一色いろはは大学でも諦めない   作:とまとと

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お久しぶりです。
夏バテ&仕事大変・・・


番外編 一色いろはは思い出す。

私ははるが一生一代の決心をつけた頃こんなことを思い出していた。

 

そう、先輩との高校生活最後の思い出の卒業式である。私は二年連続生徒会長を務めさせてもらった。なので卒業式で皆の前に立つのも、送辞の言葉を送るのも2度目である。なのに私は朝からずっと足も手も震えていたのだ。これは緊張などそんな生ぬるいものではなかった。私は今日ハッキリと実感してしまったのだった。あの捻くれた目の腐った先輩とこうして学校で楽しくお話することも、頼ることも出来なくなってしまうということを・・・。

 

 

今にも心臓が潰れてしまうんじゃないかというくらいドキドキしているし、涙も卒業式が始まる前から零れてしまいそうなくらい私は先輩が好きなのだ。

さっきから同じようなことばかり頭の中をぐるぐると回っていた。今までならそんな事は無かったのに、いつからこんなに私は弱くなってしまったのだろう。今にも不安で倒れてしまいそうだ。こうなったのも全て先輩の責任です。なので、責任、とってもらいますね。という一言ももう先輩に伝える事はできないのだろうか・・・。

 

 

 

ふと、意識を戻すと卒業生入場のアナウンスが流れていた。在校生の拍手のなか卒業する先輩方が体育館に入ってきている。私は他の誰でもない、目の腐った先輩を探している。雪ノ下先輩は相変わらず、いや、いつも以上に凛としている。結衣先輩は今にも泣き出しそうな顔をしている。先輩は・・・・・・いたっ!先輩はいつもと全く変わらない顔でスタスタと歩いていた。

 

 

 

全く先輩には私の気持ちにもなって欲しいです。どんな気持ちでここにいると思ってるんですか。

・・・でも、いつもと変わらない先輩を見て少し安心しました。ありがとうございます。

 

あっという間に入場は終わってしまいました。いつもはまだかまだかと思う入場も今日だけはとても短く感じてしまいます。

 

国歌斉唱も終わり、卒業証書授与です。担任の先生方に名前を呼ばれた生徒が1人ずつ壇上に上がり貰って行きます。私は生徒会長で送辞があるので一番前の席に座っています。なので、先輩方の姿がここからだと良く見えます。するとそこで

〖比企谷八幡〗

先輩が呼ばれたようです。すると先輩はいつもどうり少しめんどくさそうにはいと返事をするといつもどうり猫背で卒業証書を受け取っていました。それを見た私は今まで悲しみや苦しさでいっぱいいっぱいだったけれど少し楽になることができました。やっぱり先輩は私にとってこれだけ特別なんです。

 

そんなことを考えている間に卒業証書授与は終わってしまいました。そして卒業生代表の言葉。卒業生代表は生徒会長が私なので、学年1位の雪ノ下先輩です。

 

「本日は私たちのためにこのように盛大な卒業式を開いていただきましてありがとうございます。また先程は校長先生をはじめ来賓の皆さん、在校生の皆さんからあたたかいお言葉を頂き、胸が熱くなる思いがしております。本当にありがとうございました。

 こうして壇上に立っていると、講堂の天井のシミや、窓ガラスの一枚一枚も懐かしく、いとおしく感じられ、私たちがこの学校で過ごした3年間のいろんな出来事が次々に頭の中によみがえってきます。

  満開の桜のもと、それぞれの喜びを胸に迎えた入学式。そしてその浮かれた頭をいきなり叩かれた実力テスト。文武両道に力を入れるこの学校の教育方針から、クラス対抗のスポーツ大会がすぐに行われ、いろんな学校から集まってきた我々は、一気に「仲間」になりました。

  学園祭、体育祭、修学旅行。

自分自身に照らして言えば、初めての恋もしました。あの夏の日の嬉しさと悔しさは忘れることのできない思い出となっています。

 そしてあっというまに三年生。進路を決める時期になって焦りはじめた私たちを、先生方は親身になって指導してくださいました。厳しい時は火のように恐ろしく、優しい時はこの上なく優しい、こんな先生に私たちは初めて出会いました。「最後は自分で決めろ」と、おっしゃった時の先生の声は今でも耳に残っています。

 そして今日、私たちはこの学校を卒業します。 本音を明かしますと、この先、私たちの前に広がっている世界を見て、不安に身が竦み、震えるような思いがする一方で、期待に胸が膨らみ、わくわくするような思いも致します。ひとりひとりの不安は、友と手を取り合うことで勇気と力に変えて、三年前と同じように、胸を張ってこの門から旅立つことこそが、私たち卒業生の使命だと思えるようになりました。困難にも勇気を持って立ち向かうための剣と盾をこの三年間で得たような気がしています。

 最後になりましたが、校長先生をはじめ諸先生方、そして、お父さん、お母さん、本当にお世話になりました。私たちは必ず皆さんから受け取った「心」を忘れずに、それぞれの進路へと旅立っていきます。どうかあたたかく見守ってください。そして時には変わらぬご指導をお願い致します。卒業生を代表し、ここでもう一度心から感謝の言葉を申し上げ、答辞とさせて頂きます。 本当にありがとうございました。

卒業生代表 雪ノ下 雪乃」

 

完璧な言葉でした。次私の卒業生に送る言葉というのがとても嫌になります。しかし、私は今日だけはしっかりと自分の言葉で伝えたいと思っていました。なので、気合を入れて前に行きました。

 

『卒業生に送る言葉 在校生代表一色いろは』

 

「はいっ!」

 

聞いてくださいね、先輩。

 

 

「今年の冬は寒さが一段と厳しかったせいか、この別れの日の春の日ざしが、柔らかく優しく感じられます。卒業生の皆さん。本日はご卒業おめでとうございます。

 中学生の頃。私たちにとってこの総武高校の制服は憧れの的でした。二年前に初めて私たちがこの学校の門をくぐったときは、私たちは「まるで中学生が借りて来た制服を身につけている感じ」でした。その後、徐々に先輩方の着こなし方を学び、今では本当に自分に馴染み、この制服が毎日の学校生活に欠かせない相棒となっています。不思議なことに、 制服になじんでいくに従って、この学校を愛する気持ちが愛校心という形でだんだん芽生えてきたように思います。

 さて。私たちが先輩たちと一番触れあうことができたのは、放課後の部活動です。指導して頂いたときの厳しさ、一緒に練習したときの辛さと同時に、鍛えていただいたこと、教えていただいたことは数え切れません。勝った時の嬉しさ、負けた時の悔しさ、そして、時には厳しく時には優しく励ましていただいた時の感動や喜びは決して忘れることができない宝物となっています。

 もうひとつ忘れられないのが今年の文化祭です。受験や就職で時間が限られる中、一つのことに没頭することの大切さや、仲間と力を合わせることの喜びを教えていただきました。

 今日を限りにお別れですが、まだまだ教えて頂きたいこと、学びたいことが沢山あるような気がしてなりません。どうかこれからも私たち後輩のために時々お力をお貸し下さい。

 私たちは先輩たちが残して下さった歴史と伝統を大切にし、次の世代へと伝えていきたいと思います。

 どうか卒業されてからも、この学校で学んだことや経験したことを活かし、それぞれの夢に向かって大きく羽ばたかれますようお祈り申し上げます。

 最後に 卒業生の皆さんのご健勝とご活躍をお祈りいたしまして、送辞とさせて頂きます。

本日はまことにおめでとうございました。2年間本当にお世話になりました。

在校生代表 生徒会長 一色いろは」

 

 

これが私の用意していた送辞の言葉だ。

でも、私はこれで終わりたくなかった。

言い終わってもその場から離れない私を見て会場がすこしざわめいてきた頃

 

「私は生徒会長を2年間務めさせてもらいました。

最初は生徒会長なんてするつもりはありませんでした。しかし、同じクラスの女子に知らない間に立候補させられていました。最初はなりたくないと思い、その時の生徒会長の城廻めぐり先輩と奉仕部へ行きました。しかしその頃の奉仕部は脆く、少しでも刺激すると今にも壊れてしまいそうなほどでした。そして・・・私の依頼がより、その溝を深めてしまいました。

しかし、奉仕部の捻くれた先輩が、部活での依頼ではなく、俺への依頼なら手伝うと言ってくれました。最初は信用出来なかったのですがお願いしました。すると先輩は生徒会長になる事を勧めてきたのです。そしていろいろな好条件があるといってきました。私は先輩の思惑どうりに自分で生徒会長をやることになりました。

・・・そし、て・・・。わたしは・・・奉仕部に・・・先輩に助けて・・・貰いながら今日まで・・・頑張ってきました。」

 

とうとう私は涙を我慢することができませんでした。

 

「私は今まで・・・せん、ぱいに甘え・・・て、っ、ばっかの・・・ダメな生徒会長・・・でした・・・。

これ・・・からは、せんぱい・・・がいなくなると・・・思うと・・・と、とても胸が痛いです・・・。苦しい・・・です。」

 

でも、と最後だけは止まらずに言い切ろうと頑張りました。

 

「これからは!先輩がいなくても、安心して任せられるような生徒会長になります!先輩に甘えてきた生徒会長とは今日でさよならです。

だから、だから、頑張ったご褒美待ってますからね!」

 

最後は最高の笑顔でそう言ったのだった。

結衣先輩や雪ノ下先輩はこの言葉の本当の意味に気づいてると思いますが、これが今までで一番の宣戦布告です!

 

こうして私の言葉が終わるとものすごい拍手で皆私を応援してくれました。

 

 

こうして卒業式が終わり涙でくちゃくちゃになった顔で先輩の元に行きました。

本当は嫌だったんですけど今日だけの我慢です。

 

そうして涙を堪えて私は先輩にこう言いました。

 

「しょうがないので私が先輩の第2ボタン貰ってあげます!欲しがる人いないと思うんで!」




初の番外編ですね!

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