阿修羅転生   作:サボリ魔ー

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英雄

 アシュラ3

 

 身長を奪われるとは、短絡的に言えば、大人の尊厳を奪われる事と同義である。

 

 九喇嘛は、可愛らしいデフォルメへと変貌していくその過程を覚えてはいなかった。アシュラが語った内容は正しく理解しているというのに、自分が小さくなっていくのは覚えていないとは。中々に都合の良い思考回路である。

 

【ーーーだ。もう少しゆっくりでもーーー「九喇嘛」じゃない、ああ、済まん】

「まあ、なんだ。小さくなった事は仕方ないとして、俺の要件を聞いてくれるか?」

【……断ったら?】

「狐ガ一匹、世界カラ消エルダケダ」

【なんでも受けますよー。今なら黒ひげ危機一髪もやっちゃうぜー】

 

 アシュラは、九喇嘛のお小言を少しばかり頂戴し、此処に来た一番の目的を伝える。お説教もしようと思っていたが、自らドンドン小さくなって威厳もクソもない状態になったので、それで許す事にした。というか可愛い。む、浮気ではないぞ、決して。

 途中で九喇嘛が、意地の悪そうな笑みを浮かべてモノを言ってきたが、この案件は天使が関わっていることであり、世界の滅亡よりも最優先されるべき案件である。其処に冗談や挑発などという茶化す行為など、言うなれば、神に唾を吐きかける行為と等しい行いである。だから少しばかり世界のルールを知ってもらう為に恐喝を行った。

 今回は相手が俺であった為、脅す程度で済んだが、天使の前でこんな事をしていれば、全身の毛という毛を全てむしり取った上で毛穴に酸を塗り込むまである。拷問と言われようが知らん。大切なのは、天使という敬われるべき存在に対し不敬を働いた事であり、そいつらの末路は絶望が決まったのちは俺が関与することはないのだから。もう二度と名前すら聞きたくもないというやつだ。

 

「まあ、要件は簡単だ。俺の弟に手を貸してやってほしい」

【ふん、それは出来ないな】

「転生がーーー、」

【いや受けます受けます。だからその白い眼だけは止めてください】

「じゃあいいや」

 

 九喇嘛は、自分が認めた人間以外に心を開くつもりはなかったのだが、そこは黒船に乗ってきたペリー提督のように心の開国の要求、もとい恐喝をするアシュラ。いや、恐喝ではない、正当な権限である、と天使の存在を笠にして宣言した。

 俺にとっては、使った事がないが命を吹き込む陽のチャクラを使えば、こんな狐の一匹二匹簡単に作れるのだ。この世界は自然エネルギーが薄いから、世界規模で吸収する羽目になるかもしれないが、その気になれば十尾並みのモンスターを生成することも可能である。

 地球という星の均衡というものがあるのだろうが、そんなものは宇宙規模で見ればほんの些細なことだ。そう考えれば如何でもいい。つまり、宇宙よりも神秘的なナルトの前に尾獣などという、畜生が少し粋がった程度の獣の生命の如何など、瑣末ごとでしかないのだ。

 うむ、あんまり調子に乗っていると月が落ちてくるかもしれないな、九喇嘛殿。

 

【だが、如何してワシで、お前が力を貸してやらんのだ?】

「ん? ああ、簡単だが二つある」

【それは?】

「一つ目が、お前はナルトの中に住んでいて家賃を払う必要があるから。まあ、百年も生きてんだから、そういう貸し借りのマナーは分かってるだろうしな。まさか住まわせてくれた礼もせずに踏み倒そうなんてこと考える、自称、偉い狐はおるまいし」

【グウッ!】

「まあ、これはそもそも常識だしなぁ。住ませてもらっておいて、人間が嫌いだから礼はしないなんて馬鹿はいないだろうし、憎悪がどうこう言う屑もいないだろうしな。そこは信用のなせる行動っていうことだ」

【ヌハゥ⁉︎】

「まあ、貸しを返さない癖にそれで追い出された事に気付かないで、人間の奴らは嫌いなんて言ってまた追い出されてその原因に気付かない、百年以上の歳月を生きた狐がいるわけがないしな。どう考えても、狐が悪いのに、日に日に人間に憎悪を貯めていくなんて、どう考えても子供の自己中心的な思考と変わらないよな。なんで俺だけっていう」

【ブホェ‼︎】

「本当、その辺をキッチリしとかないと日の本は成立しないし、そこのあたりの筋を通す点が美徳とも言えるわな。まさか仙人の下で生まれた狐が、そこの理解が出来てないなんて信じられないことがあるわけなかろうし。

 大体、お前はそういう奴を今まで如何して来た?

 

 ーーー絶望に突き落としてきただろう?」

【………………はい】

「ま、本当は、体の中にいるお前なら、恒久的な援助が出来るだろうと思っての事だ。

 さっきも一応言ったが、信頼があるからこそ、だ」

 

 九喇嘛は今までを思い返したのか、呻き声を上げながら頭をブンブンと回していた。まるで正面から見たくなかった事案に目を向けたかのようである。しかしそれは九喇嘛の自業自得である。ここは一つ、交渉をしやすくする為に利用させて貰う。

 一応、フォロー的なものの入れたがあくまで交渉術。心など篭ってないし、心底どうでもいい事だ。それもあからさまにその気色を浮かばせた、交渉術にもなっていないものだった。だが、九喇嘛は藁にもすがりたい気分だった故か、まるで運命的な出会いをしたかのような顔をしている。

 チョロい奴だ。もう二つ目の理由を言わなくてもいいんじゃね?

 

「……やってくれる?」

【ああ。やる。やってやる。今見つけたワシの新しい道だからな!】

 

 あらま、本当にチョロい奴だわ。

 自己陶酔をし始めた九喇嘛は少し面倒くさかった。少々、いやかなり手間取った。面倒過ぎて、一旦殺して、蘇らせてまた殺そうか、と思った位だ。

 しかし、承諾さえして貰えばあとはここに用はないので、俺は落ち着かせた後で一言、注意だけ残して俺は去った。

 

「てめえ、ナルトに危害を齎したらどうなるか分かるよなあ?」

【あ、はい】

 

 無論のこと、ナルトのことである。

 

 余談だが、先程の九喇嘛の質問の二つ目の理由は、俺自身がチャクラを他人にあまり渡したくない、だ。

 何故なら、九喇嘛と出会う前の帰り道で自分が若くして死んでしまった理由を考えていたのだが、最後に至った答えが、生命力の分散のし過ぎだったのだ。生命力の色は自然エネルギーに左右されど、生命力の量まで変わるわけではないのだ。況してや、俺はその象徴とも言える陽のチャクラを千人に均等に分けた事になるのだ。与えるではなく、共有。だから、俺の寿命も千分の一になってしまったのでは、と考えたのだ。

 確かに、分けていなければ一万年生きられる計算はおかしすぎるが、俺の少ない脳みそではそれ以外に思い浮かばないのだ。というか、あんだけヒントが少ないのに気づけたら、そいつは蝶ネクタイの餓鬼の住む世界に行った方がいいのではないだろうか。それくらいに難問だったのだ。

 兎も角、もう簡単に死にたくはないのだ。いや、天使のためなら死んでいいが、今はまだ天使も人の手を借りないと生きていけないのだ。それに、両親が死に、生き残っていた兄も自分のために死んだ、などとナルト自身が気付いた日には、精神崩壊待った無しだろう。天使は優しいからな。

 だから、俺はナルトが成長しきるまでお世話をしなければならない。そして、天使が戦場を生き残るために力を与えなければならない。だって、殆どナルトの使う力って俺と変わらないし。

 

 大体、異世界の俺の転生者だし。

 

 これも大きい理由である。こっちの世界の俺が力あげてるんだから、俺の分は要らねーじゃんっていう。本当、過剰摂取も良いとこだよ?

 ま、其処はいいとしても、俺はナルトを見守り、その力の使い方を指導して、命を脅かされることのない幸せな日常を手にできるように勉強を教えて、と沢山することがあるのだ。生命力を縮ませるような結果になるようなこと出来るか馬鹿。

 と言うわけで俺は力を与える事を拒否した訳である。

 

 更に余談であるが、よく本当に守りたいものを遠ざけようとする奴がいるが、俺はそれをよしとはしない。何故なら、天使には遂行すべき天よりの任務があるからだ。

 それは、俺には理解出来ないものであり、とても素晴らしいものであるはずだ。なんたって天使だもん。

 そんな天使の使命の手助けをしないなんて事を、アシュラ君はしません。きっと天より遣わされた天使の使命は人の世に平和をもたらすようなものであり、俺の心すらも暖かく包み込んでくれるはずだ。

 

 ーーーーー

 

 心象世界の狐の可愛い声の後は、心和ませる小鳥の声がする。昨日の騒動で一旦は身の危険を感じて逃げたはずだろうに、それが後を引く中で、人々の心を癒しに帰ってきてくれた鳥たちには愛おしさがこみ上げてくる。愛国心か故郷愛かは鳥と人の違い故に判断出来ないが、大した奴である。

 温い陽射しは蒼天を包み込み、白みの高き朱の円環の熱は、窓の外に広がる破壊痕という傷の消毒のようだ。痛いと呻く者も居るだろうか。ただ、それでも太陽を見上げられるだけ良いとするものだろう。

 

 アシュラは前世では、初めての未知の体験で余裕が無かったために、世界を味わうという事を出来なかった。自分自身で日記を思い返しても修行したことしか記載していない。随分と忙しなく動いていたようである。

 そのお返しだとばかりに、昨日自身で作った趣深い家の縁側に座ってお茶を啜る。お茶は、昨日の時点で近所の家から盗んできている。俺は緑茶が嫌いなのだ。

 さて、朝の準備を、と考えて動きを止める。

 

「ナルトのご飯、どうしよう……⁉︎」

 

 猿から逃げるために重要な事を忘れていた。だが何故こんな重要な事を忘れていたのか、不思議でならない。いや、意外と心の何処かで自分で絞り出せるとでも思っていたのだろうか。そうだとするならば、俺は只の変態ではないか。

 いや、もしかして吸われたかったのか?

 

「いや、それは無い」

 

 アシュラは考えた。ババアとロリは論外である。況してや、ブッサイクな女性もペケである。

 差別のようだが、俺はこんな所でも妥協はしたくないのだ。もし俺がナルトの立場だったとして、豚さんみたいな変なおばさんのは却下だ。断固として嫌だ。

 自身が嫌だと思うことを相手にするな。孔子も言っている。

 しかし、そんな選り好みをできる立場ではないのもまた事実である。

 

 如何すれば……!

 

「すいませーん」

 

 俺は声を聞いた瞬間に駆け出した。向かうは玄関。

 ドタドタと走るのも、家を破壊するのもなしに、一瞬で移動する。これが俺の使命感のなせる技である。

 

「え?」

 

 ガラッと一気に玄関の戸を開くと、そんな間抜けた声がした。

 俺はその人を見る。

 足元は草履のようなラフなものだが、その分、白さが相克を成しており、脚全体が引き締まったような印象を受ける。いや、足もかなり細いようであり、若々しさに溢れた瑞々しい肌ツヤが陽射しを俺の目に跳ね返して余りある。

 生足が膝下までしか拝めないのは癪だが、お尻の形は……、良い尻だ。

 ウエストは引き締まっており、横にスラリと降りている腕は脚ほどの艶かしさこそなくとも、指フェチを沢山量産して余りある魅力があった。

 肝心の胸は及第点と言ったところ……、いや! こいつは着痩せするタイプだ! 恐らくあの胸は服をはだけさせれば、その豊満さを見せつけてくれるだろう!

 上へと視線を向けていくにつれて、俺の中では段々と胸中は定まってくる。この女性しかいない、と。

 そして、目があった時、ピキーンと来た。

 濡羽色の黒髪は、半紙の上で輝く漆黒の墨のように美しく映えており、純粋な清麗さで出来た大和撫子のように感じる。

 しかし、この女性の眼差しも、唇も、鼻も、肌も、全てが儚い王女様を幻視させるほどの淡さ。いや、麗しいのは事実だが、構成する全てが憂いに満ち満ちているのだ。それは俺を可哀想と思っているようで、だけど俺にはそれが逆に儚げに見えて。

 だが、それがいい。はっきり言ってそれがいい。

 

「胸をお貸しください!」

「え?」

 

 気がつけば声が出ていた。

 しかし、女性には届かない。聞き返されるだけ。

 やはり俺の腹の中を全て吐露しなければならないのか。

 

「貴方の胸を吸わせてください!」

「え?」

 

 これでもダメなのか。

 ならば、もう一押しだ。

 

「その胸をーーー、」

「おい、アシュラ。お前は人の母さんに何をしているんだ」

 

 ーーーーー

 

 うちはイタチ。

 原作では暁という敵方だった奴で、なんやかんや言っても弟が大好きでずうっと見守ってたっていう変態性を持ちながらも、ナルトの勘違いを諭し、世界を救った英雄の一人とも呼べる功績を残した天才であり、人格者でもあったという、正に天才で、作中でも結構な万能キャラだった人。地球で読んでいた時はその生き様が好きで、俺の中では作中でも一番好きだったキャラクターだ。

 意外と本人と会ってみると覚え出す原作知識というものに驚きを覚えたが、結局は、ナルトの勘違いがどんなものだったかわからないし、弟を見守る行動自体、何をしていたか思い出せないから、あまり意味はない。

 

 俺とイタチの今世での関係だが如何やらお友達らしい。

 聞けば、昔から木遁を使ったり螺旋丸を使ったりと随分なお子さんだったらしい。だが、何故か隠蔽能力も優れており、木遁を使えることはイタチとその家族、俺の両親とあの猿と木の葉の三忍と呼ばれる忍の一人しか知らないらしい。それ以外の人間は、知った次の瞬間には記憶を失うという事態に陥ってた、と語ってくれた。中々お茶目なお子さんらしい。俺だったら、こんな子供は薄気味悪くて腫れ物を触るような態度になってしまうだろうな。

 ただ、性格を聞く限り完全に俺である。何故か体が異世界の物なのに妙に慣れている事に違和感を覚えていたが、ナルトの為に使えるもんは、と考えなかった。だが、これで漸く理由がついた。

 予め用意されていた器だったのだ、この体もその性格も。つまり、うずまきアシュラという(´・ω・`)(テライケメン)は、俺が輪廻転生眼を使って転生して憑依する為だけに用意された人間だった、ということだ。

 聞いた時はゾッとしたが、元の人格も本懐を遂げられたのなら満足だろう、と考えると、そうでもなくなった。というか、ナルトを守るなら圧倒的に俺の方が有利だと思ったら、途端に元の人格がどうでもよくなった。俺って意外とドライな男だったのか。

 

 さて、そんなうちはイタチだが、自分の母親に向けていかがわしい事を言う俺をどう思っていたと思う?

 

「アシュラ……、お前も分かったか」

「ああ、イタチ。まさかあんなにも俺を一色に染め上げてしまうとは……」

「うんうん、分かる。分かるぞ〜、その気持ち。だが、お前は恵まれていると言ってもいいんだぞ? 俺なんか母さんの仕事が速すぎて、遊ぶ以外で全く世話をしてやれないんだからな」

「何……だと……⁉︎ そ、そんな地獄があっていいのか⁉︎」

「ああ、そうだ。あまり言うべきではないが、お前は家族が弟しかいないからここまで出来るんだ。両親がいれば違う。特に、普段忙しい父さんに先を越された時なんか、一週間心に釘を打ってるような気分になる」

「そ、そんな事がッ!!」

 

 答えは、俺の言葉の裏をはっきりと読み取っていた、である。自分の行動を思い返して、よく分かったな、と思うと同時に、気色悪いな、とも思った。

 どう考えてもイタチの言動はブラコン野郎の物であり、とても気色悪い鉛のような光り方をする男である。

 しかし、そんな彼と話が合ってしまうのは如何してであろうか。痛いほどに彼の気持ちがわかってしまうのは何故であろうか。

 俺はナルトが大好きだが、ブラコンではないはずなのに。

 

 イタチの母、ミコトは変な道をひた走る二人を見て、ちょっとばかり頭が痛くなった。いや、眩暈まで起こったのを考えると、とんでもない重症だ。

 

「イタチ、アシュラ君、そんな馬鹿な話してないで、外で遊んできなさい」

「え? 多分、外に出てもこの話を続けるよ?」

「それな」

 

 こいつらの方が重症だ、と思いながら、ミコトは二人を家から締め出す。昨日、改装されたばかりというのにかなり勝手を知っているようだ。

 

「ハァ……」

 

 しかし、親を亡くして悲しんでいるだろう、と思ってきてみれば、三日前、夫に相談までした「イタチのおかしい行動」に付いて行けるような子になっていたとは。

 ミコトには、これが弟ができた男の性なのか、親を亡くして曲がった愛情なのか、判断できなかった。

 ただ、確信出来るのは、

 

「あの子達、将来、大丈夫かな……?」

 

 将来の伴侶が出来ないだろう事。

 何でまだ五歳の子の将来を、と考えると「ハァ」とため息しか出ないミコトであった。

 

 ーーーーー

 

「これは……」

「ああ、酷いな……」

 

 俺はイタチと弟談義をする為に外に出て、いつもの場所と呼ばれる場所に行こうとしていた。

 道中は楽しく道を歩んでいた。たとえ、歪んだ道、傾いた道、破壊された道、全てをヒョイと飛び越えて踏破した。

 しかし、越えられないものがあった。

 

「イタチ、そこの壊れた家屋には生き残りが居る!」

「何っ⁉︎」

「少し退いていてくれ!」

「おい! それは⁉︎」

「喧しい! これもナルトの為だ!」

 

 人の命であった。

 昨日の闇の中では家の場所を検索していたが、ナルトの事で浮かれていた俺はどうやら倒壊した家屋に埋まっている人を見逃していたようである。完全に俺の落ち度である。

 いや、俺の事はどうでもいい。しかし、木の葉の里を襲ったとされる九喇嘛がナルトの腹の中に居るということは、ナルトはかなりの嫌悪を抱かれ、里の者達に拒絶されても仕方のないことであろう。況してや、この状況で死者が後を続き、後遺症を訴える者が続出して見ろ、里は拒絶どころではなく、ナルトを排除しようとすらするだろう。

 そんな事は絶対に許さない。そうなって仕舞えば、俺は木の葉の里を潰す事だって辞さない。俺にとっては、大勢の命よりもナルトの安全だ。ぶっちゃけるなら、その他は如何でもいい。

 でも、ナルトの為になるなら、俺は誰だって救う。前も言ったが、俺は其処に心が存在しないのは嫌いだ。

 俺の行動の指針は単一である意思に統べられている。

 

 全てはナルトの為だ。

 

 ナルトの為なら、里、いや、世界すら変えてやる。

 

 そして、ナルトの為ならーーー、

 

「木遁!」

 

 パンッと手を打ち鳴らせる。

 此処で青い雷光が迸れば余計にいいのだが、俺の才能はそこまでのエンターテイナーではない。そこまでのバリエーションは持ち合わせておらず、かといって充実しているわけでもないのが悲しい。

 ただ、人を救うことは出来る。

 

 音は、スルスルといったようだった。

 まるで大蛇が這うように、巻きつくように木は伸び、瞬く間に倒壊していた瓦礫を強固な木の枝に引っ掛けて支えている。

 ガラスや金属の微細な粒も無数に生えた葉の隙間に受けられて、残りはしていない。

 

「イタチッ!」

「ああ!」

 

 イタチは即座に駆け出した。

 先程までの悪路を歩いていた時の身のこなし方からわかっていたが、中々に修練しているようだ。流石と思うが、弟の為、とそこからサムズアップするイタチが透けて見えるのは、ご愛嬌と言ったところだろう。

 イタチは小さい体をも小回りを利かせて上手く使い、倒れている人物を抱き上げて帰ってきた。

 

「アシュラ、救出は成功だ!」

「よし、それじゃあ療養所に行くが、ちょいとな!」

 

 俺は再度、手を打ち鳴らす。今度は轟かせるように。

 すると、今度はまるで大地の中から生まれるように、様々な形をした木が生まれ、それが編まれるように手早く組み込まれていく。

 パズルのような動きをした木々はやがて、一つの家屋として其処に残った。綺麗で、見たこともないような新技術を使ったと思われる家である。イタチが、少し自重しろよ、と思ったのも訳ないことである。

 

「じゃあ、療養所に行くか」

「あ、ああ。……あんまりやり過ぎるなよ?」

 

 イタチは一応、言ってみるも、

 

「オッケー」

 

 軽い返事で聞いていない。

 分かってねえな、とジト目を向けるが、イタチは天才である故か、アシュラが自重しなかった理由を推理すると、自分がその立場だったら如何だったか、と思い、言い含めるのは止めにした。

 

 ーーーーー

 

「アシュラ、西から三十人だ」

「オッケー。じゃんじゃん行くよ」

 

 俺は療養所に着くと、すぐさま医療忍術が扱えることを証明し、治療を始めた。イタチも聞いたことがなかったようで、驚いていたが、これが弟愛か、と非常に適切な解を見出していた。俺がイタチに医療忍術を見せたのは、全部この答えを貰うためだったのかもしれない。

 医療忍術の腕前はカツユに鍛えてもらい、お手上げのレベルにまでなった俺である。切除しなければいけない足も、壊死した腕も、半壊した脳も、グチャグチャになったチャクラの回路も、全て治せる。まあ、脳とかは治しても意識が戻るかどうかまでは保証できないが。

 漸く見出せた医療忍術の意義を再確認すると同時に、使い始めると個体差で出た、臓器の位置の違いから骨の長さの違いなどのような何から何までの違いが意外と新鮮で、やってみると楽しいものであった。修行厨なのだろうか。

 臓器の気色悪さに胸糞は悪くなるが、これも修行と考えたら簡単に克服出来た。俺って(´・ω・`)(修行厨)なのだろうか。体の髄まで修行で構成されていると考えれば実に清々しいが、なんか修行しか生きがいがなかったようで寂しい。

 本当、影分身は嫁さん作ってたりしやがってんのに。あ、子供作ってる奴も居たな。

 自分に対して、リア充め、とは言えない俺である。

 

 しかし、そんな悔しさを力に変えて、今も治療を施す。

 

「よし、ヘルニアは治ったぞ」

「え? お、お、おお! 本当だ!」

 

 やたーっと長年苦しめられた病気からの解放に人々は喜ぶ。勿論、これは九尾の騒動で傷ついた人が居ない間でやっている。居たらどんなに軽傷でもそっちを優先している。

 そう、結局はこれは善意ではない。俺のある目的の為の作戦でしかないのだ。偽善ですね。まあ、訊かれれば、「善意でやってるわけではない」とかはっきり言うけどね。「まあ、小さいのに謙遜するなんて出来たお子さんだわ」とか勝手な事を言ってくれれば、それだけで俺の作戦はより進行していくのだ。

 

 名付けて、アシュラ英雄化計画。略して、AEK。逆にして、KEA、ケア。

 まあ、簡単な話。俺が英雄になる事で、九尾の話題性を下げて「九尾? 何それおいしいの?」状態を作るのだ。

 人はよりデカい事物に目を移す。例えば、世界を震え上がらせた地震が巨大隕石の衝突の前兆だとするなら、人は何方に対し防護策をとろうとするだろうか。

 確実に隕石に対してである。まあ、とるとするならであり、俺はどうにもならない状況で足掻くような無様な人間ではない。まあ、死ぬ前に未練タラタラでぶつくさ言ってるだろうが。

 兎も角、人はより話題性に富んだものに目を向けるのだ。チョー簡単な例を挙げるとするなら、1945年に何があったか言ってみたら、日本敗戦しかないのと同じである。

 そして、俺はそれを使う。生憎と俺は、四代目火影の息子であり、その四代目と妻は死亡し、俺は二人の遺した弟を守る為に駆け回る、という悲壮感漂う悲劇のヒーローを演じられる。話題性は十分であり、そこに医療忍術を扱う天才とまで入れられれば、最早他の追随を許すこともない。まあ、俺の努力を天才の一言で片付けられるのは癪だが、そういう世界なのでしょうがないな。

 そして最後に、初代の使った木遁を使えるとまでなれば、逆に騒然となるだろう。それこそ、九尾の騒動は英雄の始まりへと実しやかに囁かれるように、な。

 

 九喇嘛には悪いが、事件の真相も事件の実態すらも俺の英雄としての生贄になって貰おう。無論、母と父の偉大な行いも霞んで消えていくわけだが、九喇嘛に聞いた最後、ナルトの為に俺の為に涙を流した両親が、自分達の見聞の為にナルトが生き辛くなるのをよしとはしないだろう。だから、お父さんは俺の台頭の為の道具になって貰う。

 言い方が悪いが、どうやってもそういった感情は拭えない。それにそうなる風潮を嫌う人物だって出てくるはずだ。

 そんな人物達を歓迎することはないが、そういう人達が居るからこそ話題は余計に沸騰し、盛り上がりを見せる。まあ、これによって俺が英雄になることが第一目的で、忘れらない英雄として父が残れば御の字といった具合だ。

 そして、九尾が何をしたっけ? という感覚になれば最高だ。

 

 治療を受けに来た人に多くの感謝を押し寄せられたり、上忍に猿からの出頭要請をもらったりしつつも、俺は呑気に帰り道を歩いていた。

 帰り際といえども、螺旋丸の応用で道の整地をしながら進む。誰にも見られていないからこそ、其処に俺がしたっぽい奉仕の形があれば、人は暗示の如く、これも彼奴が、と思ってしまうようになる。

 なんかまるで独裁者にでもなろうとしている気分ですわ。

 

 その道中でイタチは、ずっと何かを考えるように手を顎に据えて俯いていたが、とうとう頭を上げて、口を開いてきた。

 

「……アシュラ、大丈夫なのか?」

「ん? ああ、チャクラは無限にあるからな」

「そっちじゃない。お前の心の問題だ」

 

 イタチは鋭い。ブラコンだからかな?

 イタチは今も、言い逃れは許さんとばかりに鋭い視線を向けてくる。こいつは賢い奴だから、恐らく俺が悪意に晒される情景が浮かんだりしているのだろう。

 そうだ、英雄には必ず黒い噂がつき回る。俺に限って言えば、俺が出世する為に父を殺したとか、そもそも俺の木遁を使っていれば死者は出なかったとかな。後者に至っては正論過ぎてぐうの音も出ないが、こういった批判はある。

 さっきも言ったが、こういった動きを操作しようとする以上は俺はそんな悪意の渦中にい続けなければならないのだ。それはとても精神をすり減らす事で、とても苦く辛い日々だ。一歩間違えれば日陰者に落ちてしまう可能性すらある、厳しく険しい道だ。

 だからこそ、イタチは分かっていない。

 

「無能ってな、どの道も苦しい道のりなんだぜ?」

「は? 何を言ってるんだ?」

「ははは、俺は無能だって話だな」

「お前が無能……。いや、分からんでもない」

 

 おいそこ認めんな。

 けどそれも、本当の天才であるイタチだからこそなのだろう。

 

「だからな、どれも辛い道なら脳筋の俺は、信じた道を突っ走るだけなんだ」

「……お前らしいな」

「生憎とお前の中の俺の印象が読めんのでな。素直にうなずけん」

「ああ、脳筋のブラコン野郎だ」

 

 クスリと笑いながらイタチは言うが、その内容は承服しかねるものである。

「俺はブラコンではなぁい!」と言いかけて口をつぐむ。何故か自分の中で妙に兄と被ったのだ。イタチはインドラの転生者ではないというのに。

 

 俺は惚けたのだろうか。




妙に細かいイタチの母の描写。
意味の分からない問答とイタチの口調の変調。
いい加減な話の展開とメチャクチャなアシュラ君。
そして、超横暴理論で解決を図ろうとする脳筋思考。

六道仙人の伝承では、まるでナルトが九尾の人柱力になるのが正しい事の様に伝えられています。この事から、恐らく人柱力とは、尾獣を『無理矢理』閉じ込める者ではなく、『合意の上で』封印したと考えた作者。
しかし、これでは決定的に矛盾が生じる。

だが、こんな小説としてあんまりな状況も一つの光明が差し込んだ事で作者は解決した。


ーーーそうだ。岸本先生に押し付けよう。

以上、作者のオリ設定の根拠の身勝手さでした。
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