女神を連れて帰るだけの簡単なお仕事   作:白黒しぐま

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誤字脱字に気を付けてください。




第九話:クリス

「なあ。聞きたいんだがスキルの習得ってどうやるんだ?」

 

遅めの昼食をとっていた俺達に、昼まで寝ていたであろう和真が唐突に聞いて来た。

 

俺の隣では、一心不乱に定食を喰らい続けるめぐみんと、店員を捕まえてはおかわりを注文しているアクアが昼食をバクバク食べている。

和真の問いかけなど聞いていなかった二人は、机の上に並んでいる料理から顔を上げない。

 

「俺達冒険者は、誰かにスキルを教えて貰えば基本は何でも習得できるぞ。実は俺も和真が来る前にいくつかスキルを教えて貰ってな…。和真も一緒に来てれば習得できたのにな」

 

「…そうだったのか……ん?なあ、もしかして俺もめぐみんに教えてもらえば、爆裂魔法が使えるようになるってことか?」

 

「その通りです!」

 

和真の何気ない一言に、突然食いつくめぐみん。

 

「その通りですよカズマ、爆裂魔法を覚えたいならいくらでも教えてあげましょう!爆裂魔法を覚えたいならいくらでも教えてあげましょう。というか、それ以外に覚える価値のあるスキルなんてありますか?いいえ、ありませんとも!さあ、私と一緒に爆裂道を歩もうじゃないですか」

 

「ちょ、落ち、落ち着けロリっ子。つーか、今3ポイントしかないんだが…」

 

「……ロリっ子……」

 

和真の一言にショックをうけためぐみん。

 

「ふ…、この我がロリっ子……」

 

先ほどの勢いは何処に行ったのか…、しょんぼりと項垂れながら再び定食をモソモソ食べだした。

 

「…えーと、なあアクア…。ん?なあ海斗、あいつはどこ行った?」

 

「アクアか?あいつならあそこだ」

 

俺は2階を指差した。そこでは先ほどまで食事に没頭していたはずのアクアが、宴会芸スキルを披露している姿があった。周りの冒険者から歓声を浴び、宴会芸を披露しているアクアはとても活き活きしている。

 

「…何やってんだ、あの駄女神は」

 

呆れた顔でアクアを見る和真、正直アクアはこれで生計を立てた方がいいのではないかと思えてしまう。

 

「っで、和真。結局スキルはどうするんだ?3ポイントで習得できるスキルだと…」

 

俺は和真に合いそうなスキルを考えていると、後ろから昨日の女騎士が声をかけてきた。

 

「探したぞ、昨日は突然帰ってしまい済まなかった」

 

顔を歪め、嫌そうにする和真、これ以上問題児と関わりたくないと顔に出ている。

 

「お、お気遣いなく…」

 

「ならば、昨日の話の続きをさせてもらおう。私をあなたのパーティーに入れて」

 

「お断りします!」

 

「んんっ…!?く…っ!即断っだと!」

 

和真の即答に、頬を赤らめて身を震わせる。

 

女騎士の態度に、危機感知センサーが鳴りやまないのだろう、若干後ろに下がっている。

 

(なにこの人、断ったのに喜んでる…危険だ!)

 

青い顔をして震えている和真、一方、未だ頬を赤く染め身震いしている女騎士。はっきり言って、凄い光景だな…

 

どうやって話を進めようか悩んでいると、後ろから突然女性が現れた。

 

「ははは、駄目だよダクネス。そんな強引に迫っちゃさ」

 

女騎士の肩をポンポンと叩いてなだめる少女。

 

「ええっと、あなたは?」

 

気配無く現れた少女は、女騎士と違い革鎧で軽装の身軽な格好をしている。

 

頬には小さな刀傷があるが、明るい雰囲気の銀髪美少女だ。

 

「私はクリス、見てのとおり盗賊だよ。この子とは友達、かな」

 

やっと話が繋がる相手に会えたのか、安心する和真。

 

「君、役に立つスキルが欲しいみたいだね。盗賊系のスキルなんてどうかな?習得にかかるポイントも少ないしお得だよ、何かと便利だしね」

 

「へー!」

 

盗賊の話に食いつく和真。確かに和真のように体力に自信がないタイプは、盗賊系のスキルは合っているかもしれない。

 

「どうだい?隣にいる君も一緒に習得してみない。今ならクリムゾンビアを私達に奢ってくれればいいよ」

 

「安いな、よし、お願いします!すみませーん、こっちの人にキンキンに冷えたの2つ!」

 

その後、注文した飲み物を飲み終わった二人はスキルを教えると言って、俺達は裏手の広場に向かった。

 

ちなみにアクアは、未だ宴会芸を披露している。一方めぐみんは未だショックから立ち直れないでいた、ロリっ子と言われたのが相当ショックだったらしい。声をかけても返事がないためそのままにしておいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

冒険者ギルドの裏手の広場、簡単な自己紹介を済ませた後、クリスから盗賊スキルを教わっていた。

 

《敵感知》と《潜伏》を教わったのだが、その際に石を当てられたダクネスはご立腹だった。タルに入ったクリスごとゴロゴロと転がされ、大惨事になる所だった。

 

冗談のつもりでクリスと同じ事をしたらどうかと言ったら、喜んでタルの中に入ろうとした。が、残念ながらダクネスの体ではタルに入ることが出来ず、今度は落ち込んでしまった…。

 

今度は石を投げようか?と聞いたら、喜んで両手を広げて「さあ来い!」と頬を赤く染めて俺の前に立ってきた。投げるのは貴方ですよ、と思ったが後ろからクリスに肩を摑まれた。まだ《敵感知》を習得していないのに怒っている気配をピリピリ感じる、いや、これは殺気かな?笑顔なのに凄く怖い。

 

 

 

「さて、《敵感知》と《潜伏》はこんな感じかな。それじゃあ最後にあたしの一押しはこれ!いい、よく見てて」

 

「うっす!クリスさん、よろしくお願いします!」

 

「いくよ!『スティール』ッ!」

 

クリスが手を前に突き出して叫ぶと同時に、その手が白く光り出した。そして光が収まった手の中には小さな物が握ぎられていた。

 

「あっ!俺の財布!」

 

「おっ!当たりだね!まあこんな感じで使うわけさ」

 

なるほど、これが窃盗スキルか。相手の持ち物を盗む、まさに盗賊の為にあるようなスキルだな。

 

「クリスはああ見えて、幸運値がとても高いんだ。私と同じエリス教徒だが、彼女の幸運値は間違いなくエリス様の特別な加護があると感じるほどの高さだぞ」

 

友人であるクリスを自慢げに褒めるダクネス、彼女の崇拝する女神は幸運を司る女神だという。

 

「へー、そうなのか。ちなみに今財布を取られたあいつも、幸運値はかなり高いぞ。この場合、レベル差の影響で取られたのかな?」

 

「恐らくな、正直クリスに窃盗スキルを使われたら大抵の物は盗まれてしまうだろうな…」

 

そんな話をしていると、何故か二人の間で勝負をすることになっていた。ルールは和真がクリスに《スティール》する代わりに、盗まれた財布は全額渡すという話だ。

つまり、財布を取り返せば勝ち、取れなければ負けといったところか…

 

「よーし!何取られても泣くんじゃねえぞ!」

 

スキルを覚えた和真は気合十分だったが、果たしてそんなにうまく良くものだろうか。

 

「おーい、和真。本当に大丈夫か?」

 

俺の心配を他所に、余裕のクリスは不敵に笑って見せた。

 

「いいねキミ!そういう、ノリのいい人って好きだよ!それじゃあ少しハンデをあげちゃうかな。キミも《スティール》を習得したでしょ、二人で私に《スティール》していいよ。成功したら二人ともそれをあげちゃう、どう?お姉さんからの大サービスだよ!」

 

「いいぜ、やってやる。海斗、こいつから身ぐるみ全部剥がそうぜ!」

 

いつの間にか、冒険者から山賊になるつもりの和真は一体何を取るつもりだろうか。

 

「わかったよ、でも期待するなよ。俺の幸運値はそんなに高くないからな」

 

「決まりだね!さあ、何が盗れるかな?今なら財布が敢闘賞。当たりはこのマジックダガ―、40万エリスは下らない一品だよ」

 

「「おおー!」」

 

「そして、残念賞はさっき拾ったこの石だよ」

 

「ああっ!きったねえ!そんなのありかよっ!」

 

自信満々だと思ったら、こういう事か。確かにアイテムの数が多ければ、その分大事なアイテムが盗られる確率も減り、スティール対策になる。

 

「これは授業料だよ。どんなスキルも万能じゃない。どんなスキルにも対抗策はあるもんなんだよ。一つ勉強になったね!さあ、いってみよう!」

 

確かに勉強になった。ここは日本じゃない、弱肉強食の異世界だ。

 

騙される甘っちょろいヤツが悪いのだ。

 

「よし、やってやる!俺は昔から運だけはいいんだ!いくぞ海斗!!」

 

二人は手を突き出して同時に叫んだ。

 

「「《スティール》ッ!」」

 

叫ぶと同時に突き出した手が光だし、その手の中には何かがしっかり握られていた。

 

どうやら《スティール》には成功したようだ。幸運値はそれほど高くないが問題は盗んだ物が何なのか。

 

俺は自分の手に入れたものを確認した。

 

「なんだこれ?」

 

俺は手の中にあるものが何なのか分からなかった。

 

一言で言えば布袋のようなものだ、財布ではない。握ると柔らかく形はだ円に近い形状だが、これは本人に聞いた方が早いだろう。

 

「えーと、これ…」

 

俺が聞こうとしたとき、隣の男は手に入れた物を両手で広げ、声高らかに叫んでいた。

 

「ヒャッハー!当たりも当たり、大当たりだああああああああああああああああ!」

 

「いやあああああああああ!ぱ、ぱんつ返してええええええええええええええええええええ!」

 

クリスが自分のズボンを押さえながら、涙目で絶叫していた…。

 

大喜びで盗んだぱんつを振り回す和真、それを見ていたダクネスは頬を赤く火照らせ叫んだ。

 

「何と言う鬼畜の所業、やはり私の目に狂いはなかった!」

 

狂っていると言うより、腐っているが正しいと思う。

 

確かに思春期の男の子なら女性の下着を見たら興奮するかもしれないが…流石にここまでの事はしない。

 

クリスの神にもすがるような叫びに隣の変態は。

 

「自分のぱんつの値段は自分で決めるんだな!」

 

「えーーーーーーーーーーーーーーーー」

 

確かに約束では何でもあげると言ったが、これは例外だろ。

 

「おーい和真、とっととその手に持ってる……」

 

ぱんつを返してやれ、と言おうとした俺は和真の持っている物を見た時、言葉を失ってしまった。

 

別に女性の下着を見て興奮した訳ではない、俺の目には無意識に発動したスキルの内容が見えていた。

 

発動したスキルは鑑定スキル、そして鑑定結果がこれだ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

神器:女神エリスのぱんつ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…え?」

 

女神エリス、それはこの世界で多くの人が崇めている女神の一人で、彼女は確か信者だと言っていたはずだが。

 

俺は改めて手に持っている物に鑑定スキルを使ってみた、結果がこれだ…

 

 

 

神器:女神エリスのパット

 

 

 

俺は自分が盗った物が、女性の下着と同等か人によってはそれ以上の物だと分かったが、それを何故クリスは持っていたのだろか。

 

目の前で、有り金すべてを差し出している少女は本当は何者なのだろうか。

 

彼女が何者なのか考えていると、上機嫌になった和真が冒険者ギルドに戻っていった。

 

それを泣きながら着いていくクリスと、ハアハア言いながら頬を赤くしているダクネスがその後ろに続いて戻っていく。

 

「…どうしよう、これ…」

 

俺の手には未だ返し忘れた物が握られている、正直俺が持っていても使い道など無いので後で返す事にしよう。

 

彼女が何者かは分からないが、これ程の物を持っている彼女なら俺にかけられた呪いを解く方法が見つかるかもしれない。

 

俺はそっとポケットにそれをしまうと、冒険者ギルドに向かった。

 

 

 

 

 




最後まで読んで頂きありがとうございました。

投稿速度が落ちていますが、頑張ります。
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