いつも通り基本誤字脱字等はあると思って読んで下さい。
翌日の、冒険者ギルドにて。
「………来ないわね」
アクアが寂しそうに呟いた。
求人の張り紙を出してから既に半日以上がたったが、未来の英雄候補様は現れない。
誰も来ない理由は分かっている。
「…なあ、ハードル下げようぜ。さすがに上級者のみ募集しますってのは厳しいだろ」
「うう…。だってだって…」
「このままじゃ一人も来ないぞ?大体、お前は上級職かも知れんが俺と海斗は最弱職なんだ。周りがいきなりエリートばかりじゃ俺達の肩身が狭くなる。ちょっとハードル下げようぜ…」
和真の言う通り、上級職など早々来ないどころか、こんな駆け出しパーティーに来る方が珍しいのだ。
「おーい和真、誰か来たかって…やっぱり来てないよな」
二人が待っている間俺は、討伐の準備を整えて来た。流石に金が無いため、和真と同じショートソードだけ買ってきた。本当は武具が欲しいのだが現実は厳しい。あとスキルも少々…
俺は用事を終えて二人に合流したが、流石に半日以上誰も来ないとは予想外だった。
「あれからずっと待っているが誰も来ない…今アクアに相談していたところだ。」
「流石に欲張りすぎたな、俺たちみたいな初心者を引っ張ってくれる奴が欲しかったが…このままじゃクエストも出来ないし仕方ないな」
俺は求人の張り紙を剥がしに行こうとした時だった。
「募集の張り紙、見させて貰いました!」
俺達に声をかけてきたのは、黒マントに黒いローブ、黒いブーツに杖を持ち、トンガリ帽子まで被った、古典的な魔法使いの少女だった。
少女は突然バサッとマントを翻し、
「我が名はめぐみん!アークウィザードを生業とし、最強の攻撃魔法、爆裂魔法を操る者…!」
「………冷やかしに来たのか?」
「ち、ちがわい!」
和真は思わず突っ込みを入れていた。
この世界にも中二病はいるようだ、俺は意外と世界とは狭いと感じてしまった…
「…その赤い瞳。もしかして、あなた紅魔族?」
アクアの問いにその子はこくりと頷いた。
「いかにも!我は紅魔族随一の魔法の使い手、めぐみん!我が必殺の魔法は山をも崩し、岩をも砕く…」
最後まで喋り終わる前に倒れる少女に、俺は駆け寄ったが、少女からキューと切ない音が鳴った。
「図々しいお願いなのですが、もう三日も何も食べてないのです。できれば何か食べさせては頂けませんか…」
少女の腹の辺りから再び音が鳴った。三日も食べていないのは本当らしい…
「和真、ちょっとこの子の事任せていいか?」
「ああ、せっかく来てくれた英雄候補だからな。飯を奢るくらい構わないだろ」
「助かるよ。じゃあちょっと行ってくる」
俺は急いでカウンターに行き料理を注文した。
厨房から「直ぐに作ってやるから待ってろ」と言ってくれたのでカウンター近くで待機する事にした。
やる事のない俺は、その後和真達のやり取りを遠目で見ていた。
そこでは何故か和真が眼帯を引っ張ったり、少女が再びマントを翻し何か叫びながらポーズを決めていたりと何やら盛り上がっているようにも見えるが、周りから見たら痛々しい光景だ。
現に周りにいるウェイトレスさんは白い目で見ているが、中二病の人間は皆あれくらい普通にやっている事を知ってい俺は動じたりはしない。
中学時代、俺の友人にも中二病の奴がいた。
あいつも日常生活でめぐみんと同じような喋り方のせいで、常に周りを困らせていた。
特に大変だったのが授業中だった。あの喋り方のせいで、教師がいつも頭を悩ませていた。俺は何を言っているか何となく分かる為、教師に伝えたところ「波風、あいつなんて言いてるか今後も訳してくれ」っと俺に丸投げされた。
そのせいで周りから『翻訳係』とか『中二病2号』などクラスの奴らから呼ばれていたが、あいつと一緒にいた時間はとても楽しかった。
俺にとってあいつは数少ない親友の一人だったが、どことなく似ているめぐみんを見るまで忘れているとは、俺も薄情な奴だなっと心の中で苦笑した…
そんな事を思い出していたら料理が出来たので、俺は三人の元に戻った。
どうやらパーティーに入ってくれるらしい。めぐみんの力がどれ程のものか知らないが、これで十分な戦力は整った。
四人中二人が上級職で、更には最上級クラスの魔法が使えるのだから文句など出てこない。
これならカエルの一匹や二匹問題無く討伐出来るだろうと思った。
だが、何故この子程の魔法使いが俺達みたいな駆け出しパーティーに入ってくれたのだろうか?
疑問は残るが、せっかく入ってくれたのに気分を害する必要は無いため聞かない事にした。
「爆裂魔法は最強魔法。その分、魔法を使うのに準備時間が結構かかります。準備が調うまで、あのカエルの足止めをお願いします」
俺達は満腹になっためぐみんを連れ、討伐クエストに挑んでいた。
平原の、遠く離れた場所に一匹のカエルがいたが、こちらに気付いて向かって来ていた。
だが、更に逆方向からも別のカエルがこちらに向かう姿が見える。
「遠い方のカエルを標的にしてくれ。近い方は…。」
「俺と和真で足止めしよう。アクアには俺達に支援魔法とめぐみんのサポートを頼む」
順当に考えてこれが適任だろう、回復役のアクアが前に出る必要などない。
「そうだな、おいアクア。お前、一応は元なんたらなんだろ?たまには元なんたらの実力を見せてみろ!」
「元って何?ちゃんと現在進行形で女神よ私は!」
「…女神?」
不思議の思ったのか、めぐみんが問いかけてきたが、
「…を、自称している可哀想な子だよ。たまにこういった事を口走ることがあるんだけど、できるだけそっとしておいてやって欲しい」
和真の言葉に、同情の目でアクアを見るめぐみん。
涙目になったアクアが、拳を握ってヤケクソ気味に、近い方のカエルへと駆け出した。
「何よ、打撃が効き辛いカエルだけど、今度こそ女神の力を見せてやるわよ!見てなさいよカズマ!」
そう叫んで、突撃するアクアだが呆気無くカエルに捕食され、やがて動かなくなり、そのまま一匹のカエルを足止めする。
「アクアーーーーーーーーーーーー!」
何やってんだあの女!回復役が真っ先にやられるとか、もう駄目だろ。
「流石女神、身を挺しての時間稼ぎだ…」
いやいや和真さん、そこおかしいからから、間違ってますから!
俺が和真にツッコミを入れようとした瞬間、めぐみんの周囲の空気がビリビリと震えだした。
「見ていてください。これが、人類が行える中で最も威力のある攻撃手段。…これこそが、究極の攻撃魔法です」
めぐみんの杖の先に光が灯った。
膨大な光を凝縮した様な、とても眩しい小さな光。
めぐみんが、紅い瞳を鮮やかに輝かせ、呪文を唱えた。
「『エクスプロージョン』ッ!」
めぐみんの杖の先から放たれた光は、こちらに接近してくるカエルに吸い込まれる様に突き刺さる。
その直後、目も眩む凶悪な光、そして周りの空気を震わせる轟音と共に、カエルは消し飛んだ。
凄まじい爆風が俺達に襲い掛かり、俺はそこから少し飛ばされてしまった。
爆煙が晴れると、カエルのいた場所には二十メートル以上のクレーターができており、その爆発の威力を物語っていた。
「…すげー。これが魔法か…」
和真がめぐみんの魔法の威力に感動していると、魔法の音と爆音で目覚めでもしたのか、一匹のカエルが地中からのそりと這い出て来た。
カエルはめぐみんの近くに這い出ようとしているため、一度大勢を整える必要があった。
「めぐみん!一旦離れて、距離を取ってから攻撃を…」
和真はそこまで言いかけたが、めぐみんの方を向くと同時に固まった。俺もめぐみんの方を向くとそこにはめぐみんが倒れていた。
「ふ…。我が奥義である爆裂魔法は、その絶大な威力ゆえ、消費魔力もまた絶大。…要約すると、限界を超える魔力を使ったので身動き一つ取れません。あっ、近くからカエルが湧き出すとか予想外です。…やばいです。食われます。ちょ、助け…ひあっ…!?」
めぐみんもアクアと同じようにカエルに食われてしまい、動かなくなった。
俺はめぐみんを救出するため駆け出そうとしたが、不意に地面が盛り上がった。
俺はそこから一旦離れると、目の前にカエルが這い出て来た。面倒な状態になった、このままではめぐみんと和真の元に行けない…そう思った時だった、後ろからカエルの鳴き声が聞こえたのだ。俺はそっと後ろを向きいた。
「…最悪だ…」
俺の後ろには二匹のカエルが這い出ていた。前に一匹、後ろに二匹、カエルは俺を食べようと距離を詰めて来る。
腰に刺してある剣をそっと抜き剣を構えながら思った、きっと俺も食われる…
俺は覚悟を決めて、目の前と後ろから迫るカエルに突撃した。
その後の事は、とても戦いと呼べるものではなかった。当然のように俺もカエルに食われたが、二人と違い俺には剣がある。俺は食われながらカエルの体内を何度も切りつけ、倒れて動かなくなったらカエルの外に自力で這い出る。それを合計三回繰り返してカエルを倒していった。
戦いがは終わった時には、全身ヌルヌル状態だが命があるだけ良かった…
俺が戻った頃にはアクアとめぐみんが身を挺して動きを封じていたカエルは、二匹とも和真が止めを刺していた。
和真が「ごめん」と謝って来たが、あの時はあれが最善だと諭した。むしろ俺は、二人を助けてくれてありがとうと言った。
こうして俺の初の討伐クエストは完了した。
俺達はアクセルの街に向かって帰還することにした、ヌルヌルになった体を一刻も早く洗い流すために…
最後まで読んで頂きありがとうございます。
書いてあったストックを使い切りました…もう駄目かもしれない。
次回更新は遅くなると思いますがゆっくり待って頂けると助かります。