女神を連れて帰るだけの簡単なお仕事   作:白黒しぐま

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キャベツ収穫イベント前半になります。

誤字脱字に気を付けてください。


第十二話:キャベツ収穫祭

正門に着くと、既に多くの冒険者が門の外に集まっていた。そこには和真達やダクネスも既に到着していた。

 

「おっ、ダクネス発見!ちゃんと仲良くしてるかな?」

 

「なあクリス、緊急クエストって何なんだ?やっぱ、モンスターが街に襲撃に来たのか?」

 

「…ん?違う違う。キャベツの収穫だよ、収穫」

 

…………。

 

「……え?キャベツ?キャベツってあの緑色で丸い、あれだよな?」

 

「そうそう、噛むとシャキシャキして美味しい野菜の事だよ?食べた事ないの?」

 

「あるけど、今回の緊急クエストと何の関係があるんだ?」

 

ここにいる全員が装備一式を着こんだ冒険者、それなのに農家の手伝いと何の関係があるんだ?

 

「……君、もしかしてこのクエスト受けるの初めてなの?あのね……」

 

クリスが何か言いかけるが、それを遮る様にギルドの職員が大声で説明を始めた。

 

「皆さん、今年もキャベツの収穫時期がやって参りました!今年のキャベツは出来が良く、一玉の収穫につき一万エリスです!出来るだけ多くのキャベツを捕まえ、ここに収めてください!」

 

…何を言っているんだ?キャベツを捕まえる?まるで飛んだり跳ねたりするような事を言っているがそんな訳……。

 

突然、冒険者達の歓声が上がった。彼らの視線の先には目的のもの、つまりキャベツがいた。

 

俺はその光景を見て、唖然とした。遠くから緑の塊、いや集団が迫って来ている光景に一人の男も叫んでいた。

 

「なんだこりゃーーーーーー!」

 

和真の気持ちも分かる。目の前には日本で見慣れたあの緑色で丸い、だけど決して飛んだり跳ねたりする事のない野菜が飛んで跳ねて迫って来ているからだ。

 

あのキャベツ達は自分は鳥か何かと勘違いしているのではないかと思ったが、ここは異世界なのだ。デカいカエルも空飛ぶキャベツも異世界なら仕方ない…、そう異世界ならこれが普通なのだ。

 

現に今、我先にと冒険者達がキャベツに向かって突撃してる。己の剣を魔法を、そしてスキルを使い懸命にキャベツを追いかけ捕まえる姿は冒険者とは何なのか問いたくなる。

 

「ほらほら、君も早くキャベツを収穫しなよ。早く取らないと全部取られちゃうよ」

 

目の前には百や二百は優に超えるキャベツがピョンピョン跳ねている。果たしてすべて収穫出来るのだろうか?

 

「…それに今年はあれが来るかもしれないしね。ほらっ、早く早く!」

 

「あれ?」

 

あれとは一体何なのだろうか?クリスの言っている事も気になるが、今は目の前を飛んでいるキャベツだ。

 

「収穫って言ってもどうやって捕まえるんだ?まさか、一玉一玉追いかけて捕まえるのか?」

 

「そんな大変な事しないよ。見てて、『スティール』ッ!」

 

するとクリスの右手には先ほどまで飛んでいたキャベツが大人しく手の平に乗っていた。

 

「スキルにはこういった使い方もあるんだよ!」

 

ドヤ顔で自慢するクリス、その後も次々と捕まえてはカゴに入れていく。俺もクリスと同じようにスキルを使おうとしたが、相手は動き回っているためなかなか上手く対象を捕らえられない。

 

たくさんの冒険者がキャベツの収穫に夢中になっている中、ある人物の行動に皆の手が止まった。その場にいる全員が手を止め、彼女の行動に胸をうたれていた。

 

皆の視線の先には、キャベツとの死闘の末気絶している冒険者がいた。そして、それを身を挺して守っている純白の騎士がいた。そう、ダクネスである。

 

だが、何玉ものキャベツの突撃により鎧は砕け、服も破れボロボロだった。それでも、一歩も引かず後ろの者を守る姿は騎士の鑑だ。

 

「あんなになってまで人を守るなんて……」

 

「…俺も騎士として見習わなければ……」

 

見守る冒険者達がその姿に感動している、もちろん俺もクリスもダクネスの勇士を見守っていた…が、その姿にお互い頭を抱えていた。

 

確かに、倒れた人を庇う姿は正に騎士の鑑だ。

 

だが、その頬は紅く、目は爛々と輝いている。つまり、ダクネスは喜んでいるのだ。恐らく、男達に自分のあられもない姿を見られて興奮しているのだろう…。

 

「……なあ、クリス?あれを見てどう思った?」

 

「……スゴイネ、マサニキシノカガミダネ」

 

「……本音は?」

 

「…本当は良い子なんだよ!純粋で真面目で、仲間思いの優しい子なんだよ!…ただ、ちょっと人にいじられたり痛い事されると喜んじゃうだけで、ホントだよ!」

 

必死にフォローするクリス、きっとこの子も苦労してきたのだろう。

 

「…収穫に戻るか」

 

「……うん」

 

俺達は再びキャベツの収穫作業に戻った。クリスはその後も着々とキャベツを収穫していったが、俺の方は芳しくなかった。スキルの成功率も悪く、剣で切れば真っ二つ、そのためカゴの中にはほとんど入っていない。

 

「参ったな、このままだと……ん?」

 

俺の足に何かが当たった、下を見るとそこには土で汚れたキャベツが転がっていた。誰かにぶつかった時気を失ったのだろう、そのキャベツは目を回していた。

 

周りを見回すと似たようなキャベツが何個も転がっていた。汚れたり傷ついたキャベツは値段が下がる為、そうなったキャベツは皆捕らずに捨てていくようだ。

 

「なんか、可哀想だな…」

 

俺はそうなったキャベツを集め、一か所にまとめた。例え汚れたり傷ついた物でも立派なキャベツ、食べれない事はないのだ。それに、土で汚れたくらいなら今の俺なら魔法で洗う事ができる。

 

「『クリエイト・ウォーター』ッ」

 

手の平から水を出して、キャベツに水をかける。まさか、初めて使う魔法が野菜を洗う事のために使う事になるとは…。

 

『クリエイト・ウォーター』によって洗われたキャベツは、体に付いた汚れが取れた事によってとても綺麗になった。中にはピョンピョン跳ねている奴もいる。

 

俺はそのキャベツを丁寧にカゴに入れていく。不思議と洗ったキャベツ達は逃げる事無く、素直にカゴに入ってくれた。

 

「さてと、次のキャベツを探しに……」

 

歩き出そうとした途端、俺の前にキャベツが転がって来た、いや、これは自分から近寄って来た。何故か、そのキャベツはつぶらな瞳で俺を見ている。

 

「えっと、お前も洗って欲しいのか?」

 

言葉が通じるのか、体を上下に動かす。

 

「じゃあ、ジッとしてろよ。『クリエイト・ウォーター』」

 

再びキャベツに向かって水をかけてキャベツを洗う。洗われたキャベツは満足そうに飛び跳ねると、自らカゴに入ってくれた。

 

「よし、じゃあ次の……」

 

 

 

 

 

 

その頃クリスは順調にキャベツを収穫していた。用意していたカゴの中にはたくさんのキャベツが入っていた。

 

「大量、大量!ついつい夢中になって取り過ぎちゃったかな。…一人で運ぶのは大変だし、あの子にも手伝ってもらおうかな」

 

自分の戦利品を運ばせるためカイトを探すが、なかなか見つからない。

 

「全く、どこに行っちゃたのかな?」

 

すると、クリスの後ろからカイトの声がした。

 

「どこ行ってたの、探した……。えっと、君今まで何してたの?」

 

クリスの質問に俺はどう答えていいか悩んだが、簡潔に答えた。

 

「キャベツに水をかけて洗ったら、何故か集まって来た」

 

「……それだけ?」

 

「それだけだけど?」

 

俺の周りには生きの良いキャベツがピョンピョン跳ね回っている、それも一玉二玉ではない。二十、三十を超えるキャベツが俺の周りを飛び回っているのだ。俺が歩けば着いて来るし、止まれは一緒に止まる、なぜこうなったのか俺にも分からない。いや、原因は分かっているのだが…。

 

しかも困ったことに、このキャベツ達は捕まえると嫌がって逃げてしまうためカゴに入れられないのだ。

 

「そんなの、無理やり捕まえれば良いんじゃないの?」

 

「出来るならそうしたいけど……無闇に捕まえるのは止めた方がいいと思うよ…」

 

俺はそっと後ろを指さす。そこにはボロ雑巾のようになって転がっている物、いや者が転がっていた……アクアである。

 

「無理やり捕まえようとしたら、周りのキャベツに袋叩きにされて…」

 

「……」

 

今まさに自分がこうなっていたと思ったのか顔が真っ青になる。例え相手がキャベツとはいえ当たれば勿論痛いしダメージは受ける。それを何十発も食らえば普通の人間ならただでは済む筈が無いのだ。

 

そこに転がっている元何たらも例外ではなく、皆平等に袋叩きにされるだろう…。まあ、ダクネスなら喜んで受け入れるかもしれないが。

 

「…じゃあ、君はこれからどうするの?」

 

「…どうしよう…」

 

目の前には一玉一万のキャベツの山、ただし捕まえれば袋叩き、逃げても後ろからついてくる…こうして考えている間にも着々と増えているのでこのままでは動けなくなってしまうだろう。

 

困った状況にお互い暫く唸りながら考えていたが、何か思いついた様にクリスが打開策を持ちかけて来た。

 

「ねえ君、ここにいるキャベツを全部洗っちゃったら?」

 

「出来るならそうしたいけど、今の俺の魔力量だと…」

 

クリスの提案は正直無理な相談だった。流石にレベル2の魔力量では、あと何回使えるか分からないくらい少ないのだ。

 

いくら初級魔法とはいえ、これだけのキャベツを洗うには圧倒的にレベル不足だ。せめて魔力回復のポーションがあれば話は別だがそんな物は持っていない。

 

「大丈夫!お姉さんに考えが有るから!」

 

クリスは自慢げに腰に付けているバックを叩く、どうやら何か作戦があるようだ。

 

「さっ!やる事も決まったし、いってみようか!あっ、私の収穫したカゴ持ってきてね。男の子ならそれくらい余裕だよね!」

 

そう言って先に行ってしまう為、渋々クリスの収穫したキャベツを運ぶことにした。

 

 

 

 

途中、周りの冒険者が妙な目で見たり、ついて来るキャベツを捕まえようと近づいてきたが、それより先にアクアがキャベツの中に飛び込んできた。

 

「キャベツ風情が、よくもやってくれたわね!この美しくも麗しいアクア様に楯突く奴は、全員まとめて私の酒代になるといいわ!」

 

怒りの燃えたアクアは、必死に逃げ惑うキャベツを捕まえようと躍起になっていた。先ほど自分の身に何が起きたのか学習していないのだろうか?

 

そうこう考えている内にアクアはそこにいたキャベツを捕まえていた。そして高々と持ち上げて勝利宣下をする。

 

「ついに捕まえたわ!さあ、次に私の捧げものになる子はだあ…れ?」

 

目の前に起きている光景に固まるアクア。先ほどまで逃げ惑い、ピョンピョン跳ねていたキャベツ達が突然止まった。そして、その全てのキャベツがアクアの方を向いて睨んでいる。

 

「…なによ、何なのよ!たかがキャベツの分際で、この女神である私に逆らう気」

 

言葉では強気に言ってはいるが、身体は震えている。アクアが周りのキャベツに注意がそれていた瞬間を狙い、捕まえていたキャベツは魔の手から脱出した。

 

「あっ、ちょっと逃げないで…いやああああああああああああああああああああああ!」

 

アクアの手からキャベツが離れたのを合図に、次々とキャベツ達がアクアに向かって突撃して行く。さっきの倍以上のキャベツが一斉に突撃してくる姿は、まるで子どもを守る為ライオンに立ち向かうヌーの群れのようだ。

 

僅か一分も絶たぬ内に、先ほどと同じようにボロ雑巾のようになったアクアは和真によって回収された。

 

 

 

 

 

後に、この出来事を見てた冒険者が言うには合計108Hitだったと証言しており、これはキャベツによる過去最高のHit数だと伝説になったと言う。ちなみに、これを聞いたダクネスが「私ならもっとイケる」と次のクエストに闘士を燃やしていたとか。

 

 

 

 

そんな事など無視して移動した俺達は、ギルドの用意したキャベツ収穫用の巨大な檻の前にいた。キャベツを入れて置くのに檻とはいささかやり過ぎとだと思ったが、内側からガンガン打つかってくるキャベツを見て納得した。

 

さて、クリスの収穫したキャベツを入れ終わった俺は今後の作戦をクリスに問いかけた。既にここまで来る間に集まったキャベツは数えるだけ無駄と思える量になっていた。

 

「よし、それじゃあ始めようか!まずはカゴをここに置いて、君はそこの石の上に座ってくれる?」

 

「ああ」

 

俺は指定された石の上に座ると、目の前には今か今かと待ち望んでいるキャベツの群れが広がっていた。本当にこれを全部収穫できるのかと考えるだけで、やる前から逃げたくなる量だった。

 

「あとは君が、『クリエイト・ウォーター』で水を出し続けて貰えば、あとは私がやるから大丈夫だよ。それじゃあ、いってみよう!」

 

「よし、『クリエイト・ウォーター』ッ」

 

俺は右手から水を出すと、その下にキャベツが集まってきた。まるで水遊びをする鳥のように身体を震わせて水を浴びたキャベツは、一玉また一玉とカゴの中に自分から入っていく。

 

「まさか、自分からカゴに入ってくれるとは思わなかったけど、これはこれでお姉さんの仕事が減るから大助かりかな」

 

少し驚いたクリスだが、カゴが一杯になると別のカゴと交換してキャベツを檻の中に運んでいく。

 

この作業をしばらく続けていたが、ついに問題の魔力切れが起きてしまった。

 

「おおい、もう魔力が残りわずかなんだが…この後どうするんだ?」

 

「もう魔力切れなの?根性ないなぁ。ちょっと待っててね」

 

クリスが隣でごそごそと何かを取り出しているが、その間もキャベツを洗い続ける。

 

「お待たせ、さっ、どうぞ!」

 

「ああ、ありが……」

 

差し出された物を見て固まる。手渡された物はポーションでも薬草でも、勿論アダマンタイトでもない。

 

「…クリスさん、俺にこれをどうしろと?」

 

「ん?もちろん食べるんだよ?普通に生でもおいしいよ?」

 

クリスの手には先ほど洗ったばかりのキャベツを持っているだけだった。つまりクリスは、俺にキャベツの丸かじりをしろと言っているのだ。

 

クリスの作戦はこうだ、この世界の法則により生き物を倒したり食べたりすると経験値が手に入る。それによってレベルが上がりステイタスが上昇する。

 

つまりこのキャベツを食べる事により、大量の経験値を得てレベルを上げ、MPの限界値を上げる事で回復薬を使わずに魔法を使い続けるのが今回の作戦?らしい。

 

 

 

…要はゴリ押しだ。

 

 

 

「ほらほら、早く食べないと次が待ってるよ」

 

グイグイとキャベツを押し付けてくるクリスに、俺は冗談のつもりでお願いをしてみた。

 

「じゃあ、「あーん」して食べさせてくれるとうれしいな、なんて…」

 

我ながら恥ずかしい事を言ったと思い後悔した。流石に漫画やアニメの世界ならいざ知らず、突然そんな事を頼んでしてくれる訳がない。

 

しかし、クリスの反応は予想外だった。

 

「…………一回、一回だけだからね……。はい、あーん」

 

…まさか本当にしてくれるとは思わなかった。俺は差し出されたキャベツを一口食べた。うん、おいしい。みずみずしくて歯ごたえもあり、青臭さもなく今まで食べたキャベツの中で一番おいしいキャベツだ。

 

「…ほら、君の言う通りにしてあげたんだから、早く食べてよね!」

 

そう言ってキャベツを押し付けてそっぽを向いてしまう。耳が真っ赤にしてまでしてくれたのはうれいしいが、きっと今の俺の顔も彼女と同じように真っ赤になっている事だろう。こんな所を他の奴に見られたら一生弄られるネタにされる事間違いなしだ。

 

 

 

 

そんなこんなで魔力が切れそうになったらキャベツを食べる、それを繰り返していく内に数は着々と減っていった。そして、最後の一玉を洗い終わった。

 

「ふう…、何とか終わったな」

 

「正直、本当にキャベツを丸かじりするとは思ってなかったけど…無事の終わって良かったね」

 

バックからポーションを取り出すクリス、どうやら回復アイテムは持っていたようだ。

 

「ポーション持ってたのか、まあこっちはレベルも上がったし別にいいけどな。…しばらくキャベツは遠慮したいけど…」

 

「ははは、あれだけ食べればね。それじゃあ、食後の運動にもうひと稼ぎ……あれ?」

 

周りを見渡すと、先ほどまでたくさん飛んでいてキャベツの姿がほとんどいなくなっていた。

 

「もしかして、もう終わりなのか?」

 

「……ううん、違う。これは…」

 

クリスが喋るより先に、丘の向こう側から何かが近づいて来るのを感じた。これは、クリスに教えて貰った敵感知スキルによるものだった。

 

周りの冒険者も気づいたらしく、そわそわしている。そんな中、一人の冒険者が大声で叫んだ。

 

「…来た…、モンスターが攻めて来たぞーーーーー!!」

 

丘の向こうからは、複数の砂が舞い上って煙のようになっているため姿は確認できないが、確かに何かがこちらに向かって真っすぐ近づいてきている。それに気づいたギルドの職員が非難を呼びかける。

 

「冒険者の皆さん、至急街の中に避難してください。繰り返します、至急街の中に避難してください」

 

そのアナウスを聞いて、外にいた冒険者達が一斉に正門に向かって走り出した。

 

「ほら、私達も避難するよ。早く、早く!」

 

クリスに腕を引っ張られ、俺達も正門に向かう。

 

「クリス、近づいて来るモンスターはそんなにやばいのか」

 

「…うん、あれはキャベツの収穫時期に現れる〈特別指定モンスター〉」

 

街に避難しながら丘の方を見た俺はその姿に絶句する。

 

砂煙の中からその巨大なモンスターが姿を表した、その姿は……。

 

 

 

 

 




最後まで読んで頂きありがとうございます。

いつもの倍くらいになり遅くなりました。

次回もよろしくお願いします…更新は不安定ですが。
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