女神を連れて帰るだけの簡単なお仕事   作:白黒しぐま

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久しぶりの投稿です。

誤字脱字に注意して下さい。


第十五話:ゾンビメーカー

緊急クエストから後日、既に溜まり場になりつつある冒険者ギルド内で俺達は冒険者らしくクエストを受けに来ていた。

 

「カズマが、ちゃんとした冒険者みたいに見えるのです」

 

「ジャージのままじゃ、ファンタジー感ぶち壊しだものね」

 

「ファンタジー感?」

 

最近までジャージ姿でウロウロしていた和真が、やっと冒険者らしい服装になっていた。

 

今まで冒険者ではなく、ただの不審者程度にしか見えていなかったので、これでようやく冒険者らしい見た目になったのは喜ばしい事だ。

 

「初級とは言え、魔法スキルを習得したからな。盾は持たずに、魔法剣士みたいなスタイルでいこうと思う」

 

「言う事だけはいっちょまえよね」

 

「和真は魔法剣士を目指すのか」

 

和真の事だから異世界に来たなら魔法を使ってみたいだけだろうが、和真の目標が決まった事だし今後はレベル上げの日々になるだろう。

 

「海斗も服を新調したのか?」

 

「ああ、前回のクエストでボロボロになっちまったからな。俺もこれを機に新調したんだ」

 

「そのコートは、私が選んだんですよ。本当は黒のロングコートが欲しかったんですが…」

 

「丁度いいのが売ってなかったんだよな。まあ、コートまで黒くされると全身真っ黒になっちまうんだが」

 

「黒の剣士…かっこいいじゃないですか、!」

 

めぐみんのセンスは、紅魔族独特の中二病センス、日本で言えばコスプレに近い。服装に関して大してこだわりが無いとはいえ、全身真っ黒はどうかと思う。結局売ってなかったので白のロングコートを買ったが、入荷は何時かと聞いていたので後でいらないと伝えておいた。

 

「けど、剣を新しく買い替えられなかったのは痛かったな」

 

「先日、アクアと一緒にお酒を飲み過ぎたのが原因ですよ、自業自得です」

 

「…反省しています…」

 

背中に差している剣を抜くと、刀身は半分ほどで折れている。俺の記憶には無いが、前回のクエストの際折れてしまったらしい。キャベツの報酬やモンスターの討伐報酬は、人数と金額が多額め数日経たないと貰えない。今の手持ちだと剣を買い替えるだけのお金が無い。

 

服は生活に必要なため購入したが、剣まで買うと明日の食事が水になってしまう。攻撃力は半減するが、丸腰でいるよりはマシだろうと背中に背負っている。

 

「じゃ、海斗の為にも手頃なクエストを受けるとするか」

 

「確か、ジャイアント・トードが繁殖期に入っていて街の近場まで出没しているから、それを…」

 

「「カエルはやめよう(ましょう)」」

 

「…何故だ?」

 

全力で否定した二人は頭を抱え、悪夢が蘇ったかのようにうなされてる。

 

「あー…、この二人はカエルがトラウマになっているんだ。頭からパックリ食われて、全身粘液まみれにされたからな」

 

「…粘液まみれ!」

 

和真の説明にダクネスは何故か、少し頬を赤らめた。

 

「…お前、今興奮しただろ」

 

「……してない」

 

ダクネスは目を逸らし、赤い顔でもじもじしながら答えたが、凄く不安だ。

 

「仕方ない、他のクエストを探してくるからちょっと待っててくれ」

 

俺は和真達をその場に残し、掲示板に貼ってあるクエストから難易度の低いクエストを探していた。

 

「さてさて、あのパーティーで問題なくクリアできるクエストは……」

 

掲示板には様々なクエストが貼り出されているが、カエル退治より簡単なクエストなどなかなかない。

 

荷物運びや薬草採収などがあればいいがやはり見つからない。しばらく掲示板の前で悩んでいると、女性が声をかけてきた。

 

「何かクエストをお探しですか?」

 

声をかけてきたのは受付嬢のルナだった。ギルド職員と言えばこの人の名前が上るくらいアクセルの街では有名な受付嬢だ。

 

俺も含め冒険者がお世話になっているが、お休みでギルドにいない日を見た事がない。連続何日出勤なのだろうかとたびたび思うが、本人は気にしていないのだろうか。

 

「えっと、カエル退治以外の簡単なクエストを探しているんですが…」

 

「ジャイアント・トードの討伐以外ですか?カイトさんは、ソロでクエストを請ける予定ですか?」

 

「いいや、5人パーティーでその内3人が上級者なんですが…」

 

「…?、それなら少し高いレベルのクエストでも大丈夫ではないですか?」

 

俺はそっと指差すと、ルナはその先にいる和真達の方を向く。そこでは、

 

「…む、今、私の事を『グヘへ、エロい身体しやがってこのメス豚が!』と言ったか?」

 

「言ってねえ」

 

「おい、私をチラ見した意味を聞こうじゃないか」

 

「意味は無いさ。ただ、俺にロコン属性が無くて良かったと思っただけだ」

 

「紅魔族は売られた喧嘩は買う種族です。よろしい、表に出ようじゃないですか」

 

めぐみんが和真の袖をグイグイ引っ張り、外に連れ出そうとする。それを見たルナは、可哀想な人を見る目で俺を見ている。

 

「…あの、……個性的な方が多いパーティーなんですね」

 

「問題児しかいないパーティーと言ってもいいですよ。もう、慣れましたが」

 

「…苦労されているんですね」

 

「まあ、それなりに。…でも貴方もいつも大変ですね、毎日毎日ギルドの受付にいるし、休みなんて中々取れない……あれ?」

 

〈休み〉と言う単語を聞いた途端、ルナの瞳から光が消えた。

 

「…お休み…か…。………はぁ…お金を払ってもいいから休みが欲しいな……」

 

どうやら俺はルナの地雷を見事踏み抜いたようだ。

 

「(…ギルドはブラック企業だったか。異世界にもあるんだな…)」

 

「……はっ、すみません」

 

知りたくもなかった真実を知ってしまった。和真が知ったら異世界のイメージが崩れてしまうかもしれない、この事は内緒にしておこう。

 

「こほんっ、クエストの件ですがこちらなどいかがですか?」

 

気を取り直したルナから渡されたクエストの内容は〈ゾンビメーカーの討伐〉だった。説明によると、ゾンビを操る悪霊の一種で、質の良い死体に乗り移り、手下のゾンビを数体操り駆け出しの冒険者パーティーでも倒せるモンスターだと言う。

 

そこに、和真達が待ち切れなかったのか俺の所に来ていた。しかし、その中にアクアの姿は無かった。

 

「海斗、何か楽なクエスト見つけたか?」

 

「ああ、今それっぽいクエストを紹介して貰ってたところだ」

 

俺はクエストの依頼書を和真に渡すと、めぐみんとダクネスもそれを覗き込む。

 

「〈ゾンビメーカーの討伐〉ですか、悪くないですね」

 

「良いのではないか、アクアのレベル上げにもなるだろうし」

 

「アクアの?どういう事だ?」

 

「プリーストは一般的にレベル上げが難しい。なにせ攻撃魔法が無いからな。そこで、プリースト達が好んで狩るのがアンデット族だ。アンデットには神の力が逆に働く、回復魔法を受けると身体が崩れるのだ」

 

「しかしなあ、このダメ神を鍛えても…いや待てよ。このバカのレベルが上がり、少しでも知力のステータスが上ってくれれば、何よりの戦力アップだ!」

 

和真の心の声がダダ漏れだが、それが本当なら他のなによりも優先させるべきだろう。

 

「それじゃあ、これに決まりだな」

 

「異論有りません」

 

「問題はダクネスの鎧が無い事なんだが…」

 

今のダクネスはタイトな黒のスカートに黒のタンクトップ、いつも鎧は修理に出しているため身に着けていない為自慢の防御力が心配になる状態だ。

 

「うむ、私なら問題ない。伊達に防御スキルに特化している訳ではない。鎧無しでもアダマンマイマイより硬い自信がある。それに、殴られた時、鎧無しの方が気持ち良しな」

 

とんでもない事を言ったいるのに、その事をダクネスは腕を組み堂々と胸を張る。

 

「……今お前殴られると気持ち良いって言ったか」

 

「ああ、間違いなく言ったな」

 

「言ってない」

 

「言ったろ」

 

「言ってない」

 

頑なに己の過ちを認めないダクネス。

 

「なあダクネス、ちょっと良いか?」

 

「ん?なんだ」

 

ダクネスの耳のもとで魔法の言葉を言うと、耳を真っ赤にして一歩下がる。

 

「なっ!それは本当か!……だが…私は…くっ!」

 

「…何言ったんだ海斗?」

 

「別に大した事は言ったつもりはないけど…、それより、アクアにやる気が有るかが問題だぞ」

 

俺は、テーブルに伏せているアクアに視線を向ける。ここまで完全に話に参加していないが、肝心のアクアが参加しないと話にもならない。

 

「はあ……おいっ、どうするアクア。いい加減会話に参加しろよ、今お前の事を……」

 

全員がアクアのいる方を向くとそこでは、

 

「……すかー……」

 

「寝ていやがった!」

 

そこにいたのは、ヨダレを垂らしながら寝ていたアクアの姿だった。

 

「それではクエスト頑張って下さいね」

 

営業スマイルのルナがクエストの受諾する。

 

不安しかない……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

街から外れた丘の上。

 

そこには、お金の無い人や身寄りの無い人がまとめて埋葬される共同墓地がある。

 

今回受けたクエストは、共同墓地に湧く、アンデットモンスターの討伐だ。

 

既に周りは暗くなり、月明かりが周りを照らす時間になっていた。俺達が今いる場所は、墓地から少し離れた所にいるがここも薄気味悪い所だ。

 

本来なら、ここで〈ゾンビメーカー〉が湧く時間まで待ってから墓地に行く予定だったのだが…。

 

「『ターンアンデット』ッ!」

 

アクアの魔法が1体のゾンビを跡形も無く浄化する。

 

仲間が浄化されても怯まないゾンビ、真っ直ぐアクアに向かって走ってくる。

 

「アクア、いったん下がれ!『付呪・獄炎《エンチャント・ヘルブレイズ》』」

 

海斗の刃折れの刀身が黒く光り、先頭を走っているゾンビを斬りつける。動きが止まり、怯んだ隙に蹴り飛ばして後ろにいるゾンビ達に叩き付ける。

 

「めぐみん、今だ!」

 

後方で演唱を終えためぐみんに合図を送る。

 

「いきますっ!『エクスプロージョン』ッ!」

 

めぐみんの爆裂魔法が炸裂し、数体のゾンビが跡形も無く吹き飛ぶ。直撃を受けなかったゾンビは、爆風で吹き飛ばされる。

 

「そっちは任せたぞ、アクア!」

 

「任せなさい!『ターンアンデット』ッ!」

 

アクアの魔法を受けたゾンビは、光に包まれ跡形も無く消えてなくなった。

 

「これで、最後!」

 

最後のゾンビを斬り倒し、周囲を確認する。

 

「敵感知に反応なし…。やっと一息つけるな」

 

ゾンビの姿が無くなった事を確認し、剣を鞘に納める。

 

「おーい、バーベキューの準備が出来たぞ」

 

俺達が必死でゾンビを狩っていた間、1人戦闘に参加しなかった和真は夕食の準備を済ませていた。

 

本当は全員で戦うつもりだったが、現れたゾンビが全てアクア目掛けて特攻。そのため前衛のダクネスが役に立たず、和真もアクアに巻き込まれて逃げの一手だったので和真を戦線離脱させた。

 

見ている事しかできない和真は、安全な場所で夕食の準備をせっせとこなしていた。ダクネスも役に立たない為、和真の手伝いをすると思っていたが、モンスターの群れに興奮したのか1人ゾンビの群に飛び込んでいた。

 

結局アクア目掛けて走ってくるゾンビを俺達で退治する事になった。

 

戻ってきたダクネスの衣服が少し焦げていたが、本人は満足そうな笑顔で戻ってきた。

 

全員そろったので遅めの夕食を頂く事にした。今まさに網の上では美味しそうに焼かれる肉や野菜、一仕事終えた後の食事は美味い。

 

「ちょっとカズマ、その肉は私が目をつけていたヤツよ!ほら、こっちの野菜が焼けてるんだからこっち食べなさいよ!」

 

「俺、キャベツ狩り以来どうも野菜が苦手なんだよ」

 

そう言うと、和真は俺の肉に目をつけたのか箸を伸ばす。勿論あげるつもりはないのでガードする。

 

「悪いな和真、それは俺の肉だ」

 

しはらく和真と肉の争奪戦が続いたが、その間にもアクアが次々と肉を食べる為、その後は3人に増えて肉の奪い合いが続いた。

 

そんなワイワイしながらの食事を終えた和真は、マグカップにコーヒーの粉を入れ、『クリエイト・ウォーター』と『ディンダ―』でコーヒーを作って飲んでいた。

 

そんな和真を見て、めぐみんが自分のコップを差し出した。

 

「カズマ、私にもお水を下さい」

 

「おう、『クリエイト・ウォーター』」

 

「ちょっと火が弱いな…『ティンダ―』」

 

めぐみんのコップに器用に水を注いだ後、火が弱くなった薪に魔法を唱える。

 

「って、何器用に魔法を使いこなしているんですか!」

 

「え…初級魔法ってこんな使い方すんじゃないの?」

 

初級魔法を器用に使いこなす和真にめぐみんが鋭いツッコミを入れる。

 

「俺もその魔法を使えるけど、意外と重宝しそうだな」

 

「ところで聞きたいんだけど、この『クリエイト・アース』って何に使うんだ?」

 

「…えっと、その魔法で創った土は、畑などに使用すると良い作物が獲れるそうです。…それだけです」

 

その説明を聞き、隣でアクアが噴き出した。

 

「何々、カズマさん畑作るんですか!農家に転職ですか!カズマさん転職じゃないですかやだ!プークスクス!」

 

「『ウインドブレス』!」

 

「ぎゃああああああああ!目、目があーーーーーーっ!」

 

隣で爆笑するアクアの顔面に土が直撃し、目に砂埃が入ったアクアは地面を転がり回っている。

 

「よしっ、四大魔法の初級魔法は極めた!」

 

「紅魔の里でも初級魔法覚える人いませんが、便利そうです」

 

初級魔法を極めた和真が、今度は俺の元に近寄って来た。

 

「…なあ海斗、さっきの戦闘で使ってた魔法だけど、俺にも教えてくれないか?」

 

「ああ、あれか。いいぜ、ほらっ」

 

俺は背中から剣を抜き付加魔法をかけると、先程同様剣が黒く光り出す。

 

「いつの間にそんな魔法を覚えたんだ?」

 

珍しいものを見るように、ダクネスが付加魔法をかけた剣をまじまじと見ている。

 

「今日冒険者カードを見たら、いつの間にか覚えてたんだ。…しかし、付加魔法って意外とパッとしないな。もっとこう派手なものかと思ってたけど」

 

「あくまで武器や防具に属性を追加する魔法ですから。魔力やスキルなどを強化すればそれなりにかっこいい魔法になりますが、それにスキルポイントを費やすくらいなら爆裂魔法をお勧めします」

 

相変わらず爆裂魔法を勧めてくるめぐみんをよそに、未だ冒険者カードをいじっている和真。いくらなんでも時間がかかりすぎじゃないだろうか?

 

「どうした和真、まだ習得できないのか?」

 

「…いや、なんか変なんだ」

 

一体何が変なのだろうか?俺は和真の持っている冒険者カードを見せて貰ったが確かにおかし事になっていた。

 

和真の冒険者カードには確かに『付呪・獄炎』の項目があったが、必要なスキルポイントが表示されない。しかし、習得されている様子もない。文字に触れると赤く点滅するばかりで変化が無い。

 

そこにダクネスやめぐみんも覗き込んできた。

 

「確かに変だな、〈冒険者〉の和真なら覚えられないはずはないのだが…」

 

「…もしかするとカズマには適性が無いのかもしれません。魔法には人それぞれに適性がありますから、覚えられない人は一生覚えられない場合もありますし…」

 

「…マジか…」

 

肩を深く落とす和真は、残念そうに項目覧から付加魔法を消す。

 

それにしても本当に和真に適性が無いのか、それともこの魔法自体に問題があったのか…。

 

これ以上考えても答えが出る訳では無いが、考えれば考える程気になってくる。しかしそれをかき消すように冷たい風が肌をなでるように通り過ぎる。

 

「…っ、冷えてきたな」

 

腕を組んで、身体を少し震わせるダクネス。

 

「そろそろ、ゾンビメーカーが現れる時間だな」

 

「だな。おいっアクア、いつまでも転がってないでとっとと行くぞ」

 

「誰のせいでこうなったと思ってんのよーーー!」

 

その後、和真とアクアが取っ組み合いになったがいつもの事なので、その間にバーベキューを片付ける事にした。

 

「女神の力思いしれ知りなさい!『ゴットブロー』っ!」

 

「当たるかよ!『クリエイト・ウォーター』」

 

「!!ちょっ、冷たい!何すんのよクソニート!」

 

「ニートじゃねーし!」

 

「…もう気がすんだか?」

 

いがみ合う2人、団結する気など欠片もないパーティーは、真夜中の墓地へと向かうのだった。

 

 

 




最後までありがとうございました。

一ヵ月以上投稿が止まってしまい、すみませんでした。

いろいろあって、途中まで書いてしばらく書けずにいて、いざ書こうとしたら書けなくなっていました。

スランプって怖いですね・・・。

今後の投稿も不安定ですが、長い目でお願いします。
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