前世の記憶がある、なんて夢のようだろうか。それに加えてその前世では私もこの世界もゲームであった、なんてもう気が狂ってるだろうか。
けれど私は知っている。私も、この世界も、まだ見ぬ私の大切な仲間も。知っている。
「mother……。意味は母、お母さん、マミー……。」
「そうよ、よく出来ましたリンナ。」
母は私の頭を優しく撫でる。それによって私の金の髪と赤いリボンが少し乱れた。直そうと部屋の鏡台に近づく。ふんわりとした金色のボブ。赤いリボン。ピンクのワンピース。
名前を〝おまかせ〟にすれば、きっと私はポーラという名前だった。
この世界は、motherの世界だ。そして私は、ポーラであったはずの少女。
鏡を凝視すると、後ろからママが私の髪に手を伸ばす。1束とって、ブラシを通して。鏡越しのママの顔は微笑んでいる。その表情に、申し訳ない気持ちになった。
ごめんね、ママ。
本当にここにいるべきなのは、ママに愛されるべきなのは私なんかじゃない筈なんだ。ママが愛すべきなのはリンナではなくポーラ。心優しい、不思議な力を持った少女。
私には確かに、ポーラと同じような力がある。それはPSIと呼ばれるサイコキネシス。今はまだ弱いけれど、慣れてくればきっと〝ファイア〟も〝フリーズ〟も使えるようになる。
それはいい。出来るだけ強い方が後々助かるだろう。
けれど1つ、ポーラと違うところがあった。テレパシーが、使えない。
私はこの世界の記憶はあるけれど、ポーラのように予知能力はなかった。そしてこれから出会うであろう、世界を救う少年、〝ネス〟に呼びかけることも出来ない。
幼い頃はまだ能力が開花して無いだけだと思っていたけれど、どんなに年を重ねても一向にその力が使えるようにはならない。とりあえずネスに私の存在を知ってもらえるように、パパとママ、近所の人達にも〝ネスという少年が、私と運命を共にする〟と何だか狂気を感じるセリフを言いふらした。
けれど私に不思議な力があると信じる人達は簡単に信じてくれて、なんとか物語の流れを変えないで済んだ。あとは彼に渡さなければいけないフランクリンバッチを用意して。大丈夫。大丈夫だ。きっと物語は順調に進んでくれる。
それでも、テレパシーは使えないまま、11歳になってしまった。
焦りをつのらせて、毎日PSIの練習もした。それでも一向に予知能力もテレパシーも目覚めやしない。わけがわからない。もうハッピーハッピー村が、青に染まりはじめてるというのに。何故私の能力は目覚めないの……!!
「私が、ポーラじゃ、ない、から……。」
心に押し込めた言葉が、するりと喉を通った。
そうだ、私はポーラじゃない。ポーラじゃ、ないもの。
ポーラじゃない私が、ネスの仲間になっていい訳ないのに。
考えないようにしていたことは次々と脳みそに突き刺さる。絶望が一気に襲ってきて、涙が溢れてくる。
涙を拭おうと、ポケットのハンカチに手を伸ばす。その時だった。部屋の窓が空いて、振り返ると、少し太った金の髪の。
ーーーブラック・アウト。
目を覚ますと檻の中だった。
木造の小屋のような場所。不釣り合いな鉄格子の中に、私はいた。
鉄格子に手を伸ばす。冷たい、ただの鉄だ。なんてことの無い普通の檻。
けれどPSIが使えない。どんなに念じても発動しない。
なぜだろう、と思えばそういうものだから、と返ってくる自問自答。私はその場にしゃがみこむ。テレパシーも予知能力も使えないのに、こんな所は物語通りなんて。
テレパシーが使えないとなると、ネスと私は本当にただの他人だ。そんな他人をネスが探してくれるなんて思えない。つまりしばらくは、このまま。
きっとそのうち助けが来る。それはいい。けれどネスのこれからはどうなる?まだジェフと、プーと出会わなければいけないのに。特にジェフは?ジェフは、ポーラの呼びかけでネスと引き合うのに。
私のせいで、物語が進まなくなってしまう。そんなの。
ちがう。
ちがう。そうじゃない。私が、悲しいのは。
私は、ネスと運命を共にしていい存在じゃないってこと。
ポーラじゃなくても、と思ったんだ。きっとリンナという一人の少女として、ネスは私を受け入れてくれるって。世界は受け入れてくれるって。
頑張って強くなれば、そうすればきっと認めてくれる。必要な存在になれる。ポーラじゃなくても、世界の1部として、ネスの仲間として、認めてもらえるって。
最低だ。運命とか物語とか偉そうな事言って、結局は私は私のことしか考えてなかった。こんな私が、あの優しいポーラの代わりなんて許されるわけない。ましてや私として認められるなんて、あるわけないんだ。
きっとジェフもプーも、私がいなくても何らかのきっかけでネスと出会うのだろう。だって二人は〝本当に世界に選ばれた者〟だから。私とはちがうから。
こんな汚い私の祈りが、ネスに届くわけないんだ。それなのに毎日毎日、こりずに、諦めずに、「ネス、私の呼び掛けを感じますか?」なんて、「まだ見ぬ私の友達」なんて!!
そして、こんな状況になってまで
「おねがい、助けて……」
なんて……。
その瞬間、小屋の扉が開いた。
驚きに、零れそうになっていた涙が一気に引っ込む。びくりと、体をこわばらせる。そして、そのまま固まってしまう。
だって、そこにいたのは。
「……ネ、ス……?」
「君は、リンナだね?よかったー!怪我はない?無事?!」
明るく笑う、野球帽の彼。少し泥のついたバットと、しましま模様のTシャツと。
ネス、なの。本当に、ネス?
「届いたよ、君の声。夢で僕に呼びかけてくれたでしょ?」
彼の、ネスの手が鉄格子の隙間から伸びてくる。私の頭に乗って、優しく撫でる、まだ幼い少年の手。
私の心臓がとくとくと音を立てる。息がぐっと詰まって、胸の内に温かい温度を感じて。
あぁ、不思議ね。あんなにも残酷で、辛く苦しい現実だと思っていたのに。ネス、貴方の笑顔一つでそんな感情吹っ飛んでしまった。
私は小さく、深く呼吸をして、熱くなる顔を、こみ上げてくる涙をぐっと堪える。そして、笑顔を見せる。ポーラのように綺麗な笑顔では、ないけれど。
「あなたが……来てくれなかったら、」
わたし、なきだしてしまうところだった。
続けばいいなと思ってたものを押し入れから引っ張り出し投下。
mother2大好きです。ポーラも好きです。一番好きなのはどせいさん。
続くとしたらポーラ(本物)との交信もある予定だった。
お目汚し失礼しました。ここまで読んで下さり、ありがとうございます。