阿修羅転生   作:サボリ魔ー

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タイトルはてきとー。
そして、後書きでは重大なお知らせ。


お兄ちゃん

 アシュラの目覚めは一度目の時と同じであった。

 視界を自然に晒せば、一色に染まった空間でも、宇宙のように神秘を含んだ空間でも、地獄のドロドロとした血の湖畔のある空間でも、天国のように理想を超越した幻想郷でもない。

 そこはどちらかと言えば、前世の前世、異世界に来る前の世界、地球の日本を彷彿とさせる空間であった。其処は、夢も希望もない、職務に追われる人の、実用性を求めた空間であった。

 しかし、巻物の散乱する様子が見られるのは、何か災害でも起きたようである。

 

 アシュラは賭けに成功した事に、内心で大喜びしていた。

 転生が付く位なのだから、と思っていたが、ここまで上手く成功するとは思ってもみなかった。

 これも偏に兄さんの輪廻眼の時間干渉の力が作用して加わった力が大きいのかもしれない。

 そう考えると、兄さんの事が余計に憎らしく思える。ここまでの俺の心の中を占有しているのは、やはり兄が敵であり最大の理解者だったからだろう。

 全く、あの兄は何処までも俺の中で天敵であるらしい。

 まあ、ここから先も、兄さんの為に、なんて生き方を望むでもないだろうし、俺は気の向くままに生きて、兄さんといつか酒の肴にでもしようと思う。

 

 視線を前に向ける。

 其処には、表情に深い悲しみの色を滲ませた老人が居た。シワが目立つ為か随分と老いぼれて見える。

 しかし、感じられるチャクラの質と量は中々のものだ。かなりの修練を積んできた猛者であろう。

 

(あれ?)

 

 そこまで考えて、違和感が生じた。

 原作知識のある俺であれば、『猛者であろう』ではなく、『流石だな』と感心するはずなのだ。

 NARUTOは専ら天才塗れの漫画なので、ここ迄の力を持つものが原作で紹介されていないなど考えられないのだ。

 

(痛っ!)

 

 そこで、原作知識を頭の中で引き出そうとするも、出てきたのは頭に走る鋭い痛みだけ。

 どうやら原作知識を忘れてしまったようだ。厳密には、覚えてはいるが、それを知る事が出来ないのだ。

 簡単に例を出すなら、銀行にお金を預けてはいるが、暗証番号を忘れて引き出せなくなった状態という事だ。銀行にお金がない状態よりも余程タチの悪い状態である。

 言わんとするなら、忘れている状態であれば、あの時がどうたら、この時がかんたら、と頭を悩ませなくて済むのだ。一方で、今の状態だと、手を伸ばせば届くのにあとひとつ何かが足りないというモヤモヤする状態だ。思い出せそうで思い出せない、なんとも言えない状態である。

 歯痒い。この一言に尽きる心境である。

 

 しかし一方で、それでも良いかな、と思う自分が居た。

 原作知識というのは、救済やシリアスブレイクに持ってこいの知識であるが、その本質は、異世界でどう生きるかの指針と、未来を知っている分の生きやすさを与える為のアドバンテージだ。

 今の時点ではどうとも言えないが、俺にはアシュラの時の修練の方法が今でもしっかりと頭の中にあるし、何より血の滲むような努力を重ねてきたのだ。これでコツというコツ全てが体、いや、魂に染み込んでいなければおかしい。もし染み込んでいなければ、それはもはや俺ではない。

 何よりも、原作知識というのは異物だ。既にNARUTOの世界でちゃっかり生きてきた自分には蛇足みたいなものだ。

 そんなものよりも、家族と安穏と暮らせる平和が欲しい。

 まあ、此処がNARUTOの世界とは限らないのだが。

 

「アシュラ、済まぬ」

 

 老人は頭を下げてきた。

 咄嗟のことであったが、老人の表情を見ていれば想像の容易い行動であった。

 アシュラはそれよりも、自身の今世の名前もアシュラであることに驚いた。まるで運命のようだ、と思うと同時に、まさか本当に体が小さくなって、時代を飛んだだけとでも言いまいな、とこの結果に疑念を持つ。

 頭を振って、そんな事はどうでもいいな、と思う。大切なのは転生した事実であって、逆に体が小さくなったというのであれば、それはそれで一つの人格を潰してしまったことを悔やまなくて済むわけである。そちらの方が僥倖とも思える結論だ。

 

 アシュラは頭を振った後に、老人が頭を下げて謝罪する理由を考える。

 床に散らばった巻物を見るに、転生前に何事かが起こったのだろう。それも地震や台風などの天災、災害の類が。

 そして、外を見れば時刻は夜。子供をこんな時間に起こしておいていいのか、と思いつつも、こんな時間だからこそ伝えねばならない事だったのだろう、と思う。

 即ち、緊急を要する大騒動が起こった、と考えるのが、当たらずとも遠からずといったところであろう。

 

 しかし、事態はそう軽いものではなかった。

 

「申し訳も立たぬ。お前の両親を守れなかった」

「え?」

 

 暫し呆然。

 老人は一向に頭を上げない。表情が窺い知れないために、表情を隠すために頭を下げた冗談という可能性もある。

 だがそれを、この重い重い悲壮感の篭った言葉の中に、見いだせるものが一体何処にいようか。暗く、後悔を多分に含んだ声音は、誰であろうと疑う事は出来ないだろう。

 俺自身、仙人モードに慣れるとチャクラの機微で相手が嘘をついているのか分かるほどになっていたが、そんな俺の観察眼と勘を持ってしても、この老人の放った言葉に嘘が混じっているとは思えない。

 伝わってくるのは、後悔と悲哀。

 見ていて、痛ましく成る程だ。

 

 しかし、それはこちらとて同様。

 いきなりなのだ。

 前世では、ぶっ壊れた家族構成だった為、今世では家族というものの暖かさに包まれて、時に笑い、時に喧嘩して、時に肩を貸しあって、一緒に生きていきたいと強く願っていたのだ。特に最後には兄の偉大さを理解したが為に、一層手に入れたいものでもあった。

 それが目覚めて間も無くに消え去ってしまった。こんな悲劇があっていいのだろうか。

 

 だがそれも、俺が持っていい感情ではないのだ。

 俺は今世では目覚めたばかり。それも他人の人格を乗っ取っての憑依転生で、だ。そう、両親がいるということは俺は拾われた、親戚から引き取った以外では、その親の子供と考えるしかないのだ。

 それは、言って仕舞えば、何も知らない俺が、「両親が亡くなって寂しい」と心にも無い事を抜かしていることとなんら変わりないことなのだ。

 茶番。道化。ピエロ。

 其処には何の思いも介在しない癖に、一丁前に親が亡くなったから、と悲しんでいる風を装っている嘘つきに他ならない。

 俺は嘘つきは嫌いではない。しかし、其処に何の心も存在しないのは、無関心という、無視の究極系を味合わされているようで、吐き気がする程に大嫌いだ。

 

 俺がそんなクズになってしまうのは嫌だ。

 だが、家族を欲していたのは事実。

 俺にはどんな表情をすればいいのか分からなかった。

 見も知らぬ両親の為に悲しむなどという芝居をうちたくもない。しかし、両親という存在を求めたのは紛れも無い事実。

 泣けばいいのか、目を伏せればいいのか、心此処にあらずといった雰囲気を醸しだせばいいのか。

 どれも嫌だ。欺瞞に溺れ、虚飾に身を傾倒させた愚か者になるなど嫌だ。

 だったら、

 

「ア、アシュラ……」

 

 老人は頭を上げて、視界に写した少年の表情に狼狽えた。

 五才のアシュラは真剣な表情で、其処に悲しみという感情は見受けられなかった。それは奇しくも、里を救った英雄である彼の父が浮かべていたものと全く同じ決意の眼差しであった。

 更に、老人には感じたことがあった。

 この子は両親を信用しているのだろう、と。

 かなり見当違いであるが、この時ばかりは老人の方も辛かったのである。多少なりともの思い違いなどはあって当然である。

 

 コンコンと音が響いた。

 丁度いいタイミングだ、と老人は少しばかり頬を緩ませる。

 アシュラには何か分からないが、前の老人の暗い雰囲気が薄まったのを鑑みるに悪いものではないのだろう、と推理した。

 

 入ってきたのは、地球の頃に見た釣りを生業とする人と同じような軽装をした大人だった。

 その大人は、特徴といえるものは特になかったが、強いて挙げるとするならば、一般人よりもかなり身体能力が高いと見た。チャクラ量は少なくも、無駄の無い使い運びになるような循環をしている。

 少なくとも弱者ということはないと判断すると、アシュラはその大人の抱いたものに目が釘付けとなった。布で覆われているが、自分にはよく分かる。

 何故なら、自分とよく似た生命の鼓動を感じるのだから。

 

「火影様」

「うむ」

 

 老人が布で包まれたものを受け取る。

 その様子に目を離せない。いや、それをずっと見ていなければならない気がした。

 駆られた義務感には自分の中の変質を感じるも、そんな事はどうでもいい、と自分の事をやっつけに扱ってしまう。

 そんなものでいいとは理性では思えないが、今まで信じてきた直感と本能は、自分のことなど二の次だ、と叫ぶ。

 所詮は浅知恵の俺だ。それに考えた所であまり良い答えを出せぬ俺でもある。そんな馬鹿なら、それを受け入れるだけの度量はあらねばなるまい。

 しかし、そんな度量も、自分が馬鹿である事実も、いい加減な答えもどうでも良いのだ。

 問題は、目の前で脈動する一つの生命なのだから。

 

「アシュラ、お前は知っておるな? お前の母が今日、お前の弟を出生するはずだった事を」

 

 そんなのは初めて聞いた。

 しかし、俺は頷く。

 話を早く進めたいのだ。

 というか、勿体ぶってないでさっさと話せ、ジジイ。

 

「これはお前の母の遺産だ。お前の母は、一つの命の産声をこの世界に確りと聴かせたのだ」

 

 老人はそれを俺に抱いてみろとでも言うように差し出して来る。

 分捕ってでもさっさと老人の手の内から掻っ攫いたい気分であるが、それと同じ位に傷をつけたくないが為に、手を伸ばすのを躊躇ってしまう。

 それ程までに、俺の心を動かすそれはなんだろうか。

 いや、話の流れから俺の弟だろう。

 

 しかし、弟という存在はここまで俺の心を揺さぶって止まないものなのだろうか。

 

 影分身を入れて、俺が前世で過ごした時間は総計、一万五年。大凡百世紀を跨いだとも言えるその歳月で培われた精神性は、人の枠組みを超え、普遍的なことでは取り乱さないような硬く強いものに昇華してある。両親の死にも、原作知識の消失にも、柔軟に心を落ち着かせられたのはこれによるところが大きいと見てもいいだろう。

 だが、目の前のそれは、俺のそんな精神すらも一介の人間に落としてしまう魔力がある。

 

 決心をして、恐る恐る布越しにそれに触れる。

 

「あ」

 

 あ、これはダメだ。

 本当にダメだ。

 なんかダメだ。

 

「ははは、不謹慎だが、やはり弟が出来たという事が嬉しいようだな」

 

 アシュラの心の中は、とても複雑に入り乱れていた。

 そんな中でも目が疼く。主に、兄の輪廻眼の力の衝動が大きくうねる。凄まじいその動きは、俺の精神性を段々と破壊する。

 そして、

 

「その子の名前は、ナルト。

 

 ーーーうずまきナルトだ」

 

 名前を聞いた瞬間、アシュラの中で何かが弾けた。

 それは、うちはの開祖である兄の輪廻眼を取り込んでしまった事で起きた悲劇だろうか。それとも、結局嫌悪し合う兄弟といえども、如何しても似てしまう部分があると言ったところだろうか。

 まあ、両方の気もするが。

 

「ナルト、つまり、天使か……」

「え? ア、アシュラ?」

「いや、天使では足りない。こうも惹きつける魔力は悪魔そのもので、しかし、純粋無垢な寝顔は天使そのものでーーー、」

「アシュラ⁉︎ アシュラよ⁉︎ い、一体如何したのだ⁉︎」

「男であるからとて、ここまで美しければ女神でも申し分ないのでは? しかし、それでは男としてのナルトにとっては、とてもとても嫌なことでしかないだろうな……。

 うーむ、悩む」

「悩むではない! 先程の真剣な顔はどうしたのだ⁉︎ 打って変わってえげつない位だらしない顔をしておるぞ⁉︎」

「ええい! さっきから喧しいぞ、猿! 天使の前であるのだぞ⁉︎」

「さ、猿⁉︎ というか喧しいのはお前もだろうに!」

「煩い! あまり騒音を立てるようであれば、この俺自らが貴様を駆逐するぞ!」

「なん……だと……⁉︎」

 

 アシュラはブラコンに目覚めた。

 

 かくして、アシュラは二度目の転生で、NARUTOの原作主人公であるうずまきナルトの兄となったのであった。




未完にしようと思っております。

活動報告のスランプどうこうの話が、凄まじい勢いで進んでいるのです。簡単に言うなら、三百字書くと「もうええわー」となり、次の日に書き始めると、昨日書いた文に対し「なんやこれ」と消そうかと考えてしまうほどであります。
ぶっちゃけ、こういう身でありますが、1二次創作家として失格と思われる程の事態です。最低で糞まみれなゴミ作者な訳です。

一応、書き溜めた分は投稿します。それが終わったら未完にしようと思います。まあ、スランプが治れば再開するかもしれません。
しかし、そういった作者の身勝手な都合から未完にする為、お気に入り登録や評価をしてくださった方には謝罪しても謝罪したりません。

最後に一言。
申し訳ございません。
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