女神を連れて帰るだけの簡単なお仕事   作:白黒しぐま

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前回までのあらすじ

アクアのレベル上げの為、ゾンビメーカーの討伐に向かった和真達一行。途中大量のゾンビに襲われるが、何とか撃退。ついに墓地に足を踏み入れた一行を待ち受けていモノとは…。



第十六話:リッチー

真夜中の共同墓地は、人の作り出した光も暖かさもない冷たく暗い世界。

 

何処からともなく吹いてくる冷たい風と、墓地を照らす月明かりがより一層雰囲気を醸し出してる。

 

「ねえカズマ、今回の討伐クエストってゾンビメーカーよね。私、そんな小物じゃなくて大物のアンデットが出そうな予感がするんですけど」

 

「おい、そう言う事言うなよ。フラグになったらどうすんだ!」

 

「なによ!女神の感を信じないの?」

 

「お前の何を信じろってんだ!」

 

「…そろそろゾンビ共が現れてもいい筈なのだが?」

 

ダクネスの言うとおり、今の時刻はゾンビ達の活動時間のはずだった。しかし墓地に入ってしばらく経つが、あれから1体もゾンビとエンカウントしていない。ここに来る前にあれほどのゾンビと戦闘があったにも関わらず、墓地にはゾンビメーカーどころかゾンビの姿1つ無い。

 

周りに警戒しながら墓地の奥まで進軍すると、そこで敵感知に反応があった。…が、当然和真の足が止まる。

 

「…なあ、ゾンビメーカーって取り巻きのゾンビはせいぜい2、3体って聞いたんだが…多くね?」

 

俺の敵感知に引っかかったモンスターを数えてみたが、確かに2,3体ではない。それどころか15から20体はいて、今も少しずつ増えているようだ。

 

更にその中で飛びぬけて強い気配が1体、明らかにゾンビやゾンビメーカーの類ではない。

 

「さてさて、どーする和真、戦うか?それとも…」

 

「よしっ、帰ろう!」

 

計画外のイレギュラーが発生したら即撤退、和真が180度反転した瞬間墓地の中央で青白い光が走った。

 

遠くに見えるその青い光は、大きな円形の魔法陣でその魔法陣の隣には黒いローブの人影が見える。

 

「…あれ?ゾンビメーカー…ではない…気がするのですが…」

 

「どうする、突っ込むか?ゾンビメーカーじゃなかったとしても、こんな時間に墓場にいる以上、アンデットに違いないだろう。なら、アークプリーストのアクアがいれば問題ない」

 

ダクネスが今にも1人で突っ走っていくのを押さえていると、横にいたアクアのワラワラと震えている、どうも様子がおかしい。

 

「あ…あ……、あ――――――――――――っ‼」

 

突然叫び出すとそのまま走り出し、ローブの人影に向かって飛び掛かろうとする。

 

「えっ?ちょっ、アクア…待っ」

 

和真の制止を聞かず、まるで親の仇でも見つけたかのようにローブの人物に殴りかかる。

 

「…ひっ‼」

 

寸前の所でかわされるが、ローブの人物はその場に倒れてしまう。

 

「リッチーがノコノコこんなとこに現れるとは不届きなっ!成敗してやるっ!」

 

「きゃ―――――っ‼誰です貴方は――――――っ⁉」

 

アクアは胸ぐらを摑み再び襲いかかる。

 

「え?」

 

「リッチー?」

 

ぽかんとする2人を他所に、俺と和真はリッチーと言う単語に冷や汗を流していた。

 

 

 

<リッチー>

 

 

 

それはヴァンパイアに並ぶアンデットの最高峰。簡単に言えばラスボス級の超大物のモンスターに分類される。

 

通常の物理攻撃が全く効かず、魔法にも高い魔力耐性があり、更にあらゆる状態異常と魔力・生命力を吸収する伝説級のアンデットモンスターである。

 

レベル一桁クラスの駆け出し冒険者がノコノコ喧嘩を売れば、瞬く間に周りのゾンビの仲間入りになる位の危険な相手のはずなのだが…。

 

「やっ、やめてえええええ!誰なの⁉いきなり現れて、なぜ私の魔法陣を壊そうとするの⁉やめて!やめてください!」

 

「アンデット風情が怪しげな魔法陣を作って何する気だったのよ!なによ、こんな物!こんな物‼」

 

超大物モンスターが、ぐりぐりと魔法陣を踏みにじるアクアの腰に、泣きながらしがみつき、魔法陣が壊されるのをくい止めていた。

 

「…この泣いてるのがリッチー?」

 

和真が首を傾げながら周りを見渡すと、集まっていたゾンビ達が2人のやり取りに呻きながら戸惑っている。

 

アクアはリッチーだと言い張っているが、どう見てもチンピラに因縁をつけられてイジメられっ子にしか見えない。

 

「この魔法陣は、未だ成仏出来ない迷える魂達を、天に還してあげるためのものです!ほら、たくさんの魂達が魔法陣から空に昇って行くでしょう⁉」

 

リッチーの言う通り、どこから集まってきたのか、人魂の様な物がふよふよと魔法陣に入ると、そのまま魔法陣の青い光と共に、天へと吸い込まれていく。

 

「そんな善行、リッチーのくせに生意気よ!迷える魂なら私がまとめて浄化してあげるわっ‼」

 

「ええっ⁉ちょ、やめっ⁉」

 

アクアの宣言に、慌てるリッチー。

 

「『ターンアンデット』‼」

 

墓場全体が、アクアを中心に白い光に包まれた。

 

白い光に触れたゾンビ達は掻き消えるように消滅する。リッチーの作った魔法陣の上に集まっていた人魂も、アクアの放った光を浴びていなくなった。

 

その光はもちろんリッチーにも及び……。

 

「きゃ―――!か、身体が消えるっ⁉私の体が無くなっちゃう‼成仏しちゃう――――っ‼」

 

「あははははははは、愚かなるリッチーよ!自然の摂理に反する存在、神の意に背くアンデットよ!さあ、私の力で欠片も残さず消滅するが…」

 

「「おい、やめてやれ(やめろ)」」

 

俺と和真の剣がアクアの頭部を直撃する。勿論鞘を付けているので切れてはいないが、随分と軽い音が墓地に鳴り響いた。

 

「ッ⁉い、痛いじゃないの!あんた達何してくれてんのよいきなり!」

 

後頭部を押さえながら涙目で和真に食ってかかる。手加減はしたのでたんこぶは出来ていなし痣も無いはずだ。

 

俺は襲いかかるアクアを和真に任せ、震えながらうずくまるリッチーに近づく。

 

「さてさて、大丈夫……ん?あれ…ウィズ?」

 

見ると、顔をすっぽり隠していたフードが取れていて、今は顔がはっきり見る事が出来る。

 

そこにいるのは間違いなく魔道具屋の店主ウィズの姿だった。

 

ただし、足元が半分透明になっていて、軽く消えかかっている状態だが。

 

「だ、だ、だ、大丈夫です…。あ、危ない所を助けて頂き、ありがとうございました…っ!…あれ?あなたは先日お店に来てくれたお客様ですね。お名前は確か…」

 

「海斗だ。ところでウィズ、どうしてこんな所にいたんだ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

ウィズの身体が少し消えかかっていたが、話す分には問題ないらしいので彼女から話を聞くことにした。…が、未だアクアが唸りながらウィズに襲い掛かろうと暴れている。

 

俺とめぐみんは知っているが、他のメンバーは初対面のため自己紹介からお願いした。

 

「えっと、私リッチーのウィズと申します。ノーライフキングなんてやってます」

 

「えーとウィズ、あんた墓場で何やってんだ?」

 

「カズマっ!そんなのと喋ったらアンデットがうつるわよっ‼ちょっとカズマ、そいつにターンアンデットをかけさせなさい!」

 

「お前はだまってろ!話が進まねーだろうが!」

 

今だアクアは和真に抑えられているが、隙あらばウィズに魔法をかけようとしているため、ウィズが俺の背後に隠れ怯えている。

 

俺の後ろで怯えている姿は、伝説のアンデットの威厳や風格などまるで感じない。

 

「そ、その…。この共同墓地の魂はお金が無いためロクに葬式すらしてもらえず、天に還る事なく毎晩この墓地を彷徨ってまして…。それで、一応はアンデットの王な私としては、定期的にここを訪れ、天に帰りたがっている子たちを送ってあげているんです」

 

「それは立派な事ですが、そういった事は街のプリーストとかに任せておけばいいんじゃないですか?」

 

めぐみんの考えに俺も同意した。

 

アクセルの街は確かに初心者冒険者や下級職業が多いが決してプリーストのような聖職者がいない訳ではない。

 

少なくともエリス教徒の教会があの街には立っているので、あそこにいるプリーストにでも頼めばわざわざウィズがやらなくてもいいのではないだろうか?

 

「そ、その……。この街のプリーストさん達は、拝金主義…いえその、お金が無い人達は後回し……と言いますか、その……、あの……」

 

「つまり、この街のプリーストは金儲け優先の奴がほとんどで、こんな金も無い連中が埋葬されている墓地なんて、供養どころか寄りつきもしないって事か」

 

「ああ……なるほど……」

 

その場にいる全員の視線がアクアに集まる。流石のアクアもばつが悪そうに目を逸らす。

 

「それならしょうがない。でも、ゾンビを呼び起こすのはどうにかならないか?俺達がここに来たのって、ゾンビメーカーを討伐してくれってクエストを受けたからからなんだが」

 

和真の言葉にウィズが困った表情を浮かべる。

 

「あ……そうでしたか……。その、呼び起こしている訳じゃなく、私がここに来ると、まだ形が残っている死体は私の魔力に反応して勝手に目覚めちゃうんです。…その、私としてはこの墓地に埋葬される人達が、迷わず天に還ってくれれば、ここに来る理由も無くなるんですが…。……えっと、どうしましょうか?」

 

「うーん、そうだな…。……あっ!それなら……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

墓地からの帰り道。

 

「納得いかないわ!」

 

「しょうがないだろ。つか、あんな良い人討伐する気にはなれないだろに」

 

「そんなの知ったことじゃないわよ!」

 

「お前、それでも女神か!」

 

あれからずっとアクアは怒っている。時刻は既に夜明けの時間、空がうっすらと明るくなっていた。

 

俺達は、あのリッチーを見逃す事に決めた。

 

そして、これからは毎日暇を持て余しているアクアが、定期的にあの墓地に浄化しに行く事で折り合いがついた。

 

「これからは、お前が定期的に浄化しに行くんだぞ!忘れんなよ?」

 

「えーー、睡眠時間が減っちゃう…」

 

「いっつも十分すぎるくらい寝てるだろ―――!」

 

このやり取りも、いったい何回目だろうか…。街に着いてからも2人の討論は続いていた。

 

「それにしても、あのマジックアイテムのお店を経営しているとは驚きました」

 

「しかし、リッチーが普通に生活しているとか、この街の警備はどうなってるんだ」

 

「全くだ…リッチーって、ダンジョンの奥深くにいるイメージだったんだけどな」

 

ウィズ曰く、生活に不便なダンジョンにわざわざ住む必要なんてありませんよと言われた。

 

確かに不便なのは分かるし、リッチーだって元は人間なのだから言ってる意味は分かるがそれで本当にいいのだろうか?

 

「そういえば、ゾンビメーカー討伐のクエストはどうなるのだ?」

 

「「「あっ」」」

 

ダクネスの問いに、3人が今さらのように気づく。

 

ゾンビメーカーを討伐できなかったので、当然クエストは失敗となる。

 

そうなると、誰かが報告に行かなければいけなくなる。こういった場合は、リーダーが普通は行くものだが。

 

「…とりあえず、ギルドには報告をしないとな…。おい、アクア。お前俺の代わりに代わりに報告に行ってこい」

 

「い・や・よ!私疲れてるの!今日はいっぱい頑張ったから、これからゆっくり寝るの!あんたが行きなさいよ」

 

和真も含め、ここにいる全員が徹夜で討伐に出かけたため、眠いのは同じだった。めぐみんに至っては、魔力を使い切っているためダクネスの背負われながらウトウトしている。

 

「…仕方ない、俺が代わりに行ってやるよ。ダクネス、悪いがめぐみんを馬小屋まで連れてってくれないか」

 

「構わないが、本当にいいのか?」

 

「ああ、子どもをこれ以上連れ回すのも可哀そうだしな。ここは大人の俺に任せて……ん?何だお前ら変な顔して?」

 

「「「「………」」」」

 

先ほどまで自分が行かなくて良くなった事を喜んでいた和真も含め、全員が目を丸くしてこっちを見ている。何か変な事を言っただろうか。

 

「…あー、海斗。えっと、お前って俺より年下…」

 

「ダメよ、カズマさん。せっかく代わってくれたんだし、いいじゃない。それにカイトだって、かっこつけたい年頃なのよ!ここは黙って見守ってあげるのが仲間ってものよ」

 

「…その、カイト…。…頑張って下さいね」

 

「…カイト、何か困った事があったら遠慮なく言ってくれ」

 

4人とも温かい目をしていた。何故か哀れみにも同情にもとれる言葉をそれぞれが言うと、それぞれの家に戻っていった。

 

1人残った俺は、何が問題だったか黙想してみた。

 

そして、1つの結論が出た。そういえば、俺の本当の正体について話してなかったなーと。

 

アクアなら気付いてるかと思ったが、全く気付いていないようだ。どうやら、あの天使からは何も聞いていないようだ。

 

「うーん、どうしよっかな…」

 

今さら話すの面倒だし、きっとアクアのように流されるのが落ちだろう。

 

別に問題があるわけでもないし、このまま黙っておくことにしよう。いつか機会があれば話せばいいのだから。

 

俺は皆とは反対方向にある冒険者ギルドに向かった。ゾンビメーカー討伐の失敗の報告と、新しいクエストを探しに。

 

そういえば、ジャイアント・トードの討伐がまだ残っていたはずだ。あの時、ダクネスに今度カエルの中に投げ込んでやると言っちゃったし、これにしよう。

 

ギルドの中に入ると、既に先客がした。

 

 

 

 

受付嬢ルナの朝は早い。

 

 

 

 

 

 

 

 




更新が遅くなり申し訳ありませんでした。
私用により色々あって、なかなか書く時間がありませんでした。

まだごたごたもあり、なかなか思うように書けませんが、これからも続けていきたいと考えているのでよろしくお願いします。
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