「オイ貴様、いい加減起きろ!このワシをこれ以上待たせるとは無礼だぞ!」
突然、何処からか俺を起こそうとする怒鳴り声が眠りを妨げた。気持ちよく眠っていたのにオッサンの声で起こされるとか、最悪の目覚めだ。
俺は開けたくもない目を渋々開けたがそこは見覚えのない場所だった。
たしかに俺は馬小屋で寝たはずなのに、何故か真っ暗い空間に立っている。俺の中に複数の疑問が浮かんだが、そんな事よりも俺の眠りを妨げた声の主に心当たりがあった。
「おいっおまえ、まさかあの時の豚声天使か!」
「誰が豚声天使だ!天罰を下すぞ人間!ワシは天使長、貴様をこの世界に呼んだ偉い天使様だ。大体貴様はワシをいつまで待たせ…」
このグダグダ喋っている感じは間違いなくあの時の天使だ。姿が見えないが、俺をこの世界に引きずり込んだ奴で間違いない。
俺は声の主を探そうと周りを見渡したが、どこを見ても真っ暗で何も見えず人の気配すら感じられなかった。
「探しても無駄だ、此処は貴様の夢の中。いくら捜そうと見つけることはできんよ」
どうりで見つからない訳だ、しかしなぜここに呼び出したか心当たりしかない俺は、この天使に呼んだ理由を尋ねた。するとため息の混じった声でどこからか答えが帰って来た。
「貴様を呼んだのは他でも無い、あれから一週間経つが何故魔王が討伐されておらんのだ!遊んでないで、とっとと倒して来い人間」
いきなり無茶な事を言い出した、一体どんな頭しているんだ。この世界に送り込んで職業まで設定した本人が知らないはずがない最弱のステイタスの最弱職に何を期待しているのだろう…こっちとしては受け取り損ねた特典を渡しに来たのと思ったのだが違うようだ。
「なあ天使長さんよ、俺の特典はいつ貰えるんだ?」
聖剣や魔剣、特別な力や和真のように女神も連れてきていないので俺の特典はまだ貰っていない。本来この世界に来る時に貰えるはずだったのだから、今からでも遅くはないはずだ。
「何を言っておるのだ貴様、既に貴様にはあれを飲ませたはずだ。ワシが与えた力があれば簡単に国の一つや二つ、軽く滅せる特別な力をな!」
何それ怖い、一体何をしたんだこの天使は…。だが俺はこの世界に来る前に何か受け取った記憶はない、あるのは手紙と冒険者カードくらいだ。後はあの女天使に渡された謎のビン…
「おい、まさかあの時飲まされた飲み物か?一体何を飲ませやがった!」
飲んだ後の記憶が無いので忘れていたが、あの時飲んだビンが特典の何かだろう。
「何だ、貴様説明を聞いて無いのか?まあいい、貴様に飲ませたのはワシが研究していた〈魔神族の血〉だ。貴様にはワシの偉大な研究の被験体に…」
「へー、魔神族の…はああああああああああああああああああああああああああああああっ!」
誰も居ない空間に俺の叫び声が響き渡った。
「おいっ、何変な物を飲ませたんだ、俺本当に生きてるの?実は死んでんじゃね?まさか、ツノとか肌の色とか変色するとか起きて無いだろうな…」
魔神というものがどのような存在かは知らないが、名前からしてとてもやばい存在なのは分かる。俺は改めて自分の体を確認してみるが、体が縮んでいる以外は変化はなかった、まあ縮んでいるだけで十分異常なのだがまあ今はどうでもいいだろう。
「うるさい奴だ、魔神の血は無事適合しておるようだし、まあ問題ないだろう。しかし殆どのやつが適合せす破裂するか、適合しても自我を保てず暴走しておったからな。貴様は初の成功例だ、せいぜいワシの為に役に立って貰わんとな」
…どうやら俺は恐ろしい実験に巻き込まれたようだ、奴の言葉が正しければ無事適合したのだろう。
「おい、いろいろと聞きた事があるが〈魔神族の血〉って何だ?明らかにヤバイもんだろ、それ!」
「もちろんコレは封印指定された禁忌の遺物。しかも誰もが魔神の血を取り込める訳がない危険な代物だ。普通の人間なら飲んだ瞬間弾け飛んで終わりだ。過去に何度か試したが貴様が初の適合者だ、光栄に思え人間」
つまり過去に何人か人体実験をしたって事だ、これじゃあ天使なのか悪魔なのか分からないな…しかしこんな事 本当に許される事なのか?俺の疑問に呆れたようにこの天使は答えた。
「そんな訳無かろう、貴様は知らんかも知れんが我々天界の者にとって血は神聖なモノ。例えどんな形でも血を取り込むような行為は大罪だ。もしワシのやっている事がバレたら間違いなく追放か死刑は確定じゃな…」
「じゃあ、何でそこまでしてこんな事したんだよ。俺が喋れば全て終わりじゃん」
そう、俺が喋ればこのクソ天使長をどうとでも出来るという事だ。まあ、喋れればの話だが…
「その通り!貴様には裏切らないよう複数の呪いがかかっておる。いくら喋ろうとしても出来んよ」
そんな事だと思ったよ…てか複数ってあと何の呪いがあるんだよ。どんだけやましい事してんだよこの天使は。
「今の天界は甘いのだ。適当に異世界のやつを送っては半端なモノを持たせてどうにかしてもらおうなど、生温いのだ。わざわざ勇者を送りつけなくてもワシのように強大な力を持った者を送り付ければ良いのだ。所詮人間なんぞ使い捨ての駒、使い終わった駒など容赦無く切り捨てれば良いだけなのだからな!グハハハハ…」
相当なクズだな、つまり俺も魔王 討伐が終われば消されるって訳だ。しかし既に呪いがかかっているとは…まあ解呪方法がない訳ないだろうし何とかなるだろう。俺はしばらく考えた後今後の事を考えたが、やはりこの力について知っておく必要がある。
「なあ、この力ってどうやって使えばいいんだ。それが分からないといろいろ困るのだが…」
そう困るのだ、間違って使ったら暴走とか笑い話にもならない。しかもこの天使との会話ができる機会など今後あるかも分からないな現状、一刻も早く知っておきたい内容だ。
「何を焦っておるのだ貴様。まあ良い、貴様に飲ませた赤いビンのには赤い魔神の血が入っていたはずだ。基本は魔力上昇と…」
赤いビン?赤い魔神?この天使が言っている内容がイマイチ理解できないが、俺は飲んだものが違うことを指摘した。
「おいっ、俺が飲んだのは赤いビンじゃないぞ」
「…は?何を言っとるんだ貴様…まさか灰色のビンを飲んだのか、そうなのか!」
突然息を荒くして何を言っているんだ。あの時複数のビンを渡されてはいないはずだが、もしかして他のビンはまともな中身だったり…
「灰色のビンには灰色の魔神の血が入っていたが、アレは赤い魔神の上位種のせいか取り込んだのは者は全員器が持たず、研究が進んでいなかったモノだが…貴様何の色のビンを飲んだ、ええい早く答えろ!」
しませんでした!もっとタチの悪いモノでした。なんか正直に話すのが怖いんですけど…
「俺が飲んだのは、黒いビンだ」
「…」
んっ?俺は真面に答えた筈なのに、何故こんな反応が戻ってくるんだ。もしかして説明が足りなかったのかな?俺は心配になり更に詳しく説明することにした。
「だから、黒色だよ。正確には黒だけど茶色が混ざった様な、見ていると気分が悪くなりそうな色だった。あとヤバそうなマークがついて気がする」
俺が指でそのマークを描いてみせると、しばらく沈黙した空気が漂った。しばらくして天使は俺に向かって荒々しく答えた。
「…用事が出来た、貴様、早く魔王を討伐しておけ。いいな、分かったな、とっとと起きて魔王を倒してこい人間!」
天使の声が聞こえなくなると同時に視界が真っ暗に染まり、突然眠気に襲われた。結局使い方も分からないまま話を中断されてしまった。この特典なのか呪いなのか分からないこの力をどうしたらいいのか正直検討も付かない。
さてさて、どうしたもんか。
最後まで読んで頂きありがとうございます。
書いてからしばらく内容の修正変更をしていたら遅くなりました。
オリジナルで話を作るため、原作に沿って内容を考えて行く事になるのはとても大変ですね。
今後は小説の文章がだいぶ変になりそうです…