかった以上は、とこれまで痕跡を消すように木の枝を極力揺らさないようにしていた走行を止め、揺らしつつも背後の声の主から距離をとるように大きく跳んだ。

 影は枝先の葉が落ちるのをチラッと視界に移しつつ、空中で身を捩って此処まで自身を追ってきた声の主を目に移す。

 

(黄色い閃光⁉︎)

 

 影は、視界に入った相手の姿を見て驚愕した。

 その顔、その髪、手に持ったクナイ、とどれもが、先の戦争で恐怖の象徴とされた四代目火影と同じだったのだ。それならば、自身の自慢の足を嘲るような先の言葉も納得がいく。

 黄色い閃光を見た忍は死ぬ。それが当時の上司に徹底的に教え込まれた事。

 普通は『見たら逃げろ』と言われていたらしいが、その上司はいつか対峙した事があり、その時に殺されかけたとあって、そんな風に自身の所属していた小隊に説いていた。

 

 しかし影は、それは違うと意識を落ち着かせる。

 影は、任務として承った期間よりも多分短い二日の潜入ではあったが、重要な情報は手に入れていた。

 

 まず、黄色い閃光の死。

 詳しく聴き込むと怪しまれる事も鑑みて深入りはできなかったが、人々の記憶の老朽化から考えるにもう随分と前のことになるだろう。

 今は、年老いて長らく前線を退いていた三代目火影が臨時で里の長を担っており、侮る事はしないが、脅威足り得ないと判断していた。

 

 次に、木の葉の忍達の復帰。

 これは、次の項目に関連するが、最近になって戦時中にリタイアをせざるを得なかった忍達が、こぞって復帰を表明し始めた事だ。それもその原因となった傷をしっかりと治療した上で、だ。

 そして、それは仕事の方にも問題が出ており、自身がこの任務を依頼されたのも、木の葉の仕事の解消スピードの迅速さに、里の上層部に懸念があったからだ。

 結果は、忍の数が増えたからという単純な理由だが、それにも問題があった。

 

 影は自身の足に自信がある。それは自分でも誇りとして今まで修練に打ち込んできたことであるし、里にしても実績と信用を勝ち得ているからこそこの任務に付けた。

 だからそんじょそこらの柔な忍では、自身が逃げの一手には気づくことすら無理だろうと想像していた。

 

 しかし、木の葉の忍に柔と言う言葉はありはしなかった。

 まるで戦時下。仕事を里の中で奪う合うように互いを高め合う忍達には、自身の一挙手一投足でスパイである事がバレているようで気が気でなかった。

 それは下忍、中忍もまた同じであった。自分では撒ける自信は消えはしなかったが、今の木の葉の中忍のレベルは高く、中には上忍を名乗っても良いくらいの熟練度の忍も居た。

 

 足に自信があるとはいえ、こうも高い質と数には自慢の足も敵わないだろうと肝を冷やした。

 彼我の力関係が分からないような愚か者ではなかった影は、この情報を知った時にすぐに撤退することに決めた。

 

 最後に、『黄金の太陽』

 

(此奴が……)

 

 まるで痛い名前だと初めは思った。

 しかし、情報を収集してみて、相対して見てわかる。

 

(化け物め……)

 

 目の先の相手が人の領域を逸脱した人外である事を。

 チャクラ量、忍術のレベル、体術、身体能力、どれをとっても尾獣を容易く凌駕する規格外中の規格外。

 しかしそんな事よりも、本人のカリスマの為せる技なのか、その逸脱性を隠さずとも里に受け入れられ、その上で新時代の幕開けだとばかりに新しい光明となった。

 まさしく、太陽。

 

 影は飛び退き、地面に着地するまでの間にそこまで情報を精査し、土の上に落ちた葉に乗るように柔らかく上に着地する。

 

「んん……?」

 

 影は顔をマスクで隠しており、その下で歯噛みしていたが、黄金の太陽、木の葉の忍は至極分かりやすい表情をする。

 この表情は、どういう事だ、と理解出来ていないようだった。

 

 恐らく自身の忍びとしての強さ、これを疑問視しているのだろう。

 影は相手が何を考えているのかよく理解できた。何故ならば、自身も数時間前に血迷ったように考え込んでしまったからだ。

 この任務の適役はもっと他に居たのでは無いか、と。

 

 だが、言わせてもらうなら、今の木の葉が異常なのだ。

 自分の目で見た上で言わせてもらうなら、既に影を名乗れるレベルの忍は六人は居た。

 木の葉の三忍の内二人に、『紅い瞳』、『赤い怪獣』、『二代目白い牙』。更に目の前の化け物に至っては、伝承の初代火影と並び立つ実力者だ。何処に隙があるんや。

 更に更に言わせてもらうなら、『黄金の太陽』、『紅い瞳』、『紅い怪獣』、『二代目白い牙』は最近になって頭角を現し始めた忍。これに負けて居られんと食い付く古強者達は皆総じて、自身の里にきてもトップランクに食い込める程の強者達。

 まるで人の皮を被った尾獣が街中を闊歩しているような気すら覚えた。

 

 だから言わせてもらう。

 

「化け物めッ!」

「うおっ⁉︎ いきなりキレんなよ。びっくりするじゃねえか」

 

 影は吐き捨てるように言うが、相手は口とは裏腹に大して驚いてはいない様子。少々、イラっとするのは健全な証拠の筈だ。

 

 相手を罵ったは良い。ずうっと頭の中で思っていた事であるから。

 しかし、まるでやる気が無いのは怒って良いのだろうか。先の自身の言動の時から向こうは「興醒めだ」とでも言わん限りにやる気を失っている。

 任務の実行にはとても良いことなのだろうが、こちらは完全に馬鹿にされているので、儘ならない。理性は抑えろと叫んでも、一矢報いたいと思ってしまう。

 そうだ、別にやってしまっても構わんでしょう?

 

「よし、殺してやるからかかって来いよ」

 

 影は背を向けた。

 こちらが殺ってしまおうかと考えていたのが分かったのか、相手はとんでもなく濃密なチャクラで構成された黄金の球体を手の中に造ったのだ。

 あれはやべえ、と思った瞬間に影は、黄金の太陽から目を背けて、追いつかれるという思考すら逃げ出したかのように無防備に背中を晒して逃げ始めた。

 

「やれやれだぜー……」

 

 黄金の太陽、うずまきアシュラは、子供のように逃げ始めた敵の様子に嘆息しながら、手の中の黄金の球体、螺旋丸の形を変えた。

 それは歪な形をしていたが、それこそが美しいと思える槍であった。とはいえ、黄金のチャクラ体であるから、その様相の細微の装飾は分からない。

 

刺し穿つ(ゲイ・)ーーー

 

 アシュラは祈る。

 

 兄貴、借りるぜッ。

 

 ーーー死棘の槍《ボルク》!」

 

 アシュラは黄金の槍を投擲した。

 と同時に、その槍に込められていた神秘が爆発し、森の其処彼処を爆散させながら、みっともなく逃げる()の背を穿った。

 

 早い。

 速い、なんてものではなく、最早、投げれば刺さっているというトンデモ領域。

 毎度外してしまう兄貴がこれを見れば、どういった反応をするのだろうか。アシュラは少し考えた。

 

 序でに、自身の槍が通った幅50メートルが開けた空間となった、兄貴の本物の槍では出来ないような圧倒的破壊を見て、解答を頭の中で思い浮かべた。

 

 ーーーその槍を俺には向けんなよ

 

「あ、これはカーニバル・ファンタズムか……」

 

 シミジミと頷きつつ、木遁で破壊痕を隠滅し、今夜の事態は闇へと消えた。

 

 ーーーーー

 

 一年前にこんな出来事があった。

 

「イタチ、命の貯蔵は十分か?」

「何言ってんだ、お前は」

 

 イタチは一体全体、意味が分からなかった。

 此奴は何を言っているんだろう、と蔑みもした。

 

 

 

 が、今なら分かる。

 

「ほらほら、早く起きないと死んじゃうよー?」

「喧しいわッ!」

「結構、元気だな。じゃあもうチョイ手を増やすか」

「やめろおおおおおおおッ!」

 

 命が幾つあっても足りない。

 

 うちはイタチは、天才であるが故に孤独であった。カッコよく言ったが、シンプルに言えばボッチであった。

 一人で虚しく修行し、一人で夕焼けの空の下を歩いて帰る。そんな日々を送っていた。

 アシュラは友人ではあるが、彼は弟の世話をしなければならない為、自分が一緒に行動をする事はすこし気が引けていた。

 

 しかし、今日日に限って、アシュラから「修行をしよう」との誘いがあった。

「弟の面倒は?」と問えば、「お前の家に預けておけばいい」と答えられた。よく暴論を吐く男であったが、これに関してはとても納得のいく理由だった。

 だが、アシュラの異常性を思えば影分身くらいは出来るのでは? と思ったが、どうやら影分身に良い思い出が無いようで、極力の使用を避けたいと言ってきた。

 弟好き好きのアシュラとは思えなかったが、こうも難色を示したアシュラも珍しかったので詮索することはしなかった。

 

 そして、修行を行う事になったのだが。

 圧倒的蹂躙。

 そうとしか言いようのない絶大な力量差を味合わされている。

 

 特に、今もそうだが、木遁で千手観音を作り出したはいいが、それの腕の一つ一つに極大な黄金の螺旋丸を作ってこちらに向けてくるのは止めて欲しい。

 俺が避ける度に、外した腕が地面に打ち付けられて生まれる、隕石でも落ちてきたのかと見紛う超大型のクレーターが、途方も無い恐怖を煽ってくるのだ。

 しかも、確認しているのかは知らないが、クレーターは腕が外れると同時に木遁で修復されるから尚悪い。辺り一帯がクレーター塗れになって止めることが不可能なのだ。

 

 更に。

 

「くっ」

「あっ、今、脇腹を掠ったな?」

 

 明らかに螺旋丸が掠って体が痛みを訴えてくるのに、そこに手を伸ばせば傷が塞がっているのだ。服がその部分だけ消えており、痛みは消えない為にそこに当たったのだろうことは分かるが、これらがなければ確実に分からないだろう。

 遠隔の医療忍術。真理眼によるチャクラの遠隔操作で出来ると言っていたが、つくづく化け物だ。

 

「気張ってこー」

「くそッ」

 

 蹂躙は終わらない。

 

 ーーーーー

 

 イタチの修行計画 著 うずまきあしゅら。

 

 ファイル1

 

 取り敢えず、イタチを最強にする。

 

 ファイル2

 

 イタチが最強になる。

 

 ファイル3

 

 イタチは最強になった。

 

 ーーーーー

 

 純和風の家屋があった。

 風通しの良い平屋に瓦屋根が映える、檜の香りがする木造の家である。中も、玄関先の戸から始まり、家のぐるりに点在する柿の木はそれはそれは実りの良い美味しそうなものであった。

 そんな家々が集中する集落の一角に、とある家族が住んでいた。

 

「ねえ、最近イタチがおかしいだけど」

「分かっている。だが、急激にチャクラ量の増加も見られるんだ。成長期に入ったと考えるのがいいんではないか?」

 

 心配そうにする母、ミコトは、少し冷たいととられても仕方ない事を言う父、フガクに苦笑いしていた。

 ミコトはサスケを抱いている為、あまり動けない。心配しているのは口だけなのかもしれない。

 フガクは言葉では辛辣なことを言いつつも、縁側で真っ白になっているイタチを心配そうに障子の隙間から覗き込むといった、まるで言葉と態度が違う様子を見せていた。

 昨日からもそうだった。言葉は一丁前に男らしく厳かに振舞っているのに、態度は呆れるほどにイタチを心配しているのだ。見るからに親バカなのだが、それを子供の前で出そうとしないあたり、少し理解しがたい人である。

 

「どれ位チャクラ量が上がったの?」

「……もう上忍と並んでも遜色無いほどだろう」

 

 えっ、とミコトは肩を震わせて驚いた。

 サスケを抱いている事を思い出すと直ぐに腕の中を見つめ、起きていない事に安堵の溜息を漏らすと、直ぐに視線をフガクへと戻し、事の次第を訊ねる。

 

「……そんなに上がって、何があったのかしら?」

「聞いた限りでは、アシュラ君と修行をしているらしい」

「あー」

 

 ミコトは納得した。

 修行の相手が万能英雄と言われるあの子なら仕方ないか、と。

 普通、チャクラ量というのは成長期ということを加味しても、緩やかに上昇する。一日や一週間の短期で目に見えて変わることはなく、半年、一年と長期で見て、どれだけの上昇を見せたかによってチャクラ量の成長力の裁定はなる。

 これは誰しもにとっても変わらない事実であり、初代火影やうちはマダラなどの生まれながらに多大なチャクラを誇っていた者達もまた、例外ではなかったと言われる。

 

 ただ、昨今の中でも群を抜いた強さを誇ると言われるアシュラにかかれば、そんな常識は宇宙の隅まで吹き飛ばしてくれることであろう。

 初代よりも扱えると目される木遁忍術。伝説の三忍の紅一点、綱手姫よりも圧倒的と称される医療忍術。尾獣よりも絶対的に多いと言われる膨大なチャクラ量。父、黄色い閃光を遥かに凌駕する速度を持つ身体能力。白眼と思われるのに、切り替える事で白眼と悟らせない等、能力が桁違いに凄まじい瞳術。

 あの子を五歳児って言っていいのかしら。

 ミコトには大きな疑問であった。

 

 ーーーーー

 

 イタチの修行計画

 

 忍術編

 

 天才だし、取り敢えず体で覚える方針。

 

 体術編

 

 体で覚えr(ry

 

 瞳術編

 

 恐らく、真理の扉に投げ込めば、輪廻眼まで一気に開眼出来ると思うのだが、あれを使うと通行料がいる。もし眼でも奪われた日には意味が無いので、却下。

 

 人間、追い込まれると一番最初に捨てたくない物を思い出してしまうものだから、きっと其処で愛情を確認して、万華鏡を開眼してくれるはず。つまり、追い込まれた所のテンプレパワーアップ。

 

 結論 物理的、精神的に追い込む。

 

 ーーーーー

 

 うちはイタチは真っ白になっていた。

 一週間も前から既に対外的には真っ白に燃え尽きているようには見えていたが、遂に自身でもおかしいのではないかと思うほどに真っ白になりつつあった。

 

「此処は……」

 

 さて、自身でも真っ白になっていることは理解していたが、こんな真っ白で何もない空間に身を委ねた覚えはなかった。

 まるで雲の中にいるようだ。いや、フワフワとした部分もないためにそんなばかなことはないと思っているし、アシュラに『チリの結晶体』と教えてもらった時に、そんな子供らしさ溢れる幻想へ馳せる思いは霧消した。

 では、ここは何処か。皆目見当がつかない。

 

「此処は、お前の心象世界だ」

 

 後ろから声がかかった。

 何奴、と振り返り、そいつを目に移すと、少し意識に隙間が生じた、気がした。

 

 其処には、色の逆転した自分が居た。黒を基調とした服を着ていたから服が白、と言うわけではない。

 それは、自身の白かった肌が、其奴はまるで黒で、雑じり気ない黒の髪は、色の抜けたように真っ白だった。

 色は逆転しているといってもいい。しかし、『色』が逆転しているとはイタチには思えなかった。それは納得がいかないような、実感がわかないような、そんな曖昧なものだ。

 

 だが、確信がある。

 此奴は俺の対極にある、と。

 

 先に曖昧といったのに、確信があるのはおかしい。それは『判決を出すのは厳しい』と言いつつも、一息に有罪を決定付けたりするようなもの。

 ただ、それでこそ、いい加減で、曖昧だとも言える。

 

「何で俺はここに居る?」

「我が事ながら、あんまりの落ち着き様に怖くなってくるな」

「戯言を聞きに来たんじゃない」

 

 やれやれと肩をすくめるもう一人の自分。少々小馬鹿にされた気がして腹がたつが、ここで怒りに任せて何かを言えば、話の腰を折ることになり、それを持って自身を揶揄うだろうと予測ができたため、イタチは口を開くことなく、もう一人の自分が喋り始めるまで、その動きに注視していた。

 一応、自身の心象世界とは言われてはいるが、それを全て鵜呑みにするわけにはいかない。あらゆる状況を想定して、このような、相手に違和感を覚えさせない幻術もある、と判断し、イタチは警戒をしていた。

 

「お前は今、精神を擦り切らせていて、こんな普通来るはずもない場所に来ているんだ」

「……もう少し噛み砕いてくれないか?」

 

 警戒とは他所に、親切心でもなさそうな程、馬鹿馬鹿しそうな笑みを浮かべながら、しかし、もう一人の自分であることを理解しているのかやや自嘲気味の笑みをその上に貼り付けつつ言ったが、イタチには『来るはずもない場所』という言葉が引っかかった。

 無論、精神を擦り切らせている理由は重々承知している。確実にアシュラの所為だ。

 

「噛み砕いて、か……。

 この世界は、人柱力が自身の中を尾獣を住まわせたり、封印の術式に宿る悪霊などがこの場所に封じ込めたり、と簡単に言えば、お前には必要のない場所だ」

「では、何故俺がここにいる?」

 

 納得はできたし、理解もした。しかし、疑問は無くならない。寧ろ、湧くように溢れてくる。

 

「……、まあ、これを見てくれ」

 

 気まずそうに顔を歪めると、もう一人の自分はパチンと指を鳴らし、視線の先の空白が歪み、やがて鏡のような銀色に輝く物体を中空に想像した。

 成る程、心象世界とは確かそうだ。

 

 パッとその鏡に何かが映った。

 

 

 

 イタチは真っ白ながらも、いつもの地獄に身を投じていた。今までの修練で心を壊し、精神の破滅にまで王手をかけていたが、諦念という白旗を浮かべることはイタチ自身が拒否し、危ぶまれる中でアシュラとの修行場まで駆けたのだ。

 

「よし、行くぞー」

 

 アシュラの声がかかると同時に、豪風が逆巻いた。空気を断ち切り、金を切るような甲高い音がその場を支配した。

 アシュラは既にその場に居らず、しかし、視界にはハッキリと、それでいてデカデカとアシュラが映っていた。

 一瞬で十メートル近い距離を縮めたのだ。恐るべき事だ。飛雷神、瞬身と呼ばれる忍術無くして、純粋な身体能力のみでこの速さ。ただ、これでもまだ本気ではないらしく、本気を出せば衝撃波が発生し、それだけで木の葉の里が壊滅すること請け合いらしい。

 

 イタチはそんなスピードを前にしても、いたって平常であった。いや、最初から真っ白では、そもそも話になっていないような気がしないでもない。

 しかし、ここで重要なのは、どれだけアシュラの身体能力を捌ききる技術があるか、だ。

 勿論、イタチにもこの程度の単純に過ぎるアシュラの動きを避ける技術はある。これまでの並ではない修行の末に身につけた技術だ。

 だが、それも精神が安定していないのでは発揮出来ない。それも相手は、韋駄天の名を欲しいままにする駿足ぶりだ。驚いて、心を揺らして、平常心を保てないであれば、積み上げてきた技術すらも無価値なものだ。

 

 故に、揺らぐことすらできないまでに粉々に砕け散っていた、イタチの精神の平常性とは如何程か。

 言うまでもないことである。

 

「フッ!」

 

 強いを息を吐き出しながらバク転。時計の秒針の移動すらも許さぬまま、轟音と共に振り抜かれるアシュラの拳を危なげなく回避し、未だ場に残る足を振り抜き、アシュラの顎先を狙う。

 

「ハッ」

 

 その程度を躱せないアシュラではなく、首を動かすだけで、容易にイタチの足を空中に流す。

 更に、回避と攻撃は同時にするもの、と考えるアシュラは、その隙を逃さずに、黄金のチャクラ製の螺旋丸を創り出し、クナイの形に一瞬で変えて、指の間に収まった黄金のクナイ五本をイタチに向けて投擲する。

 

「シッ!」

 

 イタチは、まるで背に目でもあるかのように、これを回避、いや、予知していたかのように体を移動させており、これまたこちらの投擲後の隙を狙って近接戦に持ち込もうと接近してくる。

 しかし、並走するようにイタチの周囲にはクナイや手裏剣が中を飛んでいる。どうにも接近戦を望んでいるようではない。

 アシュラは笑う。それでこそ、忍である、と。自身の戦いやすい状況まで持ち込み、その状況のままで殴る。

 

 これこそ忍。

 

 イタチはいつも、それを違うと思っている。

 

 イタチのスピードは、アシュラ程映えるものではない。それは空気の抵抗の限りなく少ない走り方であり、加速すらも度外視した、初速からの最高速。最も忍らしい、音を立てない模範的な走り方だ。

 尤も、アシュラにとっては、現代風に言えば、まるで黒い悪魔のようで、肌に合わなかった。

 

 ただ、その走り方がもたらす恩恵は無能である自身こそとても知っている。走りの一つでさえも死に物狂いだったあの過去に発見した走行法。

 確かに、疾い。

 

「だが、甘い!」

 

 アシュラは横薙ぎに手を振るい、飛来するクナイを手を振り抜いたことで発生する猛風にて、吹き飛ばす。

 だが、イタチの心中は揺るがない。それもそうだ。殲滅跡地が如く、ボコボコに蹂躙されまくったイタチの心は、まるで案山子のように穏やかだ。きっと今のイタチなら、買いにすらなる事が可能だろう。

 

 それほどに平静の風が吹くイタチの心を脅かすものなど、手加減に手加減を重ねたアシュラの一挙手一投足にはない。

 このまま、奴の顔をッ、と執念の一撃を入れかけて、それを見た。刺し違えても、と思っていたのは、無理だと判明した。

 

「じゃあね、イタチ」

 

 振り切った手は、体の回転を応用した、既に殴打の構えであった。

 その手中にクナイがあったのは、確かに、分かった。

 成る程。

 

「普通、親友に手をかけたりする?」

「うん。親友だからこそだな」

 

 こいつは酷いな。

 

 

 

「…………」

「要するに、お前は親友に殺されるという驚愕で、心を取り戻したはいいものの、受け入れがたい事実に、無意識にここまで避難してきたといった所だ」

 

 とんでもねえな。

 何がって、アシュラ(やろう)だ。普通、死ぬ気で来いって言っても、殺すことはねえだろうに。

 

「今、お前が何考えてるかはよくわかる。だからこそ言わせてもらうが、今回でもう二十三回目だ」

「え?」

 

 訂正。彼奴は最低だ。

 

 と、そこで目眩がした。

 チカチカと視界が真っ白になっていくのを感じる。真っ白な空間を見ているというのに、視界が真っ白になるとは中々にユニークな演出だが、あまり嬉しくはない。

 だと言うのに、何故か心地良さを感じるのはなぜであろうか。このまま、天に召されることになるのだろうか。

 

「いや、お前は地獄に帰るだけだ」

「……」

 

 ああ。

 俺に平穏などというものは存在しないらしい。

 

 ーーーーー

 

 イタチの修行計画 結果

 

 一週間目、上忍並みのチャクラの習得だけ。

 二週間目、下忍までの基礎を習得。

 一ヶ月目、中忍並みまで基礎の底上げ。

 ニヶ月目、上忍クラスまで上達。

 三ヶ月目、万華鏡写輪眼、開眼。序でに、痛い名前『紅い瞳』を名乗る事を許す。

 四ヶ月目、須佐能乎を呼び出す。

 五ヶ月目、ちゃっかり天照。

 

 イタチになんらかの病気の兆候が見られた。挽肉になったイタチの肉塊を見て知ったんだけども。

 とはいえ、イタチを脅かすのは俺だけで十分なので、この病原菌は滅尽滅相。

 

 ーーーーー

 

 木の葉の里はいつもの如く盛況であった。

 若い大将の切り盛りする八百屋。嫌々そうな表情ながらも、輝く汗が一段と映える魚屋。年季の入った良い笑顔で心を鷲掴みにしていく肉屋の熟年の女店主。様々に、様々な笑顔が里中に鏤められていた。

 笑顔が多い。それは良いことである。現代でも皆が望むことであり、また、それがありふれている地域にこそ自分の居を構えたいとすら思うはずだ。いや、それが最低条件の一つだというべきであるか。

 子子孫孫に至るまで、栄華を極めて尚、その彼らに安寧を手にてほしいと笑う彼らは願っている。それは想いのようで、正しく、願いである。想うべき事に惜しみはなく、ただひたすらに今を見つめて、その『軈て』に想いを馳せるのだ。

 

 火影、ヒルゼンは笑っていた。その笑顔は古臭さが先だった、ツバメの古巣のような笑みである。しかし、滲み出る優しさもまた、古いながらも心地良く感じる懐かしさを持っていた。

 火影邸は、大通りを眼前に据えて、里の門を真直ぐに突き抜けた、里の奥まったところに位置している。その場所は、あたかも学校の教室にある教壇のように、一人一人の表情まで見渡す事の出来る最良の位置あいである。ヒルゼンは、そんな火影邸の執務室の吹き抜けから一望していたのだ。

 

 ヒルゼンは、ふと笑みを消す。自身の顔が気色悪いかなと心配になったのでもなければ、まるで自来也のようだと自分の行動を見つめ返したわけでもない。

 ここにある笑顔と活気が全て、一人の手によって生まれたという事実に多少、思うところがあったのである。

 

 ただ、あくまで多少である。そこはかとなく感じ入る事でもなかったので、直ぐに笑みを浮かべ直す。

 

 今はこの景観に心を落ち着かせて居たいのだ。

 

 

 

「火影様、アシュラ殿が二十。イタチ殿が十二。シスイ殿が十。カカシ殿が八。ガイ殿が七。他の忍が合わせて、三十一。占めて、八十八の任務遂行報告を提出されています」

「ワシはちょっと旅に出て来る」

「皆の衆! フォーメーション弐だ!」

「「「はっ!」」」

 

 ーーーーー

 

 六ヶ月目、遂にイタチはボッチを卒業。シスイの修行参加。

 七ヶ月目、先輩が修行に付き合い出す。ガイ先輩とカカシパイセン。ガイ先輩とは凄く波長が合いそうである。

 八ヶ月目、ガイ先輩は素晴らしい脳筋。カカシ? あんな小手先のガキは知らん。イタチが揉んでいる頃だろう。

 九ヶ月目、蛇が里から脱走。なんかヤヴァい事をしていたらしいので、ガイ先輩に修行という名目で出動許可を出す。

 十ヶ月目、ガイ先輩が凄い良い笑顔で帰ってきた。青春してきたらしい。

 十一ヶ月目、ガイ先輩の事しか記述していないのに気付いた。まあ、イタチが頑張っているので、きっとカカシもシスイも頑張っているはず。生きて無い程度には。

 十二ヶ月目、素晴らしい。ガイ先輩は死門を開門する事で、俺とガチの殴り合いが出来るようだ。終わったら、陽のチャクラでリフレッシュ。さあ、もう一回。




痛感しました。私には戦闘を書く才能がない、と。
それにちゃっかり、アシュラ強化の不思議なフラグ立ててるし。
はい、螺旋丸が黄金の『光』? って話ですね。こいつについては次回にでも説明しましょう。
実は予定していた話は、ダンゾウとの対談だったのですが、余りにも臭い対話だったので止めました。つーか、対話してねえし。

あ、あと、アシュラに投擲技術は存在しません。ただ、自分のチャクラだから操れるといったところです。と言いつつも、真理眼及び転生眼のチャクラの遠隔操作による、自身の疑似カラクリかの要領で、身体操作はバッチリというイカサマ。
才能が無いなりに考えたアシュラ君。即ち、技術が凄いように見えるのは有る程度の努力の証ではあるが、大きくはこの操作によるところが大きい。つまり、どう足掻いても才能は手に入らない。

さて、イタチの強化は済みましたし、取り敢えずは時間を飛ばそうかと考えています。
具体的には、ナルトとサスケが、アシュラによって魔改造を施されたイタチ先生に教えを乞うあたりまで。
まあ、実現するかどうかは定かでは無いですが。

長くなりました。ごめんなさい。
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